第03話:悪魔族デッキの恐怖
『啓輔ー、今日も帰りにショップ寄っていこうよ♪』
「悪ぃ、今日はちょっと担任に呼ばれてるんだ。だから、先に行っててくれ。」
『また何かやらかしたの?』
「・・・うるせえな。俺の都合なんだから、そうやっていちいち聞くのはやめろ。」
『はぁーい。じゃあ、先に行ってるから後でちゃんと来てね。』
「分かった、分かった。」
私は帰る用意を済ませると、自転車置き場へと向かった。
自転車置き場で籠に鞄を乗せてショップへ向かおうとすると、、何やら校舎裏から声が聞こえてきた。
聞いた感じだと、男の子たち数人が喧嘩しているようにも聞こえるけど・・・。
気になって様子を見にいってみると、そこには何人かの男子生徒が気の弱そうな1人の男の子の胸ぐらを
掴んで顔を殴ったり、倒れこんだ男の子を蹴ったりしていた。
よくよく見てみると、胸ぐらを掴んでいる不良と思われる男の子たちの手にはカードが握られている。
誰がどの角度からどう見たとしても、これはイジメとしか言いようがない光景だった。
カードを奪い取るなんて許せない、そう思った私は叫びながら飛び出した。
『ちょっと、アンタたち! 何してんのよッ!』
「あぁ? なんだ、テメェは?」
『なんだテメェは、じゃないでしょ! こんなとこでその子をいじめてカード取り上げてるじゃない!
デュエリストにとって魂とも言えるカードを取り上げるなんて、絶対に許さないんだから!!』
「んだと、テメェ! 関係ねぇのに口出ししてんじゃねぇぞ、オラァ!!」
不良たちは男の子の服を掴んでいた手を放すと、私の方にズカズカと詰め寄ってくる。
やばい、こんな奴らに殴られたりしたら私もタダじゃ済まないかも・・・・・。
すると、不良たちの後ろから1人の男が出てきて不良たちの制止に入った。
「おい、待て待て。相手は女だ。下手に手を出して怪我させるわけにもいかないだろ。」
「神崎さん・・・。でもこいつ俺たちのこと見てますよ?」
『神崎? もしかしてアンタって、3組の神埼 竜牙?』
神崎 竜牙、この学校の中での不良グループを裏で操ってると言われる男で、神崎財閥の御曹司。
父親共々、何もかもをお金で解決しようとする悪癖があり、今までいろんな悪事をしたにも関わらず、
退学処分を受けなかったたのはお金を使って事件を裏から動かしていたからとか、こいつに関する
悪い噂はこれでもかってくらいにたくさんある。
そんな奴が人目につかないようなとこで不良と一緒にいて、ましてや傷だらけの男の子まで一緒に
いるとなると、これはもうイジメとして判断したとしても絶対間違えてないと思う。
「君、確か小日向 茜さんだろ?」
『ど、どうして私の名前を・・・?』
「この学校の女の子はよく知ってるからね。それで小日向さん、いくら払えば見逃してくれるかな?」
『ふざけたこと言わないで。私はお金なんかで悪人を見逃すほど、落ちぶれちゃいないわ。』
「テメェ、神崎さんに向かってその口の聞き方はなんだ、おい!!」
「まぁまぁ、落ち着けよ、お前ら。じゃあ小日向さん。どうすれば許してくれるのかな?」
『どうせ学校に言ったところで、またうやむやにするのは目に見えてるからね。とりあえず、
