第02話:必殺コンボを打ち破れ!
『驚きのコンボですって?』
「あぁ、そうさ。俺は今、
モンスターを3体特殊召喚した。これによって、お前のモンスターである
上級黒魔導師のモンスター破壊効果が発動する!」
特殊召喚された3体のモンスターを、上級黒魔導師の攻撃が襲う。
魔導書整理人は破壊されたけど、異次元の魔術師と魔術学校の生徒は自らをバリアーで守り、
上級黒魔導師の攻撃を防いだ。
『な、なんで異次元の魔術師と魔術学校の生徒は破壊されないの!?』
「この2体は戦闘以外、つまりカードの効果では破壊されない能力を持ってるんだ。だから、
上級魔導師の効果によって破壊されるのは魔導書整理人だけ。でもな、魔導書整理人には
破壊された時に発動する驚きの効果が付与されているんだぜ。」
『驚きの効果?』
「ソレは、カードの効果によって破壊された時、自身をフィールドに特殊召喚できるという能力。」
『なんですって!?』
啓輔のフィールドをよく見てみると、魔導書整理人が持っていた1冊の魔導書がポツンと残っており、
本のページがパラパラとめくれると同時に、あるページの中から魔導書整理人がポンッと姿を現した。
「さらに魔導書整理人は特殊召喚された時、デッキから魔法カード1枚を手札に加えることができる!
俺はデッキから、おろかな埋葬を手札に加えるぜ!」
『でも、魔法カードを手札に加えたところで、ソレがどう驚きのコンボに繋がるって言うの!?』
「俺がこの3体を特殊召喚したのにはちゃんと意味があるのさ。今こそ見せてやるぜ、俺の必殺コンボを!
魔導書整理人が特殊召喚されたことで、異次元の魔術師の効果が発動! 俺はデッキからカードを1枚
ドローする! さらに、カードをドローしたことで魔術学校の生徒によるLP回復効果が発動、ライフを
500ポイント回復する!」
魔術学校の生徒たちが手をかざすと、生徒の手から溢れ出た光が啓輔を包み込み、ライフを回復する。
「さらに、魔導書整理人の効果発動! こいつは特殊召喚されることで、相手プレイヤーに自分の手札の
枚数×500ポイントのダメージを与えることができる! 俺の手札は2枚だから、お前に1000ポイントの
ダメージを与える! コレは手札に魔法カードを加えようが加えてなかろうが、特殊召喚されることに
よって必ず発動する!」
『きゃあぁぁぁ!!』
● 茜 :ライフ7000 手札3枚 モンスター1枚
● 啓輔:ライフ4700 手札2枚 モンスター3枚
魔導書整理人の魔術詠唱による攻撃(効果)が私に通り、1000ポイントのダメージを受ける。
でも、これがどうして必殺コンボだというのかが私には分からなかった。
『たかだか1000ポイントのダメージを与えただけで必殺コンボだなんて、笑わせてくれるわね・・・。』
「いや、このコンボはまだまだ終わらないぜ。」
『え?』
「お前は、自分のモンスターの効果が仇となって負けるんだ。上級黒魔導師の効果を忘れたか?」
『上級魔導師の効果・・・? まさか!?』
上級黒魔導師は、相手が攻撃力1500以下のモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚した時に
そのモンスターを問答無用で破壊する効果が付与されている。
つまり、上級黒魔導師の効果によって破壊された魔導書整理人がフィールドに特殊召喚された今、
再び上級黒魔導師のモンスター破壊効果が発動してしまう・・・!!
「魔導書整理人は破壊されるが、再びフィールドに特殊召喚される。そして、この瞬間に異次元の
魔術師と魔術学校の生徒の効果が発動、俺はデッキから1ドローし、LPが500ポイント回復、これと
同時に魔導書整理人の効果で魔法カードを1枚手札に加え、さっきと同じく手札の枚数×500ポイントの
ダメージがお前に与えられる。俺の手札は2枚から4枚になるから、2000ポイントのダメージが飛ぶぜ。」
『きゃあッ!!』
さっきと同じように、魔導書整理人の効果攻撃により、私は2000ポイントのダメージを受けた。
そして、魔導書整理人が特殊召喚されたことで、上級黒魔導師のモンスター破壊効果が発動、再び
魔導書整理人が破壊され、その後フィールドに特殊召喚される。
● 茜 :ライフ5000 手札3枚 モンスター1枚
● 啓輔:ライフ5200 手札4枚 モンスター3枚
『ま、まさかコレって・・・・。』
「そう、これはいわゆる無限ループってやつさ。お前のフィールドの上級黒魔導師のおかげで、俺は何も
しなくてともこのデュエルに勝てるのさ。お前のライフポイントが自動的に減っていくんだからな。」
上級黒魔導師が魔導書整理人を破壊するたびに魔導書整理人は復活し、啓輔の手札は2枚増える。
ソレによって、私は手札の枚数×500ポイントのダメージを受けていく。
『クッ、こんな負け方、認めてたまるもんか・・・ッ!!』
私は何か打開策がないかと、慌てて手札を確認する。
その間にも私のライフポイントは見る見るうちに減り続け、残されたライフポイントは残りわずか。
と、その時だった。
『これは・・・・?』
デッキを組む際に入れたことすら忘れていた、とあるカードに目がいく。
そのカードのテキストを確認した瞬間、私はニヤリとせずにはいられなかった。
『啓輔、残念だけどその無限ループの打開策、分かっちゃった。』
「なんだと?」
『私は、手札から魔法カードを発動する! 魔法カード、無謀な突撃!!』
《魔法カード》
無謀な突撃
速攻魔法
自分の手札をすべて捨てて発動する。
自分フィールド上のモンスター1体を選択する。
このターン、選択したモンスターはもう1度バトルフェイズを行う。この時、選択されたモンスターは
相手フィールド上に存在するすべてのモンスターに攻撃しなければならない。
フィールド上に存在するすべてのモンスターの効果はこのターンのみ、無効化される。
ターン終了時、選択した自分のモンスターを破壊し、自分は攻撃力分のダメージを受ける。
「こ、ここで無謀な突撃を発動するだと!? そんなカードを手札に持ってやがったのか!?」
『このカードを使うことで、啓輔のフィールド上モンスターの効果は、このターンのみ打ち消される!
