ゼロの奇妙な使い魔 まとめ内検索 / 「仮面のルイズ-53」で検索した結果

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  • 仮面のルイズ-5
    宝物庫から聞こえてきた音は、地面を伝わって鈍く響いている。 例えるなら、大きな岩にゴーレムが体当たりするような音だろうか。 裏口周りを警戒していた衛兵達も、音のする方へと走って行った。 「今のうちに出発しようかな…」 そう呟くルイズだったが、宝物庫とは別の場所から、ごく小さな振動を感じた。 タタタン、タタタンと、馬が走るようなテンポが感じられるのに、蹄の音はしない。 それを不思議に思ったルイズは馬車の影に隠れると、地面に耳を当てた。 宝物庫の方から聞こえてきた音は、おそらく巨大なゴーレムだろう。 ズシン、ズシンと音を立てて宝物庫から離れていく。 もう一方から聞こえてくる音は、間違いなく馬の蹄の音だ。 一頭の馬が魔法学院から逃げるようにして走っている。 …怪しい。 衛兵達は宝物庫周辺に集まっていだろう。 姫様を守る衛士隊は姫様の護衛が第一任務だから、姫様...
  • 仮面のルイズ-53
    「それで、この女性を宿屋に放り込んだ後、その男は煙のように消えてしまったんだな?」 「はい、金貨を渡されまして、『丁重に休ませておけ』と言われました」 「もう一度聞くが、顔は見ていないんだな?」 「はい、帽子を深く被っておりましたので…あ、ただ、薄いグレーの髭を蓄えておりました。声も低めでしたが、重々しい感じではなく、二十代そこそこの貴族様かなぁ…と」 「ふむ……」 ラ・ロシェールの宿屋で、女騎士が店主に質問をしていた。 剣と銃を携え、シュヴァリエのマントを着けたアニエスである。 昨晩、怪我をした女性がメイジらしき男に担がれ、宿屋に放り込まれたと聞いて、事情を調査するため駆けつけたのだ。 アニエスは、その女性が誰なのか知っていた、アルビオン出身の元貴族、マチルダ・オブ・サウスゴータ。 事情を一通り聞いたアニエスは、マチルダの眠っている部屋に入り、備え付けの椅...
  • 仮面のルイズ-13
    アルビオンの首都、ロンディニウムの外れ。 いかにも安っぽい作りの宿屋に、髭面の大男が入っていく。 「姉御、駄目だったよ」 男は椅子に座ると、ベッドの上に座るルイズに言った。 「どこも貴族派の口利きばかり?」 「ああ、ジョーンズが探してくれてはいるけど、期待はしねぇでくれってさ」 「…そう」 数日前、ルイズが王党派につくと言った時、ブルリンが驚いた。 ルイズは聞き耳を立てて知っていたが、ブルリンは王党派の現状が絶望的だとルイズに忠告し、何度も考え直せと言った。 しかしルイズは頑として聞き入れない、一度決めたことは全うする、それがルイズの頑固なところだった。 仕方なくルイズに折れたブルリンは、ジョーンズに王党派への口利きを頼んだ。 しかし、口利き先もほとんど潰されてしまったらしく、王党派に雇われるのは困難らしい。 何せ王党派は賃金も安いし勝ち目も少ない、貴族派はまず傭兵の口利き先を掌握して...
  • 仮面のルイズ-15
    「…とまぁ、それがワシとリサリサ先生の出会いだったんじゃよ」 オールド・オスマンが水パイプを取り出しつつ、感慨深そうに話す。 「へぇ、その人の血を、シエスタは一番濃く受け継いでる訳ですか、何ともまぁ…」 マルトーが驚き半分、呆れ半分といった感じで呟く。 オールド・オスマンの話では、シエスタの曾祖母リサリサは、波紋という先住の魔法を使って吸血鬼を打ち倒したと言う。 念のためにとディティクト・マジック等で調査させて貰ったが、特に反応はない。 話を聞いてみると、リサリサは東方のロバ・アル・カリイエからやってきた人間であり、エルフではないということだ。 だが、いくら人間とはいえ先住魔法の使い手が注目されないわけはない。 オールド・オスマンは、魔法アカデミーにリサリサの魔法を報告した場合、エルフに対抗するためののサンプルとして拉致され、タルブ村にもその被害が及ぶであろうと考えた。 ...
