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使い魔は手に入れたい-6 - (2007/07/22 (日) 23:13:16) のソース

夢というのは睡眠中に起こる知覚現象を通して、現実ではない仮想的な体験を体感する現象だとどこかで読んだ本に書いてあった。 
見た者の将来に対する希望・願望を指すか、これから起き得る危機を知らせる信号とも言われるそうだ。 
そして私が見た夢は女性を殺す夢だった。細部まではよく覚えていない。 
ただ女性を殺す夢だったというのは記憶に残っている。 
つまり私は女性を殺す願望を持っているということなのだろうか?違うと言い切りたい。 
しかし違うとは言い切れない。手に持った二つの『手首』を見ながらそう思った。 
何故自分はこんなものを持っているのだろうか?手首は右手と左手。大きさがそれなりに違うことからそれぞれ別人のものだろうと推測できる。 
というか冷静に考えても意味が無いだろうこんなこと! 
手首を掘った穴の中に叩きつけ土をかぶせる。これでよし。私はそのままもとの部屋に戻っていった。 
どうしてこのようになったのかというと話は私が起きたときにまで遡る。 
朝、といってもまだ暗闇が残る早朝だったが私はなにかいつもと違う感触に違和感覚え目を覚ました。 
そこは何故か外だった。そして両手には手首を持っていた。 
「はぁああああああああああああああああああああああ!?」 
叫んでしまったのは仕方ないと思う。起きたら両手に手首を握ってたら叫ぶのは当たり前だろ? 
勿論混乱した。部屋で寝ていたはずなのに何故外で寝ているのか、何故手首を両手に握っているのか、誰だって混乱するだろう。 
混乱の末だした結論はとりあえずこの両手を処分することだった。 
自分が寝ている間に何が起こったのか、それは理解できない。手首を握っているなんて理解の範疇を超えている。 
しかしなにかやばいことに巻き込まれたのではないか?その思いから持っていてやばいものを処分するのは当たり前の判断だろう。 
だから埋めたのだ。別にそこらへんに捨ててもよかったのだがそれが見つかって私が捨てたものだとばれたらやばいだろう? 
場所がわからなかったので捜しまわったすえにようやく部屋に着き、ベッドに身を投げ出す。 
なぜ手首なんて持っていたのだろうか。自分の体が勝手に動いたのか、はたまた誰かに動かされたのか。
デルフがいればわかったのだろう。しかしデルフは窓から放り投げたままだ。今更後悔しても仕方ない。 
自分が考える可能性として一番は体が勝手に動いただろう。王女への接吻、ワルドとの対決時、私の体は勝手に動いた。 
何故かはわからない。わかるはずも無い。今自分にできることは忘れることだ。気にしないことだ。 
わからないのなら考えてもわからない。なら気にしないのが一番だ。わからないことを考えて頭をつめていても幸福にはなれない。 
しかし解決するヒントを持っているものはいる。 
デルフだ。デルフはワルドとの戦いを詳しく話そうとしなかった。 
それにはなにか理由があるのだろう。だがそれこそ体が勝手に動く理由のヒントになるものだと信じている。 
だが無理に聞きだすつもりは無い。デルフが話してくれるまで待つつもりだ。時間はある。いつかちゃんと話してくれるだろう。 
とにかく、気が滅入ることは忘れるんだ。忘れるには寝るのが一番だ。 
窓から日の出が見える。関係ないな。寝よう。目を瞑っていれば眠れるだろう。 

「おきてくださいヨシカゲさん」 
その言葉で目を覚ました。目を開ける。そこにいたのは、 
「シエスタ?」 
「はい、おはようございます」 
シエスタだった。 
「お食事をお持ちしました。食べてください」 
そう言うとシエスタは銀色のトレイを枕元に置く。 
そうか、いつの間にかちゃんと眠っていたんだな。 
「よかったですね目が覚めて。もしかしたら目が覚めないんじゃないかって皆で心配してました」 
「皆?」 
「厨房の皆です」 
ああ、そういえば厨房の連中に気に入られていたんだったな。すっかり忘れていた。 
そう思いながらトレイにおいてあるシチューを持ち食べ始める。 
目が覚めて三日ぶりの食事だからな。胃の中は空っぽだ。 
「食べっぷりを見る限り本当に元気になられたんですね」 
「そうだな。おきたときはまともに歩けないほどだったからな」 
苦い薬も効果があったって訳だ。 
「それにしても何処に行ってたんですか?そんな大怪我までして?」 
「わからないな。怪我のショックかよく覚えてないんだ」 
「あ、ごめんなさい。そんなこと聞いてしまって」 
「いや、いいんだ」 
話すわけ無いだろう。女王の密命なんだから。シエスタが喋って私が話したと口走ったら大変なことになるだろう。 
とりあえず、 
「元気になって本当によかったですね」 
笑顔でそういってくるシエスタに食事を食べ終わったから出て行ってくれというほど私は空気が読めないわけじゃなかった。

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