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ドロの使い魔-2 - (2007/08/21 (火) 10:12:51) のソース

「で、オメーは何なんだ?」
 セッコと名乗った男がまた同じ質問を繰り返してきた。馬鹿にも程があるわ。
「しつこいわね、さっき自己紹介したばっかりじゃない!」
「名前はわかったつってんだよお、その前後が意味不明なんだああ!」
 まさか人語を解さないなんて事はないでしょうね。
「だからここはトリステイン魔法学院で、あんたは私の使い魔。」

「それがわかんねえてんだろおおおおおおお!」
 どうやったらこの変な奴にうまく説明できるの、後にして休みたいわ。
「後でゆっくり説明してあげるから、わたしについてきなさい。」
「うん。」
 セッコは大人しく後をついてきた。案外素直じゃない。
 それとも使い魔の印のせいなのかしら?
「ここが私の部屋よ。とりあえず入りなさい。」
「うん、うん。」

 ふと、辺りが埃っぽいとうかカビ臭い事に気づいた。
 あ、そういえばこいつゴミの山の中から出てきたんだったわね……

「ちょ、ちょっと待ちなさい!」
「?」
「その前に体を洗ってきなさい、あなたゴミの中から這い出してきたのよ。」
「わかった。」

 凄い勢いで行っちゃったけど、水汲み場が何処か判るのかしら?
 まあいいわ、今日は凄く疲れたし昼寝でもしよう。

 あいつは一体何なんだぁ?変な服を着てるし偉そうだし、しかもあいつに命令されると、なんとなく素直に返事をしてしまう。
 不快ではない、しかし何が何だかわからねー。
 その上自分のことすら名前以外思い出せないときたもんだ。
 考えても始まらないし、確かに体はカビ臭い気がするし、洗ってから話を聞こう。

「……どこで洗えばいいんだ?」

 そうだ。水がある場所なら、水の音がするんじゃねえか?
 そう思って耳を澄ますと、何かを洗っているような音が聞こえてきた。
 きっとそこには水があるに違いない。
 程なくして水場が発見できた。使用人っぽい服を着た女が洗濯をしている。
「この水で体を洗っていいか?」
「きゃあああああ!!」
 !?

「あ、す、すみません! ちょっと驚いてしまって……
 でも、でもここは貴族様の来る様なところでは、……」

 畜生また変な奴か。

「貴族じゃねえ、オレはセッコだ。 で、この水は使っていいか?」
「それは失礼しました。かまいませんよ。
 でも、できればお洗濯が済むまで待ってもらえますか。あ、あと私シエスタって言います!」
「わかった。」

 初見のオレに水をただで使わせてくれるなんていい奴だ。
 だが張り付いた様な黒いおかっぱ頭がどうも気に食わねえ。
 ボーっと眺めていると洗濯は終わり、シエスタとかいう使用人は何処かへ行ってしまった。さっさと体を洗って戻ろう、ルイズに聞きたい事が多すぎる。

 あ……あー、部屋はどこだっけ?

「ふぁあ……もう夕方かぁ」
 ちょっと昼寝のつもりがずいぶんと時間が経っちゃったわ。
 あら、そういえば使い魔はどこ?

「うおあ! うおっ月 月があぁ!」

 下が騒がしい、窓から身を乗り出し見てみると、
 変な服を着た男が騒いでいた。ってセッコじゃないあの馬鹿ああああああ!!
「ちょっと何やってるのよ、早く戻ってきなさい!!!」

「おあ ルイズ! 月 月っ月!!!」
「いいから戻ってこいって言ってるでしょ!」

「うぼあ……あ……わかった。」

 ため息をつきつつ窓に背を向ける。
 どう考えてもこの使い魔は使えない。涙が出てくる。

 ドスッ
「戻った。」

 なんか早くない?
「ねえ、どこから入ってきたの?」
「窓。」
「そう。早いのはいいけどできればドアから入って欲しいわ。」
 え、窓?!ここ3階だったわよね?
「セッコあなた魔法使えたの?」

「魔法なんか使えるわけねえだろぉ、普通に下からジャンプして上がってきた。」
「そ、そう、あなた結構やるわね。」
 前言撤回。こいつ意外と使えるかもしれないわ。

「なぁー聞いてもいいか?」
「何よ。」
「素朴な疑問なんだよぉ……メチャ最高に……」
「言ってみなさいよ。」
「何で月が二つあるんだ?お前は何なんだ?オレは何をすればいい?」
「月が2つあるのは当たり前。私は貴族でメイジのルイズ。セッコは私の使い魔。」
「月とルイズはともかく、いや月はおかしいがこの際どうでもいい、使い魔って何だ?」

「あなた何も知らないのね。」
「自分の事も怪しいのにそんなこと判るかよぉー」
 セッコは物凄くしょんぼりした様子で床に座り込んでしまった。ちょっと言い方が悪かったかもしれないわ。とりあえず説明してやることにする。

「まず、使い魔は主人の目となり、耳となる能力を与えられるわ。」
「便利だ。」
「でも無理みたいよ、さっきセッコが下に居た時わからなかったし。」
「ルイズオメー使えねーなぁ」
 言われてみれば原因は私かもしれない。でもとりあえず一発殴る。

「使い魔は主人の望むものを見つけてくる、秘薬とか。」
「それは多分できない。」
 最初からそれは期待してないわ。

「使い魔は主人を敵から守る存在である。」
「相手による。」
 まあ……そりゃそうよね、妥当な答えだわ。平民の癖に。
「あんたって、強いの?」
「わからない。」
「戦ったこととかないの?」
「うう……あるようなないような……」
 記憶が戻らないことには戦わせる気にならないわね、強そうなんだけど。

……いい事を思いついたわ。

「使い魔は主人の身の回りの世話をする。」
「例えば?」
「起こしたりとか服着せたりとか洗濯したりとかよ。」
「できるけどやりたくない。」
「やりなさいよ馬鹿。」
「ご褒美くれるなら。」
「食べ物と寝る場所の世話は私がするのよ?それで十分でしょ?」
「うーあー」
「じゃあ他に何が欲しいのよ。」
「甘いの。」
「飴とかでいいのかしら?」
「うん!うん!」
「気が向いたらあげるわ、でもわたしの命令はちゃんと聞きなさいよ?」
「うん。」
 意外と扱いやすいかもしれないわ。けど明らかに教育が必要ね。

「あなたと話してたら疲れたわ、寝るからちゃんと朝起こしなさいよ。」
「オレはどこで寝るんだ。」
「ベッドが一つしかないから床ね。毛布ぐらいあげるわ、おやすみ。」
「わかった。」

 やたらと寝るのが早い奴だなあ とセッコは思った。
 床に転がって考える。オレは気づいたらここにいた。
 ルイズはオレのことを使い魔と呼ぶ。飯と、寝る所と、甘いのをくれるとも言った。
 人間として扱われてないような気もするが、同時に何だか懐かしい。
 オレはもしかすると元々そういう生活を送ってきたのか?考えたくねえ。
 そういえば昼会ったシエスタって奴は親切だった。
 だがあの髪だけは許せねえ、いつか毟ってやる。



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//第五部,セッコ
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