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タバサの大冒険 第1話 - (2007/07/14 (土) 06:11:16) の1つ前との変更点

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 ~水の都 1F~ 「う………」  一体何が起きたのか。意識を取り戻したタバサは、起き上がって現在の状況を確認する。  取り立てて、体に異常は無い。手足もちゃんと動くし、目も耳も聞こえる。  どうやら死んではいないらしい。ここが天国だとか死後の世界だと言うなら話は別だが。  しかし、それ以上に大きな問題があった。 「ここは……」  一体何処なんだろう?見たことも無い場所だった。  先程までタバサがいた石造りの遺跡とは全く違う。  少々薄暗い物の、それでも建物が整然と立ち並び、縦横無尽に水路が走っている様は、どうやら人間の暮らす街のようだ。  しかし最も違和感を覚えたのは、肝心な人間の気配が全く感じられないという事だった。  あの遺跡の扉の先が、今のこの場所に繋がっていたのは間違い無い。  だが、辺りを見回してもあの扉はまるで見つからない。  まるで最初から存在していないかのようだった。  ――となれば、考えられることは一つしか無い。  ここは、異世界なのだ。  あのゼロのルイズの使い魔が、ハルキゲニアとは違う「チキュウ」とか言う世界からやって来たらしいと言うのは、既にトリステイン魔法学院の誰もが知っていることだ。  そして誰もがそのことを半信半疑に思っていたのだが、既に何度か―― あの「竜の羽衣」を始めとして、本当に才人が異世界の人間であることを示すような出来事も起こっており、タバサも異世界の実在を認めても良いだろうと考えていた。  だが、実際に自分が異世界を訪れる羽目になるとは思わなかった。  ここから元のハルキゲニアに帰る方法が、果たして本当にあるのだろうか。  今のタバサには皆目検討も付かない。 「…………また」  また、一人ぼっちになってしまった。  そして孤独な自分が唯一頼るべき魔法の杖も、あの遺跡に置き去りにしたまま無くしてしまった。  今まで生きて行く為に振るって来た魔法も、杖が無くては唱えることすら出来ない。 「―――……っ」  不安と孤独、そして絶望が、タバサの胸に去来する。  見ず知らずの世界に、戦う力も奪われて、たった一人取り残されてしまった。  こんな気持ちになったのは、自分や両親の存在を疎んだ伯父の手によって、家族を失った時以来だろうか。あの時以来、タバサは伯父の一族に対して復讐を誓った。  伯父が自分を抹殺する為に、苛酷な任務を度々与え続けた時も、タバサはそれを乗り越える為に、戦って、戦って、戦い抜いた。  いつか復讐を遂げるその日まで、誰にも負けないように魔法の力を高め続けて来た。  それが今までタバサがハルキゲニアで過ごして来た15年間の全てだった。  だがタバサは今、全てを失ってしまった。  一体今の自分に、何が出来ると言うのだろう。魔法一つ満足に使えない、無力なこの自分に?  平賀才人がルイズに召喚された時も、こんな気持ちになったのだろうかと、タバサは改めて思う。  自分にはもう、何も残されていない。そう、この世界にやって来た時から―― 「あ」  思い出した。タバサの他にも、一緒にこの世界へと飛ばされて来たであろう相手が一人いたでは無いか。いや、一人では無くて一本と呼ぶべきだろうか。  知恵を持つ剣、デルブリンガー。彼がここにいるなら、自分は一人じゃない。  一人じゃないなら、きっと大丈夫。  今までも一人で生きて来られたのだから、一人と一本ならもっと凄いことだって出来るかもしれない。  そうだ、こんな所でくじけている場合じゃない。  自分には、ハルキゲニアに帰ってやらなくてはならない事があるのだから。  先程までの不安げな様子など微塵も感じさせぬ態度で、タバサは改めて周囲の様子を探り始める。  そうこうして行く内に、お目当てのデルブリンガーこそ見つからなかった物の、幾つか新しい発見があった。  一つは、地面に落ちていた黄色い円盤だった。  今までタバサの見た事の無い物であり、一体何に使うのかも皆目検討が付かない。  だが、その円盤に書かれている文字だけは、タバサにも理解出来た。  「エコーズAct.3のDISC」。