とあるヘリポート。
遠くからプロペラの回転音と共に近付いてくる1機のヘリコプター。
ヘリコプターが降り立つと、中から黒いローブを纏った人物が現れる。

「お待ちしておりました、城戸様。」
『ご苦労。用意はできてるか?』
「はい。既に先方とも連絡が取れており、あとは城戸様が
 童実野美術館へ出向いて頂ければ。」
『分かった。さっそく向かうことにする。』

ローブの人物がフードを捲ると、茶髪の男性の顔が露わになった。
城戸と呼ばれる男はその後用意されていたリムジンに乗り込むと、
走り出す車の中で懐から1枚のカードを取り出した。

『この神のカードをエジプト考古局の長官に渡すのが俺の使命とはな・・・。
 まったく、こーゆー仕事は悠一郎たちに押しつけてほしいもんだ。』

ハァ・・・と溜め息をつく彼のことなどお構いなしと言わんばかりに、
リムジンは童実野美術館へと向かった。





―― 童実野美術館 PM9:00。

リムジンが童実野美術館に到着すると、外では1人の女性が立っていた。
長い黒髪で肌は黒い、だが顔立ちはしっかりと整った美女と言える女だった。

「ようこそ、童実野美術館へ。」
『アンタが会う約束してるエジプト考古局の長官かい?』
「はい、私の名前はイシズ・イシュタール。どうぞ、中へお入り下さい。」

城戸はイシズと名乗る女性に連れられ、美術館の中へと足を進める。
そして、イシズは電球の光すらつけられていない部屋へ彼を招き入れると、
そのまま「少々お待ちを。」とだけ言い残して奥へと歩いていった。

「あなたが何のために今日ここを訪れたのか、私は既に知っています。
 しかし、話をする前にコチラをご覧頂きましょう。」

彼女の声の後、パチッという電気のつく音と共に城戸の前に現れたのは、
どこかから持ち出したと思われる大きな壁画だった。
しかも、その壁画には見覚えのある絵の描かれた石板が彫られていて、
ソレを見た城戸はニヤリと笑った。

『これが、名もなきファラオの王墓から掘り起こされたとされるあの壁画か。
 まさしく、マジック&ウィザーズの原点、とも言うべき代物だな。』
「この壁画については、何かご存じで?」
『実物を見るのは初めてだが、コレについての知識はホルアクティの書を
 通して勉強させられたんでね。しっかし・・・。長老たちはよくコレを
 アンタたちに委ねたもんだな。それほど信頼されてるということか。』

フーン、と壁画をまじまじと見つめる城戸。
イシズは何も言葉を発さず、その光景を後ろから見つめていた。

『黒き魔術師を操る若き王と、白き幻獣使いの神官・・・・か。
 魂の交差する場所での戦いには、うってつけってワケだな。』


『それで、こちら側の要求は飲んでくれたのかな?』
「海馬コーポレーションの社長である海馬 瀬人。彼には、10時にここへ
 来て頂くように申し出ました。一言返事を頂けたので助かりましたよ。」
『そうか。』

城戸、イシズへ向き直る。

『イシズさんよ、俺が渡した神のカードは、必ず海馬 瀬人に渡すんだぞ。
 今回の件は我々Atumがホルアクティの書に記されているシナリオを
 完遂するために必要不可欠なんだ。少しでも間違ったことが起これば、
 修正するのは容易ではない。こちらからアンタに詳細を教えていないのは
 申し訳ないが、機密事項なんでね。彼から何か聞かれたとしても、
 アンタはグールズの事だけを話して、彼を煽ってくれればそれでいい。』
最終更新:2009年01月26日 03:35