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人間がこの世に存在するのは金持ちになるためではなく、幸福になるためである byスタンダール ドアを開けるとそこにいたのはワルドだった。 「おはよう。使い魔くん」 「おはようございます」 「おはようございます」 五月蠅いぞギーシュ。会話に入ってくるな。 しかし朝からどうしたというんだ?朝食にはまだ早いだろう? 「ええと、ギーシュくん。少しの間ご退出願えるかな」 「は、はい」 ギーシュは戸惑いながらも出て行く。 「きみは伝説の使い魔『ガンダールヴ』なのだろう?」 そしてギーシュが完全にいなくなったことを確認すると、ワルドは突然そう切り出した。 「は?」 心臓がバクバクする。誤魔化せれた、誤魔化せれたよな!?なにも顔には出してないよな!? うまく惚けた振りできたよな!? なんで知ってんだよ!?ありえねー!ふざけんなよ!? 「……その、あれだ。フーケの一件で、僕はきみに興味を抱いたのだ。そしたら伝説の使い魔『ガンダールヴ』だそうじゃないか」 ワルドは何か誤魔化す様な感じで首を傾げながら言う。反応からしてどうやらこちらの変化には気づいてないようだ。 よかった、いつも無表情でいて。……よし、落ち着いた。もう大丈夫。 私が『ガンダールヴ』だということを知っているのはオスマン、ならびにオスマンと一緒に調べた(らしい)コルベールだけだのはずだ。 知っているはずがない。それに『ガンダールヴ』は伝説なのだ。オスマンはそれを勿論知っている。コルベールもだ。 伝説が復活したとなれば色々騒ぎになるはずだ。その騒ぎを恐れてオスマンとコルベールは秘匿しているはずなのだから喋るわけがない。 さすがに色仕掛けだとかそんなもんで喋るものでもないだろう。 ルーンを見られたという可能性もあるがいつも手袋をしてるし、洗濯等の水周りぐらいでしか外さない。 それにルイズにすらルーンを見せてないしな。 おかしい、そして怪しい。 「『ガンダールブ』ですか?それは一体?」 誤魔化すことにしよう。そしてワルドの様子をさぐる。 「いや『ガンダールヴ』だよ。まあいい。僕は歴史と、兵(つわもの)に興味があってね。フーケを尋問したときに、きみに興味を抱き、王立図書館できみのことを 調べたのさ。その結果、『ガンダールヴ』にたどり着いた」 確定だ。こいつは怪しいんじゃない、怪しすぎる。敵である可能性もでかい。 何でその王立図書館で俺のことが調べられるんだ?どうしてそこで『ガンダールヴ』が出てくる?敵かもしれないという可能性は暴論じゃないはずだ。 敵じゃなくても何か隠してるのは間違いない。 「あの『土くれ』を捕まえた腕がどのぐらいのものだか、知りたいんだ。ちょっと手合わせ願いたい」 おいまさか…… 「……それのことですか」 そう言ってワルドの腰に刺さっている杖を指し示す。 「これのことさ」 ワルドは薄く笑いながら杖を引き抜く。もしかしたら試合中の事故とか言って私のことを殺すつもりなのかもしれない。 「断ります」 「へ?」 ワルドは目を丸く見開き呆けた表情をする。断れるとは思って無かったのだろう。滑稽だな。 しかしすぐに正気に戻る。 「ちょ、ちょっと待ってくれ。お互いの力量が測れるいい機会だと思わないかい?お互いの実力がわかれば戦闘においても作戦が立てやすくなる」 しつこいな。そんなにしてまで私を殺したいのか? 「心配しなくてもあなたの実力は大体予測がついてます」 「へ?」 「おそらく『風』のスクウェアメイジで接近戦でも強いであろうということ。それと戦いなれしているであろうということ。それだけわかれば十分です」 体つきがいいからな、鍛えているのだろう。だから接近戦も出来るはずだ。もしかしたらそこに魔法を織り交ぜてくるのかもしれない。 『風』だと判断したのはギーシュの使い魔への攻撃とギーシュに迫る矢を防いだ時に『風』属性の魔法を使っていたからだ。 とっさに何かする場合、自分が得意とする属性が出るものだと思っている。それに魔法が使える奴は自分の得意な属性を贔屓したがるようだしな。 なんにせよ、ワルドの呆けた顔は滑稽だった。 ----
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