クーパーを抱えて、幾つかの角を曲がったところで、
バッツは立ち止まった。
それまで呆然と身を任せていたクーパーが暴れだしたのだ。
逃げるにしても、戦うにしてもこれ以上離れては
ピエールと合流できなくなる、という判断もあった。
「バッツ兄ちゃん、どういうことなの?説明してよ!」
「………」
激しく詰め寄ってくるクーパーに、バッツは目を伏せる。
口先だけで誤魔化すこともできるだろう。だが、一時的なものに過ぎない。
いつかは本当のことを知って…そして、そのときの衝撃は今話したときの非ではないだろう。
バッツは、全てをクーパーに話すことにした。
エリアの料理に毒が含まれており、クーパーは石化してしまったこと。
騙された、と思ったバッツはエリアを殺害してしまったが、騙したわけではないことをピエールから聞いたこと。
何とかしてクーパーの石化を解こうとしたが、自分たちではなんともならなかったこと。
手がかりを求めて入った書斎の奥にいた老人とその死。
やってきた
ジタン、
カイン、
リディア、そして自分を「仇」と呼ぶ少年…
バッツの話に、クーパーは驚いたり、悲しそう表情をゆがめたり、悔しそうに唇を噛んだりした。
「全ては俺から始まったんだ。エリアの言い分を聞かなかった俺が」
「でも…どうして、殺しちゃうんだよ……」
「理由は、いくらでもある。無害を装って近づいて命を狙ったんだって、そのときは思ったんだ」
「でも、違ったんでしょ!?」
それは結果論だとバッツは思ったが、口には出さなかった。
もしエリアが自分たちの命を狙っていたとするなら、話を聞くことは更なる危険を招くだけである。
加えて言えば、エリアは弁明もせずに逃げてしまったのだ。エリアの考えを問う余地はなかった。
あの状況において自分の選択自体は、ベストでもベターでもないが、間違っていないと思う。
だが、実際は彼女は自分たちに悪意を持っていたわけではなかった。
その事実を知った以上、自分は間違っていたとしかいえない。だから、口には出さない。
何も言わないバッツから視線を外すと、クーパーは呟く。
「………お父さんなら………」
痛い、とバッツは思った。これまで積み上げてきた信頼が崩れたことを感じたから。
何も言わないバッツから視線を外すと、クーパーは呟く。
「………お父さんなら………」
痛い、とバッツは思った。これまで積み上げてきた信頼が崩れたことを感じたから。
だが、クーパーは廊下の向こう…自分たちが来たほうを凝視して、バッツに気付かない。
「バッツ兄ちゃん、戻ろう」
「………え?」
クーパーは振り返ってバッツの目を見る。
「あの人たちがエリアお姉ちゃんとどういう関係だったかはわからないけど、でも、ちゃんと話さないといけない、と思う」
そのまっすぐな目に、バッツは口ごもった。
「でも…ああなっては…」
「このままじゃ、駄目だよ…何をするにしても。ちゃんと話せば、まだ間に合う、と思う」
エリアの最後を聞いたというピエールの言葉なら、彼らに届くかもしれない、とクーパーは思う。
そして、ピエールの生死が、自分たちとジタンたちの関係を決定付けるとも。
生きていればよし、殺されてしまったら…もう、戦うしかない。
「………クーパー」
「もし、戦うことになったとしても……」
「結論を出さないと。決着をつけないと。自分が納得しないと、いけない。
あの時ああしていれば…って、そんな後悔を引きずって生きるのは辛いから」
魔界に向かうときの、父の言葉だった。
妻…自分の母を助けた後、父の母…自分の祖母から来るなといわれたとき、
父は辛い旅を捨てることもできた。だが、父はそれを選択しなかった。
今だって同じだと、クーパーは思う。
戦うにしても逃げるにしても自分が納得しないといけない。
クーパーはバッツの返事を聞かずに踵を返した。
一人でも行く、という意思の表れだろう。クーパーを止めることはできない。
「わかったよ。そうだな、ケリを…付けないとな」
【バッツ@魔法剣士(アビリティ:白魔法)
所持品:
ブレイブブレイド グレネード五個
裁きの杖
第一行動方針:ジタンたちと決着をつける
第二行動方針:
アリーナ(アニー)、
とんぬら、
パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、
ゾーマを倒す】
【クーパー 所持品:
天空の盾
第一行動方針:ジタンたちと決着をつける ピエールを助ける
第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパス、
エーコの仲間(名前しか知らない)を捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【現在位置:
ハーゴンの自室の外】
最終更新:2011年07月16日 21:37