大江戸の平和を脅かす闇の存在。 覇王の力とは一体なんなのか? アズサ、カイ旅立ちの時! |
覇王の意志を継ぐ者が動き出す・・・ 戦国時代の終焉から200年 将軍を中心に平和をたもった世界、「大江戸幕府」。 その平和はゆっくりと終わりを告げた。 大江戸幕府の衰退。 大江戸幕府を倒さんとする者たちが各地に現れたのだ。 そしてその者たちを動かしている闇の存在。 そこには、人ならざるものの力が働いているようだった。 事実、鬼といった伝説の怪物の目撃報告をも多数あがっているのである。 将軍家と大江戸幕府を影から守護してきた隠密集団「影狼」 彼らは平和のために立ち上がる。 そして影狼の一人「カイ」に告げられた指令。 「古の覇王、その意志を継ぐ者が動き出した。 奴はアズサを狙っている。その理由、お主は知っておろう。 アズサを守りきれ、カイよ!」 そして数日。アズサの実家である剣術道場の庭にて。 アズサ「んー、カイ、ここ数日、なんだか暗い顔してるね?つまんないなー。」 カイ「え、ああ、ごめんごめん。ちょっと気になる事が・・・・」 言い終わらぬうちに、二人の眼前に巨大な影が立ち塞がった。 カイ「・・・来たか。アズサ、俺から離れるなよ。」 アズサ「え・・・?!」 カイ「大変だと思うけど、しばらくアズサは狙われると思うから。」 アズサ「な、なんなの?さらっと怖い事言ってない・・・?」 カイ「説明は、いずれ・・・な」 アズサを見ながらやさしく微笑むカイ。 そして二刀に手をかける。 影狼最強であり、双龍と恐れられる男の構え。 時は文久3年。後の世に幕末と呼ばれた時代。 嵐のような時代を白刃と共に駆け抜けた者たちの物語。 |
カイセイ 「探したぜ、お前がアズサだな!」 その巨漢は、アズサを指差して吼えた。 アズサ 「あなたは、誰?」 素早く身構え、その巨漢の男にたずねるアズサ。 カイセイ 「ほほう、俺様を前にしてまるで恐れちゃいねぇ。なるほど、話どおり、腕前は確からしいな。」 カイ 「鎖鎌か。たしかカイセイという鎖鎌使いがいたな・・・」 カイセイ 「おお、さすがは影狼のカイ!その通り、俺様の名はカイセイ!そこの女、アズサをさらいにきた。」 アズサ 「カイ、影狼の人間だってバレてるわよ。いいの・・・?」 カイ 「んー、まぁ・・・こいつの親玉は影狼のことも知っているだろうからね」 アズサ 「むー。そうなんだ・・・それにしてもずいぶん堂々とした人さらいね。悪いけど、私はそこで泣き喚くような子じゃないわよ?」 美しい構えと共に剣を抜くアズサ。 アズサ 「何か・・・変な事に巻き込まれてるなぁ・・・私・・・」 カイセイ 「てめえら!俺様の前でずいぶんと余裕をぶっこいてやがるな・・・思い知らせてやるぜ!!」 |
鎖鎌のカイセイを返り討ちにしたアズサとカイ。しかし、息をつく間もなく、突如少年のような声が響き 渡る。 謎の声 「アズサさん」 アズサ 「えっ!?」 謎の声 「とうとうこの時が来ましたね。私はずっとあな たを見ていました。そこに立つ影狼のカイさんのよう に。」 アズサとカイの眼前、鬼火と共にまるで子犬のような 姿が出現した。 サララ 「僕は狛犬族のサララ。さっきの大男は、覇王 の意思を継ぐ者の使いだよ。」 アズサ 「え・・・え・・・えー!!あなたはまさか、妖 怪・・・!?」 カイ 「妖怪か・・・?噂には聞いていたが、さすがに初 めて見る・・・」 サララ 「はい、私は妖怪ですが、覇王の意思を継ぐ者 の手下ではありませんし、人々に危害を加えるような こともしません。ただし・・・アズサさん、カイさん、お二 人の力をためさせてもらいます!僕の力なんて、覇 王の意思を継ぐ者に比べたら小さなものです。僕に 負けていたら、先には進めませんよ!術攻撃くらいし かできませんが、さぁ、勝負です!!」 |
