That Is How I Roll!

「なっ……!」
「コスモ時空か何かですか、ここは!?」

 確かに心臓を目掛けて、渾身の力で突き刺した。
 穴が開いている。
 だが、しかし……今、目のまで起こっている光景は…… 


「俺は……死ねん……ッ! 必ず……ッ! 聖杯は手に入れる……ッ!」


 セイバーが立っている。
 立って二人を睨みつけている。

「戦闘続行スキルですか……」
「殺す……ッ! 殺してでも守る……ッ!!」
「こちらの話を全く聞いていない……?」
「人間をォ……守るためならァ……俺は人であることを『捨てる』……ッ!」

 血走った眼。
 身体はズタボロなのにその眼に宿る意志。
 まるで絶対に折れない一振りの日本刀のような殺気。

「………■■■■■■■■■ーーーーッ!!!!!!」

 まるで狂戦士のような咆哮。
 それとともに体制を低く取り、突撃。
 その姿、まるで一匹の獣。

「■■■■ーーーーッ!!!」
「ッッッ!?」

 舞う鮮血。
 綱の刀が一閃していた。
 カメハメハの眼を―――容赦なく斬った。

「うああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 ―――赤のち闇。

 両目が開かない。
 光が全く射さない。
 完全に視覚を奪われた。

「貴様!!」
「■■■■ーーーーッ!!!」

 聖剣をかいくぐり、距離を取る。
 ヒロインXの直感では完全に予測できない動き。
 相手がセイバーだったならば感じ取れる可能性は高い。
 だが……。

「■■■■■■■■!!!」
「くっ……!」

 相手はセイバーという枠をすでに外れていた。
 先程までは少なからずも型があった。
 しかし、今はどうだ。
 全く読めない。
 防戦一方の状況だ。

 後ろには地に伏せたカメハメハもいる。
 まだ息はあるが、戦闘続行は不可能にみえる。
 傷の具合が分からない以上、ここにいるのは危険。
 すぐに撤退させるべきだが、今の状況は不可能に近い。

(せめて、もう一人いれば……!)

「オレを呼んだか!!!」
「!?」 
「(呼んでませんが)その声は……!」
「ゴールデン・雷キィィィック!!!」

 男の右脚が雷と共に二人の間に飛んできた。

「ゴールデンボーイ、何をしに?」
「馬鹿野郎をぶん殴りに来た……! アンタ、今は下がりな……!」
「しかし……」
「……今はカメ公のそばにいてやりな」
「……ッ、わかりました……」
「? アンタにしちゃ随分と聞き分けがいいじゃん?
 というより、つか……いつここに来たんだ、『ナイト・オブ・ゴールド』?」
「え、最初からいましたよ?」
「? そうかい」
「?」

 オーダーチェンジ。
 ……というわけではない。
 第一、藤丸は戦闘服を着こんでいなかった。

「相手はセイバーなのか……?」
『この霊基パターン……セイバーとバーサーカーとアヴェンジャーが混じり合っています!?』
「無茶苦茶だ……どうなってんだ、あのサーヴァント……!」
『(先輩のさっきまでも割と無茶苦茶でしたけども……)』

 血濡れのカメハメハのそばの藤丸が治療している。
 外面は落ち着いているように見える。
 が、きっと内心は焦りまくってるいるだろう。

「瞼の上が斬れている……大丈夫、眼球には当たっていない。
 ナイチンゲールさんに応急処置の方法は教わっているけども。
 ……サーヴァントに適用できるかわからない……」
「藤丸君、アサシンとあの声のデカイライダーは……?」
「色々あって、ライダーは討たれた……で、碓井さんはキャスター……いや、軍服のアサシンと交戦している」
「アサシン? キャスターではなかったのですか?」
「まあそうだったらしい……今はそんなことよりもまずは止血しないと……!」

 応急手当は手早く行う。
 幸い急所は外れているので致命傷とはならないが。
 何か治療できるような道具があれば……

「くっ、アヴァロンさえあれば……」
「なんで持ってこなかったの!?」
「……必要ないと思って……」
「Xさん……そこにいるんですか……?」
「……ここにいます」 

 手を握る。
 冷たくなったような感覚が伝わった。

「Xさんは無事ですが……」
「はい……」
「良かった……」
「カメちゃん、今は喋らないで……」

 決して『良くなんてない』そんなことは言えない。
 今は治療に専念させたい。
 切にそう思った。

 そして、そこから少し離れた地点。
 二人の男が対峙していた。

「どけ、金時ィ……! その女たちも『鬼』だ……ッ!」
「ここはオレらの国じゃねぇし、鬼もいねぇ……いい加減気付け、馬鹿野郎ッ!!!」
「鬼は斬る……! 俺がァ……全てをぶった斬る……ッ!」
「ああ、わかった……アンタの引導を渡してやるよ……!」
「金時ィ……テメェにやれんのかァ!!!」
「これは綱との喧嘩じゃねぇ!!! これは……!」

