一筋の光すらも差し込まない闇の中。
私は、そこにいた。

『あれ・・・? 私、なんでこんなとこにいるんだろ・・・?』

辺りを見渡してみても、周りは暗闇で何も見えず、自分が今いるこの地面でさえも
見えない、それほど真っ暗な場所だった。

『よいしょ・・・・っと。ここ、一体どこなのよ、もぉー・・・・。』

適当にブラブラとその辺を歩いてみる。
でも、真っ暗な中を歩いているわけだから当然、先なんて見えるはずもなく、
かといって後ろを振り返ってもさっきまで立っていた場所も分からない。

『えっと、気が付く前に何をしてたか思い出せばいいわけか・・・。
 んー・・・・・・・・・・』

さっきまで何がどうなっていたのかを思い出そうと必死になっても、頭の中には
何も思い浮かばず、一体全体何がどうなっているのか意味が分からない。
そんな時だった。

『あれは・・・・・・・出口?』

私の目に飛び込んできた、一点の光。
この空間の出口なのかどうかは分からないけれど、今の私にはその光の場所へ
向かう以外に方法はなかった。
もしかしたら、私みたいにここへ迷い込んでしまった人なのかも知れない。
私は、必死になって走った。
でも・・・・・・・・・・・・・・・。

『な、何なのよ、これー・・・・・?』

光があった場所へ来てみても、そこには出口なんてものはなかった。
あったのは、両手の上に乗りそうなほどの大きさの火の玉のような光だけ。

『ハァ・・・・。誰かー、どうやったらここから出れるのか教えてよー・・・。』

泣きそうになりながら溜め息をつく。
それでも光はフヨフヨと浮かんだままで、特別変化する様子もない。
このまま私、ここにずーっといなくちゃいけないのかな・・・・。
そんな不安が、頭をよぎる。


・・・・私に触れなさい。


『え?』

頭の中に響くような、そんな感じの声。
どこから聞こえたのかは分からないけど、咄嗟に辺りを見回してみる。
でも、人の姿は見えないし、人以外の何かが見つかるわけでもない。

『誰!? ねぇ、誰か近くにいるの!?』

私の出した大声は暗闇の中へと吸い込まれていき、むなしく響き渡る。


・・・・私に触れなさい。そうすれば、あなたを導いてあげましょう。


またも聞こえてくる、謎の声。
でも、それは男の人の声だとか女の人の声だとかじゃない。
純粋に、テレパシー?のような感じで頭に響き渡ってくる声らしきモノ。
私に話しかけてくれてるってことは、近くで私のことを見てるはず。
そう思った私は、辺りを見回しながら何回も何回も呼びかける。

『ねぇ! いるなら答えてよ! こんなとこに1人だなんて嫌だよぉ・・・。』

暗闇の中に1人でいる恐怖、そして寂しさのせいで涙がこぼれだす。


・・・・私は、あなたの目の前にいます。さぁ、私に触れなさい。
・・・・そうしなければ、あなたは目覚めることができないのです。


触れなさいって言われても、周りには私以外には何もないのに・・・・・。
あるとしたら、この光くらいなもので・・・・・・・・。
まさか・・・・・。
私は、半信半疑のまま光に手を伸ばしてみた。


・・・・そう、ソレでいいのです。
・・・・さぁ、あなたを記憶の世界へと導いて差し上げましょう。


『え? な、何!? うわ!!! きゃああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』

手を伸ばした光が一瞬眩しく光り輝くと、急に足元が抜け落ちたかのような、
そんな感覚になったと思った瞬間、私は崖から落ちるかのように暗闇へ落ちていった。










『う・・・うーん・・・・・・・・・・。』

気が付いて目を開けると、そこにはさっきと打って変わって、見事に太陽の光が
ギラギラと照りつける砂漠のような場所だった。
でも、太陽が照りつけている割には暑いと感じることもなく、かといって
涼しいと言えるような温度でもない。