見事サララの試練を乗り越えたアズサとカイ。 そしてサララが伝えるアズサを狙う黒幕。 サララ 「覇王の血を継ぐ者の配下・・・大江戸の西、領主アギラと言えばカイさんはわかりますね?」 領主アギラ。その言葉を聞き、アズサとカイはアギラという領主が治める西の土地を目指していた。 アズサ 「アギラ・・・悪名高い領主よね。確かホムラさんが子供の頃に苦しめられたって言っていた・・・」 カイ 「ああ、ホムラの故郷だね。むしろ、ホムラが喜んで殴りこみに行きそうな感じだな。」 アズサ 「ね、それはそうとカイ、理由は教えてくれないの?どうして私が狙われるのか。」 カイ 「ん・・・ごめん、もう少し待って。まだちょっとだけ早いかもしれないんだ・・・」 アズサ 「いいわ・・・カイのこと信頼してるし、もったいぶるからには何かわけがあるのよね。そのかわり、しっかり私のことを守ってね♪」 カイ 「まぁ、守らなくてもアズサは十分強いけどね」 微笑むカイを見て、少しだけ心が軽くなるアズサ。そう話しながら道中を急ぐアズサとカイの頭上から声が響き渡るのだった! アケビナ 「あなたたちもあの男の手先ですね!ここから先には進めませんよ!」 そして二人の目の前に頭上からふわりと現れたのは・・・ アズサ 「え、ええええ!飛んでるわ!まさか天狗!?」 アケビナ「問答無用!覚悟~!」 |
アケビナ 「ご、ご、ご、ごめんなさい!!てっきりあの領主の手先なのかと・・・本当にすいません!ついさっきまで領主アギラ配下の鬼たちに追われていたので・・・」 ひたすら謝るカラス天狗のアケビナ アズサ 「う、ううん、いいのいいの!それよりも・・・あなたやっぱり天狗よね・・・?」 アケビナ 「はい、カラス天狗のアケビナと申します。」 アズサ 「て、天狗って本当にいるのね」 信じられないものを見てしまったアズサは、動揺を隠せない。 アケビナ 「はい、本来なら人前には姿を現してはいけないのですが・・・今、この世界のバランスが崩れてきていますので・・・」 カイ 「覇王の力、かい?」 アケビナ 「よくご存知で!そうです、覇王の力のせいなのです。世の中に覇王の力が溢れそうになる時、あらゆるバランスは崩れていくのです。大江戸の平和が乱れてきた最大の原因は覇王の力が蘇ってきたからなのです」 アズサ 「覇王の力?」 カイ 「源氏平氏の戦いしかり、戦国時代しかり、時代の変わり目には必ず存在したといわれる覇王の力。その力が溢れれば、平和は崩壊する・・・と言われている力だよ」 アキ 「はい、仰るとおりです、カイさん」 その瞬間、背後に気配を感じたカイが振り向きざまに叫んだ! カイ 「誰だ!」 二人からほんのわずかの距離に、いつの間にか一人の少女がたたずんでいた。 アズサ 「私にも・・・カイにまで気付かれずにこんな近くまで!?」 アキ 「お話は終わりました?アズサさん、そろそろ私と一緒に来てもらいますからね。カイさんはちょっと邪魔なので、私のカラクリ君でちょっと眠っていてください。」 カイ 「ちぃ、カラクリ師か!」 剣客とは違い、カラクリ人形を武器として意のままにあやつるカラクリ師。その強さと恐怖は未知数である。 |