 金時は鉞を天高く投げた。

「坂田金時の……!」

 落ちてきた鉞をキャッチした時には既に金時は……。


「化け物退治だッ!!!」


 黒のライダージャケットに両手にメリケンサックを装備し……。
 そして、髪型も一瞬のうちに変化していた。

 ――否、変身していた。

 その姿、ライダー・坂田金時。
 『黄金喰い』を装備したライダー・坂田金時だ。

「今のアンタは……正直、見ていらんねぇわ……」
「一匹の鬼を斬ることにあんだけ躊躇してたテメェに斬られるほど俺は柔じゃねぇぞ?」


 頼光四天王同士の戦いが始まる……!


 ◇  ◇  ◇


「それで私相手ならば貴方一人で十分だと?」
「いや、あの状態の綱相手に二対一はきついだろうなと思ってね」
「それは……ベターな回答ですね、ええ」

 アサシン同士となったこの戦況。
 足止め……そして、出来れば倒してしまいところだった。
 『別に倒しても構わんだろう?』と格好つけたかったが、そんなキザなことはしない。

「宝具で真名が分かるほどの有名な英霊の可能性が第一……。
 可能性がかなり低いものとしては騎士道なるものを重要視している……それは流石にないと思ったよ」
「ええ、正解ですね……私は軍人ですからね、プライドなどは捨てていますよ」
「だろうね……」 

 貞光は薙刀を構えるが、スコルツェニーは銃を持っている。
 飛び道具に対して、不用意に飛び込むのは危険だと察する。
 そして、貞光はスコルツェニーの頬の傷を見た。
 恐らくは白兵戦もこなせるのではないか?
 そう思えてきた。
 故に無暗に突っ込めない。

「真名を晒すことで発動する類の宝具の使い手と言ったところかな?」
「…………」
「……と言っても、僕はこの通りあのセイバー・渡辺綱と同じ時代の者だからね。
 立花ちゃんくらいの時代から来た場合に少しは効果はあったかもしれないね」
「――――貴方、少しおしゃべりが過ぎますね」

 ―――――ヒュン!!

 弓矢が貞光目掛けて飛んできた。
 完全に貞光の意識の外からの狙撃。
 少し掠った程度で済ませた。

「ああ、言っておきますが、ここは完全に包囲されてますよ?」
「へぇ……そうなると僕は悪手を打ったかな?」
「いえいえ、そんなご謙遜なさらくてもいいですよ。
 私は勝つための手段は選ばない主義なのでね……。
 それとここにはあと何人かサーヴァントが貴方を狙っています」

 貞光の意識は落ちない。
 毒矢だった場合は流石にまずかったが……幸いにも弓矢にはそんなものは塗られていなかった。

(かなりマズイか……アサシンの宝具の実体が掴めない以上、下手は打てないな)
「さて、貴方はあとどれくらい耐えられますかね?」
「さぁね、少なくとも僕が死ぬまでは耐えられるんじゃないかな?」

 このアサシンの足止めだけは絶対にし続ける。
 それだけは止めはしない、
 そう約束したのだから……。


 ……

 …………

 …………………


「ああ、完全にキャスターに嵌ってしまったっべな」

 貞光を狙撃したアーチャーは移動して、再び弓を構える。

「普通なら絶対にやらないだろうと思えることも……。
 『あのキャスターならやりかねない』と常に思わせる大胆不敵っぷりは絶対に相手にしたくはないべな」

 引くと見せかけて引かない。
 引かないと見せかけて引く。
 ありとあらゆるハッタリ・ブラフを仕掛けてくる。

「まあ、そんなことよりも味方の援護だべ」

 たった一人の狙撃軍。
 もう残っているこの聖杯戦争の参加サーヴァントは彼とセイバーとキャスターとアサシンとランサーだけ。

「さて、仕事仕事」

 そして、再び貞光向かって弓矢が放たれたのであった。


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最終更新:2017年07月31日 01:04