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アヌビス神-13後」を以下のとおり復元します。
 四人を見送ってからオスマン氏は『ふぅー』と溜息を付いて椅子に深く座り込む。
 ミス・ロングビルが居心地悪そうに、視線を泳がせているのが、
 そしてコルベールが『そういえば』とか言いながら棚の目張りを剥がして中を覗きこんでいるのが見える。
 棚から取り出された、束ねられた、泣き言を繰り返すアヌビス神と、気持ち悪いを連呼するデルフリンガーが机の上に置かれるのを待って口を開く。
「忘れていきおったの」
「それだけ疲れていたのでしょう。色々有りましたから」
 オスマン氏の言葉にコルベールが苦笑する。

「ったくよォ。おれは淋しい場所が嫌いだって何度も言ってんのに」
「だからって突然懐くな気持ち悪い!」
「懐いてねえよ、気の所為だ。暗闇が見せた幻覚症状だな!
 年だしボケがきたんだろ?」
「てめえの恥部を人の所為にするのかよ!
『暗いよーっ!』とか泣いてたのは何処のどいつだ!」
「幻聴だな、間違いなく幻聴だ。暗闇って恐ろしいなァ、心を破壊する」
 棚から取り出されるなり、言い合いを始めるアヌビス神とデルフリンガーを、三人が少々ぽかーんと呆けながら眺めた。
 しかしあまりにきりが無さそうな為、オスマン氏は間に割って入る事にした。
「さてと。先程の『フーケちゃんの自白』でも有ったが、元いた生まれた世界とは何か聞かせてもらえんかね?」
 その言葉にコルベールが興味深げな表情を見せる。フーケことミス・ロングビルは『フーケちゃんの自白』部分で一瞬びくっと身体を震わせるが、やはり興味深そうだ。
 オスマン氏は人払いをとも考えたが、先程の自白でそれは無意味だと思い其の侭続ける事にした。
「いいけど条件があるぜ?話しはそれからだ」
 アヌビス神が取り引きを持ちかけた。
「言うてみい」
「ミス・ロングビルで良かったっけ?
 後で折れてるおれを『錬金』で繋いで治せ。
 タバサの話しじゃ、作りが繊細だから並みのトライアングルじゃ微調整がどうとか言ってたがお前ならいけるだろ?」
「流石に試さないと判らないわ。けどこの話しには興味あるからその条件飲むわ」
「後、壊れた塔治す時、おれにもあれと同じ強さの『固定化』かけろ」
「ん。良いじゃろ」
 条件への同意を確認しアヌビス神は語り始めた。
「あの『破壊の杖』はな『M72LAW』ってぇ名前。まーロケットランチャーって奴だ。おれが生まれた世界でここ数十年位使われてる兵器だよ。
 おれが生まれた頃はあの世界の武器なんざ、こっちと大差無かったんだけどな。
 今じゃ人の殺し合いはあんなの使ってドンパチだ。つまんねえ世の中になったもんだ」
 特にコルベールはその話しを興味深げに、しかし眉を顰めながら聞いた。全く違う技術、しかし火を中心とした力が殺しの道具とされている話しが心苦しかった。
 ミス・ロングビルは心の中でフーケの顔となり、過去に巡り合った色々なお宝を思い出した。用途が余りに不明でガラクタとした物の中には、同じような物が有ったのかもしれないと、思いを廻らせた。
「しかし、別の世界とな……」
「ああ、ルイズの『召喚』とやらで、バラバラになって死ぬって時に呼ばれたんだ。不思議なもんだ」
「なるほど。そうじゃったか……」
 オスマン氏は目を細めた。
「おめーも色々あったんだなぁ……」
 アヌビス神の由来を、始めて詳しく聞く事となったデルフリンガーも、感慨深げにカタカタと鞘を鳴らす。
「おれとしちゃ6000年前に、デル公みてえな剣を作った奴が居たって事が驚きだぜ。
 あっちの世界じゃ、そんな旧い時代にゃ剣なんかなかったからな」
「俺の偉大さが判ったか若造ーっ!」
「くくくっ、お前を作った奴の偉大さならよーく判るぜ。何せおれは刀鍛治の分身だからな」
 アヌビス神はスタンドの話しはあえて今回は伏せた。基本的にその事を必要以上に知るのは、ルイズだけで良いと考えた。あいつだけは特別。何故そのように考えたのかは自分では判らなかった。
 ミス・ロングビルは、どんだけ助平な性格の刀鍛治だったのよと心の中で突っ込んだ。
「おっとっと、ちょいと饒舌になっちまったな。さて、そのついでに聞きたいんだが、あれが有ったって事は、おれ以外にも色々こっちに来てるって事だよな?」
 オスマン氏は、ため息をついた。
「あれを私にくれたのは、私の命の恩人じゃ」
「人間でもこっちに来た奴がいたのか。そりゃ興味深いな」
 人が来る以上スタンド使いが現れる可能性が、格段に跳ね上がる。警戒する為の知識として知っておいて損は無い。
「もう死んでしまった。今から、三十年も昔の話しじゃ」
「もっと詳しくだ」
「三十年前、森を散策していた私は、ワイバーンに襲われた。そこで救ってくれたのが、あの『破壊の杖』の持ち主じゃ。
 彼は、もう一本の『破壊の杖』で、ワイバーンを吹飛ばすと、ばったり倒れおった。怪我をしていたのじゃ。私は彼を学院に運び込み、手厚く看病した。
 しかし、看護の甲斐無く……」
「死んだか。なるほどな」
 その男はスタンド使いの可能性は低いかな。非戦闘タイプの可能性も高いけど。と思考を廻らせる。
「私は、彼が使った一本を墓に埋め、もう一本を『破壊の杖』と名付け、宝物庫にしましこんだ。恩人の形見としてな……」
「お前もあれが杖に見えたのか。視力がマヌケか。おかげで最初アレが『破壊の杖』と気付かなかったぞ。
 もうここの塔を全部杖と改名しちまえ」
「わ、我々からすると、魔法を捲き起こすものは、杖なんじゃ」
 感慨深く過去を思い出したところで容赦無く馬鹿にされて、オスマン氏、がっくりと項垂れる。
「彼はベッドの上で、死ぬまでうわごとのように繰り返しておった。『ここはどこだ。元の世界に帰りたい』とな。きっと彼は君と同じ世界から来たんじゃろうな」
「そいつはどうやって来たのかね。やっぱ誰か召喚したのか?」
「それは判らん。どんな方法で彼がこっちの世界にやってきたのか、最後までわからんかった」
「頻繁に呼ぶ方法がわからねえのか、そりゃ結構」
 アヌビス神としては、できるだけ行き来など出来て欲しくなかった。余計な兵器が次々入ってこられては、長らく遠ざかり、再び廻り来るのを夢見て待ち侘びた、剣と剣のぶつかり合う戦いのありえる世界、それが壊れてしまう。
 戻るつもりなど毛頭も無い。簡単に行き来できては何時戻されてしまうとも知れない。