それが何を意味している言葉なのかはわからないが、ここから考えられるのは、この円盤は“DISC”という名前であること。  そしてこの“エコーズAct.3”以外にも、色々な種類のDISCがあるのでは無いかということ。  この二つだけだ。  もう一つは、何故か自分が持っていた大盛りのはしばみ草のサラダ。  勿論こんな物を持って来た覚えは無い。  これを発見した時は流石にしばらく悩んでしまったが、気味が悪いからと言って自分の好物を捨てるのも気が引ける。後で、お腹が空いたら食べることにしよう。  そして最後に、地面のど真ん中に設えてある下層方向への階段。  他の道は全て行き止まりであり、これ以上何かを探すとしたら、この先へ進むしか無い。  よし。タバサは覚悟を決めて、階段に向けて一歩を踏み出す。 「……待ちやがれェェェェ~~~!!」  突然、呼び止められて振り向いてみれば、そこには怪しい風体の中年の男性。  片手にナイフを、もう片方の手に古ぼけたコートを握り締めている。  せわしなく動く瞳の色を見れば、麻薬か何かで明らかに冷静な判断力を失っているのがわかる。 「オレっちのコートをギろうなんていい覚悟だなァァァァ~~テメェェェェ~~~!!」  タバサの羽織っているマントをコートと勘違いしているのだろうか。  片手のナイフを振り回しながら、ヤク中のゴロツキが喚き散らしてにじり寄ってくる。  まずい。魔法の杖を持っていればどうと言う事の無い相手だが、今の自分は魔法が使えない。  小柄なタバサと、刃物を持った男では、どちらが有利か考えるまでも無かった。 「…………っ!!」  ――だったら、イチかバチか階段の先まで逃げるしか無い。  咄嗟に判断して、タバサは階段に向けて一直線へと駆け出して行く。  だが。足元に何かを踏みつけたような違和感を感じた刹那、タバサの足が動かなくなる。 「!?」  良く見れば、足元に仕掛けられていたトラップを、思い切り踏みつけている自分の足。  そして、それが踏み付けた者をその場に固定する「クラフトワークの罠」である事が、  理屈を抜きにしてタバサには瞬時に理解出来た。 「ひ、ひ、ひェ~ッヘッヘッヘェ!もォ逃がさねぇぞォ、テメ~~~!!」  何とか後ろを振り向くことは出来た。  だが、そこではもうヤク中のゴロツキがナイフを振り下ろそうとする姿が目の前に見えるだけだった。 「あ……っ!!」  もう駄目だ。自分はあのナイフに貫かれて、誰にも知られぬままにこの世界で命を落とすのだ。  タバサの脳裏に、この後訪れるであろう自分の最期の姿が浮かび上がる。  だが、苛酷な任務の日々の中で生存の為のセンスが刻み込まれたタバサの体は、反射的にヤク中のゴロツキに向けて最後の抵抗を試みる。  先程拾ったDISCを手に、ヤク中のゴロツキに叩きつけようとする。 「ぐェッ!?」  タバサの決死の反撃が見事に功を奏し、DISCがヤク中のゴロツキの腕にブチ当たる。  それによって、ヤク中のゴロツキのナイフは辛うじてタバサの顔を掠めるに留まり、  そしてタバサが手にしていたDISCは反動によってタバサの方に投げ飛ばされ、そして―― 「え……?」  ズブズブと音を立てているかのように、タバサの頭の中にDISCが沈み込んでいく。  何が起こったのか、タバサには一瞬理解出来なかった。  だが、それを理解するよりも早く、タバサのすぐ側からもう一つの声が響いて来る。 『Act.3、FREEEEZE!!』 「ウゲッ!?」  そしてヤク中のゴロツキに向けて人間の拳の形をした何かが振るわれ、ヤク中のゴロツキの姿を撃つ。 「よ、よくもヤリやがっ……ンガァ!?」  突然、ヤク中のゴロツキの体がズシリと地面に埋もれ、まるでその場だけ重力が倍になったかのようにヤク中のゴロツキの動きがスローになる。 『射程範囲5メートルニ到達シテマス。コレデモウテメーハ飛行機ノシートヨリモスローニシカ動ケネェ」 「ウグググ……」 『ソシテ!スローニナッタ隙ニ殴リ抜ケル!S・H・I・T!!』 「ウッゲアァァ~~~~!!」  ヤク中のゴロツキが満足に動けない所に、更に一方的に拳が振るわれる。  そして何発も拳を打ち込まれ、最後には悲鳴と共にヤク中のゴロツキの姿が掻き消えていった。 『危ナイ所デシタネ。モット早ク私ヲ装備シテイレバ、コンナ事ニハナラナカッタデショウニ』  ようやくクラフトワークの罠から解放されたは良いが、未だに状況を掴めずに眉を顰めているタバサを無視して、拳を振るった“主”は宙に浮いたまま一人で延々と喋り続ける。 