  • 仮面のルイズ-51
    「そんなに堅くならなくてもいいわよ」 「はっ、はい!」 シエスタは、エレオノールの気遣いに緊張して、かえって体を強ばらせていた。 モンモランシーはシエスタの隣に座り、馬車の窓から外を眺めている。 シエスタとモンモランシーの二人は、エレオノールの乗ってきた馬車に乗り込み、ラ・ヴァリエール領へと移動している最中だった。 シエスタとモンモランシーは魔法学院の制服姿、手持ちの小道具を入れた小さなバッグを脇に置いている。 エレオノールは飾り気のない白を基調とした服を着ており、魔法アカデミーの紋章が胸に刺繍されていた。 エレオノールは波紋についてシエスタに質問するが、緊張しているシエスタはうまく説明できず、そのたびにモンモランシーが説明を補足する。 だが、魔法学院では習わないような専門用語が出てくる度に、モンモランシーも狼狽えてしまう。 「オールド・オスマンの論文で...
  • 仮面のルイズ-1
    この、トリスティンの魔法学院には、ゼロと呼ばれるメイジが居た。 魔法成功率ゼロ、それが彼女のあだ名の理由だった。 メイジは、ある時期になると使い魔を召喚し、一人前のメイジとしての第一歩を踏み出す。 言い換えれば、使い魔の居ないメイジは、見習いのメイジなのだ。 ゼロとあだ名される女性、ルイズは、使い魔を召喚するサモン・サーヴァントの儀式に失敗し、同級生からの失笑を買い、失意のまま寮の自室にこもっていた。 いや、正確には失敗したわけではない。 失敗したと申告してしまったのだ。 ルイズはベッドの中で、奇妙な石の仮面を撫でた。 サモン・サーヴァント時、爆風と共に現れた仮面。 ルイズは爆発の土煙が晴れないうちにそれを拾い、懐にしまい込んだ。 幸い誰にも見られなかったようで」、コルベール先生が儀式を続けるように促す。 しかし、今度は爆発すら起こら...
  • 仮面のルイズ-50
    ロングビルは口を半開きにして、呆然としていた。 安宿の一室で、ルイズとワルドがミノタウロスと戦った時の様子を、ロングビルに聞かせていたのだ。 壁に寄りかかっているロングビル、目の前には、ベッドに座り足を投げ出している少女がいる。 この少女が魔法を使わずにミノタウロスを倒したなど、誰が信じられるだろう。 元々知能が高く生命力も並はずれて強いミノタウロス、頭に深い傷を負っていたとはいえ、それを倒してしまうなど普通は信じられない。 だが、ロングビルはそれが嘘ではないとよく解る、ルイズと対峙したとき、ロングビルは鉄の塊を練金で作り出し、ルイズを挽肉同然にしたのだ。 それでも彼女は生きていた。 細い手足のこの少女が、ルイズが獰猛なミノタウロスを倒した姿を想像しようとして……目眩がした。 「どうしたの?」 ベッドの上に座...
  • 仮面のルイズ-56
    「わあ…綺麗ですね、キラキラしてる」 シエスタがラグドリアン湖を見下ろして呟いた。 丘の上から見たラグドリアン湖は、陽光を反射し、ガラス粉をまいたようにきらりきらりと輝いている。 以前シルフィードの背から見た時よりも、ずっと綺麗な気がした。 シエスタ達は竜車を使ってラグドリアン湖にまでやってきた。 竜の力は凄まじい物で、今までシエスタが操った馬とは比べものにならないパワーとスピードを出して、籠を引いていた。 それなのに、道中は音も振動もあまり気にならない、よほど質の高い籠なのだろう。 モンモランシーとシエスタは、つくづくラ・ヴァリエール家の力を思い知らされた気分だった。 水辺に近づくと、竜車はゆっくりと動きを止めた。 少し間をおいて御者が扉をノックし、静かに車の扉を開かれた。 カリーヌが「行きましょう」と呟いて馬車を降り、モン...
