地中海クルーズにうってつけの謎解き
題名:地中海クルーズにうってつけの謎解き
原題:A Cruise To Murder (2018)
著者:
ドーン・ブルックス Dawn Brookes
訳者:田辺千幸
発行:創元推理文庫 2025.6.20 初版
価格:¥1,000
コージー・ミステリーを読むのはいつ以来だろうか? C.A.ラーマーの『マーダー・ミステリー・ブッククラブ』のシリーズ、シャナ・デリオン『
ワニの町へ来たスパイ』に始まるいわゆる<ワニ町シリーズ>。コージーはひょっとするとシリーズ作品が多いのだろうか?
最近ご無沙汰している札幌読書会でも最も人を集めるのがコージーだったのではないだろうか? メンバーはおよそ9割がご婦人であったように思う。それも何故か読書会でも最も盛り上がるのがコージーであるように今でもぼくは思っている。
本書はそういう意味では久々のコージー。しかも既に和訳が二作、原作は十数作まで続く人気シリーズということである。札幌読書会があるようなら、久々に足を運びたく強く希う。コージーのときの読書会の盛り上がりはなかなかのものだからだ。
され本書はコージーというだけではなく、クルーズ船を舞台にしたシリーズの第一作である。初回は地中海クルーズということで、地中海クルーズ経験者のぼくは期待をしたのだが、このクルーズはイギリス発ということもあってか、地中海に入った途端、スペインとポルトガルの辺りで引き返してしまい、むしろジブラルタル海峡を越えて大西洋を航海しているシーデイの方がずっと永いということになっている。
ネットで確認しても同様の航路であるらしく<地中海クルーズ>というには外洋航海だらけのクルーズなので、本書でもその辺りはあまり期待通りとは行かなかった。
クルーズ船が文字通り密室として使われるのかと思いきや、殺人そのものは停泊中のリスボンの港で起こる。主人公は女性二人で、クルーズ船で働く看護師のサラと彼女に誘われて休暇を楽しむ警察官のレイチェル。
船内でも船外でも、本作の主役となるのは、命を狙われる独り船客の資産家のお婆ちゃんマージョリー。遺産狙いと思われる怪しげな刺客らしい影がちらほらする中、行きがけから、彼女を守り、彼女を狙う者の正体をつきとめようと二人のヒロインが奔走する。
クルーズ船という巨大な密室の中で、クルーズと共に進行するストーリーだが、内容はコージー・ミステリー。書き手はヒロインの一人と同じ看護師の経験も持つ女流作家ドーン・ブルックス。
ぼくは、シリアスでリアルでどちらかと言えば凄惨な事件を扱う社会派の物語を好んで読む傾向があるのだが、時にはこうした
ソフトタッチの(だからこそコージー・ミステリーというのだが)読書で心を整えないといけないので、本シリーズは救いのない物語の合間などに、続けて読んでゆこうと思う。
(2026.7.30)
最終更新:2026年07月31日 01:46