単位:2
講義の開始を知らせる鐘が鳴って少しすると、眼鏡の女性講師が現れた。
「ええと、それでは講義を始めます。今日は……これでしたっけ」
こちらに尋ねられても困るのですが。
「今日は装備品の製造についてです。装備品はちゃんと整えていないと戦うこともできないですが、使っているとどんどん壊れていってしまいます。しかし、その度にお店で新品を購入していたら出費が大変です。そこで、自分で作っちゃう方法と、持っている物を強化してもっと良いものにする方法についてです。」
黒板に"自作"と書き込み、眼鏡を持ち上げて、手に持った本に目を落とす。
「まずは、新品を自分で作っちゃう方法です。といっても、作り方さえ知っていれば、材料を揃えて製造するだけなのですが……。ええと、武器や防具それぞれについて傾向のようなものがあるので、それを説明しておきましょうか」
そう言って先生は黒板にずらずらとリストを書き始める。
| 剣 | 金属+材木+革(鍛冶) |
| 槌 | 金属+材木+糸(鍛冶) |
| 手甲 | 金属+布(鍛冶) |
| 槍 | 金属+材木+布(木工) |
| 弓 | 材木+糸+金属(木工) |
| 楽器 | いろいろ |
| 杖 | 材木+宝石(宝飾) |
| 盾 | 材木+金属(鍛冶) |
「武器についてはこんなところですか。あ、全てのパターンがこれに当てはまる訳ではないですよ?木槌に金属はいらないですし、金属を使わないのなら鍛冶でなく木工ですし、布でできた武器もない訳ではないですから、服飾で武器ができることもあります。金属が大部分なら鍛冶、材木なら木工、布なら服飾、宝石を扱うなら宝飾という傾向があります。楽器は管楽器、弦楽器、打楽器といろいろなのでいろいろです。術具も杖以外はいろいろですね」
いろいろってなんだろう。いろいろって……
「それから、防具についてもいろいろなので説明しづらいのですが……。ええと、頭の防具には"型紙:頭"をほぼ間違いなく使います。胴なら"型紙:胴"、腰なら"型紙:腰"ですね。アクセサリーは特に型紙は使いませんが、ほとんどが宝飾になります。あ、型紙は雑貨屋さんで売ってますので購入してください。モンスターが型紙を持って歩いてるところはあんまり見たことないので」
全く見たことがない。
「そうして作った装備品ですが、たまにとっても良い作品ができることがあります。ハイクオリティ品なんて呼んだりするんですが、良い作品というものは得てして、作ろうと思っていた物と全く違ってたりするものですが、大抵の場合、1ランク上の優れたものになります。例えば、ショートボウを作ろうと思っていたのに、調子が良くて大きく作りすぎてロングボウになっちゃったり……」
何か聞こえは悪いが、確かにランクは上がっている。
「あ、こうした物は簡単にはできないので、材料費が一緒だからといって、普通に作れる物と同じ値段で売ってはダメですよ?物の値段を材料で語る人は自分で物を作ったことがない人です。物の値段はそれに対する作った人の愛の値段で決まるのです」
また随分と曖昧な価格設定である。
「さて次に強化の方法です。強化はある品物を補強したり、鍍金《めっき》したりしてより高いランクの品物へと生まれ変わらせる方法です。こうしてできた物はアップグレード品なんてよんだりします。最も簡単なのは両手剣で、例えばカッパーソードを銅塊で補強してカッパーグレートソードにすることができます。但し、このときに使うカッパーソードが壊れかけだと、できたカッパーグレートソードも壊れかけになってしまうので注意してください。新品のアップグレード品を作ろうと思ったら、材料も新品が必要です」
ここで先生は再び黒板にリストを書く。
| 炎 | 赤金/ルビー |
| 冷気 | 青金/サファイア |
| 光 | 銀/クリスタル |
| 闇 | 鉛/ジェダイト |
「ええと、強化が最も必要とされるのは、武器をオルタナティヴインスタンスとして強化したい場合です。あー、オルタナティヴインスタンスというのは術式を行使する為に必要な、その属性エネルギーを具現化する際に象徴となる代替品としての"何か"のことですね。要するに術具っぽくない術具のことです。その象徴となる代表的なものが"色"です。炎なら赤という具合ですね」
色さえ合っていれば良いのなら、剣を赤く塗ればいいのだろうか。
「それではダメです。何故なら、一般的な金属は魔力の具現化を阻害してしまうからです。しかし、その中でも銀、金、鉛は特殊で魔力を阻害しません。そこで、銀で鍍金したり、金の合金で強化したりする訳です。また、宝石には魔力を増幅する効果があるので、それを埋め込んだりして使います。ですので、オルタナティヴインスタンスとして使える複合武器はこうした素材を使ったアップグレード品が多数あります。アップグレード品のハイクオリティ品や、ハイクオリティ品のアップグレード品、そのまたハイクオリティ品といった高級品もありますので」
その辺りの物は本当に高級な品物になりそうだ。
「長くなってしまったので、今日はこの辺りまでにしておきましょう」