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ポルポル・ザ・ファミリアー-3 - (2007/06/15 (金) 23:31:38) のソース
ルイズは久々に、誰に起こされるでもなく目を覚ました。 窓を覆うカーテンから漏れ出る、朝の光がルイズの目に飛び込み、朦朧としていた意識を揺り起こす。 寝起きは悪いほうのルイズだが、結構に清々しく起きられた朝だった。 不安材料だった使い魔召喚が上手くいった(少々問題はあったが、彼女にとっては大躍進だった)おかげで 寝覚めが良かったのかもしれない。 「ん~~・・・」 「ンガァーー・・・」 伸びをして、寝ぼけ頭が完全に目覚めると、小鳥のさえずりとともに、不快なイビキがルイズの耳に飛び込んだ。 発信源はもちろん我らがJ・P・ポルナレフ。 50日にわたる旅は潔癖症ぎみだった彼を成長させた。今では野宿も、貧民街を歩くのも、便器を嘗め・・・ オホンオホン。たいていのことはお手の物である。無論床で寝る事など、彼にとっては豚の頭が飛び出るトイレで用を足すよりも 簡単なのだ。ヴァニラ・アイスに抉られた各所の傷は深いものだったが、[[ジョセフ]]の波紋治療とSPW財団脅威の医療技術によって、 飛んだり跳ねたりは出来ずとも、人並みに歩ける位には回復していた。いや、これは今の彼にとっては不幸なことかもしれない。 なまじ健康に見えるために、ルイズはポルナレフの負傷を軽く見てしまっていたのだ。 無論平民である彼を気に掛ける頻度は必然的に低くなる。 「ンゴーーォォォ・・・」 ルイズはベッドから這い出し、スリッパを履いてポルナレフに歩み寄る。 だらしなく開いたポルナレフの口からは涎が垂れ、その幸せそうな、というよりは危機感の皆無な 寝顔からは、昨夜ルイズが見た『強い意志』は微塵も伺うことが出来なかった。 「っこのバカ使い魔・・・」 主人よりも寝坊な使い魔には仕置きをしなくてはならない、と思い、ルイズは頭の中で今日の予定に『ポルナレフへの罰』を付け加えた。 そして蹴りを入れて起こそうかとも思ったが朝一番で冷静なルイズはさすがに思いとどまり、温情措置として ポルナレフのしまらない寝顔をひっぱたいて起こすことにした。 「起きなさい!」 ルイズなりの温情がこもった平手がポルナレフの頬を打った。 その剣幕とは裏腹に、ぺちんと至って可愛い音がした。 「・・・ん?」 ポルナレフがゆっくり目を開く。そのぼやけた視界はピンク色に覆われていた。 目の焦点が合って初めて、ポルナレフはルイズが自分を覗き込んでいる事に気が付いた。 人形のような整った顔立ちを歪めて、しかめっ面にしている。ピンクのブロンドが朝の逆光に映えていた。 頭のどこかでまだ自分のおかれた状況を信じきれなかったのか、ポルナレフの寝ぼけた頭は『否定』の意を表した。 「・・・何だ夢か。じゃあ寝「昨日と同じリアクションするなぁーーーー!!!」 ベッチィン!! 「パミーーーッ!!!」 昨日の同級生たちの嘲笑を思い出してしまい、ルイズの頭は一瞬で沸点に達した。 今度は鼻をへし折る勢いで平手が振り下ろされ、ポルナレフは何がなんだかわからぬまま鼻を押さえてのたうちまわる。 「ヘ、ヘメェ、はひひひゃはる!!」 「うるさい!!」 かろうじて搾り出した抵抗の声は、にべもなく拒絶された。 ポルナレフは一瞬で睡眠から激痛に切り替わった神経を宥めつつ、状況を飲み込もうとするが、 彼の頭の中では、朝一番にこうやって鼻をひっぱたかれる理由は見つからなかった。 「朝っぱらから殴りやがって!昨日といい今日といい、あれか、嗜虐癖でもあるのかぁ、えぇ?」 「ん、んなもんあるわけないでしょ!わたしが怒ってるのはあんたの寝坊についてよ!! ご主人様に起こしてもらうなんて、あんた使い魔の自覚あるの!?」 「先に起きろなんて言ってねーじゃねえかよ!頭脳がマヌケかッてめーわ!?」 ポルナレフの突っ込みに息が詰まったルイズ。元々怒るとどもる性質であるのにポルナレフが更に煽るものだから、 彼女のどもりは更に深刻になっていく。 ちなみにルイズはネグリジェのままの格好で口角泡を飛ばしている。