「でじゃ、おぬしのこのルーン……」
 オスマン氏は、アヌビス神を手に取り柄をまじまじと見る。
「ちなみにフーケちゃん。知っておるかもしれんが、こりゃおぬしも関係するかもしれんぞ?」
「フーケちゃんではありません!」
「ほっほっほ。これは伝説の使い魔の印じゃ」
 オスマン氏は適当に笑って誤魔化して話しを続けた。
「ええ、私も何度も調査しましたが間違いありませんでした。『ガンダールヴ』の印ですな」
 コルベールがアヌビス神の柄を食い入るように覗き込む。
「伝説?なんだそりゃァ」
「この印を持つ伝説の使い魔は、ありとあらゆる『武器』を使いこなしたそうじゃ」
「何かおかしくね?俺『武器』なんだぜ?武器が武器を使いこなせる印とか変じゃね?」
「だがよ、おめーしっかり俺を使いこなしたじゃねーか。別の世界から来たんだ、規定外の何かがあるんだろーよ」
 デルフリンガーの言葉に、やっぱスタンドな事が何か関係してるのかね、と考えてみる。
「その印とおぬしが、こっちの世界にやってきたこととが、何か関係しているのかもしれん。あくまでも想定じゃが」
 その言葉に、他にも伝説の印付きが居て、オラオラがこっち来てたらちょっとぞっとしねーなと考えた。スタンド使いだからこそ、印付きで呼び込まれたのかも知れないと。
「で、何故わたくしが関係していると?」
 訝しげにミス・ロングビルことフーケちゃんがオスマン氏を見つめる。
「伝説のアレが出てくるのも、『ガンダールヴ』が出てくるのも同じ話しじゃからな。
 んま、大事な誰かさんを守るのに、必要な話しかも知れんと思ったお節介じゃ」
 言いながらオスマン氏は、ひょいひょいと彼女の側へ歩いていって尻を丹念に撫でた。


