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DIOが使い魔!?-48」を以下のとおり復元します。
トリステイン魔法学院、学院長室。 
この部屋の主であるオールド・オスマンは、戻った4人の報告を聞いていた。 
もっとも、報告をしていたのは専らルイズであった。 
オスマン氏は、キュルケとタバサにも状況報告を求めたのだが、 
フーケとの戦いで疲労が限界に達したのか、2人の返答は要領を得ない。 
キュルケは暇さえあればチラチラとルイズとDIOを見ているし、 
タバサは俯いて黙ったままだ。 
オスマンは、ルイズの報告を鵜呑みにするしかなかった。 

「ほほぅ。 
では、『破壊の杖』は取り戻したが、 
『土くれのフーケ』は取り逃がしてしまったと…… 
そう申すのじゃな、ミス・ヴァリエール?」 
泣く子も黙るオスマンが、偽証を許さぬ鋭い視線をルイズに向けるが、 
ルイズは堂々と胸を張り、ハキハキと嘘八百を並べ立ててみせた。 
どうせ確認する方法など、無いのだから。 

「はい。 
そしてロングビル……つまりフーケがわざわざこのような遠回しな罠を仕掛けたのは 
……これはフーケ自らが言ったことですが…… 
どうやら『破壊の杖』を私達に使用させ、 
使い方を知るためだったようです。 
私もそれで間違いないと思います」

「お主個人の感想など無用じゃ」 

「その通りであります。 
お許しを」 
ルイズはビシッとあらたまった。 
オスマンは顎髭を撫で回すと、深いため息をついた。 
年相応の、そして、深い苦悩が混じったため息であった。 

「ミス・ロングビルがか……そうか…………そうじゃったか……」 
裏切りなど日常茶飯事だろうに、 
オスマンは珍しく辛そうな表情を浮かべた。 
しかし、それも一瞬のこと。 
すぐに鋼鉄の仮面がオスマンを包み込み、あたりに威圧感をばらまき始める。 
その空気に当てられて、キュルケとタバサもその場にあらたまった。 

「さて、諸君。 
よくぞ『破壊の杖』を取り戻した」 
ルイズが礼をし、それに続く形でキュルケとタバサが、ぎこちない礼をした。 
DIOは壁にもたれかかって、本を読んでいる。 
「『破壊の杖』は、無事に宝物庫に収まった。 
これで我が学院の体裁は、一応保たれたことになる。 
一件落着とまではいかんが、後は我々の……いや、ワシの仕事じゃ。 
諸君はゆるりと休むがよい」 
後始末をすると言うオスマンの言葉に、コルベールの肩が少し震えたような気がした。

おそらくは、隠蔽のためにクビを飛ばされることになるだろう教師達の何人かのことでも考えているのだろう。 

「フーケを取り逃がしてしまったからのぅ、 
『シュヴァリエ』の爵位を申請するとまではいかんが、 
王宮には報告をしておくぞい。 
目をかけてくれることじゃろうて」 
ルイズ達は、特に反応を返さなかった。 
オスマン自身もどうでもよいのか、少々投げやりだった。 

「ふむ、そういえば、今日の夜は『フリッグの舞踏会』じゃ。 
予定通り行うこととなった。 
今日の主役は君たちという事になっておる。 
せいぜい着飾るが良いぞ」 
ふぉっふぉっと笑うオスマンに、3人は礼をするとドアに向かった。 
ルイズはDIOをチラッと見つめて、立ち止まった。 

「先に行くといい」 
DIOは、本に目を落としたままルイズに言った。 
ルイズは一瞬怪訝な表情を浮かべたが、すぐにどうでも良くなったのか、 
さっさと部屋を出ていってしまった。 
ルイズが出ていった後、DIOは本を閉じ、オスマンに向き直った。 

「用がある……とでも言いたげじゃのう。 
残念ながら、お主には報酬はだせん。 
貴族ではないからのう。 
代わりにといっては何じゃが……二、三の質問には答えてやろう」

オスマンは、DIOが何故この場に残ったのか、おおまかに把握しているようであった。 
引き出しからパイプを取り出し、 
煙をふかし始めたオスマンに、DIOは質問をした。 

「『破壊の杖』……あれは、 
私が元いた世界の人間達が作り出した武器だ。 
なぜここにある?」 

「ほっ、『元いた世界』とな?」 
オスマンの目が光った。しかし、オスマンの言葉をDIOは無視した。 
質問をしているのは、DIOなのだ。 

「あれは何故……どうやってここにやってきた」 
取り付く島もないDIOに、オスマンはつまらなさそうなため息をついた。 
それと一緒に煙が吐き出され、DIOにかかる。 

