『ラストバトルよ、ブラックマジシャン・ガールでダイレクトアタック!
 黒・魔・導・爆・裂・波(ブラック・バーニング)!』
「ぐわー、また俺の負けかよ!!」
『エッヘヘー、啓輔って弱いね、プッ。』
「今笑ったな、お前ッ! ったく、今日はデッキの回りが激しく悪いな・・・。」

私の名前は、小日向 茜(こひなた あかね)。
世界中で大ブレイクしているカードゲーム、デュエルモンスターズを
こよなく愛する数少ない女性デュエリストの1人。
目の前で頭を抱えているのは幼馴染みの啓輔で、私がデュエルモンスターズを
始めるきっかけを与えてくれたのはこの子である。
地元では結構な腕前を持つデュエリストとしてそれなりに知られているのに、
私とデュエルする時は決まって運が悪いのか、いつもデッキの事故率が
非常に高いため、私との通算勝率はかなり低い。

『今日は、じゃなくていつもでしょ?』
「人を馬鹿にするのもいい加減にしろよな、茜。
 でも、お前この1ヶ月ちょっとでかなり腕上げたよな。」
『デュエリストとしての才能があるってことかしら?』
「レアカードとかも、何気に俺よりいいの持ってたりするしな、お前。
 ちぇ、美咲町ナンバー1デュエリストの俺が負けるとは不覚だ・・・。」

だー、と机に突っ伏してなおも悔しさを露骨にする啓輔。
自分で言うと自意識過剰っぽい話だけど、確かに啓輔の言う通り、
私のデュエルの腕前は短期間でかなり上がったと思う。
まだ始めて1ヶ月そこそこだというのに、勝率はかなり良い方だ。
最初はデッキの組み方がいまいち分からなくて、とりあえずは
強いカードで固めれば負けないだろうと思い込んでいたから、
何の戦略もない単なるパワーデッキを使っていた。
一応それでも啓輔には勝ち続けてたわけだけど、そんなゴリ押しの戦法が
いつまでも続くわけもなく、さらに少々飽きを感じたことから、啓輔と
相談してデッキを大幅に改造、今に至る。
今はお気に入りカードである「ブラックマジシャン・ガール」を主体とした
魔法使い族デッキを使っていて、これがまたいろいろなコンボを取り入れた
結構強いデッキなもんだから、今ではデュエルが楽しくてたまらない。


(・・・所詮、カードゲームなんて子供の遊びでしょ・・・・)


かなり偏見はあるけれど、最初はそう思ってたのに今となっては
一番ハマっているのが私自身だから驚きだ。
どこへ出掛けるにしてもデッキは手放さないし、おもちゃ屋へ行けば
必ず何らかのパックやスターターデッキは1つ以上買って帰る癖がついた。
啓輔と一緒にカードを買いに行くなんて光景も、今じゃ珍しくない。


今日の放課後も、啓輔と駅前のショップへ「ある物」を買いに行く予定が
あるんだけど、今日はソレのために学校へきたと言っても過言ではない。


「よし、休憩時間もまだ残ってるし、もう1回やろうぜ。」
『あいあい。ねぇねぇ、早く放課後にならないかな。
 楽しみで楽しみで、もう待ち切れないよ~。』
「・・・俺が予約しにいこうって誘った時は、値段が高いだの何だのって
 散々文句言ってたくせによ。」
『だってさ、自分のデッキのカードが実際に投影されて動くんだよ!?
 これで興奮しない人なんて、デュエリストとして失格だね!』
「まぁ、俺も楽しみじゃないわけじゃないからなー・・・・って、
 また俺の負けかよ!?」
『啓輔、弱すぎ・・・。今の数ターンで終わったじゃん・・・。』
「くそー、なんで茜は手札がスゲーいいのに俺はこうも手札が悪いんだ!?」
『日頃の態度が悪いからだね、きっと。』
「お前な・・・・・」







