第12話:敗北の意味するもの
(前話での最終局面)
● 茜 :ライフ4300 手札2枚 モンスター1体
● 啓輔:ライフ7000 手札6枚 モンスター1体
啓輔が操るモンスター
ダークロード・ドラゴン ヴァルファーレ 攻撃力6200
茜が操るモンスター
上級黒魔導師(マスター・オブ・ブラックマジシャン) 攻撃力5800
『わ、私のターンが来ないって、どーゆーことよ・・・?』
「それは俺の手を見てれば分かるさ。デュエル続行だ。俺は手札から、生命吸収を発動する。」
《魔法カード》
生命吸収(ライフドレイン)
通常魔法 ※ 制限カード
相手フィールド上に存在するモンスター1体を選択して破壊する。
『私はライフを1000ポイント支払って、生命吸収を無効化するわ!』
● 茜:ライフ4300 → 3300にダウン。
「続けて俺は装備魔法、異次元の鎖を発動。」
《魔法カード》
異次元の鎖
装備魔法
このカードを装備したモンスターは、ゲームから除外されているカード1枚につき
500ポイント攻撃力がアップする。
「このカードの効果で、ヴァルファーレの攻撃力は3500ポイントアップする。」
ダークロード・ドラゴン ヴァルファーレ
攻撃力6200 → 攻撃力9700にアップ(異次元の鎖の効果適用)
異次元の鎖の効果で、ヴァルファーレの攻撃力は1万弱にまで引き上げられる。
これ以上、ヴァルファーレの攻撃力をアップさせるわけにはいかない・・・!!
『なら、私も上級黒魔導師の効果発動! ライフを1000ポイント払って無効化する!』
● 茜:ライフ3300 → 2300にダウン。
ダークロード・ドラゴン ヴァルファーレ
攻撃力9700 → 攻撃力6200にダウン
「さらに手札より魔法カード、武装再生を発動。茜が無効化した異次元の鎖を、
ヴァルファーレに装備する。」
《魔法カード》
武装再生
通常魔法
自分または相手の墓地にある装備魔法カードを、自分フィールド上に
表側表示で存在するモンスター1体に装備する。
啓輔が自分の墓地から異次元の鎖を持ってきて、ヴァルファーレに装備する。
さっきからやけに魔法カード使ったり、異次元の鎖を使い回したりしてるけど、
そこまでしてヴァルファーレを破壊されたくないっていうの?
ダークロード・ドラゴン ヴァルファーレ
攻撃力6200 → 攻撃力9700にアップ(異次元の鎖の効果適用)
『別に強化されてもこのターンにもうバトルフェイズは行えないからいいんだけど、
それでも次のターンで私がヴァルファーレを倒せる確率は大幅に下がる。だから、
悪いけど、武装再生のカードもライフを支払って無効化するわ。』
● 茜:ライフ2300 → 1300にダウン
これで啓輔の手札は、残り3枚。
何とか次のターンに持ち越すことができれば、勝因はある。
私の手札にある魔術師の書庫は、デッキから好きな魔法カード1枚を手札に加えることができる。
これを使って墓荒らしのカードを引っ張ってくれば、啓輔が使った武装再生を再利用して、
異次元の鎖を上級黒魔導師に使って攻撃力を底上げできる。
啓輔の墓地にはもう
モンスターもいないから、ヴァルファーレを蘇生召喚することは不可能。
私のターンはもう来ないとか言ってたけど、やっぱり勝利の女神は私に微笑むのよ・・・!
