国会質疑 > 国籍法 > 08

国会での審議の中継


近藤正道議員/社民党所属(参議院法務委員会(2008/11/25))

○近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道でございます。
 本法案は、法律上の婚姻関係にない日本人の父と外国人母との間において生まれた子供が出生後に父から認知された場合に日本国籍を認める、こういうものでございます。
 当委員会におきまして、このことについての先ほど来出てきております最高裁判決、これが出されました翌日の六月五日議論になりまして、千葉委員も木庭委員もそして丸山委員も、この判決を本当に高く評価をされて、この判決の趣旨に沿った速やかな法改正を求める、こういう意見を表明されたことを覚えております。
 そして、私も、社民党という立場で、その二、三日後だったと思うんですが、福島みずほ党首と私と鳩山当時の法務大臣のところに行きまして、とにかく一日も早くこの最高裁判決の趣旨に沿って国籍法を変えていただきたいと、こういう申入れをさせていただきました。そういう経過もございますので、私どもは今回の法案を高く評価するものでございます。
 その上で、今ほど仁比議員の方からこの最高裁判決を深掘りをしていただく、こういう質疑をやっていただきましたので、私はそれを受けまして、この最高裁大法廷判決の射程について少し議論をさせていただきたいというふうに思っています。
 今ほども話が出ましたけれども、この判決は三つの言わば柱を立てて、〇三年、少なくとも今は国籍法第三条一項が違憲であると、こういうことを言っている。
 それは、一つには家族生活や親子関係の実態が随分変化し多様化したということですね。二つ目は、諸外国においても非嫡出子に対する法的な差別的取扱いを解消する方向に進んでいるということ。そして三つ目、これも先ほど来議論がありましたけれども、我が国が批准した市民的及び政治的権利に関する国際条約、つまり自由権規約、B規約及び児童の権利に関する条約、こういうものが児童が出生によっていかなる差別も受けないという趣旨の規定を持っているということ。この三つから、少なくとも今現在は国籍法第三条第一項はこれは憲法に違反すると、こういうことを言っているわけです。
 この論理からいけば、少なくとも単に今回の国籍法の改正だけにとどまらないのではないかと私は思っているわけでございます。少なくとも、婚外子の法定相続分を婚内子の二分の一とするというふうに定めた民法の九百条の四号、これはやっぱり見直されるべきだ。つまり、随分家族生活や親子関係の実態は変わっていますよ、世界の趨勢はみんな非嫡出子について一定の差を付けるということについてはやっていませんよと。聞いてみると、これは日本とフィリピンだけだという。そして、国際人権規約はそういう立場に立っていませんよと。
 この最高裁判決からいけば、少なくとも、婚外子の法定相続分を婚内子と比べて差を付ける、これは私は許されないんではないか、見直されるべきなんではないかと、こういうふうに思えてならないんですが、大臣の所見を伺いたいと思います。

○国務大臣(森英介君) ただいまの近藤委員の御指摘につきましては、極めて傾聴すべき御意見であると思います。また、世界の趨勢がそのようになっているということも私も聞き及んでおります。
 しかしながら、民法第九百条第四号ただし書については、平成七年の今もお話のあった大法廷判決以降、最高裁における判決において合憲であるとの判断が示されているところでございまして、法務省としては、このような取扱いについて、不合理なものではないと、現況においてはですね、と考えております。法務省の内部においては、そういった御議論を踏まえていろいろと議論はしておるところでございますけれども、現況においては結論は今申し上げたようなことになっているということを申し上げたいと思います。

