第10節:めでたしめでたしのその先で



洋上で繰り広げられたあの激しい戦いから、しばしの時が経った頃。
相も変わらず賑やかで楽しいカルデアライフを満喫している立香はある日、マシュと共に廊下を歩いていた。

「先輩。今日も皆さん、心から楽しそうですね」
「だなぁ。これだからカルデア勤めはやめられない、ってね」

英霊達の楽しそうな声を聞きながら、立香は鼻歌交じりに歩み続ける。



「ティーチ様、どうでしょうかこの姿は。あなた様から伺った艦隊なんとやらのお話を参考にさせていただいたのですが……」
「…………ひっ」
「ひ?」
「ヒヤッホォォォウ! 最高だぜぇぇぇぇ!!」


「おーい、アンデルセン先生! また新作が出来たんだァ! 読んで感想をくれねェか!?」
「やかましいぞご老人! 俺は今、〆切に迫られ絶賛修羅場中なのだ! 急ぎならばあのメロン峠にでも頼み込め!」
「修羅場中!? 顔色から察するに、さては全然寝てないな!? だったら手伝うぜ! 挿絵が欲しけりゃ即興で作るし!」
「断る! さすがに今回ばかりは画風が合わん! どうしても手伝うというのなら、他の作業を頼む!」


「……〝天翔る王の御座(ヴィマーナ)〟と言ったか。その飛行能力、一度見てみたいものだが」
「不敬。だが赦す! ならばいつか共にレイシフトした際にでも、この我自らその力を見せてくれよう! 喜ぶがいい!」
「……それは楽しみだ」
「その代わり、貴様の爆撃の腕前も見せてみよ! 仮にウルクの民の如き強さを誇るならば、我と共に飛ぶことも赦そう!」


「うげっ! 沖田くん!? それに信長まで……どういてカルデアにおるがじゃ!? まさか〝あのときの続き〟を……!?」
「あ、あなたは……っ! ってぇ、何を勘違いしてるんですか、違いますよ! 召喚されたのは人理を護るためです! ええ、そうですとも!」
「はっはっはっは! いやぁ、まさか帝都で血なまぐさい戦いを繰り広げた者共がこうして集うとはのう! ま、是非もないよネ!」
「こいつ猫かぶりすぎ。ウケる」


「いやー、いつ見ても小太郎さんの忍術には驚かされるッスねぇ。お師匠さんも生で見たらビビってそうッス」
「などと言いながら、いつの間にか僕の忍具をかすめ取っているのは……どういう了見なのですか?」
「えっ? あ……あー、なんていうか、ちょっと悔しかったんで……ついつい張り合っちゃいました。すんません」
「……僕もまだまだ努力せねばなりませんね」



そしていよいよ目的地である中央室に辿り着いた立香は、迷わず室内へと歩を進める。

「時間通りに来てくれて助かるよ、立香君、マシュ。早速だが、再び特異点が観測された。
 だが今回は非常に小規模だ。だからちょっとした残党狩り程度に考えておいてくれたまえ」
「分かった。でも、油断はしないよう気をつけないとな」
「そうですね、先輩。ではわたしは所定の位置につきますので、先輩〝達〟も!」
「おう!」

マシュの言葉に従い、立香は準備を始める。
そしてコフィンの扉を開き、中に入る……前に、一足先に中央室で待っていた今回の相棒へと視線を向けると、万感の思いを込めて言った。


「さぁて、お互い気張っていこうぜ……元親!」
「ああ、マスター! これよりボクは、キミを護る為の矛だ!」


このやりとりの後、遂にコフィンに入って準備を終えた二人は、同時に「いつでも行ける!」とレイシフトを促す。
それを聞いたダ・ヴィンチが『よし。ならばこれより作戦を開始する!』と返答すると、二人はまだ見ぬ特異点へと旅立つのであった。


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最終更新:2017年07月09日 01:05