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講義の開始を知らせる鐘が鳴ると、扉の前で待ち構えていたかのように、すぐさま教官が教室に入ってきた。
「では、講義を始める。今回のテーマはターゲットだ。といっても、基本的な部分は既に幾つかスキルを使ってみて把握しているだろうから、少し実戦に近いところから入るぞ」
教官はいつものポジションで腕を組む。
「この講義を受けているということは、既に狼や兎とは戦ったことがあるな?奴らの攻撃パターンについて何か気づいたことはないか?」
そう言われてみると、一人を集中的に攻撃する傾向があったような。
「そうだ。奴らは賢いので敵の中で最も弱い者から順に攻撃しようとする。各個撃破だな。そうすることによって戦果は戦力差よりも大きくなる。具体的には体力と防御力の低い者を優先的に攻撃する」
群れで獲物を狙う肉食動物の戦術だ。・・・・・・兎は草食ではなかったか。
「さて、こんな奴らが戦う相手の時、金属鎧が使えず体力も防御力も低くなりがちな術式使いはどうすればいいか。簡単なのは後衛に下がること。相手の攻撃の届かないところにいればターゲットにはならない。しかし、敵が飛び道具を使用する場合、これだけでは不十分だ。そこで重要なのが気配を操作することだ。歩く度にじゃらじゃらとやかましい鎧を着れば気配は上がるし、黒塗りの目立たないコートを着れば気配は下がる。それから、手甲スキルのプロヴォークや弓スキルのステレス、カモフラージュなど気配を操作できるスキルもある。気配が高い者は敵のターゲットになりやすく、低い者はなりにくい。重装備の者が気配を上げて敵の注意を引き付ければ、軽装の者には攻撃がいかないってわけだ。これは各個撃破戦術をとる敵にも有効だ。但し、そういった賢い敵の注意を引き付けるにはそれなりに高い気配が必要だがな。戦う前に食べると臭う食事を取るって手もあるな」
そういうと教官は豪快に笑った。
「前衛が後衛を護る方法はもう一つある。剣スキルのディフレクトや盾スキルのプロテクトを使用し、後衛に行くはずの攻撃を、自ら間に割って入り受け止めるという方法だ。但し、これは後衛に対する攻撃を前衛が護る方法で、横に並んでたり、位置が逆だとかばえないからな。それに、一体の敵をターゲットにした攻撃しか防げないぞ。全体攻撃を全部自分が引き受けますってのは無理があるからな」
また豪快に笑う教官。
「ついでに、攻撃をそらす他の手段も紹介しておくか。どれも楽器の複合スキルになるが、まずはウィンドバリアとヴェイパートレイル。これらのスキルは敵の遠隔攻撃を風圧の障壁によってターゲットをそらすことで無効化してしまう効果がある。但し、近接攻撃や純粋な魔法攻撃には効果がない。矢とかトゲとかそんなもの専用だな。そして、無効化できるのは一回限りだ」
いつも通り、弓を射るポーズをとる教官。
「次にリフレクトとフォトケミカルスモッグ。こっちは敵の魔法攻撃を反射する。おっと、訂正。敵のも味方のも自分のも、攻撃も回復もそれ以外の魔法もだ。全ての魔法を反射して、撃ってきた相手に返す。自分で自分に撃った場合はどこかに飛んで行ってしまうがな。なお、魔法ってのは熱、冷気、光、闇の4属性だけだ。精神波--要するに歌だな--は反射できない。物理属性が混じった攻撃も反射できない。そして、こっちも反射できるのは一回限りだ」
ここで教官は時計を見ると、咳払いをした。
「ウィンドバリアのせいで話が横道にそれてしまった。敵のターゲットの仕方に話を戻すぞ。先ほどの各個撃破戦術をする敵、まあ言ってみれば、イジメが好きな敵の他にも、自己中心的な敵や、異性ばかり狙う敵なんてのもいる」
人間と戦うことになればそんな相手もいそうだ。
「自己中な敵というのは、自分の攻撃が最も効きそうな相手を選んで攻撃する。まあ、大抵は防御力の低い相手を狙うからイジメタイプとかぶるんだが、たとえあとちょっとで倒せそうな相手がいても、それを無視して別の相手を攻撃することがある。それから、異性ばかりを狙う敵ってのは、デモノイドなんかにたまにいるんだが、相手に異性がいると優先して狙ってくる。更にその中でも魅力が高い者ほど狙われやすい。まあ、同性が二人いて自分が狙われなくてもがっかりすることはないぞ。むしろ喜べ」
素直に喜べない気がする。
「なお、虫や植物のようなのんびり生きてる連中は、ターゲットもなんとなくで選んでる。こういう連中は気配の効果もよくでるし、危険度は少ないな。しかし、中には賢い奴もいるかもしれないので油断は禁物だ。よし、今回はここまで・・・・・・おっと、レベル4のボスについて触れてなかったな。とはいえ、今回はボス戦そのものよりもそこへ至る過程で何をして、何を手に入れたかの方が重要なので、戦術については特に言うことはないな。よし、解散」