  • 仮面のルイズ-2
    朝食の時、ルイズの姿が見えなかった。 いつものならルイズのことなど気にもとめないが、昨晩のルイズはどこか奇妙だった。 もしかしたら風邪でも引いていたのか?ならば、あの奇行もうなずける。 キュルケは授業の前にルイズの様子を見に行こうと、心に決めた。 「ヴァリエール、遅刻するわよー」 そう言って何度か扉を叩く。 すると、ギィー…と、音を立てて扉が倒れた。 「きゃっ」 真っ暗な部屋の中でローブを被ったルイズが、小さく悲鳴を上げた。 「ちょ、あ、この扉壊れてるんじゃない?」 などと言いながらも、何となく気まずいと思ったのか、キュルケはルイズから目をそらした。 しかし、キュルケはルイズの異様な姿に気づき、ルイズをまじまじと見た。 ルイズは全身を覆う大きさのローブに身を包んでいた、まるでおとぎ話の悪い魔女のようだ。 その上部屋も真っ暗、窓があっ...
  • 仮面のルイズ-9
    「WRYYYYYYYYYYYY!!!!」 肉片が散らばり、血しぶきが樹木を濡らす。 まず一匹目。 腕力を試すために投げられた剣によって死んだ。 次に二匹目。 どの程度の勢いで血を吸えるのか試すため、心臓に腕を突きさして血と水分を完全に吸い取った。 そして三匹目。 巨大な棍棒で顔面を殴られたので、その棍棒を殴り返した、ルイズの手も棍棒も、オークの顔面も砕けた。 四匹目。 殴られたせいで口に溜まった血液を、可能な限りの勢いで噴き出した、すると逃げようとしたトロル鬼の脳髄を背後から貫く結果となった。 最後に五匹目。 棍棒を捨てて命乞いするトロル鬼の頭を掴んで、火を消した時と同じように、体温を下げる… トロル鬼は瞬く間に氷のオブジェと化し、軽く爪で弾くと、バラバラに砕け散った。 周囲を警戒し、他に動物の気配がないことを確認する...
  • 仮面のルイズ-52
    シエスタとモンモランシーの二人は、ヴァリエール家に到着してすぐ、ヴァリエール公爵夫人カリーヌ・デジレの出迎えを受けた。 滞在する部屋を準備させてあるので、今晩は疲れを癒すようにと言われ、二人はそれぞれ別の部屋に通された。 シエスタにとって、ヴァリエール家は「有名な貴族」であり「大きなお屋敷」でしかない。 しかし、モンモランシーは家名の『格』を気にしてしまう、ヴァリエール家は自分より遙かに目上なのだ、よってモンモランシーは、シエスタ以上に緊張していた。 あてがわれたゲストルームは、二つのベッドルームがリビングで繋がっており、モンモランシーは片方のベッドルームに行くとすぐに寝間着に着替えて眠ってしまった。 モンモランシーは緊張のあまり疲れてしまったのだろう。 一方、シエスタはなかなか寝付けず、窓から空を見上げていた。 エレオノールから聞いた話では、カトレ...
  • 仮面のルイズ-58
    アルビオンで王党派が敗北したその日のうちに、ニューカッスル落城の知らせがトリステインに届けられた。 当時、アンリエッタに近づくことすら許されなかったアニエスは、王族が用いるユニコーンの警備を任されていた。 そこに、息を切らせて走ってくる者がいた、女王に即位する前の、お姫様だった頃のアンリエッタだ。 足を泥だらけにして、アンリエッタが血相を変えて走り寄ってくるのだ、アニエスでなくても驚いたことだろう。 「姫殿下!?」 「はあっ、はぁ、ユニコーンを!ユニコーンを出しなさい!」 アニエスは、アンリエッタを落ち着かせようとして、扉の前に立ちはだかった。 「殿下、姫様、落ち着いて下さい!」 「どきなさい!アルビオンに、アルビオンに行くの!」 アニエスは、思もしない力で突き飛ばされ、しりもちをついた。 その隙にアンリエッタは『アンロック』で鎖のついた鍵を開け、かんぬきを...