 半殺しにされたオスマン氏を放置して解散となった。
 コルベールが懲りずに『今晩一緒にダンスを!』とか迫っている。逞しい事だ。
 しかしミス・ロングビルへのスイッチを完全に入れたフーケは『彼を治す約束がありますので』と、抱き上げたアヌビス神を見せ『ほほほはほ』と笑いながらあしらった。
「相変わらず、すげぇ演技力だな」
「全くだな。これが女狐ってやつだーな!」
「はぁ……流石に、今演技を長時間続ける自信はないわよ」
 抱えている二振りの言葉に、少し苦笑しながらため息を付く。
「別に悪いたぁ一切思わねえが、一応謝っとくぜ。チャンスと命令が有ったら、幾らでも繰り返すけどな!」
「あ、あなた……げ、外道ね……」
 殆ど素のフーケに戻った彼女が冷汗を垂らし歩を進める。
「一応、一番詳しいらしいタバサに相談しながら『錬金』をかけるわよ?」
「ぶっ壊そうとしても判るんだからな?しっかりやってくれよ」
「そんな事しないわよ。勿体無いわ」
「価値が判っているようで結構だ。ところでなんだ」
「何かしら?」
「お前の胸適度に張りが(刃を突き立てる上で)良い上にぷるぷるしてて(斬り心地)よさげだな!」
「お、おめーよう。興奮した時、時々肝心な単語を飛ばす話す方やめろよ!」
 変質的な事を平然と口走る妖刀に、常識ぶってはいるがそれを的確に理解する魔剣、復讐とかそういう事では無く、女性としてこれを始末した方が世界の為かもしれない、フーケかマチルダか判らない状態の彼女は心底考えた。
「あー……ホント心が落ち着かないわ。スイッチがどこに入ってるんだか」
 フラフラした足取りで彼女は、女子寮のタバサの部屋へと向っていった。