「あれを私にくれたのは、ワシの命の恩人じゃ」 
オスマンは己の過去をあまり話さない。 
しかし、今回ばかりは話さないことにはどうにもならない。 
仕方なしといったふうに、オスマンは三十年前の過去を話した。 
ワイバーンに襲われたこと。 
突如あらわれた異様な身なりの男が、『破壊の杖』で助けてくれたこと。 
看護をしたが、死んでしまったという事。 
話を全部聞き終えた後、 
DIOは一つだけ気になる事を尋ねた。 

「その男の遺体は、墓の下にあるのかな?」 

DIOの奇妙な質問に、オスマンは怪訝な表情を浮かべたが、答えてはいけないというわけではない。 
オスマンは答えた。 

「墓はこの学院内にある。 
しかし、遺体はもう存在しておらんよ」 
それを聞いて、DIOは顔をしかめた。 

「ない……だと?」 

「彼の遺言での。 
骨も残さずに焼き尽くしたのじゃ。 
ワシが責任を持って執り行った」 
元の世界に戻る手掛かりが一つ消えたことに、DIOは舌打ちをした。 
骨さえ残っていれば、瞬く間に屍生人として再生させて、 
尋問をすることも出来ただろうに。 
しかしすぐに気を取り直し、 
DIOは己の左手に刻まれているルーンをオスマンに見せた。 

「では次に、このルーンだ……。 
このルーンが光ると、私の傷は瞬く間に塞がり、『馴染んだ』。 
今まで一度しか光っていないが……何故だかわかるか?」 
オスマンは、話すべきかどうかしばし悩んだ後、口を開いた。 

「お主の言う『馴染む』が、どういう意味なのかは分かりかねるがの……。 
まぁよい。 
それは、ガンダールヴの印じゃ。 
お主達が出かけておった間に、コルベールが文献を見つけだした。 
伝説の使い魔の印じゃ。」 

「伝説?」

「そうじゃ。 
伝説によるとガンダールヴは、ありとあらゆる『武器』を使いこなしたそうじゃ」 
DIOは首をかしげた。 

「……なんとも言いがたいな。 
この世界にきて、今まで私が触れてきた武器は、 
どれもこれも使い方を知っているものだらけだ。 
全く使い方のわからない武器があれば、確かめようもあるが…… 
この世界の文明レベルでは、無理だろうな」 
話はこれまでと、DIOは踵を返した。 
部屋の出口まで進み、扉を開けたところで、DIOは思い出したように振り返った。 

「あぁ、ところで、鏡の調子はどうかな?」 
オスマンがピクリと反応したが、すぐに嘘にまみれた笑顔を向けた。 

「おぉ、どこかの誰かさんのおかげさんでの。 
しばらく再起不能じゃ。 
まったく困った事じゃて」 
ホッホッホッと屈託ない(ように思える)笑い声を上げるオスマンを、 
DIOはしばらく眺めていた。 
が、やがて興味がなくなったのかパタンと、扉を閉めた。 
DIOがいなくなった後、オスマンはおもむろにパイプを口から放し、 
地面に叩きつけた。 
そして、忌々しげにグジグジと踏みにじった。 
木屑になるまで踏みつけていても、 
オスマンは無表情のままだった。 
――――――――― 


アルヴィーズの食堂の上の階。 
そこが、『フリッグの舞踏会』の会場だった。 
着飾った生徒や教師達が、 
豪華な料理盛られたテーブルの周りで歓談している。 
だが、この舞踏会は、 
いつもと少々様子が異なっていた。 
土くれのフーケが、学院に現れたという話は、 
既に学院中に広まっていた。 
そして、3人のメイジによって撃退されたという話も。 
だから、今回の舞踏会はどちらかというと、 
祝勝会という色合いの強いものであった。 
しかし、その主賓……つまりはフーケを撃退したメイジ達の顔は、 
ちっとも晴れやかではない。 
黒いパーティードレスを着たタバサは、ただ黙々とテーブルの上の料理と格闘している。 
だが、タバサが無口なのはいつものことなので、 
誰もそんなに気にはとめなかった。 
問題はキュルケであった。 
ゲルマニア出身の彼女は、 
引っ込み思案な傾向のあるトリステインの女性と比べて、 
情熱に溢れた積極的な性格をしている。 
ダンスパーティーともなれば、 
それこそ取っ替え引っ替えで男達と友好を深めたりするはずなのだが…… 
それをしない。 
憂鬱な顔をして壁にもたれ掛かり、 
ただぼんやりとパーティーの様子を眺めているだけだ。