いくわよ、上級黒魔導師で啓輔の全モンスターに再攻撃!!』
上級黒魔導師が、啓輔のフィールド上のモンスターを次から次へと破壊していく。
無謀な突撃のカードによって相手モンスターは効果が無効化されているため、魔導書整理人の効果である
「戦闘によって破壊された場合、自分の墓地から魔法カードを1枚手札に加える」という能力も墓地へ
送られた時に発動する効果じゃないために発動しない。
何よりも、この攻撃で啓輔のライフポイントは一気に7600ポイント削られたために勝敗は決した。
『やった、私の勝ちよ!』
「ハァ・・・。なんで茜はどうにもできないはずの局面でこんなカードを使ってくるんだ・・・。」
『デュエルの神様は、私に微笑んだみたいね☆』
今となっては啓輔に勝てたからこんなことが言えてるけど、もしも無謀な突撃が手札になかったら
あの恐ろしいコンボのせいで間違いなく負けていた。
「絶対勝てる!って確信してたコンボだったのに、ガッカリだぜ・・・。」
『まぁまぁ、そう落ち込むなって♪ 啓輔もよく頑張ったよ。』
「勝ったからっていい気になってんじゃねえよ! ・・・ったく、どうする? もう一回やるか?」
『もう一回やるのもいいけど、一緒にデッキ調整しようよ。私のデッキ、まだまだ弱いからさ。』
「じゃあ、上がれよ。一緒にデッキ組んで、後でまた勝負しようぜ。」
『また私が勝っちゃうから、やめといた方がいいよ?』
「サッサと上がれ、この野郎!」
キーッとムキになって怒る啓輔を尻目に、私は笑いながら玄関へお邪魔し、啓輔の部屋へ向かった。
部屋に入ると、そこには見慣れた光景があった。
小学校入学の時にご両親から買ってもらったベッドと学習机、床にはかわいい犬のカーペットが
敷かれていて、ちゃんと小さなテーブルも置かれている。
昔はよくこの部屋で啓輔と騒いだりベッドで寝たりしたけど、最近はあんまり来てなかったもんね。
啓輔って今ではあんな大きな口叩いたりしてるけど、昔はすごい気弱な男の子だったな~。
なんてことを考えていると、啓輔がお茶とお菓子を持って部屋に入ってきた。
「おい、茜。とりあえずお茶持ってきたけど、お茶で良かったか? っていうか、それ以外はやらん。」
『・・・啓輔、アンタ性格悪いよ。それよりさ、さっき使ってたカード見せてよ。』
「あ? さっき使ってたカードってどれだよ?」
『どんなカードでも無効化できない罠。」
「あー、アレか。デュエルディスクにデッキ入れたままだから、勝手に抜いて見ろよ。」
そう言うと、啓輔は私そっちのけで押し入れを開けて、ゴソゴソと何かを探し始めた。
何を探しているのかちょっと気になったけど、そんなことはお構いなしに私は啓輔のデッキを取り、
ホルダーからデッキを抜いてカードを確認することにした。
啓輔のデッキには私の知ってるカードも入ってはいるけれど、大半が知らないカードばかりだった。
多分、さっき啓輔が言っていたように私がデュエルモンスターズを始める前に発売されていたとされる、
俗に言う「廃版パック」って分に収録されていたカードなんだろう。
どれもこれも効果は強力で、さっきのデュエルで啓輔のデッキがフル回転していたりしたら、余裕で
負けていたんじゃないかと思うほど強いカードばっかりだった。
『ねぇ、啓輔。』
「ん?」
『この緊急帰還の書、ちょうだい?』
「寝言は寝てから言え、バーロー。もう手に入らないカードだって、さっき言っただろ。」
『じゃあ、何かと交換して! っていうか、くれたっていいじゃん! ケチ!!』
「・・・なんでお前が逆ギレしてんだ、おい。お前にはこっちのカードやるから、これで我慢しろ。」
そう言うと、啓輔は押し入れの中から取り出したダンボール箱を私の前にドンッと置いた。
中にはカードがギッシリと敷き詰められていて、ちゃんとモンスター、魔法、罠、融合モンスターと
区分分けまでされている。そう言えば啓輔って、極度のA型だったっけ。
『あのね、啓輔。私はこんなカードより、この1枚が欲しいって言ってるんだけど?』
「こんなカードって言うな! 昔のカードも結構あるから、ノーマルでも強いカードとかあるんだぞ。」
『ねぇ、啓輔~。くれたらいいことしてあげるんだけどな~。』
