A0007 あくる日


ミッション№
名前 特殊条件 人数 戦利品
初級
№A0007
09 / 11 / 11 ~ 12 / 12 / 31
09 / 11 / 11 ~ 15 / 12 / 31
09 / 11 / 11 ~ 30 / 12 / 31
あくる日
特になし 4人 火のリングLv1
機のリングLv1
(1ポイント)

プロローグ
アリシア
「お父さん、お母さん、じゃ、行ってきまーす」

真上まで上った太陽から暖かい日差しが注がれる住宅街の一角にアリシアの元気な声が響く。

半分開いた扉から上半身だけ覗き入れて室内の養父母へと笑顔で挨拶すると、またするりと身体を引っ込める。
扉が徐々に閉まる中、隙間からバイバイと左右に揺れる手のひらと、長い髪の先だけがチラリと覗いた。

「気をつけていってらっしゃい」そんな声を背に、アリシアはジャン達の待つ何時もの訓練場へと駆けていった。
危険度


LC0011
模範の騎士シャルル

600 / 165 / 140
4/4/9/4/2
敵サポカ
無し
連日解放されている城内の訓練広場。
常に誰かが使用している状態の広場は今日も訓練に勤しむ兵士達で賑わっていた。

シャルル
「アリシアー、こっちだ」

ジャン
「おっせー、アリシア! どーしたんだよ?」

そんな中、人だかりの一角から高く手を上げ大声でアリシアを呼ぶ声が聞こえた。
声のする方向に目を向ければ、共に訓練を行う約束を交わしていたジャンとシャルルの姿があった。

アリシア
「はぁっ…はぁ…ごめん! 食事の時間が遅くなっちゃって…」

ジャン
「ああ、また山盛りメシ平らげてたのか、そりゃ悪かったな当たり前のこと聞いちまって」

ジャンがからかうように歯を向きだしてキシシと笑う。
その脛にアリシアの無言の蹴りが繰り出される。

ジャン
「っっっつぅぅ~~~~」

アリシア
「またって何よ、またって! そんなの、よっぽど稽古した後じゃなきゃ食べないわよ! バカ!」

ジャン
「っつぅ~…食べるんじゃねーか…」

会えばまず必ず喧嘩から始まる。
毎度のことで慣れているのか、二人のやりとりにシャルルは肩を揺らして笑った後、アリシアへと提案する。

シャルル
「ふふっ、では食べたらその分運動しなくてはな。どれ、一つ手合わせ願おうか? アリシア」

アリシア
「んなっ…もぉーっ! ジャン、あんた余計なこと言うからぁー!」

シャルル
「久しぶりの格闘試合だな。お前の領分だ、ひとつ揉んでもらおうか」

アリシア
「って言って、いっつも際どい攻防になるからなー、シャルルとやると。」

アリシアひとつ息を吐くとパンっと手を打ち合わせた。

アリシア
「どれ、今日こそは大差をつけてスパッと負かしてやりますか!」
危険度
★★

LC0013
近衛師団長テレーズ

850 / 175 / 170
7/7/10/10/7
敵サポカ
風のリングLV1×2
土のリングLV1
アリシア
「はっ…はっ…ほんっとに、飲み込みが早いんだから」

シャルル
「はぁ…はっ…リベルテきっての拳闘士に褒めて頂いて光栄だな」

紙一重の攻防をアリシアが制し、戦いを終えた二人は互いを称え合う。

ジャン
「こぇ~…」

テレーズ
「じゃなくて、ジャンも見習いなさいな」

完全に引き腰のジャンの背後から声が響く。

アリシア
「テレーズさん!」

テレーズ
「精が出ますね、二人とも」

アリシア
「そんな…ありがとうございます」

近衛師団の団長であるテレーズに褒められアリシアはもじもじとつま先を弄ぶ。
テレーズは稀にこうしてアリシア達に話しかけてくる。
名門アルトワ家の1人娘であり、栄誉ある近衛師団の団長でもあるテレーズは、
通常ならばアリシア達一兵卒にとっては気軽に接することのできる人間ではない。
しかし、テレーズはそんな境など感じさせずに、常に誰とでも訳隔てなく接することを望み、
公平を重んじ他者を重んじる女性である。
故に稀にこうしてアリシア達はテレーズと束の間の交流をはかる事が可能なのであった。