「俺は手札から魔法カード、死に際の選択を発動するぜ。」
《魔法カード》
死に際の選択
通常魔法
相手の手札を確認し、その中からカードを1枚選択して墓地に捨てる。
その後、自分のデッキからモンスターカード1枚を選択して墓地へ送る。
『し、死に際の選択!?』
「こいつの効果で、俺はお前の手札から1枚を選んで墓地へ捨てることができる。さぁ、手札を見せな。」
今手札を知られてしまったら、私が次のターンで何をしようとしているのかバレてしまう危険性がある。
いくら昨日デッキをいじったからとは言っても啓輔は私のデッキを知り尽くしてるし、魔術師の書庫が
手札にあることに気付けば当然、魔術師の書庫を真っ先に捨てる対象に選んでくるに違いない・・・。
『駄目駄目!! 私はライフを払って、死に際の選択を無効化するんだから!』
今ここで、魔術師の書庫を失うわけにはいかない。
啓輔が魔術師の書庫を選ぶなんて確証はないけれど、選ぶ可能性が高いことは確かなはず。
残りライフが300になるのは痛いけど、次のターンに賭ければ・・・・。
● 茜:ライフ1300 → 300にダウン
もう私のライフを支払って上級黒魔導師の効果を発動することはできなくなったけど、
ある程度啓輔の動きを抑えることはできた・・・・はず。
「フフフ・・・アハハハハハッ!!」
『な、何・・・?』
私が最後のライフを支払って死に際の選択を無効化し、安心していた時。
啓輔がいきなりお腹を抱えてヒィヒィと笑い出した。
あれ、私何かおかしなことしたっけ・・・・?
『な、なんで笑ってんのよ!!』
「いや、すまんすまん。お前が俺のカードを無効化することに必死になってる様子がおかしくてな。
あー、おかしい。」
『なんでおかしいのよ!』
「だってお前、残ってるこの2枚の手札にお前を倒す手段が残されてるって考えなかったのか?」
『え・・・・。』
「さっきから俺が手札を消費しまくってたのは、全部計画通りだったってことだよ。
切り札として使おうにも、上級黒魔導師の効果で無効化されたら使い物にならねぇからな。
まぁ、さっき使った魔法カードがどれか1つでも無効化されなかったら俺としてはおいしいから、
別にどっちでも良かったわけなんだけど。」
やられてしまった。
私は啓輔の作戦に見事ハマってしまい、自分のライフを消費し尽くしてしまったのだ・・・。
啓輔が残してるあの2枚の手札の中にこのターンで勝負を決めることのできるカードがあるとしたら・・・。
目の前のことに執着して、私はそこまでのことを考えれていなかった・・・。
『ってことは、その手札の中に・・・』
「あぁ、この中に俺がこのターンで勝つための手段が残っているわけさ。
いくぜ! 俺は手札から魔法カード、ストライク・バックを発動!!」
『ス、ストライク・バック!?』
《魔法カード》
ストライク・バック
通常魔法
このカードはメインフェイズ2でのみ発動することができる。
このターン、自分フィールド上のモンスターはすべてもう1度バトルフェイズを行う。
エンドフェイズ時、このカードの効果が適用されたモンスターをすべて破壊する。
「このカードの効果によって、俺のモンスターはもう1度バトルフェイズを行うことになる!」
『クッ、そんなカードがあったなんて・・・!?』
「勝利の女神は、やっぱり茜には微笑まなかったな。いくぞ、ヴァルファーレの攻撃!!」
ヴァルファーレの口が開き、そこに漆黒の波動が集約する。
くそぅ、結構いいとこまで頑張ったと思ってたのに、最後の最後でミスしちゃうなんて・・・。
『あー、もうっ! くそおぉぉぉ!!』
「ダーク・グラヴィティ・フォースっ!!!」
私が悔しさを噛み締める間もなく、上級黒魔導師はヴァルファーレの前に散った。
啓輔とのデュエルではいつも私が勝っていたのに、今日はいつもと勝手が違ったみたい。
勝利の女神は、私に微笑んではくれなかった。
結構いいとこまでいったのになぁー・・・・。
「どんまい、茜。まぁ、たまには負けるのも悪くないもんだろ?」
そう言いながら啓輔はデュエルディスクを畳み、私の方へと近寄ってきた。
デュエルを見ていた男の子たちも寄ってきて、私に励ましの言葉をくれる。