『マ、コンナ連中モ数ガ集マリャ割ト厄介ダッタリスルンデスケドネ。Bi―――tch!!』 「……あなたは」 『ン?』 「あなたは誰?」  タバサの質問に、人間と同じ二本の手足を持つ―― しかし、その容貌は明らかに人間とは異なる“それ”は、宙に浮かんだままタバサの方を見やる。 『フム。「スタンド」ノ「DISC」ヲ知ラナイッテコトハ…ドウヤラ、ココニ来ルノハ始メテナノデスネ?』  “それ”の言葉に、こくりとタバサは頷いた。 『私ノ名ハ「エコーズAct.3」、「スタンド」デス。アナタガ今装備シテイル「DISC」ハ「スタンド」ヲ形ニシテ装備出来ル様ニシタ物デス』  スタンドにDISC。これまた聞いたことの無い言葉だったが、魔法を実際に形として見ているような物だと思って間違い無さそうだとタバサは思った。  さしずめDISCは、スタンドを使う為の魔法の杖と言う所だろうか。 「……ここはどこ?」 『ココハ「レクイエムノ大迷宮」ヘ至ル為ノ通過点デス。  コノダンジョンノ最深部ニ行カナイト「レクイエムノ大迷宮」ニハ辿リ着ケマセン。  ソシテ「レクイエムノ大迷宮」ヲ突破シナイ限リ、コノ世界カラハ出ラレマセン』 「!」  レクイエムの大迷宮とやらに辿り着けなければ、この世界からは出られない。  それはつまり、その場所に行く事が出来ればハルキゲニアに帰ることが出来るという事だ。 「……本当に?」 『本当ト書イテマジデス。Ass Fuckin!』  元の世界に帰る方法がある。エコーズAct.3の言う事が何処まで本当かどうかはわからないが、それは実際に行ってみればわかること。  何一つ手掛かりの無かった先程までよりは、遥かに状況は好転している。  目標がはっきりと定まっているなら、迷うことは無い。  後はそこへ向けて、全力で歩き続けるだけでいいのだから。 「………レクイエムに、行く」  そう呟いて、タバサは次の階層を目指して階段を降りて行った。  ゼロの奇妙な使い魔「タバサの大冒険」 [[To be continued…>タバサの大冒険 第2話]] ---- #center(){[[プロローグ>タバサの大冒険 プロローグ ]]   [[戻る>タバサの大冒険]]}
 ~水の都 1F~ 「う………」  一体何が起きたのか。意識を取り戻したタバサは、起き上がって現在の状況を確認する。  取り立てて、体に異常は無い。手足もちゃんと動くし、目も耳も聞こえる。  どうやら死んではいないらしい。ここが天国だとか死後の世界だと言うなら話は別だが。  しかし、それ以上に大きな問題があった。 「ここは……」  一体何処なんだろう?見たことも無い場所だった。  先程までタバサがいた石造りの遺跡とは全く違う。  少々薄暗い物の、それでも建物が整然と立ち並び、縦横無尽に水路が走っている様は、どうやら人間の暮らす街のようだ。  しかし最も違和感を覚えたのは、肝心な人間の気配が全く感じられないという事だった。  あの遺跡の扉の先が、今のこの場所に繋がっていたのは間違い無い。  だが、辺りを見回してもあの扉はまるで見つからない。  まるで最初から存在していないかのようだった。  ――となれば、考えられることは一つしか無い。  ここは、異世界なのだ。  あのゼロのルイズの使い魔が、ハルケギニアとは違う「チキュウ」とか言う世界からやって来たらしいと言うのは、既にトリステイン魔法学院の誰もが知っていることだ。  そして誰もがそのことを半信半疑に思っていたのだが、既に何度か―― あの「竜の羽衣」を始めとして、本当に才人が異世界の人間であることを示すような出来事も起こっており、タバサも異世界の実在を認めても良いだろうと考えていた。  だが、実際に自分が異世界を訪れる羽目になるとは思わなかった。  ここから元のハルケギニアに帰る方法が、果たして本当にあるのだろうか。  今のタバサには皆目検討も付かない。 「…………また」  また、一人ぼっちになってしまった。  そして孤独な自分が唯一頼るべき魔法の杖も、あの遺跡に置き去りにしたまま無くしてしまった。  今まで生きて行く為に振るって来た魔法も、杖が無くては唱えることすら出来ない。 「―――……っ」  不安と孤独、そして絶望が、タバサの胸に去来する。  