アリシア
「テレーズさんは、何故ここに?」

テレーズ
「それはですね」

テレーズは悪戯っぽい笑みを浮かべると右手を勢いよく前へと突き出した。
その手には訓練用の木の剣が握られていた。

テレーズ
「これです! 窓から貴方達の一所懸命訓練に励む姿が見えたので私もお手伝いさせて頂こうと思いまして」

テレーズが満面の笑みで告げる。

テレーズ
「さぁ、ジャン、貴方には私が相手をして差し上げます!」

ジャン
「うえぇっ!」

実践よりも辛いと専らの噂である団長との模擬戦。
それを突然強いられジャンは情けない声を上げる。

アリシア
「ジャ~ン、よかったじゃない。団長直々に稽古つけてもらえるなんてそうそうないわよ~」

ジャン
「なっ…ふざっけんなって! テレーズさん、あの…折角だけど、テレーズさんその…ス…スカートだし、動きにくいだろうから、
また次の機会にでも…」

テレーズ
「心配要りません」

そう言うとテレーズはスカートの裾を翻しくるりと回ってみせる。
その動きは到底窮屈そうには見えなかった。

アリシア
「よかったじゃない、心配ないって」

アリシアがにやにやと意地の悪い笑みを浮かべ横目にジャンを見た。

ジャン
「うへぇ…」
危険度
★★

LC0019
自信家イアン

900 / 185 / 185
4/4/16/4/4
敵サポカ
水のリングLV2
風のリングLV1
土のリングLV1
ジャンの繰り出す攻撃は結局テレーズへと届く事すらなく、逆にテレーズの攻撃に防戦一方のまま試合は終了した。

テレーズ
「ふぅ、ジャン、貴方は太刀筋は良いのですが、読みがまだまだ浅いですね」

アリシア
「単純なのよ、ジャンは」

そう毒づいた後「まぁ、そこが長所でもあるんじゃないの?」と、誰とも聞こえぬような小声で呟くアリシア。
テレーズはスカートの埃を払うと、改めて三人へと向き合う。

テレーズ
「では、私はこの後所用がありますので、これで。ジャン、アリシアを守る為にはもっと精進しないと駄目ですよ」

ジャン・アリシア
「なっ…」

テレーズの言葉に、同時に言葉を発しようとする二人。
しかし二人が否定の言葉を口にする前に、テレーズはさっさと歩き去ってしまった。

アリシア
「…」

ジャン
「…訓練続けるか」



アリシア
「ん~、今日もいっぱい体動かしたぞ~」

訓練場の帰り道、アリシアは道中で疲れをほぐすように伸びをする。

ジャン
「よかったな、これで山盛り食っても太らないぞ」

アリシア
「そうねー、テレーズさんに手も足も出ずに落ち込んじゃった誰かさんとは違って、
勝ち星の私はおいしくご飯が食べられるかもね~」

ジャン
「うぐっ」

アリシア
「今の所私は負け知らずだものねぇ~」

イアン
「じゃぁ、ひとつ手合わせ願おうかな」

これ見よがしに胸を張るアリシアの背後から突然声が聞こえる。
驚き背後を振り返るとフワフワした毛が視界一杯に広がっていた。

アリシア
「魔族!?」

ジャンがとっさにアリシアを背に庇う。

イアン
「そんなに警戒しないで欲しいな。ただオレは強い相手と戦いたいだけだよ。
聞いた所、そっちのお嬢ちゃんは未だ無敗なんだろ? 手合わせ願うよ」

ジャン
「なら、俺が、」

イアンは人差し指を立てそれを顔の前でチッチッと左右に振る。

イアン
「お前はダァ~メ。今日コテンパンにやられたんだろう?」

ジャン
「ぐぬっ…」

痛い所をストレートに貫かれ、ジャンは言葉に詰まる。

イアン
「で? いいかな、お嬢ちゃん? オレもかなり強いけど、受けて立ってくれるか?」

アリシア
「はー…わかった。本日の締めとしてもう一個黒星貰っちゃいましょうか。 ほら、ジャンどいて、どいて」
危険度
★★★

LC0005
気ままなジャン

1000 / 200 / 175
5/5/18/5/2
敵サポカ
火のリングLV1
火のリングLV2
風のリングLV1
風のリングLV2
イアン
「イテテテ…ホントに強いな、お嬢ちゃん」

