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ドロの使い魔-15 - (2013/12/01 (日) 17:07:36) のソース

裏口の方にルイズ達が向かったことを確かめると、キュルケはギーシュに命令した。 
「じゃあおっぱじめますわよ。ねえギーシュ、厨房に油の入った鍋があるでしょ」 
「揚げ物の鍋のことかい?」 
「そうよ、それをあなたのゴーレムで取ってちょうだい、取れたらそれを入り口に向かって投げてね。」 
「いいけど、[錬金]で油を作る方が早くないかい?」 
「馬鹿ね、ギーシュ。少しでも消耗が少ないほうがいいに決まってるでしょう?それに、ゴーレムは再利用できるわよ。」 
「ううむ・・・」 
「さっさと行く!」 
「はいはい。」 
「ハイは一回!」 
「はい」 

ギーシュは、テーブルの陰で薔薇の造花を振った。 
花びらが舞い、青銅の戦乙女がその場に現れる。それは矢の雨の中ぴょこぴょこと厨房に走った。 
柔らかい青銅に、何本も鋼鉄の鏃がめり込む。 
「もっと厨房の入り口付近に出せばよかったじゃないの」 
キュルケが、手鏡を覗き込み、化粧を直しながら呟いた。 
「今の僕じゃあ難しいんだよ、そんなことよりきみはこんなときに化粧するのか。」 
ギーシュは呆れつつも、何とか厨房にたどり着いたゴーレムに油の鍋を投げつけさせた。 
キュルケは杖をつかんで立ち上がる。当然のように飛んで来た矢を、タバサが風を起こし吹き飛ばした。 

「だって歌劇の始まりよ?主演女優がすっぴんじゃ、しまらないじゃないの!」 
キュルケの火球が、撒き散らされた油に引火し、増幅されて入り口周辺を火の海に変えた。 
それは傭兵たちに次々と燃え移り、何とか消そうとのたうち回る被害者が、生きた炎の壁となって更に被害を広げていく。 

「この地獄絵図が、歌劇ねえ。過激、の間違いじゃないのかな」 
ギーシュがぽつりと呟いた。

岩ゴーレムの肩の上、フーケは舌打ちをした。 
突撃を命じた傭兵たちが炎に巻かれて転げ回っている。隣に立った仮面の貴族に向かって不満を呟いた。 
「ったく、やっぱり金で動く連中は使えないわね」 
「あれでよい」 
「とてもそうは見えないけど」 
「倒さずとも、かまわぬ」 
「あのねえ、それじゃ何のためにわたしはいるのよ」 
しかし、男は答えず一方的にフーケに告げた。 
「俺はラ・ヴァリエールの娘を追う、お前は好きにしろ。合流は例の酒場で。」 
「は?」 
言うが早いか、男は風のように暗闇へ消えた。 
「ったく、勝手な男だよ。」 
下を見ると、入り口から噴き出す炎の風により弓兵までが壊滅状態に陥っている。 
逃げたら殺すとは言ったものの、殺す手間の方が惜しい。 
フーケは下に向かって怒鳴った。 
「ええいもう!頼りにならない連中ね!どいてなさい!」 
ゴーレムが地響きを立てて、入り口に近づく。 

さて、どうしてくれようかしら。 
・・・やっぱり、建物にはアレよね。 
岩ゴーレムの腕を、螺旋状に変化させて思い切り突き出した。 

「おっほっほ!おほ!おっほっほ!」 
酒場の中では、キュルケが勝ち誇って笑い声を上げていた。 
「勝ち誇ってるとこ悪いんだけどさ」 
ギーシュが突っ込みを入れた。 
「なによ?実際勝ったも同然じゃないの」 
「じゃあ、窓から見えるあれは何なんだい」 
フーケのゴーレムが、地響きを立てて接近してくる。 
「あは、あはは、あははははは」 
キュルケの笑い声が乾いたものに変わった。