  • 仮面のルイズ-54
    『魅惑の妖精亭』でルイズ達が働き始めてから数日が過ぎた。 ルイズは酒場で聞いた話などを記憶し、それを書き留めて伝書フクロウで毎晩王宮に送っている。 女王となったアンリエッタの評判が、ウェールズが構えた亡命政権、神聖アルビオン帝国から疎開した人の話、レジスタンスの噂… 他にも、アルビオン帝国はガリアからの援助を受けているとかの、胡散臭いうわさ話も含まれているが、とにかくルイズはうわさ話をアンリエッタに送り続けていた。 王宮を出る前に、アンリエッタに頼まれたことが一つある、それは『民の正直な言葉を聞きたい』というもの。 アンリエッタが国民にどう思われているのか知ろうとしても、王宮の貴族達は良い評判ばかりをアンリエッタに伝える。 まるで、アンリエッタを非難する国民は存在しないと言わんばかりに、アンリエッタを賛嘆する。 だが、それがアンリエッタの不安を煽っていた。 タル...
  • 仮面のルイズ-59
    「土くれのフーケ?彼女が?」 ウェールズが唖然とした表情のまま、ルイズに問いかける。 マチルダが土くれのフーケだという事実は、あまりにも予想外だったのか、アンリエッタもウェールズと同じようにきょとんとした表情で固まっている。 「どこから話そうかしら…そうね、私が『死んだ』時のことから話しましょうか」 ルイズは、呆然としている二人に、土くれのフーケとの馴れ初めを話し出した。 吸血鬼になったルイズが、魔法学院を自主退学しようとした日は、奇しくもアンリエッタが魔法学院に立ち寄った日だった。 ロングビルとしてオールド・オスマンの秘書をしていたフーケは、アンリエッタが来る日に宝物庫の警備が手薄になると気づき、ゴーレムを用いて物理的に宝物庫を破壊しようとしていた。 宝物庫にはヒビが入っており、そこを土に練金してしまおうと思ったが、固定化を崩すことができなかった。 そのためゴ...
  • 仮面のルイズ-14
    「あれは何十年前じゃったかのう、ある村に立ち寄ったとき、昼飯を食べた後、森の奥を散策していたんじゃ、そこでワシは一人の少女に出会ってのぉ」 オールド・オスマンは、シエスタの曾祖母と会った時の話を始めた。 マルトーとロングビルの二人は固唾を飲んで、それを聞く。 「ひっ…ぐすっ…」 「む? 誰かおるのか」 魔法薬の材料を探しがてら、森の奥まで入り込んだオールド・オスマンの耳に、何者かの声が聞こえた。 少女の声にも聞こえたが、こんな森の奥で泣き声が聞こえてくるなど尋常なことではない。 オールド・オスマンは杖を片手に握りしめながら、声のする方に近づいていった。 「ひうっ…あ…たすけて…たすけて」 声の主はあっけなく見つかる。 森の奥に小さな岩山があり、そこには野草が咲き乱れていた。 マジックアイテムの材料になりそうな物も多いが、岩山はそれなりの高さがあり、フライやレビテーションを使わなければ野...
  • 仮面のルイズ-57
    シエスタは馬車の中で、眠れぬ夜を過ごしていた。 暗闇の中で目を開けて向かい側の椅子を見ると、モンモランシーが椅子の上でに横になりすぅすぅと寝息を立てている。 カリーヌは、水の精霊に危害を加えるメイジを一人で相手すると言っていた。 ラグドリアン湖の湖底にいる水の精霊、それに危害を加えるだけでも大変なことなのに、水の精霊を手こずらせるのだから、襲撃者はかなりの手練れなのだろう。 カリーヌの手伝いをしたいと申し出たシエスタだが、「客人を危険な目に遭わせるわけにはいかない」と言われ、申し出を断られてしまった。 オールド・オスマンからカリーヌ・デジレは『烈風カリン』だと聞かされていたが、貴族の世界に仲間入りを果たしてまだ間もないシエスタには、いまいちその強さや伝説がピンとこなかった。 シエスタは暗闇の中で、今からでもカリーヌを手助けに行くべきだろうかと悩んでいた。...
  • 仮面のルイズ-6
    「あ   ウ アァァァァァーーーーッ!」 ロングビル、いや『土くれのフーケ』は、恐怖のあまり叫んだ。 バックステップしつつ地面に向かって練金を詠唱し、地面を盛り上がらせる。 巨大なナメクジのように地面がうごめき、侵入者をあっけなく包み込んだが、フーケの心臓の鼓動は今までにないほど激しくなっていた。 フーケは今まで、数々の貴族の館に侵入し、お宝を頂戴してきた。 極力殺人はしないように努めていたが、それは身の安全を図るためのもの。 土くれのフーケが『貴族をギャフンと言わせるニクイ奴』だと平民に思わせるためには、貴族の悔しがる姿を平民に想像させなければならないのだ。 殺人を犯してしまえば、義賊でも、盗賊でもなくなる、ただの『凶賊』に成り下がり、各地にいる支援者からの支援を受けられなくなってしまう。 だから今まではピンチに陥っても、相手を殺さずに済ませてきた。...