そこの男の子をこっちへ連れてきて。彼と一緒に教室まで無事に帰れたら、見なかったことにするわ。
あと、その子から取り上げたカードもちゃんと返してね。』
見なかったことにするのはすごい気が引けるけど、相手には腕っ節の強そうな不良もいることだし、
下手に突っかかったら何をされるか分かったもんじゃない。
穏便に事を解決するにはこれが一番だし、どうせ学校に報告してもこの男の処分なんてないだろう。
「小日向さん、勘違いされちゃ困るな。このカードはこいつが譲ってくれたんだ。
だから、悪いけど返すわけにはいかないね。」
「そ、そんな・・・。僕は譲ってなんか・・・・」
『最近、学校内でカードを取られたって噂を耳にするけど、アンタがそうやっていろんな子から
カードを奪っていたのね?』
「人聞きが悪いな。よし、じゃあこうしよう。アンティでデュエルをするっていうのはどうだい?」
『アンティですって?』
「そう。デュエルモンスターズのことを知っているんだろう? だとしたら、君もデュエリストだ。
俺もこう見えてそれなりの腕前を持つデュエリストでね。アンティルールで俺はこのカードを賭ける。
君が賭けるものは・・・・そうだな。君が負けたら、退学届けを出すというのはどうかな?」
『な、なんですって!?』
相手はカード1枚を賭けるだけなのに、私が負けたら学校を辞めろだなんて条件が無茶過ぎる。
でも、ここで断って逃げようとしたら、アイツは絶対にこの子のカードを返さない。
デュエリストにとって自分の持つカードやデッキは、デュエリストの魂と言っても過言じゃない。
穏便に事を済ませたいというのが本音だけど、彼にカードを諦めろとも言えない。
『・・・・分かったわ。そのデュエル、受けて立つ。その代わり、卑怯な手は使わないと約束して。』
「そ、そんな!? 無茶だよ、アイツらはそうやって何人もの生徒を退学に追いやってきたんだ!」
「アッハッハ! その度胸は認めてあげるよ。だが、言ってしまった以上はもう逃げられない。
あとで後悔するなよ、小日向さん?」
『望むところよ! もう二度とこんなことができないように、コテンパンにしてあげるんだから!』
「神崎さん、コレを。」
仲間の1人が、どこからか取り出したデュエルディスクを神埼の手にセットする。
正直、勝てるかどうかなんてことは分からない。
でも、このデッキは昨日の夜に啓輔と一緒に組み上げた今までで最強とも言えるデッキ。
自分の持つカードを信じていれば、必ずカードは私に応えてくれるはず・・・!!
私も鞄からデュエルデュスクを出してデッキをセットしてから腕に装着すると、臨戦態勢に入った。
『あなた、名前は?』
「ぼ、僕は掛布 悠一郎・・・。クラスは2年4組だよ・・・。」
『2年って、私たちの1つ年上じゃない!? 先輩からカードを取り上げるなんて、いい度胸してるわ。
掛布さん、あなたのカードは絶対に取り戻してあげるから安心して!』
「で、でも・・・」
「お喋りの時間は終わりだよ。さぁ、デュエル開始だ!!」
『あんな奴なんかに、負けてたまるもんか…ッ!』
決闘(デュエル)!!!!
デュエル開始!
