ゼロの奇妙な使い魔 まとめ内検索 / 「一章十一節~微熱は平静を遠ざける~(前編)」で検索した結果

検索 :
  • 使い魔は空高く
    ...わらない~(後編) 一章十一節~微熱は平静を遠ざける~(前編) 一章十一節~微熱は平静を遠ざける~(後編) 一章十二節~おしゃべりは使い手を見初める~(前編) 一章十二節~おしゃべりは使い手を見初める~(後編) 一章十三節~土くれは機を逃さない~ 一章十四節~使い魔は上を向いて立ち上がる~(前編) 一章十四節~使い魔は上を向いて立ち上がる~(後編) 一章十五節~使い魔は空を見る 土くれは壁を見る~(前編) 一章十五節~使い魔は空を見る 土くれは壁を見る~(後編)
  • 一章十一節~微熱は平静を遠ざける~(前編)
     丈のある影がひとつ、深い青色をした朝もやの中を歩いている。両腕に洗濯道具一式を携えた、病み上がりのリキエルである。これからルイズの言いつけを謹直に守り、溜まった洗濯物を洗いに行こうというところだった。  リキエルが決闘に敗れ、五日ぶりに目を覚ましたのはつい昨日のことである。いかに魔法での治療とはいえ、普通であればもうしばらくの安静が必要な怪我を負ったというのに、水汲み場を目指すリキエルの足取りはしゃくしゃくとしたものだった。ルイズの言うように奇跡でも起きたのか、それとも本人の回復力が異常だったのか、見た目には、とても死の淵から這い上がったばかりの男とは見られない。  とはいえそんなリキエルも、昨日一日は終始体のだるさを抱えて過ごしている。それも五日分の寝疲れがあとを引いたらしい強烈なだるさで、起き抜けはそれほどでもなかったものが、午後を過ぎたころには指を動かすのにさえ気力を奪われる有...
  • 一章十一節~微熱は平静を遠ざける~(後編)
     べたべたと褒められて、リキエルは背中がかゆくなってきた。 確かにあそこまで動けるとは、自分でもいまだ信じられないくらいだったが、そうしようと動いたわけではなく、なぜか動けてしまっただけである。それに根性というが、あのときは前後無思慮で突っ込むことしか頭になく、決して褒められるべきものでもなかったとリキエルは思う。  リキエルはその思いを吐き出した。 「体が動いただけだがな、ほとんど勝手にだ。剣にしてもよぉ、握ったのはあのときが初めてだし、それで戦おうってわけでもなかった」  それを聞いたマルトーは感動の面持ちになり、厨房で皿を洗っている幾人かの手下に向かって、自慢の大声で呼びかけた。 「お前たち! 聞いたか!」 「聞いてますよ! 親方!」 「達人は貴族どものように、むやみに己の力を誇らない!」 「達人は誇らない!」  厨房のなかに、変な熱気が生まれている。  どうもこ...
  • 一章十二節~おしゃべりは使い手を見初める~(前編)
     門を抜けてしばらくしてから、リキエルは首をめぐらせ、魔法学院に目をやった。もう学院全体が豆粒ほどの大きさに見えるくらいだろうと思ったが、実際は敷地が目の端に収まってもいなかった。  学院の広さを少々甘く考えていたとリキエルは思い、そしてよくよく考えれば、学院を外側から眺めるのはこれが初めてなのだから、甘く考えたというのもおかしいかと思い直した。  ひとくさりそうして満足し、リキエルは首がおかしくなる前に顔を少し戻し、今度は流れていく景色に意識を向けた。  やや険しい道に、小楢のような落葉木が適当に間を空けて連なり、その上に高く昇った昼の日が光を落として、涼やかな木陰のあちこちに、まだらに漏れ日を作っている。そんな光景が一瞬のうちに左から右へと流れていくのが、体の浮き上がる感覚とあいまって気持ちよかった。  以前一度だけ、リキエルは何を思ったか、愛車のビモータでハイウェイを突っ走っ...
  • 一章十五節~使い魔は空を見る 土くれは壁を見る~(前編)
    「全員、杖を遠くに投げなさい」  フーケの命令に、ルイズらはしぶる様子を見せた。  貴族、メイジといっても、杖なしではただの人間である。いま杖を捨てるということは、唯一の対抗手段を奪われるということだった。しかし『破壊の杖』を向けられていたのでは、結局どの道もない。皆大人しく杖を投げた。  それを見届けると、フーケは懐から杖を取り出して振った。するとひとの背丈ほどもある、さきほどのゴーレムを思わせるような土で出来た腕があらわれる。腕は地を滑るような気味の悪い動きをすると、ルイズたちの杖を掴み取って操り主の足元まで運んだ。わざわざそんなことまでするあたり、フーケも用心は怠っていないらしい。 「あんたも、その折れた剣を投げるのよ」  リキエルにも声がかかった。フーケにしてみれば、自慢のゴーレムの攻めをことごとく避けられ、挙句には受け止めまでされたのだから、当然といえばそうか...
  • 一章十四節~使い魔は上を向いて立ち上がる~(前編)
     宝物庫を出たルイズたちは、いったんそれぞれの部屋に戻って簡単に身支度を済ませ、運ばれてきた食事をとった。そしてすぐに学院を発った。無論、徒歩ではなく馬車である。手綱は、フーケの小屋を知るロングビルが握った。  馬車と聞いて、リキエルは童話の挿絵などにあるような立派なものを想像していたが、実際に馬車回しに出ていたのは、見た目に粗末な一頭立ての四輪だった。屋根も幌も、ろくに座れる席すらもないような代物で、いっそ馬に荷車を引かせたようだった。  しかも『固定化』をかけられずに長く放置してあったとかで、あちこちが傷んでいる。縁の部分などは背をもたせかけるとびっくりするくらい軋むし、乗る前にちらと目をやった心木は、わずかに歪んでいるように見えた。屋根がないのは、突然の襲撃を考えて見渡しがきくようにとのことだが、どうも別の不安を煽られる。  そんな馬車の上で、めいめいは好き勝手にしている。憮然...