見ず知らずの世界に、戦う力も奪われて、たった一人取り残されてしまった。  こんな気持ちになったのは、自分や両親の存在を疎んだ伯父の手によって、家族を失った時以来だろうか。あの時以来、タバサは伯父の一族に対して復讐を誓った。  伯父が自分を抹殺する為に、苛酷な任務を度々与え続けた時も、タバサはそれを乗り越える為に、戦って、戦って、戦い抜いた。  いつか復讐を遂げるその日まで、誰にも負けないように魔法の力を高め続けて来た。  それが今までタバサがハルケギニアで過ごして来た15年間の全てだった。  だがタバサは今、全てを失ってしまった。  一体今の自分に、何が出来ると言うのだろう。魔法一つ満足に使えない、無力なこの自分に?  平賀才人がルイズに召喚された時も、こんな気持ちになったのだろうかと、タバサは改めて思う。  自分にはもう、何も残されていない。そう、この世界にやって来た時から―― 「あ」  思い出した。タバサの他にも、一緒にこの世界へと飛ばされて来たであろう相手が一人いたでは無いか。いや、一人では無くて一本と呼ぶべきだろうか。  知恵を持つ剣、デルフリンガー。彼がここにいるなら、自分は一人じゃない。  一人じゃないなら、きっと大丈夫。  今までも一人で生きて来られたのだから、一人と一本ならもっと凄いことだって出来るかもしれない。  そうだ、こんな所でくじけている場合じゃない。  自分には、ハルケギニアに帰ってやらなくてはならない事があるのだから。  先程までの不安げな様子など微塵も感じさせぬ態度で、タバサは改めて周囲の様子を探り始める。  そうこうして行く内に、お目当てのデルフリンガーこそ見つからなかった物の、幾つか新しい発見があった。  一つは、地面に落ちていた黄色い円盤だった。  今までタバサの見た事の無い物であり、一体何に使うのかも皆目検討が付かない。  だが、その円盤に書かれている文字だけは、タバサにも理解出来た。  「エコーズAct.3のDISC」。それが何を意味している言葉なのかはわからないが、ここから考えられるのは、この円盤は“DISC”という名前であること。  そしてこの“エコーズAct.3”以外にも、色々な種類のDISCがあるのでは無いかということ。  この二つだけだ。  もう一つは、何故か自分が持っていた大盛りのはしばみ草のサラダ。  勿論こんな物を持って来た覚えは無い。  これを発見した時は流石にしばらく悩んでしまったが、気味が悪いからと言って自分の好物を捨てるのも気が引ける。後で、お腹が空いたら食べることにしよう。  そして最後に、地面のど真ん中に設えてある下層方向への階段。  他の道は全て行き止まりであり、これ以上何かを探すとしたら、この先へ進むしか無い。  よし。タバサは覚悟を決めて、階段に向けて一歩を踏み出す。 「……待ちやがれェェェェ~~~!!」  突然、呼び止められて振り向いてみれば、そこには怪しい風体の中年の男性。  片手にナイフを、もう片方の手に古ぼけたコートを握り締めている。  せわしなく動く瞳の色を見れば、麻薬か何かで明らかに冷静な判断力を失っているのがわかる。 「オレっちのコートをギろうなんていい覚悟だなァァァァ~~テメェェェェ~~~!!」  タバサの羽織っているマントをコートと勘違いしているのだろうか。  片手のナイフを振り回しながら、ヤク中のゴロツキが喚き散らしてにじり寄ってくる。  まずい。魔法の杖を持っていればどうと言う事の無い相手だが、今の自分は魔法が使えない。  小柄なタバサと、刃物を持った男では、どちらが有利か考えるまでも無かった。 「…………っ!!」  ――だったら、イチかバチか階段の先まで逃げるしか無い。  咄嗟に判断して、タバサは階段に向けて一直線へと駆け出して行く。  だが。足元に何かを踏みつけたような違和感を感じた刹那、タバサの足が動かなくなる。 「!?」  良く見れば、足元に仕掛けられていたトラップを、思い切り踏みつけている自分の足。  そして、それが踏み付けた者をその場に固定する「クラフトワークの罠」である事が、  理屈を抜きにしてタバサには瞬時に理解出来た。 「ひ、ひ、ひェ~ッヘッヘッヘェ!もォ逃がさねぇぞォ、テメ~~~!!」  何とか後ろを振り向くことは出来た。  だが、そこではもうヤク中のゴロツキがナイフを振り下ろそうとする姿が目の前に見えるだけだった。 「あ……っ!!」  もう駄目だ。