○近藤正道君 かなり際どいところに来ているな、いいところまで来ているなというふうな思いを今大臣の答弁を聞いて思いました。
 衆議院の法務委員会では、今法案につきまして、法制審も通っていないのに何だという、こういう批判がありました。私はこれは、最高裁の大法廷判決が、大法廷があれだけ明確に言っているのにこれを踏まえていないなと、違憲立法審査権や三権分立を十分に理解していない、こういう意見だというふうに思っております。
 問題は、私どもはもう、またこの法案に、本法案に一定批判的な方々も含めまして、法制審議会の答申というのは大変重いものだと、ここは共通しているというふうに思うんですが、調べてみますと、法制審議会の答申が出されているにもかかわらず、いまだそれが実現されていないやつが三つあると。一つは昭和四十九年の出された改正刑法草案、二つ目は昭和五十二年の少年法の一部改正に関する要綱、そして三つ目が平成八年に出された民法の一部を改正する要綱。
 最初の二つは、その後、何らかの形で法改正は実現されているんです。ところが、平成八年の民法の一部を改正する要綱、この中には、今私が言いました非嫡出子の相続分の差別の問題だとかあるいは選択的な夫婦別姓の問題が入っているんですが、これがまだ全く手付かずになされております。
 とりわけ非嫡出子の相続差別の問題については、これはもう何度もこの間国会でも議論が上程をされて、さきの会期でも参議院で民主、共産、社民、無所属からこの改正案の提出がなされたんだけれども、審議することすらなかったと。これは国会の問題といえばそうかもしれないんですが、法制審議会の答申が出されて十二年もこれが日の目を見ないというのは私はやっぱり問題なんではないかと。
 今回の、つまり最高裁の判決、そして今回の法改正、国籍法の改正などを見れば、やっぱり今度は責任を持って内閣が改正案、民法の改正案をやっぱり出すべき、そういう時期に来ているんではないかと私は思うんですが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(森英介君) 今もいみじくも委員が御指摘になりましたように、この問題については反対意見もまだ根強くあるわけでございまして、婚姻制度や家族の在り方と関連する重要な問題でありますので、各界各層における議論が深められて大方の国民の御理解を得ることができるような状況の中で見直しが行われるとすれば行われるべきものであると考えております。
 よく引き合いに出されるところでございますけれども、平成十八年の世論調査結果によると、嫡出でない子の相続分について、相続できる金額を嫡出である子と同じにすべきであるとする意見は全体の二四・五%であったのに対しまして、現在の制度を変えない方がよいとする意見が全体の四〇%以上を占めているということでありますが、いずれにしても、先ほども申し上げましたけれども、各界各層の、また国会での御議論が深まっていくのをしっかりと見守って対応したいというふうに思います。

○近藤正道君 今ほどの大臣の、国民の中に多様な意見がある、嫡出子の相続分と非嫡出子の相続分で一定の差を付けるということについて国民の半分ぐらいが支持をしているという話があった。私は、このことについてはいわゆる憲法の立憲主義との関係で意見があります、これまた後で申し上げますが。
 ただ、この嫡出子と非嫡出子との間の相続分に差を付ける、これについては、民法九百条の四号ただし書の規定でありますが、〇三年に最高裁の小法廷判決が出た。確かに、大臣おっしゃるように、合憲という形にはなっているけれども、三対二ですよね、これ。二人の裁判官がこの九百条の四号ただし書について極めて違憲の疑いが強いと、そういうふうに言っていますよね。そのうちの一人は現在の最高裁の長官の島田さんですよ。島田仁郎さんは、これやっぱり違憲の可能性が非常に強い、可及的速やかに法改正をすべきだと、こういうことを言っているわけでございます。裁判官はみんな平等ですから、その後最高裁長官になった方がこう言っている、だからより重いんだと言うつもりはありませんけれども、しかし、それほどやっぱり際どい。
 先ほどちょっと話がありましたけれども、これは確かに少数意見かもしれませんけれども、こういう明らかに違憲の可能性がある、極めて強いと、こういう判決が出ているわけでありますけれども、法務省の中ではこの判決を受けてその後どんな議論が省内で行われていたんでしょうか、ちょっと御披露いただきたい。さっきちょっとあったようなお話を大臣がされましたので、お聞きをしたいと思います。

○政府参考人(倉吉敬君) 委員の御質問は、今度の国籍法に関する大法廷判決が出た後……

○近藤正道君 九百条の四号ただし書。

○政府参考人(倉吉敬君) あっ、そうではなくてですか。
 九百条四号ただし書の件につきましては、もちろん国会でも御質問を度々繰り返しいただいておりますし、最高裁の判決も、平成七年の大法廷判決の後、小法廷判決で、今委員御指摘のとおり、三対二というような判決も出ているわけでございますので、その都度いろんな機会で、これはどうだろうかということで検討は部内ではしております。ただ、先ほど大臣の方から答弁申し上げましたように、世論調査の結果等もございまして、必ずしも嫡出子と非嫡出子を同等にすべきではないんだという意見も多いわけでございます。
 そういったことも考えますと、やはり国民の大方の皆さんがこれは賛同できるなという形で法案を出すのが望ましい、事は要するに家族法の、日本の伝統的な家族の身分関係の根幹にかかわることでございますので、やはりそのように考えるのが望ましいと、こう思っておりまして、以下は大臣が先ほど答弁申し上げたとおりでございます。