  • 一章十節 ~人間は一場には変わらない~(前編)
     なんでこんなことをしてるんだろ、とロングビルは頭を抱えたくなっていた。足取り重く行く階段の先には、なるだけ長居したくない学院長室がある。  二ヶ月ほど前にこの学院に雇われ、仕事にはすっかり慣れていたが、耄碌しかけの『振り』をしたジイ様のセクハラに関しては、慣れる、慣れないで割り切れない部分があった。尻を触られるくらいならまだ軽いほうで、最近では昼前のようなことが頻繁に起きるようになっているのだ。堪えられたのは初めの二回ほどで、あとは冷静に徹しきれない部分が、すぐに顔を出した。  そういう行為をされることを仕事の一端として織り込めないのは、ロングビルが歳若い女性であることの証明なのかも知れないが、当のロングビルにはちっとも面白くない。いっそ無視してしまえれば、どれほど楽だろうと思っていた。  周囲にはできるだけ平穏で、静かな環境を持っていたいというのがロングビルの願いである。平穏静か...
  • ギーシュの奇妙な決闘
    ギーシュの奇妙な決闘 第一話 祭りの後 第二話 決闘の顛末 第三話 『平賀才人』 第四話 『決闘と血統』前編 第四話 『決闘と血統』中編 第四話 『決闘と血統』後編 第四話 『決闘と血統』完結編 第五話 『灯(ともしび)の悪魔』 第六話 『向かうべき二つの道』前編 第六話 『向かうべき二つの道』後編 第七話 『フェンスで防げ!』 第八話 『STAND BY ME!』 第九話 『柵で守る者』前編 第九話 『柵で守る者』中編 第九話 『柵で守る者』後編 第十話 『Shall We Dance?』 第十一話 『星屑の騎士団』 第十二話 『香水の乙女の誇りに賭けて』前編 第十二話 『香水の乙女の誇りに賭けて』後編 第十三話 『魂を蝕む毒』前編 第十三話 『魂を蝕む毒』後編 第十四話 『暴走! 惚れ薬バカップル!』前編 第十四話 『暴走! 惚れ薬バカッ...
  • 一章十五節~使い魔は空を見る 土くれは壁を見る~(後編)
    ◆ ◆ ◆  会場のホールに着いたときには、舞踏会はもうはじまっていた。安っぽさのない華美な装飾や、食物とも見えないほど見事に盛られた馳走の数々、常の様子とはうって変わって優麗に動く生徒の群れが、まさしくと思わせた。リキエルは、ルイズがどこかにいはしないかと目をせわしなくしたが、とても見つけられるものではなかった。  リキエルは学院長室を出た後、一度ルイズの部屋に戻っている。だが、ルイズの姿はなかった。というよりも、女子寮全体にあまりひとの気配がなかった。舞踏会のために、皆どこかの控え室ででも、準備を整えているのだと思われた。  舞踏会の華やぎにしみは作るまいと、リキエルは目立たぬように壁際を歩き、そのままバルコニーに向かった。どうせ平民は正面からでは入れないだろうと思い、厨房をたずねて、給仕のために設定された入り口を使ったのが幸いしている。また傷みの増したスーツではさす...
  • 一章十四節~使い魔は上を向いて立ち上がる~(後編)
     リキエルもまた、すぐに同じように駆け出したが、今度のそれはルイズを助けるためというより、怒鳴りつけるためという色合いが強かった。それほどリキエルは苛立っている。しかし、さっきと違ってルイズとは大きく距離があった。抱え上げて、ゴーレムの腕をかいくぐって逃げるのはどうも無理そうだと、走りながら思った。  ――おい、まずくないか本当に。これは……。  やばいんじゃあないのか。ルイズへの苛立ちが、たちまち不安に取って代わった。リキエルは度を失いつつ走った。いまちょっとでも足を止めたら、きっとルイズは死ぬと思った。  ルイズの前まで走り込んだとき、ゴーレムの腕はもう目の前にあった。やはり、ルイズを抱える暇は無いようである。あの土と鉄の塊を、受け止めるほか無かった。  リキエルはとても無理だという内側からの声を聞いたが、一蹴した。迫ってくるゴーレムの拳を睨むような目で見据えると、剣を大きく肩...
  • 一章十二節~おしゃべりは使い手を見初める~(後編)
    「あのときあんた、本当に動けなくてあたりまえだったんだから。腕も足も折れていたのよ? まぐれとかたまたまとか、そういうので片付く話じゃないでしょ」 「そう言われてもな……」  リキエルは言いよどんだ。昨夜マルトーやキュルケにも、決闘のときのことで誉めそやされたのを思い出している。  決闘の最中は傷のことはあまり気にならなかったし、まず痛みを感じなかった。そして、勝負がついて直ぐに気を失い、起きたときには治っていたから、リキエルはいまだにその重さに実感がない。ルイズにさんざん言われて、気を失う直前の激痛を思い返したりして、ふうんと思ったくらいである。  だが考えてみれば、確かに初めは立ち上がるのもままならなかったはずで、そこからああも状況をひっくり返せたのは、奇跡というにも行き過ぎているかもしれない。奇跡や偶然といったところで、理由なしに起きるものでもない。だが思い当たる理由などもな...