  • 仮面のルイズ-16
    「ミス・ロングビル、非常に言いにくいことなのじゃが……君はミス・ヴァリエールに利用されたかもしれん」 オールド・オスマンが机の上に小さな箱を置く、その中には小指の先ほどの石ころが、沢山詰まっていた。 ルイズの部屋から回収された『それ』は、元々は仮面の一部だったという。 オスマンが試しに血を一滴垂らしたところ『骨針』と呼ばれる針を飛び出させたが、その衝撃に耐えられず粉々に砕け散った。 『石仮面』と呼ばれるそれは、人間を吸血鬼へと変身させるそうだ。 リサリサは石仮面によって吸血鬼になった人間と、その吸血鬼を捕食する存在と戦い続けてきたらしい。 石仮面がルイズの部屋にあったという事は、ルイズは石仮面を被り吸血鬼になってしまった可能性が高い。 もしくは、何者かを呼び出して吸血鬼にされてしまったのか… どちらにせよ、ルイズはロングビルを目撃者に仕立て上げる事で、「ルイズは...
  • 仮面のルイズ-3
    ルイズはベッドの中で、今日の授業を思い返していた。 小石を材料に練金するというもので、一般のメイジならほぼ100%成功する程の簡単なものだ。 しかしルイズにはそれすら難しい。 いつものように魔法を使い、いつものように失敗し、いつものように爆発した。 爆発の後に聞こえた、ミセス・シュヴルーズの悲鳴が耳に残っている。 ルイズははじめ『爆発に驚いて悲鳴を上げたのだろう』と考えたが、机の下から顔をのぞかせた生徒達まで悲鳴を上げ始めたのを見て、おかしいなと思った。 ふと自分の杖を見てみると、杖を持った右手が酷く焼けただれているのが見えた。 その手で自分の顔を触ると、ぺちゃりと水の感触がした、顔も同じような惨状なのだろう。 しかしルイズは慌てない、今の自分なら、この程度の火傷はすぐにでも再生できる… と思ったが、人前で皮膚を再生させたら吸血鬼だとバレてし...
  • 仮面のルイズ-37
    デルフリンガーにお仕置きをして数時間後。 ルイズは、ティファニアの家に泊まることになった。 ティファニアは、マチルダから送られてくる仕送りでウエストウッド村の孤児院を運営している。 だが、マチルダが現在「ロングビル」と名を変えていることや、「土くれのフーケ」と呼ばれていた事も知らないようだった。 ルイズを案内してくれた男は、既にシティオブサウスゴータへと帰っている。 マチルダからの信頼を得ているという事で、神聖アルビオン帝国の動向を、可能な限り探ってくれるとか。 子供達も寝静まった夜、ルイズはティファニアの部屋にお邪魔していた。 ベッドに座ったティファニアは、膝の上にデルフリンガーを乗せて、心配そうにデルフリンガーを見ていた。 ルイズはティファニアに向かい合うように椅子を動かし、そこに座る。 「デルフ、もう、やりすぎたのは謝るか...
  • 仮面のルイズ-62
    「…ルイズ」 アンリエッタが謁見の間で呟いたルイズの名は、誰にも聞かれることなく、虚空に消えていく。 玉座に座り、目を閉じて心を落ち着かせる……そんなアンリエッタを見たマザリーニは、いつになくアンリエッタが緊張しているのを見抜いていた。 百人以上入れそうな謁見の間は、見事に磨かれた石の床に、真っ赤な絨毯が敷かれている。 マザリーニはこれから来るであろう、ある人物の姿を絨毯の上に幻視した。 先代の陛下に跪き、陛下から直々にお言葉を賜っていたある人物は、トリステインの貴族達の間で知らぬ者は居ないと言われるほど誉れの高いメイジだった。 烈風カリンと呼ばれたその人物が、実はルイズの母カリーヌ・デジレだったと知られたのは、皮肉にもルイズの死を聞いたその日であった。 土くれのフーケを追って、フーケ共々魔法の失敗により爆死したと聞き、カリーヌ・デジレは唯一の目撃者...