 アルヴィーズの食堂の上の階が、大きなホールになっている。舞踏会はそこで行われていた。
 あいもかわらず可愛らしい鞘に納められた妖刀と魔剣は、バルコニーに置かれたテーブルの上に転がっていた。
 修理された後、タバサに『パーティーのお洒落』と言われて揃って鞘に蝶ネクタイをつけられた、意味が判らない。
 一応この場所までは修理後、そのままタバサに連れてこられた。彼女は黒いパーティドレスを纏っている。そのタバサは彼等をさっさとこの場に置いて、料理を漁りに行ってしまった。
 今アヌビス神はついに、完全な刀身を取戻している、その為かとても上機嫌だ。
 綺麗なドレスに身を包んだキュルケが『治って良かったじゃない』と少し声をかけてきたが、男に囲まれて其の侭会場の奥へと消えてしまった。
 ついさっきまでは、側のテーブルでギーシュが数名の教師に質問攻めにあっていた。
 アヌビス神もギーシュがちゃんと役に立ったのか?活躍したのか?と聞かれた為、一応事実なので『ギーシュがいなかったら全滅してたんじゃねーの?』と答えておいた。
 デルフリンガーが『確かに最後のあれにはおでれーたね。それにギーシュいなけりゃ俺達活躍できなかったしな』と続けた。
 その為だろうか、今遠くで『ギーシュさん!ギーシュさん!ギーシュさん!』とコールされている。
 ミスタ・ギトーが、パーティ早々な時間にも関わらず、顔を真っ赤にするぐらい酔っ払って『風はもう糞だァー!』とか叫んでいる。
「『愛』!!心(ハート)を奮わせる捨て身の『愛』!!『ギーシュさん』のその『愛』が大事なのです!」
 また叫び声が聞こえる。
「そうです。『土』だけでは大地に何も実りません!『ギーシュさん』の『愛』あってこそ」
 やばい、ミセス・シュヴルーズまでラリって一緒になって叫んでいる。
 当のギーシュは何とかその囲みを脱出し、モンモランシーに何か手渡している。成る程、彼はこのパーティに供えて指輪をプレゼントしたかったようだ。
軽い気持ちだったようだが、タイミングと雰囲気が良過ぎて彼女が想定以上の物として捕らえたようだ。
 ギーシュ・ド・グラモン。追い風が危険レベルの突風と化している。
 そして追い風には狂風をもが含まれる事が有る。
「許さん!許さんぞォギィーシュゥー!
 奴等を!奴等を!ぼくらの風が糞ったれた『愛』も吹飛ばすッ!」
「「「吹飛ばす!吹飛ばす!吹飛ばす!」」」
「あわせろ、ふぉぉぉぉぉぉぉ!!も・て・ねー!!」
「「「も・て・ねー!!」」」
 明かに空白地点が有る。良い雰囲気のこの会場に明かに空白地点が有る。そこが狂風の発生源だ。

 ちなみにバルコニーにはまだテーブルが有る。室内から完全な死角になっており、あまり好まれないその席で、今日の敵が顔を真っ赤にして座っている。
 ワインを、渇き死にそうな時に飲む水の如く、凄まじい勢いでがっぱがっぱ飲み干していく。
 時々『死ねー爺!』とか『やっとセクハラから開放されたと思ったのに!!』とか叫んでいる。
 色々割り切っても、それだけは割り切れないようだ。
 彼女を探してコルベールとオスマン氏が会場をふらふら放浪している。

 アヌビス神はそれらの光景を見ていたら、何だか気持ち良くなってきた。
「酒は飲めなくてもよォ。おれ達でもなんか酔っ払っちまう事ってあるんだな」
「おめー雰囲気に酔うって知らなかったのかよ」
「血に酔った事しかねえな」
「けっ、相変わらず物騒なやつだな。虚しい500年だな、ええ?
 だが憶えておけよ?おめーだってそんな時も有るって事をよ」
 上機嫌も手伝ってか、何時もと違う陽気さが何処からか涌いてくる。10倍以上の生の先輩剣に五月蝿く言われたが、これは刀身完全再生の絶頂って奴だ!そう考える事にした。


 ホールの壮麗な扉が開き、ルイズが姿を現した。
 門に控えた呼び出しの衛士が、ルイズの到着を告げた。
「ヴァリエール公爵が息女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢のおな~~~り~~~!」
 ルイズは長い桃色がかった髪を、バレッタにまとめ、ホワイトのパーティドレスに身を包んでいた。肘までの白い手袋が、ルイズの高貴さをいやになるぐらい演出し、胸元の開いたドレスがつくりの小さい顔を、宝石のように輝かせている。
 主役が全員揃ったことを確認した楽士たちが、小さく、流れるような音楽を奏で始めた。