『え・・・? ここ、どこ・・・?』

事態の急変さに、いまいち状況を飲み込めない私。


・・・・そのまま進みなさい。そうすれば、王宮へと辿り着くでしょう。


またも聞こえてくる、謎の声らしきモノ。
よく分からない怪しさ満点のモノに従うのは少し気が引けたけど、今は
そんなことを言ってる場合じゃないのは分かっていた。
私は声らしきモノの命じるままに、歩みを進める。

『この先に王宮があるって、なんでそんなとこに行かなきゃいけないのよ・・・。』

途中、どこかの村人と思われる人たちを見かけたので、話を聞いてみることにした。

『あのー、すみません。』

しかし、こっちが声をかけているにも関わらず、村人っぽい人たちは私のことなんて
まるで見えていないかのように横を通り過ぎていく。
おもいっきりシカトするとか、あんまりじゃない!?

『ちょ、ちょっと!! 人が話してるんだから、ちゃんと聞きな・・・・え?』

呼び止めようと肩に手を伸ばしても、村人に触れることができない。
そう、私の手は確かに村人の肩を叩いたはずなのに、まるで幽霊のように
スルリと村人の体を手がすり抜けたのだ。

『う、嘘でしょ・・・・? まさか私、もう死んじゃってるの・・・!?』

考えてもいなかった事態に、思わず頭がパニックになる。
取り乱すまいとしてもうまくいかず、目には涙が溢れてくる。

『そんな・・・・! そんなことってないよ・・・・!!!』

私は死んでいる、そう思ったとしても不思議じゃなかった。
目が覚めたらいきなり暗闇の中、しかも何をしていたのか記憶もない。
さっきから起こっている事象を考えれば、私は死んだんだと考えてもおかしくない。

・・・・落ち着きなさい、あなたは死んでなどいません。
・・・・この世界は死後の世界でも現実世界でもなく、あなたの心の中なのです。


『こ、心の中!?』


・・・・目覚めたければ、急いで王宮に向かいなさい。
・・・・そこへ行けば、あなたが目覚めるための手段を得られます。


何がどうなっていて、王宮で得られる「手段」とやらが何かは分からなかったけど、
立ち止まっていても仕方ないため、私は急いでこの先にあるという王宮へ向かった。










『ハァ・・・・ハァ・・・・・!!』

暑くはないものの太陽の照りつける砂漠をやっとの思いで走り抜け、言われるままに
王宮へと辿り着いたけど、私の見た王宮はそこかしこが崩れていた。
場所によっては火をつけられたのか煙を上げており、その様子は王宮とは言いがたい、
そんな雰囲気の漂う所だった。

『こ、こんな所で一体何があるというのよ・・・?』

辺りを見渡すと、兵士と思われる人たちがお互いに剣を交えていた。
服装が同じなのに斬りつけ合っている様子を見ると、仲間同士で戦っているのが分かる。


・・・・彼らには、あなたのことは見えていません。
・・・・危害は加えてこないのでそのまま進み、突き当たりにある階段を
    降りて、その先にある広間に向かいなさい。


私は言われるがままに突き当たりの階段を降り、広間に出た。
見ると視線の先には神官らしき人物が2人対峙していて、双方の後ろには石版がある。
ここからだとよく聞き取れないけど、雰囲気的には敵対している感じがする。


・・・・近寄って、真実をその目で確かめなさい。


『真実? 一体何のことよ?』

私の質問に声は答えてくれなかった。
「あなたを導きます」とか言ってたくせに、肝心なとこで答えてくれないことに
苛立ちを覚えつつも、辺りは燭台に灯っているうっすらとした火で少し先が
見える程度の明るさだったので、私はそのまま2人のもとへと近寄っていった。
そして、私は信じられない光景を目にする。

『え・・・・・。』

私から見て左側に立っている人物を見て、私は驚きを隠せなかった。
だって、そこに立っていたのは私にそっくりな、いや、私自身だったのだから。
そして、側に近寄ったことで2人の会話が聞こえてくる。