『むぅー・・・。負けたのはやっぱり悔しいなー・・・。』
「まぁ、そう言うな。負けることで学べることだってあるんだから、悪いもんじゃないぞ。
お前は俺とのデュエルにしてもそうだけど、勝つことが多すぎるんだ。俺からすれば
ソレは羨ましいことだけど、お前のためにはならないとも思う。だから、たまには負けて
そこからいろいろと学ぶことも覚えろ。」
確かに、勝ってばっかりだと自分のデッキの弱点も分かんないから、負けるのもいいかも知れない。
でも、全力でデュエルしたのに負けたとなると話は別で、良い気はしない。
「茜ちゃんも凄かったよ。いきなりから
ブラックマジシャン・ガール出してたじゃん!」
『そ、そう・・・?』
「普通は自分の好きなカードを召喚したくても、所詮は夢物語って感じでなかなか出せないもんさ。
それを簡単にやってのけるんだから、茜のデュエリストセンスは大したもんだと思うぜ、俺も。」
そう言われると、悪い気はしない・・・・。
まぁ、私って意外に単純だからどんだけ落ち込んでたとしても、ちょっと褒められたりしたら
まるで落ち込んでたのが嘘みたいな感じで立ち直るのも早いんだよね。
『よし。落ち込んでても始まらないよね。今日のとこは、啓輔に勝ちを譲ってあげる。』
「素直じゃねぇのな、お前・・・。」
「啓輔、次は俺たちの番だぜ!」
「おっし、やるか。」
啓輔は私とのデュエル後も他の男の子たちとデュエルをしていたけど、誰も啓輔には勝てなかった。
さっき新しく組んだと言われる啓輔のデッキは、恐らく私たちの間じゃ今のとこ最強かも知れない。
私が何回挑んだとしても、今のままじゃ勝てないんじゃないだろうか、とも思うくらい強い。
あのバーストモンスター、かなり強いからいいなぁ・・・・・。
「おーし、そろそろ昼休み終わるから教室戻るかー。」
啓輔の呼びかけで、私たちは教室に戻ることになった。
男の子たちは冗談を言い合いながら先に階段を降りていってしまい、
啓輔は私と一緒に教室へ戻る感じになった。
『ねぇねぇ、啓輔。』
「ん?」
『なんで急にデッキ組み直そうと思ったの? デュエルマシーンと戦った時のデッキは?』
「あのデッキは解体しちゃいないさ。ただ、今は使ってないだけだよ。」
『なんで使わなくなったの? 前の聖杯騎士とか言うカードも強かったじゃん。』
「いろいろあるんだよ。お前には関係ないだろうが。そもそも、俺がどんなデッキを使おうと
俺の勝手ってやつだろ。」
『別にそんな言い方しなくても・・・・。』
いつもとはちょっと口調の違う啓輔の言い方に、私は戸惑った。
もしかして啓輔、何か悩んだり隠したりしてるのかな・・・・?
悩み事とかあるんだったら、私じゃ何もできないかも知れないけど相談してくれればいいのに・・・。
「おい、茜。」
『な、何?』
「今日の放課後、ちょっと付き合えるか?」
『え・・・? う、うん、別にいいけど・・・。』
「じゃあ、放課後に屋上で待っててくれ。」
『う、うん・・・分かった・・・。』
啓輔は私にそう言うと、振り返りもせずに教室の中へと入っていった。
あんなに真面目な雰囲気の啓輔、初めて見たな・・・。
しかも、若干イラッとしてた・・・・かな?
『啓輔、どうしちゃったんだろ・・・。もしかして、好きな人ができたとか・・・!?』
「こら、小日向っ! もうすぐ昼休み終わるんだからそんなトコで突っ立ってないで、
サッサと教室に入れ!!」
『あわわ!? は、はぁい・・・。』
先生に怒鳴りつけられことで、啓輔が何を言いたかったのか考える暇もなく教室へと入ることにした。
to be continued・・・・・・
- (要 亜希さんへ)まだ墓荒らしが登場してないこともあって墓荒らしのカード説明が出来上がってないんですけど、実は本編での墓荒らしは魔法カードなんですよw 罠カードだと少々使いにくいこともあって、アニメで魔法カードとして発動したこともあったので、魔法カードに変更したというわけなんです^^; 原作に登場するカードでも、本編で登場する場合は仕様が異なる場合があるのでご了承下さい >< -- (エレンディア) 2008-11-25 12:22:28
最終更新:2008年11月26日 22:38