二人が出会ったきっかけは、ある雨の日だった。
新潟
せきやはいつものように友人と別れ、学校近くの電停に向かい歩いていた。
その途中のことだった。ふと、せきやは道端にあるものに気づいた。
エネルギー切れだろうか、道端に一人のロボットが座り込んでいたのである。
彼は一体何者なんだろう。せきやが、そう思っていた瞬間だった。
彼は顔を上げて開口一番弱々しい声でこういった。
「オナカ…すいた…」と。
せきやは早速、このロボットを抱え上げて話しかける。
「大丈夫か?どこか壊れてないか?」
ロボットはゆっくりとせきやの方を見つめている。
目は半分だけ開いた状態で、動きもどこか弱々しい。
「……どこも…壊れてない…ただ……」
「ただ…?」
「オナカが…すいた……」
よかった、どうやらただのエネルギー切れみたいだ…
せきやは早速、このロボットのエネルギーになりそうなもの…
つまり、食べ物を探すことにした。
そのときだった。ロボットが再びしゃべり始める。
「……か…」
「?」
「…唐揚げが……食べたい……」
せきやはロボットを抱きかかえて辺りを見回す。
と、近くにコンビニがあった。せきやはコンビニまでそのロボットを支えていき、
そして…から揚げを食べさせてあげることにした。
「……」
「どうだい?うまいか?」
唐揚げ串を美味しそうに頬張るロボットを見て、せきやは少し安心した。
「…そういえば、自己紹介してなかったね…僕は新潟せきや。君は?」
「…
ドラゴ郎」
「ドラゴ郎?」
どうやら、そのロボットの名前のようだ。
確かに目の前にいるロボットは竜人のような姿をしている。
青い腕には黄色の文字で「5」のナンバー。
なるほど、ドラゴンで5番だからドラゴ郎か、と感心していたせきやだったが…
「なるほどね…で、君の家はどこなんだ?」
「家は…ないんだ」
「えぇ!?いまどきロボットだって家に住んでる時代だぞ!?」
驚くせきやを前にドラゴ郎は続けた。
「ないっていうか…生まれたばっかりで、今家を探してる途中なんだよ。苗字もまだもらってないし…で、どの家に住もうかなって探してたらさ…」
「…エネルギーがなくなったってワケか…」
「実はそうなんだ…」
がっくりとうなだれ、ため息をつくドラゴ郎。
そんな彼の肩に、せきやはそっと手を置いてこう言ったのだ。
「じゃあさ…僕の家に来ない?ちょうど叔父がロボット修理店をやってるんだけど」
「そうなんだ…じゃあ、おじゃましようかな…」
と、ドラゴ郎はここまで言いかけてあることをふと思い出した。
「…ちょっと待って…確か…君は『新潟』って…?」
「そうだけど?」
ドラゴ郎が何を言っているのかわからない様子のせきや。
一体、なにがそんなに気になるのかと思っていた次の瞬間だった。
「……母さんと同じ苗字だ」
「へ?」
せきやは目を丸くした。
「か、母さんって?」
「…僕を作った人さ。『新潟
つばめ』っていうロボット工学者でね…」
と、ドラゴ郎が語っていたその時、せきやはドラゴ郎の肩をつかみ、思い出したようにこう言った。
「それ…僕の母さんだよ!」
「えぇ!?そ、それじゃあ…君は…」
「新潟つばめは…僕の母親なんだよ」
「な、なんだってーーーーーー!!!」
そう、ドラゴ郎が驚いたのも無理はない。
自分を拾った少年が、自分を作った人物の息子だったからである。
「ってことは、アレ?」
「?」
「……君も母さんに作ってもらったの?」
せきやはずっこけた。
「あ、あのなぁ…僕はどこからどう見ても人間だろ」
「あ、そうか…じゃあ血のつながった子供なんだ…」
「そういうこと」
雨の中、二人分の笑い声が響く電停。
せきやは新しい弟ができた喜びを、ドラゴ郎は自分の住む場所が見つかった喜びを、
それぞれ噛み締めながら語り合っていた。
そうしているうちに路面電車がやってきた。二人はすぐさま電車に乗り込む。
自分の…いや、自分たちの家へと向かうために。
せきやの部屋。
新潟ロボットサービスの3階にあるこの部屋には、せきやが勉強したり仕事をするスペースがある。
中央においてあるパソコンは主に受注状況などをチェックするための仕事道具であった。
「さ、ここが僕の部屋…なんだけど、困ったな、2人も寝る場所がないよ」
「ええ!?そ、そんな!?」
落胆するドラゴ郎を前に、せきやはドラゴ郎をどこで寝かせるかで悩み始めた。
廊下だと可哀相過ぎるし…叔父の部屋に泊めたら…
ううむ、でもあのぐうたらな叔父のことだから悪い影響受けそうだし…
あれこれ悩んでいた矢先のことだった。
「お…?」
ふと、空いている押し入れをドラゴ郎が見つけた。
恐らく使っていないのだろう、中には何一つ入っておらずがらがらの状態だ。
「ねぇ、せきや」
「?」
「この押し入れで寝ても…いいかな?」
「その発想はなかった。まぁ、どのみち使ってないからな…いいんじゃない?」
かくして、ドラゴ郎はせきやの部屋の押し入れで眠ることになったのである。
最終更新:2010年05月30日 21:31