  • 王女の手は空に届かない
    王女の手は空に届かない(前編) 王女の手は空に届かない(後編)
  • CRAFT OF ZERO ゼロの技工士
    プロローグ 第一話 サーレーのトリステン逃避行 第二話 サーレーの受難と魔法少女 第三話 使い魔サーレーと黒髪メイド 第四話 サーレー君とボーンナムくんよ:前章 卑屈さと誇りと傲慢 第五話 サーレー君とボーンナム君よ:中章 固定と風と土と(前編) 第五話 サーレー君とボーンナム君よ:中章 固定と風と土と(後編)
  • ヘビー・ゼロ
    ヘビー・ゼロ 第一章【青空の出会い】第一話『やんだ風のち異世界』 第二話『困惑のち使い魔』 第三話 『出会いのち晴れ間』 第四話 『決闘日和 ~格の差~』 第五話 『上は爆発下は洪水警報』 第六話 『低気圧のち信頼』 第七話 『微熱注意報』 第八話 『青色上昇気流』 第九話 『寒冷前線最前線』 第十話 『吹き荒ぶ風と立ち塞がる土くれ』 第十一話 『ゼロを包む風』 第二章【風に揺れるアルビオン】第十二話 『帽子旋風』 第十三話 『夢枕のち閃光』 第十四話 『Re:決闘日和 ~Blind Spot~』 第十五話 『澱んだ風と立ち向かう土くれ ~決路~』 第十六話 『風を切る三騎 ~Three Bravemen~』 第十七話 『過去を思う男・彼女を想う男』 第十八話 『アルビオン暴風警報発令!』 第十九話 『悪魔の虹』 第二十話 『そよ風の中で』 第三章【虚空の中の虚無】第二十一話 『愛の蜃...
  • 使い魔は今すぐ逃げ出したい-8
    「い、いいのです。忠誠には報いるところがなければなりませんから」 左腕を擦りながら、王女は平静を装って頷く。 私自身は何をしたかは憶えてないが普通じゃやばかったことなのか? そう考えていると突然ドアが勢いよく開かれる。 「きさまーッ!姫殿下にーッ!なにをしているかーッ!」 飛び込んできたのは薔薇を手に持った少年だった。どこかで見たことある気がする。何処だったかな? 「ギーシュ!あんた!立ち聞きしてたの?今の話を!」 そうだ、ギーシュだ。前に決闘したな。あれ以来見かけないから忘れていた。 「薔薇のように見目麗しい姫さまのあとをつけてきてみればこんな所へ……、それで鍵穴からまるで盗賊のように様子をうかがえば……、平民のバカがあんな強引な……」 ギーシュはルイズの質問に答えない。 しかしお前りっぱなストーカーだな。気づかない王女も王女だが…… というか...
  • 一章十三節~土くれは機を逃さない~
     遠く月明かりの下、闇色の森は黒い絨毯のようにも見えた。その上を春の夜風が撫でていく。  梢の擦れあって起きる微かなさざめきは潮騒のようで、繁った葉が波打つ様が、さしづめ寄せて返す波だった。風はリキエルのもとにも届いて、夜気にさらされて冷えた体を余計に凍えさせていく。  三度四度そんなことが続いて、風は出し抜けに弱まったが、一度飛ばされた熱はなかなか戻ってこなかった。体の自由が利かず、満足に身震いもできないリキエルは、首をすくませてぶるぶると細かく振った。しつこく寒気の残る首の後ろは、見上げるようにして熱を渡らせる。  上げた目線の先には、ちょうど月が来ていた。月齢か何かが関係しているのか、ふたつの月はいつにも増して明るく、近くの星がよく見えないほどだった。それでもちょっと目を転がすだけで、幾百もの星のまばゆさに行きあえるのは、それだけ空気が綺麗なのだ。  リキエルは、星を見るのが...
  • 第十五話 『三つのタバサ』(前編)
    ギーシュの奇妙な決闘 第十五話 『三つのタバサ』 「…………」  エレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエール……  ヴァリエール家の長女にしてアカデミーの優れた研究者でもある彼女の前で、狂気の沙汰は繰り返されていた。  それはまさに、狂気の具現。  始祖ブリミルをも恐れぬ大逆。音に聞いたアカデミー実験小隊のそれよりもなお非道! 「才人……やぁ! そこ触っちゃやだぁ……!」 「んー? 聞こえないなぁー」  半裸で馬鹿のようにいちゃつく、二人の男女。この空間における、狂気の体現者。  女の方は、男の膝の上で顔を赤くし、情愛に蕩けきった目で男を見る。  男の方は、女の反応が愉しくてしょうがないという風に、その手で女の体中を弄っていた。  ――ルイズと才人。  惚れ薬によって、痴情絶賛放映中な、バカッ...
  • 偉大なる使い魔-31
    一日の授業が終わり、わたしは図書館に向かう。 詔を作るために詩の本を参考にする。 試しに一つ作ってみますか、思いつくまま紙に書いてみる。 疾(はや)きこと風の如く。 徐(しず)かなること水の如く。 侵掠(しんりゃく)すること火の如く。 動かざること土の如し。 …駄目だ、結婚式に詠みあげるものじゃ無いわね。 風は、わたし達に季節の訪れを教えてくれる。 水は、わたし達が生きていく事に欠かせないもの。 火は、わたし達から暗闇を遠ざけてくれる。 土は、わたし達に大地の恵みを齎してくれる。 …うーん、どうかしら。紙を凝視するが何も変わらない。 「これは結婚式に相応しくないんじゃない」 「こっちの詔は上手く出来ているんじゃないかな」 いきなり後ろから話し声が聞えてきたので、慌てて振り返ってみると モンモランシーとギーシュが紙を覗き込みながら意見を...
  • 一章十節 ~人間は一場には変わらない~(後編)
    ◆ ◆ ◆  広場から、ロングビルらの姿が消えるのを見届けたオスマン氏は、杖の先をちょんと振った。すると『遠見の鏡』は広場の情景を消し、ただの鏡に戻った。そこに映ったコルベールの顔は、強い興奮で朱に染まっている。  蟻の行列を眺める子供のように固まったまま、微動だにしないコルベールに、椅子に座ったオスマン氏は呆れつつ声をかけた。 「ミスタ・コルベール、いつまで未練たらしく眺めておる」 「……」 「失われたものは帰らぬ運命にあるのじゃ」 「……オールド・オスマン。見ましたか? あの平民の動きを。負けはしましたが、『ドットクラス』とはいえメイジを圧倒していた! それもあの負傷で! あんな平民見たことない! やはり彼は伝説の使い魔『ガンダールヴ』! さっそく王室に報告して、指示を仰がないことには――」 「君も大概に、こういう時は人の話を聞かんな。むろん見ておったよ、君の見たも...