幾人もの魅力的な男達がダンスに誘っても、 
彼女はやんわりと断るばかり。 
中には、いつも明るいはずの彼女が見せる、 
物憂げな表情に心打たれて、などという輩もいたが、 
彼女はそれも断った。 
男達はがっかりしたものだが、 
やがては各々別のパートナーを見つけ、それぞれにパーティーを満喫し始めた。 
そこに、ホールの壮麗な扉が開いてルイズが姿を現した。 
門に控えた呼び出しの衛士がルイズの到着を告げると、 
その場にいた貴族達の視線が彼女に集中する。 
そして、彼女の美しさに息をのんだ。 
バレッタにまとめた桃色の髪。 
肘までの白い手袋。 
ホワイトのパーティードレス。 
どれもこれもが、彼女の高貴さを輝かせている。 
その姿と美貌に、ダンスを申し込む男達が列をなすかと思われたが、 
不思議なことにそうはならなかった。 
誰も彼もが、遠巻きに彼女を眺めるだけ。 
彼女を中心にして、まるでドーナッツのような現象になっていた。 
それは、彼女の纏う雰囲気のせいとでもいうのだろうか。 
貴族達がダンスを申し込むにしても、彼女は高貴にすぎた。

いや、高貴というよりも、何者をも近づけない絶対的な何か…… 
それこそ王が身に纏うようなオーラが、 
まだ弱いながらもしっかりと彼女から振りまかれている。 
そのオーラのせいで、誰も近づけないでいたのだ。 
ルイズ自身も、他の男には興味がないのかサクサクと歩を進めて、 
バルコニーへと姿を消した。 
突如現れた一輪の華に、一時は会場も静まり返ったが、 
やがて元の喧噪を取り戻し始めていった。 
バルコニーに姿を現したルイズは、その贅沢っぷりに頭を押さえた。 
バルコニーに急遽設置されたテーブルの上には、 
パーティー会場のものもかくやというほど豪華な料理が並べられ、 
DIOが1人でそれを楽しんでいる。 
給仕をしているのはシエスタのみだが、 
それで十分事足りているようだった。 
テーブルにはイスが2脚あった。 
ルイズの為に、予め用意されていたのだろう。 
当たり前のように、ルイズはそこに座った。 

「お楽しみみたいね」 
「……君は踊らないのか?」 
ルイズはふっと笑った。 
「相手がいないのよ」 
「そうか」 
それっきり2人は黙り込み、しばらく料理に舌鼓を打つ。

やがて、ゆっくりとルイズが沈黙を破った。 

「ねぇ、帰りたい? 
元いた世界へ」 
つまり、ルイズはDIOが異世界から来た者であると認めたのだ。 

「帰りたい? 
……そうだな、帰らなければならないな。 
やり残したことがある」「例えば?」 
DIOは珍しくも苦々しげな表情を浮かべた。 

「私の運命という路上から、取り除かねばならない汚点がある」 
「へえ」 
「だが、今はまだ帰るわけにはいかないな」 
ルイズは首をかしげた。 
「この世界を私のものにしてからでも、 
帰るのは遅くない」 
ルイズは溜息をついた。 
このDIO、やはり冗談を言っているのか、 
真面目なのか、判断に困る。 
取り敢えずさらっと受け流すことにして、 
ルイズはワインを飲み干し、ゆっくりと立ち上がった。 
DIOに歩み寄り、すっと手を差し出す。 

「えぇっと、まぁ、今回は、 
あんたのお陰で事をうまく運ぶことができたわ。 
そこの所は……認めてあげる」 
それを受けてDIOも席を立つ。 

「だから、その、踊ってあげてもよろしくてよ?」 
DIOは静かに笑って、御主人様の求めに答えてやることにした。

素直でないルイズは、男性の方から誘うという形を取らねば、 
すぐにヘソを曲げてしまうことを、DIOは朧気ながら理解していた。 
ルイズの手に接吻をして、ダンスを申し込む。 

「私と一曲踊っていただけますか、ミ・レイディ?」 

ルイズは微笑んでDIOの手を取った。 
2人は並んで、ホールへと消えていった。 

……ちなみに、このときDIOはまだ上半身裸で、 
オーダーメイドの服が届くのは、舞踏会が終わってからしばらくあとの事になる。 
―――――――――― 
第一部、『ゼロのルイズ』終了!!! 

第二部、『ファントム・アルビオン』へと続く!! 

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