「白き龍を宿す者、・・・よ。今となっては、貴様に勝ち目はない。
 貴様に宿っているその神に等しき力、白き龍を我に委ねるのならば、
 貴様の命と配下の者たちの命、助けてやらんこともないぞ?」
「こんな事態を引き起こすとは・・・。ヘイシーン、罪の重さを知れ!」
「フハハハハッ! ファラオ亡き今、貴様の命は我が握っているも同然!
 ここで命を落とすか、助かって我と共に闇の世界を支配するか。
 どちらかを選ぶがいい!!」

目の前にいる私(のそっくりさん)は闘いで傷付いたのか、息遣いが荒い。
それに対して対峙している長身の男は不敵を笑みを浮かべている。

「お前など、ファラオより受け継いだ白き龍の前では恐るるに足らないわ!
 今この時! 我に宿りし白き龍の力を呼び覚ます!!」

私(のそっくりさん)が叫ぶと同時に、背後にあった石版から巨大な龍が現れる。
こ、これは・・・・・・青眼の白龍!?

「フッ、確かに凄まじい魔力(ヘカ)を持つ魔物だが、今の貴様では
 ろくに操ることもできまい!!」
「なら、この僕の力をその身にしかと刻め! 滅びの威光!!!」

青眼の白龍の口から吐き出される、光の業火。
その光が男を襲う直前、男の背後に不気味な長髪の男がユラリと姿を現す。

「フフフフフ・・・。我に宿りしは闇の大神官の力ぞ。闇の力で滅びるがいい!」

男がその一声と同時に手を掲げると、巨大な闇が死霊に姿を変え、対峙している
私(のそっくりさん)を襲った。
あまりの光景に私は目を背けたため、どうなったのかは最後まで見れなかった。

『こ、こんな光景を私に見せたかったの・・・!? そろそろ姿を見せなさい!!』

頭に響いていた声の主に、そう呼びかける。
すると、私の目の前の2人だけが霧のように消えていき、後には広間だけが残った。
キョロキョロと辺りを見回すと、広間の奥から誰かが歩いてくる足音が聞こえてくる。
暗闇の中から姿を現したのは、ターバンのようなモノを頭に巻き、白いローブに
身を包んだエジプト人っぽい男だった。

『もしかして、アンタが私に話しかけてきてた声の主かしら?』
「・・・・・」

男は、こちらの様子を伺うように黙り込んだまま何も喋らない。

『いい加減にしな・・・・!』
「ファラオの意志を受け継ぎし者よ。あなたが見たさっきの光景は、
 約3000年前に起きた事実なのです。」
『・・・・は?』

私の言葉などまるで届いていないかのように、男は言葉を続ける。

「真実は、どんなモノであろうとも受け入れなければなりません。それが、
 ファラオの意志を継ぎ、神官の魂の宿り主となった選ばれし者の宿命。
 私がここまで導いた結果、あなたはここで記憶が目覚めるきっかけを得た。
 あとは記憶、そして大いなる意志に従えば良いのです。」
『言ってることが、まったくもって意味不明なのよ!! 戯言はいいから、
 私をサッサとこの心の世界とやらから出しなさい!』
「・・・・ここから出るには、目覚めなければならない。最後の引き金は、
 あなた自身で引くのです。」

男が左手を天に向かって掲げると、左手に見覚えのあるモノが光となって現れた。

「あなたを試すには、これが一番分かり易くて手っ取り早いでしょう。
 さぁ、あなたも構えるのです。」

男と同じように左手を天に掲げると、光が集約して男と同じモノが装着される。
これは・・・・・・・・・。

『デュエル・・・ディスク・・・・・。』
「始めましょう。我が名はシャーディ。闇の番人であり、記憶の導き手。」

男が構えると同時に、私もデュエルディスクを展開してデッキに手を伸ばす。






「今この時、ファラオの意志を受け継ぎし者がまた1人、試される・・・・・。」










to be continued・・・・・・



  • サラダ館もといシャーディーここにいるって本物かな?本物だったら現実の千年錠の話どうなるんだろ? などと色々考えちゃってます。私(のそっくりさん)でちょっと笑わせてもらいました -- (要亜希) 2009-02-22 20:34:49
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最終更新:2009年02月21日 12:00