  • 王女の手は空に届かない(前編)
    「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ。神聖で美しく、そして強力な使い魔よ。  私は心より求め、訴えるわ。我が導きに答えなさいッ!!」  私の口から漏れたその言葉を最後に、この馬鹿馬鹿しい儀式はようやくの終幕を迎える。  使い魔召喚の儀。それが今日、私が退屈凌ぎに行った余興の名前だ。  召喚された使い魔は、主君であるメイジに最も相応しい存在であると言う。  それ故に、一口にメイジの使い魔と言ってもその姿は千差万別。  ありふれた非力な小動物から、滅多に人前へと姿を見せないような幻獣まで様々だ。  それこそ、メイジの中には優美に天空を舞うドラゴンを使い魔として使役している者だっている。  私がガリア王である父より団長の職務を与えられた、ガリア王国の北花壇警護騎士団。  公にその存在を明かされることのない王国のドブ攫い役どもの中に混じって、無様に泥に塗れて苦しむ...
  • 第五話『よし、俺のシエスタにスケッチさせてみよう』
    夜中――日本なら丑三つ時というであろう時刻。 当たり前だが、ルイズは眠っていた。ちょっと上品とはいえない格好ではあったが。 「・・・ムニャ、チェックメイトってやつよ・・・キュルケぇー・・・」 なにやらいい夢を見ているようである。 そしてルイズの頭の上には、ちょこんと帽子が乗っかっている。 ルイズの寝相はお世辞にも良いとはいえないのだが、 帽子は寝返りのたびに離陸と軟着陸を繰り返し、安定したポジションを維持していた。 そんな安らかに眠る一人と、そもそも睡眠が必要なのかわからない一帽子に、 カチャ・・・ 忍び寄る邪悪な影が・・・ 『変な帽子みたいな使い魔』  ・・・カチャ・・・カチャ・・・カチャカチャ・・・カチャ・・・ 金属同士がこすれる音が、ドアノブからわずかに聞こえる。 何者かが鍵を非合法的な手段で開けようとしているようだ。 ...
  • 「The Story of the "Clash and Zero"」 第1章 オレは使い魔 前編
    第1章 前編 「あんた誰?」 値踏みするように、自分を覗き込む少女が問いかける。 …君こそ誰だ? ここはどこだ? 体を起こし、質問に質問で返そうとしたが……身体が応答しない。 目を開き、首を少し動かして、視野を確保するのが精一杯であった。 (身体が…重い…… 今敵に襲われたら… 楽に…逝けるな……) 何よりも男落胆させたのは、大切な相棒…”友”が自分の隣にいないことであった。 何の返答も無い。 (もしかして私… ”死体”を召喚しちゃった!? …でも、目は開いてるし…首もすこし動いてる? …ケガでもしてるのかしら?…) 少女は自分が召喚した生き物の安否を確かめるため、”それ”のそばに近寄り、まじまじと観察してみた。 どうやら初見通り、人間の男性らしい。 「黒地に、細い白い縞模様(ピンストライプ)」の変な服を着てい...
  • 星を見た使い魔-1
     ナイフの深く潜り込んだ腹の傷は酷かった。  大量の出血と共に、体の中の『熱』が、『力』が、『命』が、冷たい海水に消えていく。そのまま『意識』も……。  これが『死』だ……。  しかしッ、『空条徐倫』は恐怖していなかった。死など恐れていなかったッ!  それは既にッ、『覚悟』が出来ていたからだッ!! 「ここは、あたしが食い止める!」  加速する時の中で、恐るべき速さで追撃してくるプッチ神父に対し、徐倫はあえて振り返った。立ち止まり、迎え撃つ為に。  背後で遠ざかっていくエンポリオの声が聞こえる。目の前からは鮫よりも速く恐ろしいプッチ神父が迫り来る。  仲間も父親も殺され、悔いも未練も残して、自分はこれから死のうとしている……しかしッ!!  徐倫は恐怖など微塵も抱いていなかった。  それは既に『覚悟』していたからだッ! 生きる事を諦める...
  • ゼロと奇妙な鉄の使い魔
    第一章 死と再生 第二章 乱心の『ゼロ』 第三章 誇りを賭けた戦い 第三章 誇りを賭けた戦い-2 第四章 平穏の終焉 第四章 平穏の終焉-2 第五章 二振りの剣 第五章 二振りの剣-2 第六章 土くれと鉄 ~あるいは進むべき二つの道~ 第六章 土くれと鉄 ~あるいは進むべき二つの道~-2 第六章 土くれと鉄 ~あるいは進むべき二つの道~-3 第六章 土くれと鉄 ~あるいは進むべき二つの道~-4 第七章 双月の輝く夜に 第七章 双月の輝く夜に-2 第八章 王女殿下の依頼 第九章 獅子身中 第十章 探り合い 第十一章 土くれのフーケの反逆 ~ またはマチルダ・オブ・サウスゴーダの憂鬱 ~ 第十二章 白の国アルビオン 第十三章 悪魔の風 第十四章 土くれと鉄Ⅱ ~ 誉れなき戦い ~ 第十五章 この醜くも美しい世界 第十六章 過去を映す館 第十七章 真...
  • 第六話 そいつの名はロングビル
    何故こんな事になってしまったのか。何故こんなことが起きてしまったのか。それは運命のみが知っているのだろう。なぜなら私達は運命の奴隷なのだから。 今も、そしてこれからも…。  第六話 そいつの名はロングビル その① (な、何なのよ、あれはッ…??) 忘れ男(もの)との戯れが終わり、まだやっているのかわからない決闘の様子を観に行こうとしていたキュルケは、悲鳴を耳にしたのだ。 悲鳴のする方向は広場のある方向である。 初めは決闘中に何かが起こったのだとキュルケは思った。 しかし少し聞いていると、悲鳴の感じがそういった類のものではない。 そして、偶然塀のほうを見ると人影があり、そこから無数の石飛礫が飛ばされいるではないか。 キュルケは理解した。あの人影のヤツが悲鳴の元凶であると。 (あいつを捕らえて一躍有名よ。まぁ、元々有名だけど。) そう心中...