  • 仮面のルイズ-12
    愁いを帯びた顔の人は、首都から港へと街道を歩き。 甲冑や武器を背負った男達は港から首都へと歩いている。 街道の流れに取り残されるように、一組の男女が壊れた建物を見上げていた。 フードを被り顔を隠した女性は、建物の内部をのぞき込む。 そして髭面の大男は、放心したような顔のまま、こう呟いた。 「こりゃあ、どういうこった」 アルビオンの首都、ロンディニウムの大通りのはずれにある建物は、木の骨組みに石の壁という、単純で丈夫な作りのものだった。 木の骨組みに残る焦げ跡、内側に向けて崩された石の壁、この建物は明らかに何者かによって破壊されている。 大男は無言で建物の中に入る、天井を見上げると空が見えた。 二階建てだったであろうこの建物は、天井も二階も無くなっており、燦々たるありさまだった。 酒場として作られていたのか、カウンターらしきもの...
  • 仮面のルイズ-10
    歩く。 ひたすら歩く。 馬で二日かかる距離をひたすら歩く。 夜も昼も朝も夕べも宵も、歩く。 トリスタニアの首都トリスティンを出発して四日目、港町ラ・ロシェールを眼前にして、彼女は太陽を見上げた。 太陽の角度から見て、時刻は正午を過ぎているだろう、だが最終便には間に合うはずだと考えて、彼女は歩みを再開した。 「ちょっとお腹空いたわ」 『あれだけ食っといてか…冗談じゃねえや』 革製ローブのフードを深く被り、一人で歩いているその女性は、誰かと喋っているようだった。 「何よ、人のこと大食いみたいに」 『四日のうちにオークを十匹も食う奴が何言ってやがる!だいたいテメェ人間じゃねえだろ』 「ヒトってのは、ニンゲンって意味じゃなくて、他人って意味よ」 『けっ!まあったく、厄介な奴だぜ』 「またその話?武器屋から厄介払いされちゃっ...
  • 仮面のルイズ-35
    「うん……ふわあぁ…」 陽光が顔に当たっているのを感じ、ルイズは身を震えさせた。 眩しさを嫌って、フードを深く被り直す。 「グルル…」 吸血馬が首を動かして日差しを遮ると、ルイズは吸血馬の首に手を回して、たてがみをそっと撫でた。 「…ありがとう、ね、夜になったら出発しましょう」 ラ・ロシェール近くの森から、アルビオンに到達するまで丸一日以上の時間がかかっている。 竜の遺骸を身に纏い、吸血馬が吸血竜となって空を飛んだが、予想以上に時間がかかってしまった。 スヴェルの月夜であればもっと早く到着できたが、アルビオンの接近を待つ余裕はなかった。 アニエスは、ラ・ロシェールから積み荷に紛れてアルビオンに行けば良いのではないかと提案したが、ルイズはそれを断った。 アルビオンがトリステインに侵攻した時のため、また、必要ならば力押しでレコン・キス...
  • 仮面のルイズ-60
    「 う 」 痛みに目を覚ます。 突き刺すような痛みが手と足と、右半身を襲う。 アニエスの目に入ってきたのは、何の変哲もない宿舎の天井だった。 まるで永い眠りから覚めたようだな、と思って目を閉じた。 眠っている間、何か不思議な夢を見ていた気がする、たしかそう、地下通路でリッシュモンの胸に深々と剣を突き刺したところで……… アニエスが目を見開き、勢いよく体を起こした。 ばさっ、と音を立てて布団が床に落ちると、ほぼ同時にアニエスは体の痛みに耐えかねて声にならない悲鳴を口から漏らした。 「…………っ」 「気がつかれましたか? 外傷は治癒されましたが、まだ痛みは残りますので、安静に…」 そう言いながらアニエスの体を支えようとしたのは、アニエスの世話を仰せつかったのであろう、アンリエッタの侍女だった。 たかがシュヴァリエに過ぎないアニエスに、わざわざ侍女を...