○近藤正道君 最後に大臣にお聞きしたいというふうに思うんですが、国民の多数といった、まあ意見が割れている、世論調査をすると割れる、それはそのとおりなんですが、少なくとも最高裁の今回の国籍法のあの論旨からいけば、それは、家族の形態はどんどん変わっていますよ、そして世界の国々もどんどん日本とは違った方向に行っていますよ、そして国際人権法はまさに嫡出子と非嫡出子の格差を、差別をなくすような規定になっていますよと、こういうふうになっています。そして、先ほど来もちょっと出ましたけれども、この間の国連の人権規約の勧告は繰り返し、非嫡出子の相続差別についてはこれは問題だと、こういうふうに言っています。とにかく、差を付けること、二分の一と差を付けるということは憲法の解釈からいっておかしいと、こう言っているわけですよ。そういうときに、世論が割れているということは合理的な理由になるんだろうか。
 つまり、私が申し上げたいのは、立憲主義という立場ですよ。憲法というのはつまり国の行政権を担っている人たちを言わば縛っている。ある意味では、多数に対して説得をしても、それはやっぱり間違っていると、多数が幾ら、ある意見に多数にまとまっても、それが憲法との関係においてそれはおかしいと、そういうことは通らないということであれば、やっぱり毅然として、それはやっぱり憲法違反だ、だからそういう考え方はやっぱり変えなきゃならぬというふうに政府が説得するというのが立憲主義の立場だというふうに私は思うんですよ。単に国民の多数がそういうふうな立場に支持していないという、これは理由にならない。
 だから、立憲主義をまさに体現している、まさに体を張って憲法を守る、立憲主義を守る、法務大臣はこのことについてどういう考え方を持っているのか。単に国民が、四十何%が賛成していません、支持していませんというのは私は理由にならないと思う。立憲主義の立場からこの間の流れをどうとらえるのか、大臣から明確に御答弁をいただきたいというふうに思います。

○国務大臣(森英介君) もとより、少数意見を十分に尊重しなきゃいけないこととは……

○近藤正道君 少数意見じゃございません。少数意見のこと言っているんじゃないです。

○国務大臣(森英介君) 少数者、何とおっしゃったの。

○近藤正道君 少数意見のことなんか言っているんじゃないです。

○国務大臣(森英介君) いやいや、少数意見を尊重することが立憲主義の基だとおっしゃったんじゃないですか。(発言する者あり)ですから、私はそういうふうに思います。
 しかしながら、最終的にやっぱり多数決というのを、これは意見集約する場合には当然必要になる場合もございますし、さはさりながら、確かに世論調査というのも、これ頭数が違うわけですから、必ずしもそれをもって理由にするというのはいかがなものかと思いますけれども、私は、日本人というのは誠に賢明でありますから、必ずいずれ議論が収れんして、そういった今は少数である意見に国民の大方の皆様方が賛成するときが必ず来るというふうに思っておりますけれども、今はそういう時期になっていないというふうに私としては認識をしているところでございまして、国民の各界各層の御議論の収れんするところを見守りたいというふうに思います。

○近藤正道君 少なくとも今の参議院は、非嫡出子の相続分の差をなくすということについて、それはおかしいなどというふうに思う人はいないですよ。むしろ多数は、差を付けること自身はおかしいというふうに私は言うというふうに思いますよ。
 ただ、私が申し上げたいのは、憲法の解釈というのは、多数意見、どちらが多数かどうかということで決めるんじゃなくて、憲法の解釈はある方向で示されているんなら、それは国民のある程度の、半分ぐらいが反対したとしても、それはやっぱり行かなきゃならない、その道で進まなきゃならぬ、これが私、立憲主義だと思うんですよ。
 だから、大臣の立憲主義の理解は違うんじゃないかと思うんだ。立憲主義というのは、多数意見の言わば暴走というか、多数意見の行き過ぎを抑える、幾ら多数であっても、そちらが多数であっても、憲法の解釈がこうであればそれは多数意見の方が間違っているというふうにびしっと言うのが、それを私、立憲主義だと思うんだけれども。基本的に大臣の立憲主義の理解は間違っているんじゃないかと思うんだけれども、どうですか。

○国務大臣(森英介君) 私は、まさに今そういった御議論が行われている過程であって、今法務省がそういった一方の立場に立って見切り発車するということはむしろ強権的であって、もうちょっとやっぱり議論が熟度を高めてくるのを見守るべきだというふうに思っております。

○近藤正道君 それなら、先ほどの最高裁判決、これ国籍法の最高裁判決、この三本柱、世の中が動いている、世界の流れも動いている、そして世界の人権規約はある方向をきちっと向いている、それからいけばこの非嫡出子の相続分に差別を付けるのはやっぱり間違っているんだよということを積極的に国民に対して説得してくださいよ。それが法務大臣の仕事じゃないですか。どうですか。

○国務大臣(森英介君) 非常に重要な御指摘と承りました。

○近藤正道君 まあなかなか今日はこれ以上やってもらちが明きません。改めてというか、日を改めてこの論議をさせていただきたいと思っています。
 終わります。

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最終更新:2008年12月25日 15:32
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