  • マジシャンズ・ゼロ-19
    ある意味で息絶えたアヴドゥルは沈んだ意識の中、よく知っている人達と全く知らない人達の会話を聞いていた。 「なっ!何をするだァーーーーーッ!ハレンチなッ!」」 「OH MY GOD!アヴドゥルよ死んでしまうとは情けない」 「やれやれだぜ…」 「ちょっ!学生はまずいっスよ~」 「おっぱい星人が巨乳から逃げるなんて無駄なんだ……無駄だから無理なんだ無駄無駄……」 「彼は大丈夫なのか?このままでは……」 「いや。アヴドゥルは極めて真面目な…いわゆる堅物なはずなんじゃが」 「どこがだ。あの調子じゃ今にも落ちるぜ」 「プッツンしかけてますぜ~あの顔。まじに社会人すか?あの人」 「まあ、彼がココを耐えたところで無駄ですがねどっちみち……所詮おっぱい星人のブ男です」 ボロクソの散々に言われ、無性に泣きたくなってくるアヴドゥル。あの一族には味方がいないようだ。 ...
  • 微熱のカウボーイ
    微熱のカウボーイ-1 微熱のカウボーイ-2
  • 第二話 カオスは大変なものを残して行きました
    「・・・ゴーゴン君、彼はまだかね?」 「・・・まだでしょう。あとコルベールです。」 「・・・彼が来ると言ってどのくらいたった?」 「・・・5時間ですかね・・・」 もう空には月が二つ出ている コンコン 「すいまっせぇ~ん、メローネですけど、呼ばれたみたいなんで来ました。」 「来ましたよ・・・」 「よし、ここはガツンと言ってやらねば・・・。ゴホン。入りなさい。」 威厳のある声でオスマンが答えると、志々雄が入ってきた。 「・・・誰?」 「メローネです。いつもの服が洗濯中だったんで・・・」 「そうか・・・それにしても遅過ぎじゃあないのかね?」 「いや、すいません。これで勘弁してください。」 そういうとメローネは2人にパソコンを見せた。 「「こ・・・これは・・・」」 新ゼロの変態第二話 カオスは大変なものを残して行きました ...
  • 使い魔の兄貴(姉貴)!!-4
     ・・・ あったかい。 ルイズは他人の背中の上で目を覚ました。 久しぶりの感覚だ。 最後におんぶされたのはもう何年前のことだろう。 確かあの時も泣き疲れて、そして、あの人は後ろを振り向いて 「目ェさめたか?」 目の前にあったのはッ!いかつい顔ッ!! ルイズは韻竜も裸足で逃げ出すような速さでその顔にビンタを喰らわした。 使い魔の兄貴(姉貴)!!~夜が来る!(前編)~ 「イッテェェェェ!!!な、な、何をするだぁーーーー!! 「い、いいいいきなり変な顔見せんじゃないわよ!!」 「変だとォ!?テメェ、感謝の言葉ならまだしもそんな事言うか、ええ、オイ!?」 「あんたに何感謝しろって言うのよ!変態!痴漢!バカッ!バカッ!!早くおろし、て・・・」 「イテェ、イテェ!!やめろっ、てェ・・・」 ルイズは抗議するようにエルメェスの頭を両手で叩いた。 エルメェスは思わ...
  • 第五話 サーレー君とボーンナム君よ:中章 固定と風と土と(前編)
    マルトーが仕込みをしているときにその事件は起こった。 実の娘のようにかわいがっていたメイドの一人が貴族のぼんくらに絡まれたのだ。 貴族の少女にすぐに助けてもらっていたがそれもすぐにやられてしまった。 皿洗いをしていたサーレーがマルトーのすぐ横に立ってぼそっと呟いた。 「助けに行かないのか?」 マルトーはその言葉に苦い顔をした。 「助けに行きたいにきまってらぁ・・・・。でもよ・・・。」 「力が無いからどうにもできない・・・か?」 サーレーは少し考え込むとこう呟いた。 「力があったらどうにかできんのか?」 サーレーの言葉に厨房の中にいた人々が息を飲む。サーレーはその様子を見ると黙って厨房を出て行った。 「力があるからちょっと行ってくる。」 軽い声が厨房に響くとそこにはもうサーレーはいなかった。 マルトーが周りを見まわすとすでにサーレーはルイズとシエスタのほうに歩いてい...
  • 第一章 使い魔は暗殺者   前編
    第一章 使い魔は暗殺者   前編 リゾットは怒っていた。心の底から。頭のてっぺんを突き抜けるような怒りを、不甲斐ない自分に感じていた。 ――オレは…何一つとしてっ、仲間と交わした誓いを果たすことが出来なかったっ!! それが、リゾットの怒りの原因だった。 ボスを殺すこと。 栄光を掴むこと。 仲間たちと約束したことを、リゾットは何一つとして叶えることが出来ず、無様に死んでいく自分が、リゾットはこの世で一番許せなかった。 誇りを傷つけられ、栄光を掴もうと誓った。 けれど、全ては無駄に終わってしまったのだ。自分たちの反乱は、挫折した。 誰が悪いのではないだろう。強いて言うのならば、運が無かったとしか言えない。 戦いに勝つには天の時と地の利と人の和が必要だと言われている。 地の利と人の和は同等だった。けれど、天の時はブチャラ...
  • 2 スヴェルの夜 前編
     “女神の杵”亭の二階。ギーシュとの相部屋の窓際に座り込んだ才人は、何もしないでずっと夜空を見上げていた。  普段は離れている赤と青の月が重なり、白い光を映している。  明日の朝、暫く出航を見合わせていた船の運行が再開されるらしい。なんでも、月が重なるスヴェルの後は、アルビオンがラ・ロシェールに一番近づく日なのだとかなんとか。  目的地が近づいてくるというのは、どういうことなのか。良く分からないまま、才人はそんな説明を淡々と受け入れていた。  見上げた空に浮かんでいる月の姿は、自分の記憶にある一つだけの月に良く似ている。  何時にも増して夜の世界が明るく照らされているように見えるのは、恐らく錯覚なのだろう。重なった月が放つ光の量は、二つの時の半分程度しかないはずなのだから。 「ああ、そうか」  そう呟いて、才人は町が明るく見える理由に気が付いた。  月の光に隠れていた星空が...