アズサ 「はぁ・・・狛犬や天狗の子、カラクリ師なんてのにも出会うし・・・世の中が信じられなくなっちゃうわよ」 カイ 「色々出すぎだな。アズサ、落ち着こうか。」 アズサ 「う、うん・・・確かにこの世界が崩れ始めてる気がするの。大江戸幕府が弱ってきているのかしら?」 カイ「そうだね・・・正直な話、大江戸幕府はかなり弱ってしまったよ。覇王の力がこの国を揺るがす発端だとしても、幕府を倒そうとする風潮が一般の人々に広まっていた事は確かだよ。幕府が平和を維持できなくなってきた。」 シデン 「そう、覇王の力があろうとなかろうと、民は新しい時代を欲しているぞ。叫んだその男は、鋭い眼光でアズサを見つめていた」。 シデン 「我が名はシデン。影狼のカイ、そしてアズサ。両者ともかなりの手だれと聞いている。我が領主アギラ様の名において、正々堂々と勝負を申し込もう。」 アズサ 「カイ、この人、強いわ!」 シデン 「影狼のカイよ。1つだけ聞かせて欲しい。先ほど申していた通り、この世は乱れ始めている。そして、その動きは貴殿たち影狼が守ろうとしている、民たちの動き。それをどう考える?」 カイ 「そうだね。あなたの言う通り、今や大江戸幕府を倒そうとする勢力は一般の民に広がりつつある。ちょっと悲しいけどね。本当に民が求める事ならば俺たちは受け入れる。気に入らないのは・・・お前たちのように覇王の力と共に暗躍する連中がいることさ。影狼に与えられた最大の任務は、大江戸幕府の守護ではない。真の平和を守る事!覇王の血を継ぎし者を打ち倒す事も、任務のひとつ!人間にありあまる力など不自然きわ まりないだろう?・・・潰させてもらう」 |
領主アギラの屋敷に辿り着いたアズサとカイ。そこに立ち込める不穏は気配を、カイは敏感に感じ取っていた。 カイ 「アズサ、前に出ないで!」 張り詰める空気の中、美しい声がこだまする。 妖狐 「影狼のカイ・・・待っていたわよ。おそらく東の国では最強の男」 二人の前に霧が現れ、そして晴れた後、そこには美しい、けれども妖艶な女性が立っていた。 カイ 「妖怪のたぐい・・・だな。」 アズサ 「カラス天狗に会っておいてよかったかもね・・・少しは免疫がでたみたい」 妖狐 「人は私を妖狐と呼ぶわね。フフ、気丈に振舞って・・・かわいい娘」 妖狐の妖艶な笑みに、背筋が凍りそうになるアズサ。 アズサ 「私、へんな趣味ないですよ」 妖狐 「あはは、本当にかわいい娘ね。大丈夫、あなたをあのお方の下へ届けるだけだから。もっとも、そちらの色男さんは邪魔なのよねぇ」 言いながら右手に青白く光る薄い炎をまとわせる妖狐 カイ 「妖術・・・やっかいだな」 やや緊張した表情で、刀の鞘に手をかけるカイ。 アズサ 「カイに手を出されるのも困りますからね。」 上段の構えをとるアズサ。 妖狐 「東には影狼・・・西の国では新撰組という剣客集団が現れたみたいだし。楽しみな世の中に呼んでくれたわ。さぁ、行くわよ!」 |
アズサとカイは、領主の館のその庭で、妖気をまとった男と対峙した。 アギラ 「ほう、良くぞ来た、わざわざ自分から来てもらえるとはな。」 凄まじい威圧感。妖狐を退けたアズサの眼前に立つ男、領主アギラ。 アギラ 「アズサ。あのお方がお前を必要としている。おとなしくこちらへ来るがよい。」 アズサ 「あのお方って言われても、心当たりがないの。せっかくのお誘いだけど、断らせていただきます。どうしてもっていうなら・・・お相手します。」 静かに刀を抜くアズサ。その立ち姿の美しさは、名だたる剣客をも唸らせる。 カイ 「さぁて、どうせお前も引く事は出来ないのだろう?悪いがアズサを守る使命があるのでね。どうぞ、と言うわけにはいかないな。」 二本の刀、その強さから"双龍"と呼ばれるほどの男。 アギラ 「ほう、貴様ら・・・やはり一筋縄でいく相手ではないようだな。