● 茜 :ライフ8000 手札5枚
● 竜牙:ライフ8000 手札5枚
「俺からいくとしよう、先攻ドロー! まずはこいつを発動する! フィールド魔法、魔界!」
神崎のデュエルディスクにカードがセットされた瞬間、フィールドが漆黒の闇で満たされる。
《魔法カード》
魔界
フィールド魔法
このカードは、他のフィールド魔法カードによって上書きされない。
フィールド上に存在するすべての悪魔族モンスターの攻撃力は500ポイントアップする。
自分フィールド上の悪魔族モンスターが戦闘で破壊されたターンのエンドフェイズ時、自分の手札から
モンスターカードを1枚コストとして墓地に送ることで、戦闘で破壊されたモンスターをフィールド上に
特殊召喚することができる。この効果は1ターンに1度しか使えない。
「さらに、俺は手札から
モンスターを召喚する。いでよ、ランサー・デビル!」
《モンスターカード》
ランサー・デビル
効果モンスター
☆4 / 闇属性 / 悪魔族 / 攻 2000 /守 100
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時に、このカードの攻撃力がその守備力を超えていれば、
超過分の数値だけ相手プレイヤーにダメージを与える。
ランサー・デビルの攻撃力はフィールド魔法「魔界」のカードにより、攻撃力が2500に引き上げられる。
ランサー・デビル
攻撃力2000 → 攻撃力2500にアップ(魔界のフィールド効果)
『いきなりから攻撃力2500のモンスターだなんて・・・!』
「まだまだこんなものじゃ終わらないさ。続けて俺は手札から魔法カードを発動! 魔法カード、速攻!」
『速攻!?』
《魔法カード》
速攻
通常魔法
このカードは先攻1ターン目でも発動できる。
自分フィールド上のモンスターを1体選択する。
選択されたモンスターはこのターン、相手プレイヤーに直接攻撃をしなければならない。
いかなる理由で召喚・特殊召喚・反転召喚されたモンスターもこのターンに攻撃しなければならない。
「本来なら先攻1ターン目は攻撃できないが、俺はこのターンに攻撃が可能となる。」
『くっ・・・!!』
「いくぞ、ランサー・デビルでダイレクトアタックだ!!」
大きな槍を持ったランサー・デビルが、容赦なく私に襲い掛かる。
身を守ろうにも私のターンはまだ回ってきてないから、当然守るカードなど何もない。
「スピア・ブレイク!!」
『きゃああぁぁぁ!!!』
「ハハハハハッ! 君が俺に勝てる確率なんて、ないも同然なんだよ。
今すぐ諦めて大人しく退学届けを担任に渡しにいくがいい!!」
『ふざけんじゃないわよッ! アンタなんかに負けるわけにはいかない! 勝負はまだ始まったばっかり!
ちょっとダメージを与えたくらいでいい気になってんじゃないわ!』
「ほぉ、威勢がいいね。じゃあ、君の腕前を見せてもらおうか。俺はカードを1枚セット、ターンを終了する。」
● 茜 :ライフ5500 手札5枚
● 竜牙:ライフ8000 手札2枚 モンスター1枚 リバース1枚 フィールド魔法1枚
『私のターン、ドロー!!』
いきなりから2500のダメージを与えられたのは予想外だった。
相手は悪魔族デッキと見て間違いないだろうけど、あのフィールド魔法「魔界」がある限り、私のモンスターは
迂闊に攻撃できない・・・・。
『私は手札から魔法カード、打ち出の小槌を発動! 手札を任意の枚数デッキに戻してシャッフルし、
デッキに戻した枚数分だけカードをドローする!』
《魔法カード》
打ち出の小槌
通常魔法
自分の手札を任意の枚数選択し、デッキに加えてシャッフルする。
その後、デッキに加えた枚数分のカードをドローする。
「どうした、いきなりから手札事故か?」
『必要なカードを呼び込むための戦略よ。』
「なら、今使った打ち出の小槌の効果で必要な手札は呼び込めたか?」
『見せてあげるわ。手札より魔導騎士 ディートリッヒを召喚!』
《モンスターカード》
魔導騎士 ディートリッヒ
効果モンスター
☆4 / 光属性 /
魔法使い族 / 攻 1800 / 守 1300
このカードの種族は「戦士族」としても扱う。
このカードが戦闘以外の方法によってフィールド上から墓地に送られた時、このカードを手札に戻す。