  • 仮面のルイズ-72
    アニエスの手でリッシュモンが”処刑”された後、達銃士隊はリッシュモンの屋敷に突入し、数々の不正を暴いていった。 リッシュモンの屋敷で働いていた者のうち、不正に関わりがあった者は投獄された。 それ以外の者達は一通りの取り調べを受けた後に、銃士隊によって他の仕事を斡旋され、遠ざけられた。 隠し部屋などは徹底的に調査され、不正によって得たと思しき物品は押収され国庫へと納められた。 また、屋敷の地下には逃走用と思しき通路が造られていた、これに利用価値があると判断したアニエスは屋敷を拠点として利用したいとアンリエッタに進言し受諾された。 それからすぐに、アルビオンからルイズとワルドの二人が戻り、二人もこの館を拠点の一つとして利用する許可を貰っている。 かつては調度品が並べられていた廊下も、今は壁掛け式のランプだけが等間隔に並ぶだけであった、他の貴族がこの有様...
  • 一章九節~使い魔はとりあえず前を向く~
     頬をなぶる柔らかい風の感触で、リキエルは薄く目を開いた。  左目が開かないことには、違和感も湧かなかった。どちらか片方が常時開かないことにはもう大分前から慣れている。しこたま殴られて潰れているのかもしれなかったが、だからといってドーダコーダとも、リキエルは思わなかった。  ――空が目の前にあるな。  一瞬そう思ってから、馬鹿なことを考えたと、リキエルは自分に向かって毒づいた。単に仰向けに倒れているだけだ。芝生のなめらかな手触りと、その下にある硬い地面の感触が、明確にそう告げてくる。  ――三発目から先は……。  覚えていない。リキエルは朦朧とした頭で、ことここに至るまでの経緯を思い出そうとしている。脳が記憶の整理をつけている過程を、覗き見るような感覚だった。  視界が閉ざされ、直後に来た強い衝撃に頭蓋を揺らされ、意識を失った。しかしそれも一瞬のことで、直ぐにリキエルは、衝撃の...
  • Start Ball Run-8
    透き透るほど青い空。高く浮かぶ白い雲の下。 気持ちよく晴れわたる午前の陽気の中で。 一人の少年が、しゃがみ込んでなにやらタライに張った水と格闘している。 平賀才人は、この世界――魔法という文明が根幹を成す彼の常識が全く通用しない世界――で、今日も元気に主の下着を洗濯していた。 主人がまるで嫌がらせとしか思えないほど何回も着替えし、結果として毎日大量の洗濯物が出る。 それにさっきまで独りで文句を言いながら、鬱憤を毒吐きしつつ洗濯をしていた。 面と向かって文句を言えば、倍以上になって返ってくるのは、わかりきっているからだ。 「……っと、こうじゃ、ないんだよなぁ……」 今日の分の洗濯が終わり、一休みしていた彼は手に持った石を一つ、空中に放り投げ、戻ってはまた放る動作を繰り返す。 「イメージは……あるんだよな。……なんとなく」 水の張ったタライの中心に、再び...
  • 第十一章 土くれのフーケの反逆 ~ またはマチルダ・オブ・サウスゴーダの憂鬱 ~
    第十一章 土くれのフーケの反逆 ~ またはマチルダ・オブ・サウスゴーダの憂鬱 ~  『金の酒樽亭』は今日も傭兵たちがあふれかえっていた。 特に盛大に騒いでいるのは白仮面の貴族に雇われ、前払いのエキュー金貨を受け取った傭兵たちだ。 「俺たちはツいてる!」 「いや、まったくだな! 負ける王党派からはさっさと引き上げられたし、新しい雇い主も見つかった!」 「そして新しい雇い主は金持ちだ!」 「俺たちの前途を祝して、かんぱーい!」 これで何回目かの乾杯をあげる。 「おいおい、飲むのはいいが、あんまり調子に乗りすぎるなよ」 あまりの騒ぎぶりに一人がたしなめるが、その男自身も大分舞い上がっているようで、顔がにやけている。 「おーい、姉ちゃん! こっち、つまみ追加で!」 「はい、ただいま!」 給仕がつまみを持ってくる。その給仕を見て、男たちの顔が緩む。 切れ長の目に、細く高い...
  • 第七話 『微熱注意報』
    第七話 『微熱注意報』 ルイズが教室を爆破してから一週間が経過した。 トリステイン魔法学院本塔の最上階に学院長室はある。中にはこの部屋の主であるオスマンとその秘書のロングビルの二人しかいない。 ロングビルの筆が走る音だけが聞こえてくる。平和だ。 だがそこへけたたましい音を立ててコルベールが飛び込んできた。 「たた、大変れす!」 後退した額にびっしりと汗を浮かび上がらせ薄い髪は額に張り付いていた。さらには急いできたせいで息が上がって呂律がまわっていない。 対照的にロングビルは慌てず、優雅な手付きで水差しからコップに水を移しコルベールに手渡す。 「どうしたのですか、毛相を変えて?」 「ごく・・・ごく・・・プハァッ!いや、どうもお恥ずかしいところをお見せした。焦りすぎて血相を毛相と聞き間違えてしまいましたな」 「オホホ、それは愉快ですわ」 「ハハハ・・・ぐすん・・・ハッ!そ...