「タバサ、ギーシュ」 
「なんだね?」 
「逃げるわよ」 
タバサは頷いた。ギーシュは首を振った。 
「逃げない!僕は逃げません!」 
「・・・あなたって、戦場で真っ先に死ぬタイプなのね」 
タバサは近づくゴーレムを見て、何か閃いたらしい。ギーシュの袖を引っ張った。 
「なんだね?」 
「花びら。たくさん」 
「それがどーしたね!」 
「いいからタバサの言うとおりにして!」 
キュルケの剣幕に、ギーシュは造花の薔薇を振った。大量の花びらが宙を舞う。 
舞った花びらがタバサの風の魔法で、ゴーレムに向かっていく。 
「それで?」 
タバサが呟いた。 

「錬金」 

ゴーレムの肩に乗ったフーケは、自分のゴーレムに花びらがまとわりついたのを見て、鼻を鳴らした。 
「何よ。贈り物?花びらで着飾らせてくれたって、手加減なんかしないからね!」 
言いつつも、念のため少し様子を見る。 
その時、まとわりついた花びらが、ぬらっと何かの液体に変化した。 
土のエキスパートであるフーケはすぐに気づいた。錬金の呪文である。 
油の臭いが立ち込め、それに合わせるように火球が飛んできた。

なるほどねえ。でも、この“土くれ”に錬金で挑むなんて、10年早いわ。 
ニヤニヤ笑いながら既に準備していた呪文を完成させる。 

「錬金!」 

“トライアングル”の強力な錬金を受けた油は一瞬で土へと還り、火球に対する盾となりつつさらさらと地面に落ちた。 
「さてと、余計な何かをされる前に建物ごと生き埋めにしてやるとするかねえ」 
フーケは改めてゴーレムの腕を振り上げた。 

「や、やっぱりダメじゃないか!!」 
「思った以上に戦いなれてるわねえ」 
「・・・」 
キュルケたちは三者三様に落胆した。 
「さあ、逃げるわよ!」 
「いや、まだだ」 
ギーシュが真面目な顔で呟いた。 
キュルケが反論する。 
「土ドットのあなたが、フーケに対してなにができるっての?」 
「いいや、できるね!」 
「馬鹿なこといってないで、手遅れになる前に行くわよ!」 

勝ち誇ったフーケは、傭兵たちを退避させると思う存分暴れまわった。 
以前捕えられた恨みもあるが、それ以上に貴族用の高級宿である“女神の杵亭”の存在自体がわりと許せなかったのだ。 
「まずは裏口からブチ崩そうかねえ。」 
敵を逃がさず建物を完全に解体すべく、端から潰していく。 
しばらくすると、“女神の杵亭”は瓦礫の山と化した。 
「さあて、あいつらはちゃんと埋まってるかしら?」 
フーケは勝利を確認しようと、瓦礫の上へとゴーレムに乗ったまま踏み出した。 

「な、何だってんだい!」 
足元が抜け、バランスを崩したゴーレムが崩落しながら更に埋まっていく。 
「よ、よくもよくもよくもおおおお!ガキ共に2度も土をつけられるなんて!」 

ガリガリと引っかくような音がして、少し離れた地面からヴェルダンデに乗ったギーシュが現れた。 
タバサとキュルケも後に続き顔を出す。 

「ね、うまくいっただろう。なんせ、僕の可愛いヴェルダンデは[土竜]だからね。」 
「シルフィードも凄いと思ってたけど、あなたの使い魔も滅茶苦茶ね。岩盤を無理矢理掘り進むなんて」 
キュルケが呆然と呟いた。 
ギーシュが胸を張って答える。 
「鉱石の発掘だってお手のもんさ」 
「絶対、主の実力に見合ってないわよ」 
「失礼な、僕はまだ成長期なんだよ!」 
「そうかしら」 

ヴェルダンデが誇らしげに鼻をひくひくさせている頃、桟橋へとセッコたちは走っていた。ワルドが建物の陰に滑り込んで階段を駆け上がる。 

「なあー、何で登ってんだよお?」 
セッコの呟きは無視された。地理がわからない以上ついていくしかない。 
登りきると異様な光景が目に飛び込んできた。 
山ほどもある巨大な樹に、船が生っている。 
「ほえ・・・何だあこれ・・・」 
「何って、桟橋よ。あれが船。」 
ルイズがこともなげに言った。ワルドも全く普通な様子だ。 

オレがおかしいのかなあ?



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