自分フィールド上にこのカードが表側表示で存在する時、次の効果から1つを選択して発動できる。
(この効果は1ターンに1度しか発動できず、重複して発動することもできない。)
この効果は相手ターンでも発動することができる。
● 500ライフポイントを払う。このカードの攻撃力をバトルフェイズ終了時まで500ポイントアップする。
● 500ライフを払う。このカードの守備力をバトルフェイズ終了時まで500ポイントアップする。
● 500ライフを払う。このカードの表示形式を変更する。
「おっと、この瞬間に俺のリバースカードが発動するぜ! 罠カード、悪魔の写し鏡!」
《罠カード》
悪魔の写し鏡(デーモンズ・ミラー)
通常罠
相手プレイヤーがモンスターを召喚・特殊召喚した時に800ライフポイントを払うことで発動できる。
相手プレイヤーが召喚・特殊召喚したモンスターと同じ攻撃力・守備力・効果を持つ悪魔族トークンを
1体、自分フィールド上に特殊召喚する。
「このカードの効果で、俺のモンスターは2体に増える。さらに、魔界のフィールド魔法の効果により、
魔導騎士・ディートリッヒトークンは攻撃力が500ポイントアップする。」
魔導騎士 ディートリッヒ(悪魔族トークン)
攻撃力1800 → 攻撃力2300にアップ(魔界のフィールド効果)
『そ、そんな・・・。』
「これで、君の攻撃は俺には通らない。まぁ、さっき入れ替えたその手札に俺への直接攻撃を可能にする
カードがあるのなら話は別だが、果たしてそんなカードがあるのかな?」
こいつ、強すぎて攻め込む隙がまったくない・・・!
でも、何とかできないわけじゃない。
まだゲームは始まったばかり、諦めるのはまだ早い・・・ッ!
『ならば私は手札から魔法カードを発動! 魔法カード、師よりの激励!』
《魔法カード》
師よりの激励
通常魔法
このカードは自分のメインフェイズ1でしか発動できない。
自分フィールド上のすべての魔法使い族モンスターは攻撃力が800ポイントアップする。
このカードを発動したターンのバトルフェイズ終了時、このカードの効果が適用されたモンスターは
すべて守備表示になる。
『これで私のディートリッヒの攻撃力は800ポイントアップ、さらにディートリッヒの効果を発動!
500ライフポイントを支払うことでディートリッヒの攻撃力を500ポイント引き上げる!』
魔導騎士 ディートリッヒ
攻撃力1800 → 攻撃力3100にアップ(師よりの激励とディートリッヒの効果)
「ほぉ。」
『ディートリッヒで、ランサー・デビルに攻撃する! 魔導剣 エッケザックス!!』
ディートリッヒの大剣による攻撃が、ランサー・デビルの体を両断して吹き飛ばす。
私が受けた2500ダメージには及ばないけど、バトルフェイズ終了と同時にディートリッヒは
守備表示になるから、次に上級モンスターを召喚されても大きなダメージを受けることはない。
「なかなかやるじゃないか。まさかさっきの手札入れ替えでそんなカードを引いていたとは。」
『言ったでしょ、勝負はまだ始まったばかりだって。私はカードを2枚セットして、ターンを終了するわ。
バトルフェイズが終了したことで、師よりの激励の効果を受けたディートリッヒは守備表示になる。』
「じゃあ、君のエンドフェイズに俺は手札からモンスターを1体墓地へ送って、さっき君に破壊されて
墓地へ落とされたランサー・デビルをフィールド上に特殊召喚する。」
フィールド魔法「魔界」の効果で神崎が手札を捨てたことで、ランサー・デビルが特殊召喚される。
ランサー・デビルを特殊召喚したってことは、上級モンスターの召喚を狙っている可能性が高い。
でも、ここで負けたら掛布君のカードも取り戻せないし、私だってこの学校を去らなきゃいけなくなる。
ソレは絶対に避けたい・・・、その思いは重圧になるばかりか、逆にちょうど良い緊張感を与えてくれる。
どんな状況でも諦めさえしなかったら、きっとデッキは私の思いに応えてくれるはずよ…ッ!!
● 茜 :ライフ5000 手札1枚 モンスター1枚 リバース2枚
● 竜牙:ライフ6600 手札1枚 モンスター2枚 フィールド魔法1枚
to be continued・・・・・・
最終更新:2008年11月22日 17:15