「やっと登場かよご主人さま」
「変われば変わるもんだな」
「人、それを馬子にも衣装と言う!ゲラゲラゲラ」
「ひっでー事言うなおめー。間違いねえけどな!ゲラゲラゲラゲラゲラ」
「肉と骨を感じりゃ、良い素質だって判るんだぜ。着飾って貰わねえと判らねーとか、それこそ脳味噌がマヌケで目がマヌケだ。流石、筒が杖に見える世界だな」
 それが聞こえたミス・ロングビルがワインを盛大に噴いた。
「オイオイ、アヌ公、あれ大丈夫か?」
「あれはもう駄目だ。多分小屋に有った、釣竿とか鉄球もお宝と思って奴が集めてたに違いない。今確信した」
 何時の間にかホールでは、貴族たちが入り乱れ優雅にダンスを踊っている。
「ありゃ?ご主人さまは何処消えた」
「ワイン噴水見てて、うっかり見てなかったな」
 一言話すだけでそろってゲラゲラと大笑いをしてしまう。『不味い、すげえくだらねえのに愉快だ』アヌビス神は呟く。
「何でお酒も飲めない連中が酔ってんのよ」
 何時の間にかルイズが同じ席についていた。
「ご主人さまは踊らないのか?」
「わたしとつり合いが取れるようなのが、いないだけよ!
 昨日まで、ゼロのルイズとか散々バカにして置いて調子良過ぎよ」
「けどよー、ルイズおめー。そんなこと言ってると、そこの影になってるテーブルのみたいになるぜ?」
 ルイズは何それ?と言われた方向を見て『あによ!文句ある?』と睨まれて、脂汗をダラダラ流した。
「あ、あああ、あれは……そ、そうよ!
 あ、あんた達が、踊りの相手をできるぐらい、気が利いた使い魔だったら問題なかったのよ!」
 強引過ぎる切り替えしで、机の上に転がる二振りをじとぉーと睨みつける。
「酔っても無いのに無茶言うなよ」
 デルフリンガーが絡むなといったふうに鍔をカタカタと慣らす。
 だがアヌビス神がそれを笑い飛ばす。
「6000年ぼさーっと生きた奴と、このおれ様の格の違いを見せてやるぜ。刀剣ってなー踊り方を知ってる物なんだぜ?
 おい、ご主人さまよ。鞘から出してちょいと『許可』しろ」
「間違えても殺戮パーティにしちゃ駄目よ?」
 少し心配げに言うとルイズはアヌビス神を抜き放つ。完全に甦ったその片刃の姿は美しい。月明かりを映しまるで宝石のようにきらきらと輝く。
「良いわ、アヌビス、あんたに『許可』するわ」
 奇妙な誘いにルイズはくすりと笑顔を零す。
 言葉と共にルイズの身体が意思とは別に勝手に動き出す。
 徐々に踏まれる軽やかなステップ。剣の無駄なき流れるような軌跡が、刀身の輝きも相まって宙に鮮やかな光の帯の幻想を呼び起す。
 勝利呼ぶ女神の剣舞。例えるならばそれは人の物でなく、高貴で、神聖で、美しいもの。使い魔を召喚する時に、ルイズが心の何処かで願ったあの想い其の侭に。
 バレッタに纏められた桃色のその髪の毛が、跳ねる度に、時に柔かく、時に激しく揺れ動き、薄暗いバルコニーで月の明かりを受け天の宝石の如く煌く。
「おでれーた!こいつぁおでれーた!てーしたもんだ!」
 心底吃驚したように、デルフリンガーはおでれーた!と繰り返す。
「主人の相手をつとめる使い魔なんて、ダンスのエスコートする剣なんて初めて見たぜ!」
「だからデル公、お前とは格が違うって言ったんだぜ」
 酔うに酔ったアヌビス神は歌うようにへへんと言う。
 その美しい舞いは周りの者達を魅了する。相手がいないダンスであるのに、踊る誰よりも満たされ不思議に包まれたその姿、優雅に強く。


 その姿に賛美の言葉だけの己に堪え切れずに、デルフリンガーが思わず求める。
「お、俺も連れてけ兄弟っ!」
「おうよ、来なっ糞兄貴!」
 一声応え、左の手に彼を取る。

 踊りの場をバルコニーからホールへと。

「「アヌビス神!
  デルフリンガー!
   ルイズ二刀剣舞! ってな」」

「ば、バカっ」
 二振りはふざけるように声を重ね、顔を赤くするご主人さまを、今宵の主役にすべく、踊りの渦へと飛び込んで行った。



 ゼロの奇妙な使い魔 アヌビス神・妖刀流舞 第一部 -完-

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