朝日に透かされて、細く幼い身体のラインが丸見えだった。 普段のポルナレフだったら眼福眼福と言って揉み手の一つでもするが、今回は状況が違う。 目の前の美少女が、今のポルナレフには不倶戴天の敵にさえ見えた。ポルナレフとルイズは年の離れた 兄弟ほどの年齢が開いているが、ルイズは『ご主人様』としての矜持からかポルナレフの言葉を素直に聞きはしない。 そしてポルナレフはルイズのことを『魔法使いではあるが、生意気な娘っ子』としか思っていない。 たとえ自分が使い魔とやらであろうとだ。 そして持ち前の性格から率直に、正直に『娘っ子』として扱うものだから、二人はどこまでも平行線をたどる。 「ううう、うるさい!ああああ、あんた、それでもわたしの使い魔なの!?」 「それとこれとは話が別だぁ!命じられてもいねーことまで履行する義理はねー!!このチンチクリンがッ!!」 「ち、ちちち、チンチクリンですってぇえええ!?」 昨日と同じく、再びルイズの中で何か決定的なモノが切れた。 ルイズは言葉より先に手が出て、そしてもっと怒った時には足が出る性質なのである。 瞬間、ルイズは部屋のドアを跳ね開け、渾身の力をこめてポルナレフのケツを蹴飛ばし、部屋から放逐した。 「ぶげっ!!」 ポルナレフは無様に一回転して廊下の向かい側に激突する。 とんでもないパワーだった。 「あああ、あんた、あんた・・・朝と昼、ゴハン抜きっ!!!」 「にゃ、にゃにおぉ~~!?」 「ううう、うるさいっ!ごごごご主人様を侮辱した罰よっ!!頭を冷やしなさい!!」 怒りで白い頬を真っ赤に染めたルイズの怒号が、広い廊下に響き渡った。 二食抜き・・・ 『尻』と『胸』を侮辱された分の二食である。 「て、てめぇいい加減にタコスッ!!」 それからルイズは右腕を振りかぶって、ポルナレフ目掛けて全力で何かを投げつける。 反応が間に合わなかったポルナレフの顔面にめり込んだそれは、金貨のギッチリ詰まった財布だった。 「医務室に行ったら、メイジに事情を説明して『治癒』の呪文をかけてもらいなさい! そしたらわたしたちの教室に来るのよ!わかった!?」 「へ・・・ってお、おいちょっと待て!俺はここの造りをまだよく理解してな・・・」 全部言い終える前に、ルイズの部屋のドアは轟音を立てて閉じられた。 続けざまにガッチャンと鍵を掛ける音が響き、有体に言えばポルナレフは閉め出された。 「・・・なんなんだあのムスメは・・・」 イギーに顔面密着状態で屁をこかれた時のような虚脱感が、ポルナレフを覆っていた。 俺何したんだっけ・・・ヤツに起こされて・・・殴られて・・・そこから口論になって・・・ さっぱり事象がつかめなかった。 とりあえず分かったのは、ポルナレフの『ご主人様』は想像以上にヴァイオレンスな性格だ、ということだけだった。 「あれが貴族のスタンダードとは思いたくねぇが・・・さて、どうするか・・・」 昨日召喚されたばかりのポルナレフにはどこにどの部屋があるのか分からない。 しかも闇雲に歩き回るには、このトリステイン魔法学院は広すぎる。 ポルナレフが逡巡していると、ルイズの部屋の隣のドアが開き、一人の女の子が現れた。 「・・・あれ?あんた、ヴァリエールの使い魔・・・だったっけ?」 女の子はポルナレフを見るなり、そう質問した。 萌えるような・・・ではなかった、燃えるような赤い髪に、健康的な浅黒い肌の、背の高い女の子だった。 ルイズの知り合いなのだろうか、そう思ってポルナレフがキョトンとしていると、女の子はいたずらっぽい笑みをこぼした。 そして・・・彼女をよく観察するにつれて、ポルナレフは恐ろしい事実に気付いた。 余りの恐ろしさに、 「うっひょーーーっ!!」 と叫びすらあげた。 バイーーン!ドベェーーン! とスタンドも月まで吹っ飛ぶ位見事なプロポーション!! さしものポルナレフも、今ばかりは異世界に召喚されたことを、素直に感謝したのであった・・・ その頃ルイズは・・・ ポルナレフに、自分に服を着せることを命じたり、掃除させたりすることを怒りですっかり忘れていたことに気付き・・・ 頭を抱えた・・・ to be continued・・・-> ----