後方に下がった
サマンサは、
エアリスと
エーコの治療を受けながら
前方で繰り広げられてる戦いに目を向けながら冷静に頭を働かせていた。
こんな状況だからこそ、自分は機械のように、氷のように
冷静にならなければいけない、
彼女は自分自身に言い聞かせていた。
しかし、いくら考えてもこの状況を打破できるような考えは浮かんでこない。
彼女が最も危惧しているのは『闇の衣』の存在だった。
今はソレを使わずに攻撃を回避しているが、それが『闇の衣』が使えないのか、
使わないだけなのかではとるべき戦術が大きく違ってくる。
もし使わないだけなのだとしたら、絶望的だ。
こちらの攻撃はほとんど意味を成さなくなる。
大魔王相手に同じ戦術が通用するとは思えない。おそらくマジャスティスは発動前に潰される。
術者二人を守りきる実力がこちらにあるとは思えない。
そもそも
デスピサロをどうやって止めるのか。
助けるにしても止めるにしても、どうすればいいのか思い浮かばない。
大魔王相手に死なない程度のギリギリの手加減なぞできるはずが無い。
こういう場合に重宝する封印系の魔法は自分には使えないし、味方の能力を全部把握しているわけでもない。
それに、あの
ゾーマの呪縛。コレを解決する術が無ければ自分達のしようとしている事は全て意味がなくなってしまう。
いまさらながら、状況は絶望的であった。
サマンサは半ば強引に思考を止め、軽く息を吸い込んだ。
エアリスとエーコのおかげで傷の痛みはだいぶ引いていたため、先程よりも軽く呼吸ができた。
(いけない、できない事ばかり考えていては。自分にできる事を、どうしたらできるようになるかを考えなくては)
今自分に必要なのは、情報だ。そしてサマンサは周りを見渡し…。
---見つけた。
おそらくこの中で一番ゾーマに近い場所にいる者。この中で一番謎を秘めている者。
手段など選んでいる時間はない。
サマンサは迷わず右手を『彼』の方へ向けると、その手のひらに火球を作り出した。
エアリスとエーコは突然の行動に息を呑み、
デッシュは『彼』の傍に立っていた
リディアをかばうように引き寄せた。
「あなた、ゼニスっていったわね。答えなさい。あなたの目的と、ゾーマに関して知りうる限りを」
最終更新:2010年05月29日 23:35