生きたい…

薄暗い部屋の中、荒い息遣いだけが空間を埋めていた。
ベッドに横たわっているクラウドの怪我は、ザックスの目にもここまま放っておけない程のモノだと
映っていた。
できるだけ早く、十分な治療を施さなければいけない。
上の街にある軍付属の病院までいけば十分な設備があるはずだが、そこまでクラウドの体力が持つとは思えなかったし、なにより今の状態では少しの無理もさせられなかった。
癒しの能力者か、この不良品のマテリアでも十分に力を引き出せる強い魔力を持つ人間。
なんとかしてゲームに乗っていないそういう参加者を探しだして、ここに連れてこなければならない。
心当たりは無い。限りなく危険なミッション。だが…。
「まってろクラウド。すぐに助けを呼んできてやるからな」
ザックスは剣を掴み、走り出した。

場所は変わってエアリスの家。
リノアは食器棚から取り出したカップに良い香りのする琥珀色の液体を注いだ。
自分のモノとスコールのモノ。
白い陶器と、そこに入った白い粉と銀色の小さじ。
自分のモノには少し大目の砂糖を入れ、(彼はあまり砂糖は入れなかったな)と思い、
小さじに半分位の砂糖を入れ、かき回した。
カップの底で溶けていく砂糖と、紅茶の甘い香り。スプーンがカップにあたる金属音。確かな温もり。
これまでと比べて場違いなほど平和な時間。
近いうちに訪れるであろう自分の死を覚悟してはいたが、
それでもこんな一時は乾いた心を潤してくれるし、なにより手放したくない時間だと思わせてくれる。

リノアはそっとカップを手に取り口に近づけ、一口。
「…やっちゃったかな」
リノアは砂糖が入っているはずの小壺を手に取り、中の粉を舐めてみた。
口に広がる塩の味。
軽くため息をつき、また淹れなおさないとなぁと呟いて…
「…あれ?」
不意に視界がぼやけた。続いて頬が濡れる感触。
自分が泣いているのだと、すぐには気がつけなかった。
「あれ? あれ? どうしよう、止まんない…」
吹いても拭いても涙が溢れてくる。下半身から力が抜け、リノアは床に座り込んだ。
その時になってやっと胸が苦しくなってきた。

失ってしまったはずの、もう既にあきらめていたはずの日常のかけらに触れてしまったから。
今までに無く強い気持ちで、すぐそこにあった毎日に帰りたいと思った。生きたいと思った。
だが、その願いを叶える事は彼女には許されていなかった。物理的にも、精神的にも。

いったいどのくらい泣いていたであろうか。
やっと気持ちを落ち着けたリノアは力なく立ち上がると、二階への階段を上った。
紅茶の事はとうに忘れていた。
ドアの前に立ち、2~3回ノックをした。
「スコール、入るわよ」
リノアは返事を待たず、(返事など期待できなかったが)ドアをあけた。
「…スコール?」
部屋の中には誰もいなかった。
ただ奥の開かれた窓がカーテンを揺らしているだけで…。

「ちっ…。なんであいつらがあそこにいるんだよ…」
極力音を立てないようにザックスは路地裏を走った。
ついさっきこっそり覗いたエアリスの家。そこには、あの洞窟の中にいた、クラウドを斬り付けた男の連れがいた。おそらく、すぐ近くにあの男もいるだろう。
あんな危険な奴がすぐ近くにいる。気付かれる前にクラウドを連れて遠くへ逃げなければ…。
「多少危険だがしょうがない。クラウドを連れてウォール街か7番街スラムまでいくしかないな」
ザックスはクラウドを寝かせてある民家へとたどり着くと、
周囲を注意深く見回してから、わずかに開いたドアの隙間に体を滑り込ませた。

建物の影にわだかまる闇から自分を見つめる、虚ろな瞳に気付かずに…。

【ザックス 所持品:バスターソード 「かいふく」マテリア(使用できるかは不明)
 第一行動方針:クラウドを連れて逃げる
 第二行動方針:エアリスの捜索
 基本行動方針:非好戦的、女性に優しく。】
【クラウド(重傷)
 所持品:折れた正宗
 第一行動方針:?】
【現在位置:五番街スラム】

【スコール 所持品:ガンブレード 真実のオーブ
 第一行動方針:ザックスの追跡
 最終行動方針:リノアをゲームの勝利者にする】
【現在位置:五番街スラム】

【リノア 所持品:妖精のロッド 月の扇 ドロー:アルテマ×1
 基本行動方針:スコールに着いていく】
【現在位置:エアリスの家二階、エアリスの部屋】


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最終更新:2011年07月17日 17:34
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