狙撃
題名:狙撃
原題:Threat Case (1991)
作者:J・C・ポロック J.C.Pollock
訳者:広瀬順弘
発行:早川書房 1993.2.28 初版
価格:\1,800(本体\1,748)
何を考えてハヤカワがこの本をいきなりハードカバーに出したかわからないのだけど、内容を読んでみると、ますますわからなる。前回『
復讐戦』はポロックにしては珍しく面白かったのだけど (所詮『樹海戦線』には及びもつきませんが)、その同じキャラクターたちを持って来て、続編としたのが本書。でも前作でやや浮いたポロックという作家も、またこの作品でざぶーんと沈んでしまったのが、ぼくの印象で、本来、この本の感想はパスしたいところ (^^;)
もともとポロックという作家は『樹海戦線』が目茶苦茶面白かった。まだ冒険小説を読み始めてもいないぼくが、評判を聞いて読んでみたら、たまらなく良かった。そういう思いをしてポロックという作家を発見した人は、大抵彼の作品を読みつづけているのだと思う。そして読むたびに『樹海戦線』への思いを募らせては、がっくりと頚を項垂れる、ということを繰り返して来たのではないだろうか? でも、まあぼくを含めてそういう奇特な人びとがいるからこそ、ハヤカワはその読者の好意に甘え、こんな下らん本をハードカバーにまで奉りあげているんだろうと思う。でも、そんな出版側の自信は空しいものでしかないのだ、この本に限って言えばね。
今回はなんだかつなぎみたいな作品で、次の作品をお楽しみにね、って感じの構造を持った、中身のない作品であった気がする。やけに詳しくディテールが描かれるのは、毎度軍事的な部分、武器のハードウェアの部分などだけど、それにもまして気になるのは、デルタフォースとか、元ベトナムの特殊部隊の兵士たちへの、無反省な賛辞の束である。
ランボーも真っ青というほど右傾した軍隊描写と国家主義に英雄像を幻覚で見てるポロックの姿は少し気持ち悪いと思う。もっと個人としての人間を描けないのかよ、肩書きばかりかよ、と思うのはぼくの穿った見方か? ともかく作品に見るべき面白さがないと、こうしたアラばかりが目についてしまうのです。
さて、内容はというと合衆国大統領狙撃の話。『ジャッカルの日』のようなものですが、狙撃者の行動のディテールを楽しめないと、もう全滅という本です。ちなみにぼくは C・トーマスの『
闇の奥へ』のディテールは、同じことの繰り返しと言われようとも、そのディテールの違いだけで十分リズムに乗ってしまうという《面白ディテールなら大好き人間》です。でもポロックのディテールは、イマイチ半端だなあ、と思ってしまった。でも『樹海戦線』の夢よふたたび、で、きっと次作もまた読むんだよなあ、あーあ。哀しい性ですねえ。
(1993.03.07)
最終更新:2013年05月02日 22:13