“奈落からの遡雨”ウルメアプロローグ

漆黒の翼をはばたかせ、虚空を翔ぶ。
世界と世界の間に横たわる、広大な虚無の狭間を飛び越える能力。
「転校」と称されることが多いようだけど、私はこの能力を「プレインズウォーク」と呼んでいる。

こうして何百年もの間、様々な世界を渡り歩いてきた。
さびしくは、ない。
黒龍“ながら”がいつも一緒だし、胸の中の思い出も、いつまでも消えることはないから。
そして、辿り着く世界はどれもみな輝いていて、退屈することなんかできやしない!

世界を越えて移動する能力は、実はそんなに自由なものじゃない。
私の場合は、その世界に「招かれた」時にだけ行くことができる。
そうでないと、広大無辺な世界の狭間で道標もなく永遠にさまよう羽目になるから。
行きたい世界に自由に行けたら便利なのに。

そして今、私は招かれている。
忘年会……?
なんだろう、とても懐かしい感じがする。

ああ、思い出した。
金雨ちゃんが私のために頑張って戦ってくれた、あの2013年のトーナメントと同じものだ。
もしかして、私が生きたあの世界の人たちと、また会えるかも。
そう思うと、羽ばたく翼にいっそう強く力がみなぎる。

速く……速く……もっと速く!
みんな、私がやったことに怒ってるかな。
怨まれてるだろうな。
なんて言って謝ろうかな。
うふふ、楽しみ!
速く……速く……はやく行かなきゃ、みんなの所に!



最終更新:2015年12月22日 20:47