王国記
作者:花村萬月
発行:文藝春秋 1999.12.15 初版
価格:\1,238
『ゲルマニウムの夜』の続編。中編二つ。本来前作も『王国記』のタイトルでと作者は言っていた。そしてこれら連作中短編小説集は、長大なるサーガの開始であることも。なのに、いきなりこのタイトルでいいのか? と版元に問いただしたくなる。
前作の続編とは言っても物語が閉じてしまったわけではない。ただの続編。そして次が期待される中編小説二つっきり……。いいのか? ほんと。
次回作は『王国記 II』とでも付けるつもりなのか? 出版社の刹那主義というか現実主義というか、ぼくはわからん。読者を心配させるな。ずーっと長い間待ったうえで『王国記』と題を付して、超分厚い本を出版してくれてもぼくは良かったのだ。
こんな風に分散して世に出て行って、そのうち誰も読まなくなる、っていうのもぼくにはいいけど。ぼくはどうせ読むのだ。
今のところ、この物語は、「萬月はどこへゆくのだ?」という空気よりも「萬月はどこから来たのだ?」の雰囲気の方が強い。特に『ブエナ・ビスタ』は赤羽修道士の俗界への復帰編とでも言ったもので番外編のよう。
『刈生の春』はごつい、骨太のきちんとした感動編だった。へえ、こういう世界も書けるんだ、って驚く。純文学しているかな、という感じ。ぼくの場合、萬月なら純文学しても許せる。それだけ読める作家だと思っている。
この後が楽しみな「旅の途中」感覚の強い作品。前作に続き、萬月ファンは必読です!
(2000/01/26)
最終更新:2006年11月23日 15:58