ミットガル5番街スラム。ゴミ箱のような、荒れた、汚い街の一角。
ザックスはぶっ、と口に含んだアルコールを霧のようにして吹き出した。
アルコールの霧は、目の前で眠っている
クラウドの背中の傷をぐいっと強引に引っ掻く。
「が…!」
クラウドの身体がびくりと痙攣する。
「我慢しろ、すぐ終わっから」
そう言いながらザックスは傍らの
バスターソードを手に取った。
その刀身に開いた二つの穴の内の一つに緑色の煌めきが瞬いている。マテリア。
「ケアル…!」
ザックスばぼそりと『力ある言葉』を解き放つ。
ふわりと、緑色の光がクラウドを包み込む。背中からじくじくと滲み出していた体液の流出が止まる。
肉が傷をふさごうと蠢いて、そして僅かに傷が小さくなったように見えて…そこで光は消えてしまう。
「くそっ!」
ザックスは近くのがらくたに拳を叩きつけ、険悪に唸った。
「ケアル、ケアル、ケアル…!」
更に何度か魔法を唱えるが、やはり僅かに傷口が小さくなるのみで、決定的な治癒ができない。
クラウドの傷が致命傷に近いこと。ザックスの魔力があまり大きくないこと。マテリアの質が悪いらしいと言うこと。
それぞれの悪い要素が、三つ揃ってレクイエムを歌ってクラウドを黄泉の国に引きずり込もうとしている。
ザックスは息を荒らげてクラウドの隣にどっかりと座り込んだ。
何度も何度もケアルを使って、もうくたくただ。
ザックスはクラウドを見た。クラウドは苦悶の表情でそこに横たわっている。
その表情は傷の痛み故か、それとも。
「ぐっあぐ…っ、
ティファ…アリー…ナ。…
エアリス」
ブツブツと口から漏れる彼女たちの事ゆえか。
ザックスは清潔な布で傷口をきつく縛り、近くの民家にクラウドを引きずっていった。
エアリスの家までは多少距離がある。クラウドの状況を見る限り、しばらく移動はできないだろう。
【ザックス 所持品:バスターソード 「かいふく」マテリア(使用できるかは不明)
第一行動方針:クラウドを助ける
第二行動方針:エアリスの捜索
基本行動方針:非好戦的、女性に優しく。】
【クラウド(重傷)
所持品:折れた正宗
第一行動方針:?】
【現在位置:5番街スラム】
最終更新:2011年07月17日 16:07