そして、待ちに待った放課後。

『やったー!!! ついに手に入れたぞ、決闘盤(デュエルディスク)!!』
「予約してて正解だったなー。在庫切れで買えない奴も結構いたみたいだし。」
『よしよし、お前が私の手元に来るのをずっと待ってたんだぞ~。』
「頼むから、そーゆー恥ずかしいコトは家帰ってからやってくれないか?」

待ち焦がれていたデュエルディスクにスリスリと頬ずりする私を見て、
さすがに恥ずかしかったのか啓輔がグイッと手を引っ張って止めてきた。
同じデュエリストなのに、ここまで冷め切っている奴をデュエリストと
呼ぶのは気が引けるというもんだ。
これくらいで恥ずかしいとか言ってるようじゃ、デュエリスト失格だよ。

私たちが手に入れたのは決闘盤(デュエルディスク)と呼ばれる、
次世代デュエルマシーン。
海馬コーポレーションが最先端技術を駆使して生み出したとされる、
いわゆるデュエリストの必須アイテムだ。
発売が決定したのは私がちょうどデュエルモンスターズを始めた頃で、
予約しないと絶対に買えないだろうと啓輔が予測していたため、
私たちは慌てて近所のおもちゃ屋さんまで予約しに行った。
幸いにも私たちの時はまだ予約が殺到していなかったのですんなりと
予約できたんだけど、その数日後に予約数が信じられないくらいに
伸びたことから発売元が予約できないように規制を設けたという。


これが後に言われる「決闘盤(デュエルディスク)事件」の始まりなのである。


予約できなかったことを恨みに思った馬鹿なデュエリストが予約者を襲い、
予約用紙をビリビリに破ったり、さらには予約用紙を強奪して自分が
手に入れようとするなどの事件が相次ぎ、大変なことになった時があった。
政府も一時デュエルモンスターズを発売禁止にしようとしたんだけど、
海馬コーポレーションからの圧力で事態は沈静することになったため、
私たちからしてみれば本当に嬉しかったんだよね。
私としてもコレを手にするこの日をかなり待ち侘びてたんだけど、出費が
結構痛かったからしばらくは極貧生活になりそうだ・・・・。

「システム的にどうなってんのかがいまいち分からねぇけど、
 とりあえず帰って使ってみようぜ。」
『オッケー♪ じゃあ、私は一旦家に帰って準備してから、
 啓輔の家に遊びにいくね。』
「おう。デッキ調整はちゃんとやってこいよ。」
『じゃあ、また後でね~。』

私は猛ダッシュで家まで帰ると部屋に鞄を置いて、啓輔の家へ向かった。
家に着いた時には啓輔の準備は既に整っていて、庭で私を待っている状態だった。

「お、きたな。」
『ごめん、ごめん! よし、じゃあ始める前にまずお互いのデッキを
 カット&シャッフルよ!』
「茜、頼むからデッキをシャッフルする時にカードを地面にバラすのだけは
 やめてくれよな・・・・。」

デュエルを始める前に必ずやる、お互いのデッキのカット&シャッフル。
この時、私はよく啓輔のカードをバラバラと地面に落とすことがある。
別にわざとやっているわけじゃないんだけど、デュエルをする前の緊張感で
シャッフルがすごい下手くそになっちゃうんだよね・・・。
悪いことしたとは思うけど、こうやって毎回のように言われるとソレも
腹が立つってもんだ。

「よし、じゃあデッキホルダーにデッキを装着だ。」
『んっ。』

ガシッ、と自分のデッキをホルダーへと詰め込む。
デッキを入れた状態で手を振り回してもデッキが落ちることはないし、
思ってたよりも軽かったことに少し驚いた。
さすが世界を股にかける企業、海馬コーポレーション。
その技術、恐るべし。

「さてと・・・・・やるか!!」
『うん! 手加減しないんだから!!』
「いくぞ!!」




決闘(デュエル)!!!!



to be continued・・・・・・



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最終更新:2009年01月23日 16:20