「オラァァァッ!!!」
「■■■■■■■■!!!!!!!」
鉞と日本刀がぶつかり合う。
周囲に金属音が響き渡り、その度に火花が飛び散る。
そして、赤い血が綱の胸元からも飛び散る。
どう考えても戦えるような状態ではない。
だが、目の前で起こっている光景はなんだ?
綱は金時とほぼ同等の力量で戦っている。
金時が一発を打つ間に二、三発はカウンターで返している。
一発の破壊力は確実に金時の方が上回っている。
しかし、それを遥かに上回る技量で立ち回っている。
狂化してなおもその技が衰えることはない。
『セイバーは最優のクラス』
ヒロインXが何度も念を押して言っていた言葉。
確かに今の戦っている両者を見れば少しは分かる気がした。
剣の技量だけならば源頼光にも匹敵する。
これが頼光四天王の筆頭に数えられる武士。
数々の武勇を持つ男・渡辺綱。
「ゴールデンさんは大丈夫なんですか……」
「いえ、ダメージはあっちのセイバーっぽい男の明らかに大きいですね。
傷口に魔力弾と実弾撃ち込まれて、私のパク……無限セイバー突きを食らって……
そして、カメちゃん槍での心臓をぶち抜かれてますからね……あれだけ動ける方が異常です」
「……………」
「ですが、持久戦……なんて考えてないでしょうね、ゴールデンボーイは」
「うん、わかってる」
「……………何故、ですか?」
⇒「それがゴールデンだから!」
◇ ◇ ◇
「■■■■!!!」
「オッラァ!!!」
刀を鞘に収めて、無刀。
否、両腕で両脚あらゆる部位が綱の刃である。
出処が分からない刃が金時の身体に迫る。
しかし、それを金時は己の拳で相殺する。
「………やっぱ、かてーな、金時ィ………!」
綱は口角を吊り上げて笑っていた。
今までに見せたことがない顔で笑った。
しかし、金時の表情は変わらない。
その拳は勢いは止まらない。
「けどな……今、俺の邪魔すんなら……テメェも斬るッ!」
「今のアンタにオレは斬れねぇよ」
「何……?」
放たれる雷を纏った拳が綱に当たる。
数メートルほど軽く吹っ飛ばされる。
「七日七晩、あの茨木童子と渡り合った頃のアンタはもっと強かったぜ?」
「……あの時……」
「だが、今のアンタは! 何だ!! まるで何も見ちゃいねぇッ!!
それどころか自分の今の姿を見られたくねえから、カメ公の眼を斬ったんだろォ!」
「……………ッ!」
「アンタの武士の矜持はどこに行っちっまったんだ!!!
頼光四天王筆頭ッ!!! 渡辺綱ァァッ!!!」
―――とっくに捨てた。
―――捨てたはずだった。
―――半端な覚悟では聖杯など取れない。
―――だから、捨てた。
―――捨てたはずだった。
「……ああ、本当にどこに行っちまったんだろうな……」
―――しかし、捨てきれなかった。
―――心のどこかに残っていた。
―――あのキャスターに昔の自分の仲間のことで煽られた時に妙な怒りを覚えた。
「……金時、テメェが俺を見てらんねぇのもよく分かった。
だが、俺は止まらねぇよ。俺は……『人のために悪を為す』……!!!」
―――俺は……ここにいる俺は『悪』の『人鬼』だ。
―――『鬼』は最後にはいなくなる。
―――あの『鬼』どもも『アイツ』だって……
―――だから、これが最後だ。
「鬼滅―――開始……ッ!」
再びの宝具開放。
綱の咆哮で空気が震える。
赤き血と夕焼けで刀身が紅く黒く輝く。
今まで以上に速度で金時に突っ込む。
そして、それに対して金時は……
「……カメ公、ちょっと槍借りるぜ!!」
放置されていたカメハメハの槍を拾い上げていた。
右手に鉞、左手に大型槍の超変則な二刀流。
魔力の入ったカートリッジを突っ込む。
無理矢理に互換性があるのかもわからないが突っ込む。
すると、バチバチと槍からも電撃が放たれ始めた。
なんだかよくわからんが、とにかくよし!
「行こうぜ……カメ公!!」
金時の身体が加速する。
千里を駆けるほどの勢いで疾走する。
倒れたカメハメハの分も。
殴れないマスター藤丸立花の分も。
何故かいなくなったヒロインXの分も。(※金時視点ではヒロインXをアルトリアと勘違いしています)
悔しいと思ってる奴らの分―――自分でぶっ叩く。
「うおおおおぉぉぉぉッ!! 金時ィィィ!!!!」
「綱ァ!! 喰らいなァッ! 必殺『黄金交差』 ッッ!!!」
赤と金が交錯した。
赤の一撃を、金の十字斬りが激しく衝突し、閃光が辺りを包み込んだ。
◇ ◇ ◇
「綱……」
「気にすんな、金時。
俺が負けて、テメェ……テメェらが勝った。それだけだ。
俺の願いは『ここ』では叶わなくなった。
また機会を得るために待つ……そん時は邪魔してくれんなよ」
地に伏せた綱。
それを見下ろす四人。
だが、カメハメハの眼は見えていない。
ヒロインXに支えられて、ヒロインXのマフラーを包帯替わりしている。
非常に痛々しいが、辛うじて生きている。
「セイバー、連合軍の目的は?」
「……無論、サーヴァントが同盟を組む理由なんて強敵の撃破だろ?
それ以外は知らん……つか、それ以外に組む理由なんざねぇよ」
「確かに……流石、聡明な判断をするセイバーですね」
「ああ、あとな……機会があったらまたやろうぜ……ランサーの嬢ちゃん」
「……それはお断りします」
「……へっ、やっぱ俺が出会う美人にろくな奴がいねぇな……」
それを言い切るとセイバー・渡辺綱は消滅した。
きっと満足などしてはいない。
また召喚されれば、彼は聖杯を求めて、その武を振るうだろう。
『……セイバーの霊基の消滅を確認しました』
「マシュ、そっちで何か変化はあった?」
『いえ、先ほどからと同じで特に変わりはないです……』
「そうか……」
本当にここは特異点なのだろうか?
異常なのはなんとなくわかった。
だが、その原因が未だにわからない。
これではただハワイの聖杯戦争の乱入して、場をかき回してるだけな気もしてきた。
その時である。
妙な暑さを肌身で感じ始めた。
不意に空を見上げると黒煙が空を包み込んでいた。
―――ハワイの山が噴火し始めたのだ。
最終更新:2017年08月19日 03:08