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ゼロのスネイク-2,5 - (2007/07/24 (火) 15:40:31) の編集履歴(バックアップ)


幕間

ルイズの部屋に戻ったホワイトスネイクが最初に見たのは、ドアのすぐ前に脱ぎ捨てられた下着だった。
どう考えてもルイズのものである。
そしてその上には何か書き置きのようなものがぽんと置いてあった。
だが――

「読メナイナ……」

ホワイトスネイクにはそれが読めなかった。
状況から考えるに、多分「洗濯しておけ」とか書いてあるのだろうが……年頃の小娘がそんな事を書くだろうか?
ホワイトスネイクはルイズの方を見るが、既に寝てしまっているので内容を聞くことは出来ない。
ホワイトスネイクは少し考えた後、

「記憶ヲ見レバ済ム話ダナ」

ルイズの記憶を見ることにした。

そう決めたホワイトスネイクはふわり、と軽くジャンプすると、
ルイズのベッドの上の空中で音も無く静止する。
そして慣れた手つきでルイズの額に指先を当てて――

ズギュン!

そんなな音とともに、ホワイトスネイクの指がルイズの額に突き刺さったッ!
だが不思議なことに流血は一切無い。
まるで水面に指を突っ込んだかのように、ごく自然にホワイトスネイクの指はルイズの額にめり込んでいる。
そして数秒後、ホワイトスネイクは、円盤状のものをズルリとルイズの額から抜き出した。

これが「DISC」である。
ルイズの記憶がホワイトスネイクの能力によって、形となって取り出されたのだ。

そしてこれまた慣れた手つきで、ホワイトスネイクはそのDISCを自分の額に突き刺した。
すると、DISCになにやら映像が映り始める。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「まったく、あの使い魔ときたら! ご主人様のパンツ覗くなんて信じられないわ!
 召喚できたときは「やったッ!」って思ったのに……付き合ってみないと分かんないものね」

DISCにはルイズの部屋が映りこみ、そしてプンスカ怒っているルイズの声が流れてきた。

「とにかく! これからはあたしが使い魔としての何たるかをビシッ! と教え込まなきゃいけないわ!
 まずその第一歩は……洗濯ね!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

本当に洗濯させるつもりだったのか、とホワイトスネイクは呆れた。
しかし自分で締め出した相手に書き置きを残すとは一体どういうことだろう。
自分でそう決めたことを忘れないためか?
などと考えたホワイトスネイクだが、とにかくこれであの書き置きの内容は大方確認できた。
ならばもうこのDISCに用はない、ということでさっさと自分の頭からDISCを抜き取った。
場面はちょうどルイズが服を脱ぎ始めるところだったが、
真性ホモ(ホワイトスネイク談)だったプッチ神父の影響で性欲を持たないホワイトスネイクには別に興味の無い映像である。

さて、ルイズに記憶のDISCを戻したホワイトスネイク。
はっきり言って洗濯なんかのためにコキ使われるのは不本意だったが、本体――厳密には本体ではないが、その命令とあっては仕方がない。
渋々ながら下着を引っ掴み、鍵を開けてドアを開く。
さっきみたいにすり抜けなかったのは、言うまでも無く下着がドアをすり抜けられないからだ。

そしてルイスの部屋を出たホワイトスネイクは考える。
この魔法学校の内装やルイズの部屋を見る限り、この世界の科学技術は相当に遅れている。
早い話、洗濯機なんて文明的なものがあることは期待できない。水道さえも無いだろう。
多分「魔法」とやらで色々解決してしまえるからそうなっていったんだろうが……と思ったところでふとある疑問が生まれた。

洗濯機が無い、ということは、それを何かで補っているということ。
地球の中世ヨーロッパならメイドあたりにやらせていたんだろうが、この世界には魔法がある。
魔法でどれだけのことが可能かは明確には分からないが、
文明の発達さえ遅らせてしまうのだから相当に幅広い応用が利くのだろう。
つまり魔法で洗濯をやるぐらいはできるハズである。
なのに――

「何故アノ小娘ハ私ニ洗濯ヲヤラセルンダ?」

魔法が使えるなら自分で洗濯ぐらいやるはずである。
それに自分がここに来たばかりのとき、他の生徒が魔法で空中を飛んでいたのに対してルイズは自分の足で歩いていた。
ということは……

「アノ小娘ハ魔法ガ使エナイノカ」

という結論に至ったホワイトスネイク。
周りは皆使えるのに不憫な話だな、と少しばかりルイズに同情した。
魔法が使える使えないはスタンドであるホワイトスネイクには、
スタンド本体がプラスαの何かを持っているかどうかという程度の話なので別にルイズに幻滅したりすることは無い。