自分はあのナイフに貫かれて、誰にも知られぬままにこの世界で命を落とすのだ。  タバサの脳裏に、この後訪れるであろう自分の最期の姿が浮かび上がる。  だが、苛酷な任務の日々の中で生存の為のセンスが刻み込まれたタバサの体は、反射的にヤク中のゴロツキに向けて最後の抵抗を試みる。  先程拾ったDISCを手に、ヤク中のゴロツキに叩きつけようとする。 「ぐェッ!?」  タバサの決死の反撃が見事に功を奏し、DISCがヤク中のゴロツキの腕にブチ当たる。  それによって、ヤク中のゴロツキのナイフは辛うじてタバサの顔を掠めるに留まり、  そしてタバサが手にしていたDISCは反動によってタバサの方に投げ飛ばされ、そして―― 「え……?」  ズブズブと音を立てているかのように、タバサの頭の中にDISCが沈み込んでいく。  何が起こったのか、タバサには一瞬理解出来なかった。  だが、それを理解するよりも早く、タバサのすぐ側からもう一つの声が響いて来る。 『Act.3、FREEEEZE!!』 「ウゲッ!?」  そしてヤク中のゴロツキに向けて人間の拳の形をした何かが振るわれ、ヤク中のゴロツキの姿を撃つ。 「よ、よくもヤリやがっ……ンガァ!?」  突然、ヤク中のゴロツキの体がズシリと地面に埋もれ、まるでその場だけ重力が倍になったかのようにヤク中のゴロツキの動きがスローになる。 『射程範囲5メートルニ到達シテマス。コレデモウテメーハ飛行機ノシートヨリモスローニシカ動ケネェ」 「ウグググ……」 『ソシテ!スローニナッタ隙ニ殴リ抜ケル!S・H・I・T!!』 「ウッゲアァァ~~~~!!」  ヤク中のゴロツキが満足に動けない所に、更に一方的に拳が振るわれる。  そして何発も拳を打ち込まれ、最後には悲鳴と共にヤク中のゴロツキの姿が掻き消えていった。 『危ナイ所デシタネ。モット早ク私ヲ装備シテイレバ、コンナ事ニハナラナカッタデショウニ』  ようやくクラフトワークの罠から解放されたは良いが、未だに状況を掴めずに眉を顰めているタバサを無視して、拳を振るった“主”は宙に浮いたまま一人で延々と喋り続ける。 『マ、コンナ連中モ数ガ集マリャ割ト厄介ダッタリスルンデスケドネ。Bi―――tch!!』 「……あなたは」 『ン?』 「あなたは誰?」  タバサの質問に、人間と同じ二本の手足を持つ―― しかし、その容貌は明らかに人間とは異なる“それ”は、宙に浮かんだままタバサの方を見やる。 『フム。「スタンド」ノ「DISC」ヲ知ラナイッテコトハ…ドウヤラ、ココニ来ルノハ始メテナノデスネ?』  “それ”の言葉に、こくりとタバサは頷いた。 『私ノ名ハ「エコーズAct.3」、「スタンド」デス。アナタガ今装備シテイル「DISC」ハ「スタンド」ヲ形ニシテ装備出来ル様ニシタ物デス』  スタンドにDISC。これまた聞いたことの無い言葉だったが、魔法を実際に形として見ているような物だと思って間違い無さそうだとタバサは思った。  さしずめDISCは、スタンドを使う為の魔法の杖と言う所だろうか。 「……ここはどこ?」 『ココハ「レクイエムノ大迷宮」ヘ至ル為ノ通過点デス。  コノダンジョンノ最深部ニ行カナイト「レクイエムノ大迷宮」ニハ辿リ着ケマセン。  ソシテ「レクイエムノ大迷宮」ヲ突破シナイ限リ、コノ世界カラハ出ラレマセン』 「!」  レクイエムの大迷宮とやらに辿り着けなければ、この世界からは出られない。  それはつまり、その場所に行く事が出来ればハルキゲニアに帰ることが出来るという事だ。 「……本当に?」 『本当ト書イテマジデス。Ass Fuckin!』  元の世界に帰る方法がある。エコーズAct.3の言う事が何処まで本当かどうかはわからないが、それは実際に行ってみればわかること。  何一つ手掛かりの無かった先程までよりは、遥かに状況は好転している。  目標がはっきりと定まっているなら、迷うことは無い。  後はそこへ向けて、全力で歩き続けるだけでいいのだから。 「………レクイエムに、行く」  そう呟いて、タバサは次の階層を目指して階段を降りて行った。  ゼロの奇妙な使い魔「タバサの大冒険」 [[To be continued…>タバサの大冒険 第2話]] ---- #center(){[[プロローグ>タバサの大冒険 プロローグ ]]   [[戻る>タバサの大冒険]]}

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