泥棒はスプーンを数える
題名:泥棒はスプーンを数える
原題:The Burglar who Counted The Spoos (2013)
作者:
ローレンス・ブロック Lawrence Block
訳者:田口俊樹
発行:集英社文庫 2018.9.25 初版
価格:¥1,100
物凄く久しぶりのブロック。マット・スカダーのシリーズでハードボイルドの真髄を描き、
殺し屋ケラーのシリーズではブラックユーモアの味を存分に出し、短編集ではニューヨーカーならではのお洒落な短編やスラップスティックで遊んだり、そして小説の書き方を出版したり、真の意味での巨匠。
そしてマットとケラーの中間地点(少しケラー寄り?)に位置しそうなのが、この泥棒バーニーのシリーズ。ユーモア・ミステリというと良いだろう。そしてお洒落なニューヨーカー・ノヴェルとしての味わいもたっぷり。
その10作目。
泥棒の表の顔は古書店経営者なので、店番をしている時間で読んでいる本の話なども出てくる。コナリーのハリー・ボッシュとか、ディーヴァーのリンカーン・ライムとか、ダン・J・マーロウの『ゲームの名は死』とか『サキ短編集』とか。
でも今回の事件の始まりはスコット・フィッツジェラルドの生原稿。蒐集家に依頼され盗みに入るシーンが、バーニー・ローゼンバーの本業の最初の見せ場となるが、それがスリリングと言うとそうでもない。バーニーの脳内独り言がなんとも楽しいのだ。
また友人のキャロリンとの日々の食事シーンでの会話のやり取りは、本シリーズならではのウィットと情報に満ちており、もはやストーリーなどどうでも良くなる。
巻末解説でも書かれている通り、ストーリーというエンジンを搭載していない熱気級のような推進力で、それでいて読ませる作家がブロックなのである。
ケラーのシリーズでも本業の殺し屋の描写より多い趣味の切手収集に関わる主人公の行動や旅先への移動や初めての街への新鮮さを楽しんたりする記述が何とものどかなのだが、本書もニューヨークの街角での日々や出会いを満喫するバーニーの姿や思考の有様は何とも素敵だ。
全体構造はミステリであり謎解きでありながら、それ以上に語り口で乗せられてしまう作品。ぼくの場合、大体5ページ置きくらいに声に出して笑ってしまった。苦笑、爆笑、微笑、
その他。
力を入れて読むべき本ではないが、そんな本の間に挟んで読みたい。そういう時間も欲しくなるような作品であります。
(2019.1.26)
最終更新:2019年02月25日 13:41