予想以上に重いアリシアの一撃にイアンは顔を歪めて応戦する。

イアン
「こりゃ、ヤバイな…」

止まぬ拳に敗北の危機を感じる。

イアン
「今日折角のお嬢ちゃんの黒星に白をつけるのは野暮ってもんだ。というわけで、
今日は引き分けってことにしてあげよう! んじゃ!」

そういうが早いか脱兎の如く駆け出すイアン。

アリシア
「ちょっと…! …行っちゃった…、まぁ、いいか。こっちも危なかったし」

制止の声も虚しく、その姿はたちまち豆粒のような小ささとなった。
仕方なしと溜息を吐き、踵を返すと、眉をしかめてそっぽを向くジャンの姿が目に留まる。

アリシア
「あんた何むくれてんのよ」

ジャン
「別にむくれてねーよ」

アリシア
「むくれてるわよ」

明らかに不貞腐れた態度のジャンにアリシアは更に食って掛かる。

アンリ
「いたいた、追いついた! 兄さまー! アリシアー!」

そんな二人の後方から、アンリが手を振り近づいてきた。

アリシア
「大体ねぇ、あんたが余計な事口にするから面倒事に巻き込まれたんでしょうが!」

ジャン
「お…俺のせいかよ!? お前だってデカイ声で自慢してただろ!」

アンリ
「え!? 二人とも、何喧嘩してるの…」

追いついた早々修羅場に遭遇してしまいアンリは

アリシア
「あんたは女の子に対してデリカシーなさすぎなのよ!」

ジャン
「うっせー! お前なんか女じゃねー! 筋肉! 筋肉乳!」

アンリ
「ちょっと! 兄さ…」

バチコーーーーンッ
瞬間、アリシアの平手がジャンの頬に炸裂した。

ジャン
「あだぁっ! こ…こ…このヤロウ…いい加減にしないと本気で怒…あだぁっっ!!」

更なる平手の一撃が言いかけた言葉を遮る。

アリシア
「この・・・バカ・・・バカ・・・ならねぇ…筋肉乳の怖さ味わってみなさいよぉぉ!!」
エピローグ

ジャン・アリシア
「…」

喧嘩は治まったものの、二人は互いに無言で顔を背けあっていた。

アンリ
「はぁ…二人とも毎回毎回いい加減にして! 兄さまも言い過ぎ! ちゃんと謝って!」

弟に正論で諭され流石に伐が悪かったのか、ジャンは横目でアリシアの様子を覗き見た後、
機械的な口調で謝罪の言葉を述べた。

ジャン
「…ゴメンナサイ」

アリシア
「…コチラコソ」

それに対しアリシアも機械的な口調で返す。

アンリ
「全くもう…二人とも変な所で子供なんだから」

呆れた顔で笑う大人びたアンリに釣られて二人も口元を緩めていた。


夜、食卓で1日の出来事を楽しそうに身振り手振りを交えながら伝えるアリシア。
そんなアリシアの様子を養父母達は愛しそうな眼差しで見つめながら相槌を打っていた。

家族団欒の時間を終え、床に就いたアリシアは今日一日の出来事を思い返す。
物心がついた時から何一つ変わらない、少しだけ退屈だけど愛しい日常。
育ててくれた養父母、共に育った幼馴染、共に戦う仲間――
僅かな思考を巡らす頭の中に幕がゆっくりと下ろされていき、アリシアは眠りに落ちた。


かすかに肌を撫でる冷気で目を覚ました。
辺りは薄暗く闇に包まれて、今がまだ夜明け前なのだと教えてくれる。
上半身だけを起こし周囲を見渡す。
自分の寝ているベッドと小さな丸テーブル以外存在しない、石造りの壁に包まれた無機質な部屋。
窓の木板が薄く開いていたようで、そこから外の冷気が流れ込んできていた。肌寒いのはその所為だろう。
冷えた空気を吸い込んだ為か、急激に脳が覚醒する。

――ああ、そうか、ここは…

パタッ

気がつくと同時に大粒の雨が手元のシーツに降り注ぎ、たちまちに大きな染みを作っていく。
あの日、ロン公国が攻め入られた日から今まで蓄えられてきた熱い雫が次から次へとこぼれ出る。
頭の中には決壊したダムから水が押し出されるように、考えまいと封じてきたもの全てが一気に流れ出て渦を巻いていた。
未だ生死の分からない養父母、戦火の中散り散りになった仲間達、失われた日常、そして――わからない、自分自身のこと。

アリシア
「みんな消えた…私の…大事なもの…っ…うっ」

とうとうアリシアはシーツに突っ伏し、声を殺して泣いた。
食い縛った歯の隙間から漏れた息だけが無機質な部屋の中に幽かに響いていた。

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■最終更新■(2011-03-27)

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最終更新:2011年03月27日 15:15