  • 仮面のルイズ-25
     シエスタがギトーと共にトリステイン魔法学院に向けて馬を走らせている頃。  ルイズは、トリステインの王宮で、一人で待たされていた。  デルフリンガーは武器なので王宮には持ち込めない。  そのため、吸血馬と共に馬舎に預けてある。  ルイズが待たされているこの部屋は、言わば従者を待たせるための部屋なのだが、王宮だけあって間取りは広く、調度品も美事な物ばかりだった。  実家にも同じような部屋があったのを思い出したが、それと比べても広く、そして堅牢な作りをしている。  ルイズは、ふぅ、とため息をついた。  トリステインの王宮に来るまでの間、ウェールズにブルリンのことを覚えていないのかと何度も質問した。  だが、ブルリンのことなど覚えていないという。  念のためデルフリンガーを握らせて質問したが、デルフは『嘘つているとは思えねー』と言っていた。 ...
  • 仮面のルイズ-41
    ラ・ロシェール付近の森の中、うっそうとした木々の生い茂る一角で、アニエスから渡された甲冑をルイズが装着していた。 アニエスが、ルイズの隣でぽかーんと口を開けて、呆けたように何かを見上げている。 その様子がおかしかったので、ルイズはクスリと笑みをこぼした。 「そんなに驚くことないじゃない」 アニエスは今まで見上げていたモノから目を離し、ルイズに顔を向ける。 「あ…。 いや、でも、これは、驚くさ」 冷や汗を垂らしながらアニエスが呟くと、アニエスの見上げていた吸血竜が、べろんとアニエスの頬を舐めた。 「 !! 」 「大丈夫よ、食べようなんて思ってないわ。お友達への挨拶よ」 「そ、それならいいんだが、心臓に悪い」 アニエスが見上げていたのは、十匹以上の竜を食べ、巨大化した吸血竜の姿だった。 『結局、一晩眠っちまったなあ。開戦になっても目を覚まさなかった...
  • 仮面のルイズ-26
    「虚無って……何、これ」  アンリエッタも、ウェールズも、ルイズの疑問に答えることは出来なかった。  ルイズが更にページをめくり『始祖の祈祷書』を読み進めようとすると、よりいっそう『風のルビー』が強く輝いた。 「風のルビーが、輝いている」  アンリエッタがルイズの手にはめられた『風のルビー』を見ると、ウェールズの言ったとおり、不自然なほど強く光を反射して輝いていた。 「本当…ねえ、ルイズ、『始祖の祈祷書』を私にも……」  アンリエッタが試そうとするが『始祖の祈祷書』には何の文字も現れない。  もしやと思い『風のルビー』をはめて試すが、やはり何の文字も現れなかった。 「ルイズ、私の『水のルビー』でも読めるか、試して?」 「…………」  ルイズは無言のまま、アンリエッタの差し出した指輪を受け取り指にはめた。 「読める……読めるわ……」 『始祖の祈...
  • 仮面のルイズ-55
    「あ、牛がいる……」 シエスタが車の窓から外を見て、嬉しそうに呟いた。 「牛?」 モンモランシーは、何か珍しい牛でもいたのだろうかと思い、シエスタに聞いた。 「ええ、あんなに沢山。のどかで良いところですね」 期待した答えとは違ったので、モンモランシーは「どこにでもいるじゃない、そんなの」と言って両手を広げた。 だが、くだらないことでも、屈託のない笑顔で答えられるシエスタの笑顔に、少しだけ救われた気がした。 二人が馬車に乗り、ラグドリアン湖を目指しているのには理由がある。 ラ・ヴァリエール家でカトレアの治療に当たってから二日目の夜。 二人は大食堂で、巨大なテーブルを囲んで座っていた。 カトレアは大事を取って部屋で休んでおり、公爵と公爵夫人、そしてエレオノールの三名がシエスタとモンモランシーに向かい合って座っている。 カトレアは大事を取って部屋で休...
  • 仮面のルイズ-19
    ルイズはニューカッスル城の裏庭で、石つぶてを投げる訓練をしていた。 指の力で投げるだけで、銃と同じか、それ以上の破壊力になる石つぶて。 しかし命中精度が悪く、ルイズは精度を上げるために日々考案と訓練を繰り返していた。 訓練を終えると、見張りの交代時間が迫っていたので、ルイズは裏口から城内に入っていった。 「そちらの芋を剥いたら、こっちのボウルに入れておいて下さい」 「あいよ!」 「ブルリンさん、貯め置きしていた水が足りなくなってしまって…」 「すぐ持ってくるぜ!」 「ブルリンさーん、倉庫から塩漬けの肉を持ってきてくださーい」 「わかった!」 「ブルリンさーん!」 「…何よアイツ、けっこう人気者じゃない」 たまたま裏口から厨房をのぞき見たルイズは、やけにメイド達に頼られているブルリンの姿を見て、呆れていた。 厨房でやたら人気の男...