  • 亜空の使い魔-9
    その日、マルトーに夕食を御馳走になった後、年代物が手に入ったといって振舞われたワインに気をよくし、ついつい長居をしてしまったヴァニラが部屋に戻ると、既にドアに鍵が掛けられていた 「おい、ここを開けろ」 酒精のおかげで多少おおらかになったヴァニラは即座にプッツンする事は無かったが多少いらついた口調でドアをノックする が、反応は無い 気配を感じる以上中にいるのだろうが寝ているのか無視しているのか・・・・恐らく後者だろう しかも足元には御丁寧に綺麗に畳んだ毛布まで置いてある ヴァニラは知る由もないが食事を終え部屋へ戻ったルイズは部屋にいない使い魔を探しに出て、ヴァニラが厨房でシエスタやマルトーたちとささやかな品評会を催しているのを見て機嫌を損ね、このような行動に出ていた しかし先記した通りヴァニラはそのことを知らない、つまりまたルイズの高慢さから出た自分勝手な...
  • 一章一説 ~星屑は違う空に流れる~
    「チクショウ、まずい。まずいぞッ! これは!」 夜、フリーウェイを一台のオートバイが疾駆する。 まるで、暴走族のそれのような速度が出ているにもかかわらず、ハンドルを握る男はヘルメットをかぶっていない。『個人の自由は尊重されるべき』と、法定でその着用が義務付けられていないというのもあるが、彼の場合、そんなことを気にする余裕がないといった体だった。 むき出しの顔は筋肉が強張り険しい表情で、左目のまぶたが下がっている。上げようとはしているが上がらない。小刻みに痙攣するまぶたが、そう主張しているようだった。 「なんでこんな日に限ってバスが止まるんだ。コッチに来てからようやく手に入れたバイト、初日だっつーのによォ、クビになっちまうじゃあねえか! バイクなんか乗りたくないってのに、ヘッドライトも壊れちまってるしよォオオッ」 悪態をつくが、その表情と激しくなっている動悸、だらだらと流れ出ている...
  • 一章五節 ~使い魔は血に慄く~
     最後の机を運び終えて、リキエルは息をついた。  時間は、昼休みまで一時間あまりといったところだった。リキエルがルイズに言ったように、そう時間はかからなかったことになる。  無論、リキエルは手抜きなどはしていない。爆発によるクレーターは如何ともし難かったが、その瓦礫はルイズがいる間に片付け終わっている。掃き掃除も、細かい塵は残っているかもしれないが、もともと綺麗なわけでもない教室なので、ざっと見ただけではわからないだろう。  新しい窓ガラスは、教室に運び入れたそのままで放置してあった。どうやって窓にはめ込むものか、リキエルにはわからなかったのである。何かしらのノウハウが必要なのかも知れず、あるいはメイジの仕事なのだろうとリキエルは思った。  ひとまず、これで仕事は終わりだった。御役御免というわけだ。  しかし、リキエルが教室から出て行く気配はなかった。自分で運び入れた椅子の一つに...
  • 使い魔は引き籠り-14
    「うわー、浮いた!」 「浮いてるんじゃないんだ、スタンドが手にとって持ち上げてるだけで」 「詠唱無しで浮かせられるのかい?なんでも?!」 「話を聞け!無視するな!」 『何も物が動かない』世界そのものよりも、ただ『物が動く』だけに酷く興味を示すギーシュ。 否、ただ動かすだけなら彼にだって出来るのだろう、ただその物体が どの方向へ、何のためにだとか言う秩序を持たずふわりと浮き上がったのが面白いらしい。 オレはマン・イン・ザ・ミラーに『そこの造花を手に取れ』と命じただけで、 それをその後どうしろだとかは特に注文をつけていなかった。 マン・イン・ザ・ミラーは造花を手に取り注意深く覗き込んだ後、それに向かって手を伸ばしたギーシュから ひょいと造花を遠ざけて、暫く手を止めた後に俺の傍らに置いた。 「その『スタンド』っていうのは、魔法が意思を持ったようなものかい?」 「さあ...
  • 第2章 ゼロのルイズッ! 前編
    第2章 前編 「Buongiorno!(おはようございます!)」 爽やかな朝、爽やかな挨拶を、爽やかな笑顔で、爽やかな使い魔が、御主人様へ申し上げる。 ……返事が無い。ただの屍(?のようだ。 「朝ですよ! 起きて下さい!私の可愛い御主人様!」 「…おーい。 …朝ですよー」 「早く起きないと食べちゃうぞー(性的な意味で)」 「……(まだ夢の中か? オイ)」 少しイラっときたが、我慢々々。これもコミュニケーションの一つだ。 『やりたい事をやりたい時にやる』 『”明日”のため”今日”我慢する』 『両方』やらなくちゃあならないってのが『人間』のつらいところだな。 大きな『矛盾』も、楽しめればそれで良し! とはいうものの、流石に無反応は面白くなく、ちょっとだけ悪戯することに決めた。 「朝ですよー」 プニ (お やわらかい...
  • 微熱のカウボーイ-1
    わたしのライバルが召還の呪文を唱える。 多分、いつものように爆発を起こすだろう。しかも今回はかなり気合いが入っている。 いつもより余計に気合いの入った爆発が起こるだろう。 次に控えた自分の召還の儀式に支障がでないように物陰に隠れる。 さあ、集中集中 神経を研ぎすます。体の芯に微熱を残して。 「またかよ!」「いいかげんにしろ!」「ヤッバダァァァァァ」 あたりからは怒声に罵倒、やっぱり爆発したか。 「お、おい!あれ!」「なによ、あれ」「ドイツ軍人はうろたえないい」  ・・・周りの様子がおかしい。儀式を中断してわたしのライバル、ルイズの方を見てみる。 なんと、今までに見た事のないような呆然とした表情だ。 わたしはその視線の先を追ってみた。 煙、煙が立ち上っている。 だんだん晴れてきた。 どうやら人間のようだ。さすがは『ゼロ』予想の斜め上を行...