者ども、かかれ!」 叫ぶと同時に、庭の茂みに隠れていた何人もの手下がアズサとカイめがけて飛び掛る!しかし、手下たちがアズサやカイのもとに辿り着く前に、バタバタと倒れていく。 アギラ 「な・・・何事だ?」 倒れた手下の背中には、正確に急所を射抜いている矢が刺さっていた。 アズサ 「さすがユリさん・・・遠くから撃ってるのに正確・・・」 油断することなく刀を構えながら呟くアズサ。 アギラ 「くぅ・・・よかろう!我が直々に相手してやろう!来い、小童どもが!!」 |
アギラ 「ぐお・・・アズサ・・・ここまでの手だれとは・・・」 打たれた胸を押さえ、崩れ落ちるアギラ。 アズサ 「ハァ、ハァ、甘く見ないで。これでも剣術師範。私が勝てないのはカイぐらいなんだから。」 アギラ 「甘く見すぎた・・・わけではないな。相手が悪かったか・・・」 アズサ 「さぁ、教えて!あなたたちの目的は何?どうして私を狙うの?」 観念したようにゆっくりと語りだすアギラ。 アギラ 「すでに大江戸幕府は地に落ちている・・・長い平和が武士の魂を腐らせたのだよ。私は、真の武士が生きる世界、強者が弱者を支配する世界を作りたかったのだ・・・」 カイ 「そんな心を奴らに利用されたか」 静かに言い放つカイ。 アギラ 「そう・・・私の前に現れた。覇王の意思を継ぐ者が・・・私に力を見せてくれた!古の鬼が、伝説の武将が我の前で蘇る!!大江戸幕府を潰す力が手に入るかと思ったのだよ・・・」 アズサ 「大江戸幕府が乱れてきているのは知ってるわ。確かに、民衆の中でも、新しい秩序と新しい世界を求めているのも・・・でも、今の話と私を狙う事と、どんな関係があるの?」 アギラ 「そこの男には聞いていないのか?ふふ、なるほどな・・・この娘には酷な話だ・・・アズサ、お前が必要なのだよ、あのお方が完全な力を手にするには!お前の血が大江戸に乱世をもたらすのだ!」 アズサ 「私の血?一体何のことなの?」 その問いには答えず、カイの表情を伺うアギラ。 カイ 「奴は京都・・・だな?」 アギラ 「ふ、その通りだ。貴様・・・恐ろしい男だな。何でもお見通しか。」 カイ 「腐れ縁のようなものだ・・・」 アギラ 「京都は幕府側と倒幕側による、血で血を洗う戦場になっているぞ。ここに来るまで、妖魔にも出会ったであろう?すでに魔王の力の片鱗をみたのではないのか?すでに覇王の力は目覚めはじめているぞ!ク・・・クククク。京都に行き、地獄を見るがよい!」 叫ぶアギラの表情には狂気が満ちていた。 アズサ 「京都・・・カイ、京都に行くんだよね?この国を乱そうとしている人を探しに。 私も、行くわ!私の血が大江戸を乱世に導くって何・・・?それに、それにね、私もカイの力になりたいの。昔とは違うんだから♪ もうカイの足手まといにはならないわ」 そしてその視線の先には、いつものやさしいカイの表情がある カイ 「アズサ、強くなったね。アズサが行きたくないって言っても、連れて行かなきゃいけないんだ。まずは新撰組に連絡をとる。 アズサ、京都で、宿命が待っているよ・・・」 これから迫り来る、さらなる恐怖。しかしその恐怖以上にアズサの心を支配する気持ち・・・それはカイへの信頼。 京都へ向かう少女に迫り来る宿命とは? 少女の旅が今、幕を開ける。 |