「馬鹿には付き合ってらんねえよ。あのな、あんまりクレクレって言ってたら嫌われるぞ?」
『幼馴染みで私が一番心を許してる啓輔だから言うんだよ? ねー、おねがーい♪』
「・・・しゃーねえな。まぁ、さっきのデュエルも俺に勝ったことだし、魔術師デッキの専売特許と
一緒にそのカードもくれてやるよ。あと、このダンボールの中から好きなだけカード使っていいぞ。」
『わーい、やったぁ♪』
同じデュエリストとして、気安くカードをちょうだいなんて言ったら駄目ってことは分かってる。
でも、昔からの長い付き合いの啓輔だからこそ、ワガママ言ってみたい時ってのもあるんだよね。
まさか本当にくれるとは思ってなかったけど、くれたからにはちゃんと使いこなしてみせないと。
「まぁ、お前にそのカードが使いこなせるとは思わないけどな。」
『そんなことより啓輔、このカードの中で
魔法使い族デッキに入れるオススメのカードってどれ?』
「おもいっきりスルーしやがっただろ、今・・・。まぁ、いいか。
そうだな、俺的にオススメのカードはやっぱり魔導騎士シリーズだな。」
『ソレって、さっき啓輔が召喚したやつ?』
「あぁ。魔導騎士は基本は魔法使い族なんだが、
戦士族としても機能するから魔法使い族デッキは
もちろんのこと、戦士族単体のデッキにも使えるんだ。能力値や効果も結構強いのが多いから、
デッキに入れれば十分強化できるぞ。」
『ふむふむ・・・』
モンスターで分けられてる区画の中から、適当にモンスターカードを取り出して1枚1枚を確認していく。
確かに啓輔の言う通り、レベル4なのに能力値が高いモンスターがいっぱいある。
レベル4以下のモンスターでもレア度はノーマルなのに、強力な効果を備えたモンスターも数が多い。
『啓輔も魔導騎士シリーズいっぱい入れてた?』
「俺はあんまり入れなかったな。そもそもお前みたいに
ブラックマジシャン・ガールの召喚を
優先してねぇから、コンボとかを考えて使える魔導騎士シリーズのカードを少し入れてたくらいか。
あとはレベル4以下の強力な効果モンスターを入れてカードを1枚でも多くドローしたり、魔法カードを
デッキから手札に加えられるようなモンスターを使ってたな。」
『ふーん。どれとどれを組み合わせたらコンボが出来るのかとかいまいちよく分かんないや・・・。』
「そりゃー、やり始めて1ヶ月そこそこの素人にいきなりから強力なコンボを組み込まれたら、俺とか
他の古参デュエリストがたまったもんじゃねぇよ。」
とりあえず、私は目に映る魔導騎士と名のつくモンスターを片っ端から取り出していくことにした。
私がカードを選んでいる最中、啓輔も自分のデッキを組み直す作業に取り掛かり、部屋の中は何とも
言えない静寂のまま、時間だけがドンドン過ぎていった。
『啓輔、これだけピックアップしたんだけど、これはいらないとか、これはいるって教えてくれない?』
「何でもかんでも人に頼ってちゃ、いつまで経っても成長できないぞ? それに、デッキなんてのは
人から教えられたまま組むんじゃなくて、自分の力で組んでこそのデッキだぞ?」
『・・・・だって、全然分かんないんだもん・・・。』
「・・・ったく。今回だけだからな?」
『うん、ありがとね♪』
その後、私と啓輔はいろいろ相談したりアドバイスを受けたりしながら、自分のデッキ強化に励んだ。
出来たデッキは私が今まで使ってきたデッキの中でも一番強いと言えるほどの仕上がりで、啓輔も
「いいデッキに仕上がったと思う」と一緒に喜んでくれた。
しばらくはコレを使って、いろいろなカードのことをより知った時に今度は自分で改良しようと思う。
デッキを組み上げて私が啓輔の家から帰る頃には既に日も暮れ、時刻は9時を回っていた。
to be continued・・・・・・
- 何を探しているのかちょっと気になったけど、そんなことはお構いなしに私は『啓輔のデッキを取り』、ホルダーからデッキを抜いてカードを確認することにした。 ここは「デッキ」よりも「ディスク」のほうがつながりがいい気がします -- (要亜希) 2008-11-23 17:08:21
最終更新:2008年11月22日 17:15