  • ジョジョの虚無との冒険
    「宇宙の果てのどこかにいる私のシモベよ… 神聖で美しく、そして、強力な使い魔よッ 私は心より求め、訴えるわ 我が導きに…答えなさいッ!!」 ドッゴォオオオオン  もう日常風景として恒例の爆発である…。 しかし爆風が止むと…ピンク髪の少女の前には呪文成功の証である銀鏡が浮かび上がっていた。 「ルイズが先に召喚とは…死にたくなった…」 「何やってんだぁあああああああ!」 「待つんだ!ボーンナム!僕のふんどしあげちゃうから死ぬなぁああああああ!!」 「ふんどし…君こそが真の邪悪だ…!」 …何かやけに個性的な4人組だが…放置しておこう。 しかしピンク髪の少女ルイズにはそんな叫びは届いてなかった…何故ならとうとう!自らの力で! 魔法を成功させた!最高にハイッって奴だぁああああ!!モードになり行き成り歌いだすと言う 狂行をしていたからである…...
  • Wake up people
    ――その学院のメイド…―― 彼女はその時まで『海』というものを話に聞くだけで 生まれてからずっと一度も見た事がなかったが 初めて村を出て『海』を見る事になった時…… ――それは彼女が壜を拾う時だった―――― 壜を落とした相手は裕福な貴族の息子で 将来の地位と財産が保証されている青年……………… つまり……小瓶を拾う仕事をメイドに紹介したのが彼女とはあまり関係のない他人…… その男――ウェカピポであった ウェカピポはこの物語の最重要キャラゼロの使い魔―― 小瓶を落とした男とは主人を通じての知り合いであった しかしメイドのこの仕事は半年もすると『失敗』であった事が表に現れてきた…… いや すでに…… 壜を拾った最初からだったのかもしれない………… ある晩――ウェカピポが厨房を訪ねると…… 「う…し...
  • ティータイムは幽霊屋敷で-46
    精一杯のハッタリで睨みを利かせる。 平静を装いながらもイザベラは耐え切れぬ恐怖に晒されていた。 無理に浮かべた笑みに頬は引き攣り、震える歯を噛み締める。 汗ばむ手から滑り落ちかけたナイフを必死で握り込む。 向けられる殺気で眩暈がしてくる。 捕まっていた時とは状況が違う。 あの時の私は人質でお客様だった。 けれど今は人質を手にした明確な敵だ。 僅かにでも気を逸らせばその瞬間に死んでいる。 張り詰めた空気は渓谷に渡されたロープの上を歩むのに等しい。 少し気を抜いただけで失神してしまいそうなほどに息苦しい。 だが、こんな世界に単身で飛び込んだバカがいるのを私は知っている。 狙われているのが自分と知りながら使い捨ての駒を助けに来た奴を。 認めてやるよシャルロット。お前はバカだけど勇敢だ。 ここで逃げ出したりなんかしたら、あたしは一生はお前には敵わない。 そうだ。...
  • ルイズと愉快な暗殺者たち
    第一章 使い魔は暗殺者   前編 第一章 使い魔は暗殺者 中編
  • ゼロいぬっ!-27
    「止まれ! 当屋敷に何用か!?」 武装した衛兵が馬上の人影に問う。 纏ったコートが風に靡く。 小柄といえども相手がメイジであれば話は別。 しかも貴族にしては格好が奇妙だ。 タイ留めに描かれた五芒星は魔法学院の生徒の証。 しかし、その背には少女の体格に不釣合いな大剣。 貴族を装った賊ではないかと警戒を強める。 「よう! また会ったな」 突然、馴れ馴れしい声が響く。 それは目の前の少女の物ではない。 どこから聞こえたのか、視線で追った先にはカタカタ鍔元を鳴らす一振りの剣。 インテリジェンスソードの来客者などそういる筈もない。 「また貴様か! 今度は何を売りつけに来た!?」 「いや、別に俺は行商人ってわけじゃねえよ」 まるで詐欺師のような言われようにデルフがやれやれと呟く。 この調子ではモット伯に会うのも一苦労だなと溜息が零れる。 ...
  • ACTの使い魔-5
    康一達が全てのケーキを配り終えた頃、騒ぎを聞きつけたルイズが康一に詰め寄ってきた。 「あんた! 何してんのよ!」 「何って、ケーキを配ってたんだけど……」 ルイズは康一の胸倉を掴んで、ガクガクと揺さぶった。 「そうじゃなくて、なんで勝手に決闘なんか約束したのか聞いてんのよ!」 「僕が約束したわけじゃあないよ」 康一は、胸倉を掴んでいたルイズの手を払いのける。 乱れた服を元に戻し、真っ直ぐな目でルイズを見つめた。 「それに、僕は間違ったことを言っちゃあいない」 ルイズはため息をついて、やれやれと肩をすくめた。 「謝っちゃいなさいよ」 「なんで? 悪いのは彼の方じゃあないか」 「怪我をしたくなかったら、謝ってきなさい。 今なら許してくれるかもしれないわ」 そう言って、ルイズは康一を説得しようとす...
  • ゼロと奇妙な隠者-5
     予想外の出来事が起こると、思考は活動を停止する。  それはトリステイン魔法学院の貴族達ですら例外でなかった。  ギーシュも、ルイズも、キュルケも、シエスタも。  ただ一人、ジョセフだけが怒りに満ちた眼差しでギーシュを見据えていた。 「……何だね、これは?」  足元に落ちた手袋と、それを投げ付けた平民の老人を交互に見やりながら、ギーシュは静かに言葉を発した。  人は怒りが頂点を突き抜けると、逆に精神は平静に近付くのだという。  この人の輪に加わっている少年少女達は“真の怒り”という言葉の意味は知っていても、それを目の当たりにすることは初めてだった。  だがジョセフはその怒りを見てもなお……いや、むしろ更に怒りを掻き立てるように、口元を笑みの形に歪めた。 「その年で耳が遠くなっとるんならお先真っ暗じゃのォ。じゃあもう一回お前さん...
  • @wiki全体から「一章十一節~微熱は平静を遠ざける~(前編)」で調べる

更新順にページ一覧表示 | 作成順にページ一覧表示 | ページ名順にページ一覧表示 | wiki内検索

記事メニュー
目安箱バナー