館の奥に向かったアギラを追ったアズサとカイはそこで起きている異変に気付いた。 カイ 「これは・・・領主アギラ?その手下・・・皆、倒されている!」 アズサ 「カイ・・・館の奥から・・・変な気配がしない?」 カイ 「なんだこの気配は!?何かやばい・・・アズサ、俺の後ろにいてくれ!」 多少の動揺を感じつつ、カイは奥へと意識を集中させた。奥の暗がりからゆっくりと姿を現したのは、鮮やかすぎる真紅の鎧を身にまとった青年であった。 男 「お主たちは誰だ?丁度よい・・・教えてくれ、ここはどこだ?我は何をしている・・・?」 アズサ 「だ、誰!?」 男 「我は・・・我は真田幸村。他は・・・何もわからぬ。ただ、我の血がうずくのみ・・・」 アズサ 「真田幸村・・・?」 カイ 「この感じ・・・人ではないな」 真田幸村と名乗った男は、カイをにらみつけながら剣を抜いた。 幸村 「さあ・・・そこの腕が立ちそうな剣客よ・・・我のうずきを止めてみせよ」 カイ 「その真紅の鎧・・・まさか、まさか真田幸村とは・・・戦国時代に生きたあの英雄!?」 カイの表情に戸惑いと旋律が走る。覇王の血を継ぎし者とは、妖魔のたぐいだけではなく、歴史上の英雄をもこの世に蘇らせてしまったのであろうか!? |
二刀流、カイの刀が幸村の真紅の鎧に打ち込まれる! 真田幸村 「う、うおおおおお!!」 次の刹那、幸村の身体が硬直したように動きを止めた。そしてゆっくりと口を開く。 真田幸村 「お主たち・・・名は?」 その瞳には先ほどまで宿っていた狂気が消えていた。 カイ 「影狼のカイ」 アズサ 「私は・・・アズサといいます」 真田幸村 「ふぅ・・・、二人とも素晴らしい剣術を使う。迷惑をかけたね。どうやら覇王を継ぐ者の意のままに動いていたようだな。」 アズサ 「あの・・・あなたは、本当にあの真田幸村様なのですか・・・?」 真田幸村 「ふふ、疑いたくもなるだろうね・・・そう、今より200年以上も昔に生きていた男、真田幸村だ。」 カイ 「まさか・・・すでに奴があなたほどの人を呼び出す力を・・・?」 200年以上も昔に生きていた伝説の武将が目の前に。とうてい信じられない話、しかしカイは理解していたようだった。 アズサ 「カイ、説明して・・・知っている事、教えて」 カイ 「そうだね。この状況で隠してもしょうがないね。少しだけ話してあげる。はるか昔、覇王と呼ばれた男がいたんだ。当然その覇王はとっくに死んでいるわけなんだけど、その怨念が力となって、ある男に取り付いて今も生き続けている。その男こそ、俺たちが追いかける京都に潜む男。名をリュウ。」 アズサ 「覇王・・・リュウ・・・」 カイ 「恐るべきはその覇王の怨念の力。一説によれば歴史に消えていった者たちをこの世に呼び戻す力だと」 真田幸村 「そして私はその力に呼び戻された・・・というわけだよ。」 カイ 「本来なら・・・そこまでの力を発揮するには、アズサの力が必要と聞いているのに」 アズサ 「え・・・?」 真田幸村 「リュウというのか、あの男は。たぶん君の想像を超える力の持ち主だぞ。この私が直視することすら難しかったように・・・」 苦しそうに答える幸村。 真田幸村 「ああ、そろそろお別れのようだ。この世にとどまる力の限界か。カイ、アズサ・・・あの男は危険だ・・・くれぐれも油断するなよ・・・」 今まさに消えようとする幸村を見送るカイとアズサ。英雄と呼ばれた男への敬意を表して・・・ そして幸村は霞となるかのごとく消えたのである。 アズサ 「私の力が必要・・・?どうしてなの・・・?」 アズサは、胸によぎる言いようのない不安を無理やり押し殺して質問を続けた。 カイ 「アズサ、その答えは京都についてからにしよう。ゆっくりと、ゆっくりと理解していこう」 京都に潜む男、リュウ。歴史上の英雄ですら、その配下におさめる男。 幕末という名の動乱が色濃くなる文久3年、その暮れの出来事であった・・・ |