とここまで考えたところで大分発想が脱線していたことにホワイトスネイクは気づいた。
自分は洗濯をしなければならないのである。
どういうわけか魔法を使えない、あの小娘の代わりに。
まずこの世界に洗濯機は無い。
そして水道も無い。
要するに「井戸を探してそこで水を汲んで洗濯」しなきゃあならないってことなのだ。
改めて、こんな使われ方は不本意だとホワイトスネイクは思った。

とにかく井戸を探さなくてはならない。
こんな夜中には誰も起きていないだろうから探すのは自分だ。
となると、そこで問題が起きる。

「私ノ射程ハ20メートルシカ無イカラナ……」

井戸がルイズより20メートル以上離れた場所にあれば、ホワイトスネイクは井戸までたどり着くことが出来ない。
つまり洗濯が出来ないのだ。
いや、この部屋に来るまでの道筋から推測する限り、確実にルイズから20メートル以内に井戸は無い。

ホワイトスネイクにとっては別に進んでやりたい仕事でもないが、
かと言って「出来ませんでした」で終わらせるようでは、
プッチ神父の下で完璧に近い仕事をし続けたホワイトスネイクのコケンに関わる。
そこで数秒考えてホワイトスネイクが出した結論は――

「誰カ他ノヤツニヤラセルカ」

思いっきり他力本願であった。
だがホワイトスネイクとしては「結果的に下着の洗濯が出来ればそれでいい」ので、そこには大してこだわらない。

そしてそう決めたホワイトスネイクは下着をルイズの部屋の前の廊下にぽんと置くと、
その隣の部屋のドアをすりぬけ、堂々とそこに侵入した。

果たしてそこには、赤毛の女がぐっすりと眠りこけていた。
薄い下着を押し上げる豊かな胸や肉付きの良い肢体が実にセクシーだが、
性欲を持たないホワイトスネイクにとってはやはりどうでもいいことだった。
そして部屋を見渡すと、暖炉の下にはなにやら真っ赤で馬鹿でかいトカゲ……とでも形容すべき生物がすやすや眠っている。
多分この女の使い魔だろう、とホワイトスネイクは当たりをつけた。

「初メテ見ル生物ダガ……動物デアルコトニ変ワリハ無イナ。
 動物ハ人間ヨリモ感覚ガ発達シテイルトイウカラ……」

そんな事を呟きながらホワイトスネイクは暖炉の下のトカゲに近づき――

ドシュン!

「『アト1時間、何モ感知シテハナラナイ』。オ前ニ命令スル」

体から抜き取ったDISCをトカゲの頭に突き刺し、ホワイトスネイクはそう言ったッ!

これもまたホワイトスネイクの能力の一つ。
命令を受けた生物は、例えその内容が
「人が来たら頭を撃ち抜いて射殺した後にDISCを回収しろ」という複雑なものであっても、
「破裂しろ」などという理不尽極まりない命令でも必ず遂行するのだッ!

さて、これであと1時間きっかりはこのトカゲの五感は無効化している。
たとえ自分の主人が突然起き上がって部屋を出て行ったとしても、それに気づくことは無いだろう。

そして下準備を終えたホワイトスネイクは赤毛の女に近づき――

ドシュン!

「『部屋ヲ出テ廊下ニ転ガッテイル下着ヲ洗濯シロ』。オ前ニ命令スル」

トカゲにやったのと同様に、ホワイトスネイクは赤毛の女にそう命じた。
すると女は唐突にむくりと起き上がると、着の身着のままの格好でふらふらと部屋から出て行った。
ふわりと空中に浮かびながら、その後を追うホワイトスネイク。
そして女は廊下に転がっているルイズの下着を見つけると、
胸の谷間から棒切れのようなものを抜き出して何やらブツブツ言い始める。
するとルイズの下着がふわりと浮かび上がり、さらに女の杖の先から水流が飛び出したッ!
杖から放たれた水は空中で下着を丁寧に揉み洗いしている。
便利なものだな、とホワイトスネイクはその光景を眺めながら思った。

そして数分間揉み洗いが続いた後、女は再び何かブツブツ唱え始める。
すると今度は杖の先から小さな火の玉のようなものが現れたッ!
その火の玉は先ほど放たれた水に包まれた下着の周りをぐるぐると回り始める。
火の玉の熱は下着を包む水を徐々に蒸発させていき、やがて下着を完全に乾燥させた。
便利なものだな、とホワイトスネイクは(以下略。

そして洗濯の終わった下着はぽとりと廊下に落ち、
女は手に杖を持ったまま、またふらふらと自分の部屋に戻っていく。

「ゴ苦労ダッタ」

ホワイトスネイクはその背中にそう言うと、下着を拾い上げてルイズの部屋に続くドアを開けた。
部屋に入ったホワイトスネイクは、窓から外を見る。
空は暗く、月の位置もまだ高い。

夜明けまではまだ時間がありそうだ。
そんな事を考えながら、ホワイトスネイクは自分自身を解除した。


To Be Continued...
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