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マジシャンズ・ゼロ-3 - (2007/06/10 (日) 14:38:03) のソース

アヴドゥルは夢を見ていた。 
自分を襲った謎のスタンドと戦う、ポルナレフとイギー。 
ポルナレフのため命を落とすイギー、そしてボロボロになりながらも勝利するポルナレフ。 
強大なDIOのスタンド。 
四人掛かりでも歯が立たず、能力の正体と引き換えに散る花京院。 
一度は追い詰めるが、[[ジョセフ]]の血で復活を果たすDIO。 
最期の最期に、今まで発現しなかった能力で勝利を納める承太郎。 
ジョセフが蘇生する姿を最期に意識が浮上する。 
左手への激痛と共に………。 

ルイズの契約のキスが終わり、顔を離すとアヴドゥルは唸り声と共に目を覚ました。 
「ッ!?」 
いきなり覚醒したためルイズは反射的に身を離す。 
「グッ……ぬう……」 
体を起こしつつ左手を擦る。 
左手の痛みは引いていたが、触ってみると何か痣のようなものができていた。 
さらに、目を覚ましたがアヴドゥルには訳が分からなかった。 
(……ここはどこだ?それに……なぜわたしは生きている?さっきの夢は?) 
いきなりの日光にぼやける視界を細め、周りを見回す。 
さっきまでDIOの館に居たはずだ。 
しかし、今いる所は太陽の刺す野外だ。 
それに………たしかに死んだはずだ。 
謎の空間によって体がバラバラになっていったのを覚えている。 
あれで生きているはずない、………普通ならば。 
(すると……第三者のスタンドによって助けられたのか?) 
そんなスタンド聞いたことも無いが、可能性はソレしか浮かばなかった。 
取り合えず、自分が生きていることについての考えを纏め。 
今度は夢に付いて思考を移そうとするが、目の前から質問を掛けられ中断した。

いきなり唸り声を上げながら起き上がり。 
自分を無視して何か考え込んでいるアヴドゥルにルイズの機嫌はさらに下がった。 
(ただでさえ平民を使い魔にしなくちゃいけないのに、あまつさえご主人様である私をいきなり無視?…いい根性ね。 
 ルイズ興奮しちゃだめよ、落ち着きなさい、『素数』を数えて落ち着くのよ…………) 
ルイズが素数に勇気を貰っていると笑いを堪えた声が聞こえてきた。 
「ゼロのルイズー、サモンサーヴァントで平民召喚してどーすんだよw」 
誰かのその言葉を境に笑い声が再発する。 
素数パワーなど消え、赤くした顔でルイズは嘲笑の声をもう一度睨み付け黙らせる。 
落ち着くため小さく息を吐き、最初の質問をもう一度する。 
「あんた誰?」

何故か生きている自分、そして目の前の少女。 
直感的にアヴドゥルは理解した少女-ルイズ-によって自分が救われたことを。 
そのため少々高圧的な聞き方に思うとこはあったが素直に答える。 
「…アヴドゥル、モハメド・アヴドゥルだ」 
口答えせず質問に答えたから気を良くしたのか、ルイズは機嫌を直し続けて話す。 
「そう。あんた喜びなさいよ!私みたいな貴族の使い魔になれるなんて凄い名誉なんだからね!」 
「……使い魔だと?」 
「そうよ、あんたは使い魔になったの!…すっごく不本意だけど」 
コルベールは契約が上手くいき、初顔合わせも終わったのを確認すると二人に近づいた。 
始めて見る平民の使い魔、どんなルーンが刻まれたのか興味を持ち確認しようとする。 
「どれどr……ッ!」 
しかし、アヴドゥルと目が合った瞬間、杖を握り締め距離を取った。 
コルベールのいきなりの反応にルイズが疑問の目を向けてくる。 
「どうしたんですか?」 
「……いや、何でもない」 
頭を振るような仕草の後、大きな声で生徒達に言う。 
「それでは儀式も済んだことだし教室に戻るぞ」 
他の生徒達を纏めさっさと教室に戻っていくコルベール。 
ルイズが少し不信に考えている横で、人がスタンドも使わず空を飛んで行く光景をアヴドゥルが眺めていた。 
飛んでいる生徒からルイズへ言葉が飛ぶ。 
「ルイズ、お前は歩いて来いよ~w」 
「あいつ『フライ』はおろか、『レビテーション』すらまともにできないんだぜw」 
去っていく幾人もの笑い声。 
その場には、屈辱に震えるルイズとアヴドゥルがだけ残された。

ただ二人残され、今だに状況が理解できないアヴドゥル。 
もう一人残った屈辱に拳を握りしめ、小刻みに震えているルイズに説明を求めた。 
「ここは何処だ?さっきの使い魔というのは何だ?さっき飛んでいったのはなんだ」 
いくら命の恩人らしかろうと、現状の疑問の前には関係なく詰め寄って行く。 
ルイズは無知な使い魔に、これから説明する労力を思い、内心溜息を付きつつ答えた。 
「あ~も~…答えてあげるから、寄って来ないで」 
(なんで私だけこんなのが使い魔なのよ) 
「いい、ここはトリステイン魔法学院よ」 
「トリステイン?それに魔法学院だと?」 
地名を聞いてもアヴドゥルには理解できず、魔法学院の単語がさらに困惑を生むがルイズは構わず続ける。 
「そうよ。それであんたは私、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの使い魔ってわけ。 
 さっきのは魔法よ、見たことないの?………全く、魔法も見たこと無いってどんだけ田舎から来たのよ」 
ボソリと、最期の言葉は小さく聞こえないように言った。 
説明を聞いても理解できないアヴドゥル。 
それを見たルイズは後の授業を休み、使い魔への説明に回すのを決めた。 
「もういいわ。とりあえず付いてきなさい」 
そう言い校舎へと歩いていくルイズ。 
置いて行かれても困るのでアヴドゥルは付いて行く。 
話しかけてみるが、 
「後で聞いてあげるから黙ってて!」 
と、怒鳴られてしまい歩きながら夢のことについて考えることにした。

(あの夢は何だったんだ) 
まるで現実のようなリアリティーがあった夢。 
考え込んでいると校舎に着いたのかルイズが話してくる。 
「あんたここで少し待ってなさい。先生に授業休むことを伝えてくるから。いいこと!ココでうろちょろせずに待ってるのよ」 
地面を指差しココを強調し、ルイズは教室の中に入って行った。 
「………やれやれだ」 
こちらに有無を言わせない行動のため、つい承太郎の口癖が出てしまう。 
ルイズを待ちながら、なんとなくマジシャンズ・レッドを出してみる。 
半身ともいうべき炎の化身は変わりなく、それがなぜか安心できた。

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