  • 仮面のルイズ-42
    サー・ヘンリー・ボーウッドは、自らが艦長を務めるアルビオンの旗艦「レキシントン」の弱点を知っていた。 ついこの間の艤装作業で、この戦艦の内部構造は数カ所の弱点を生み出してしまった。 『ロイヤル・ソヴリン』と呼ばれていた頃、この戦艦まさに無敵だと言えたのだが、新式の大砲を積み込み、砲弾、炸薬の収納庫を拡張したせいで、この戦艦は内部破壊に弱くなってしまった。 強くなったのは外に向けられた武装だけなのだ。 ニューカッスル城から脱出したという噂の『騎士』『鉄仮面』。 レキシントンに侵入したのがその『騎士』だとしたら、もしそれが噂通りの力を持っているとしたら、この戦艦はあと何分持つだろうか。 アルビオンの誇る竜騎兵を失った今、レキシントンの内部を守るメイジの数は限られていた。 そこに伝令の一人が飛び込んできた、伝令は息を切らせながら、悲鳴のような声で報告...
  • 仮面のルイズ-61
    夜。 トリスタニアの宮殿、アンリエッタの居室に、窓から淡い月光が差し込んでいる。 すぅすぅと聞こえてくる寝息は、この部屋の主アンリエッタのもの。 窓際でワイングラスを片手に、もう一人のアンリエッタが椅子に座って月を見上げていた。 アニエスの手でリッシュモンが死んでから、今日で丁度三日目の夜になる。 リッシュモンの屋敷から押収された手紙や調度品から、リッシュモンとロマリアの繋がりが白日の下に晒された……かに見えた。 しかし、リッシュモンを取り巻く賄賂の動きや、漏洩した情報の動きを調べていく内に、この事件がとても公表できぬものになってしまった。 表ではアンリエッタを褒め称え、裏ではロマリアやレコン・キスタに接触しつつ、財産を溜め込み、保身を計っていたリッシュモン。 報告書を受け取ったマザリーニも呆れたように「みごとなものだな」と呟いていた。 この事件のすべて...
  • 仮面のルイズ-47
    トリステイン魔法学院、学院長の部屋にパイプの煙が舞った。 オールド・オスマンが窓から空を見上げつつ、水パイプを吸っている。 ぼんやりと暇を潰しているように見えるが、頭の中ではミス・ロングビルにどう接するべきか、シエスタとモンモランシーにシュヴァリエが下賜されるのをどう伝えようかと思い悩んでいた。 ウェールズ皇太子とアニエスの二人は、日が高いうちに帰っていった。 オールド・オスマンはそれから夕方になるまで一人で悩み続けていた。 「どうしたもんかの」 ぷかあ、と音を立てて煙が昇る。 ミス・ロングビル。本名はマチルダ・オブ・サウスゴータ。彼女は秘書として優秀なのは間違いない。 訳ありなのは解っていたが、家名を失った理由まで、深く知るつもりはなかった、むしろ知りたくなかった。 知った以上は、何かしらの便宜を図りたくなるのが、オールド・オスマンの性だか...
  • 仮面のルイズ-20
    コンコン、と学院長室の扉が叩かれる。 「オールド・オスマン、ご注文の品物が届きました」 オールド・オスマンが目配せすると、秘書のロングビルが扉を開け、使用人から品物を受け取った。 受け取った箱には『猛獣調教用』と書かれており、それを見たロングビルが訝しげに呟く。 「猛獣…調教用?」 「おお、やっと届いたか」 オスマンは手招きをして、箱を机の上に置くよう指示する。 「ミス・ロングビル、昼休みになったらミス・シエスタを呼んでくれんか」 「分かりました……あの、その箱の中身は?」 「知りたいかね?」 にこやかな笑顔のオールド・オスマンだが、その箱の中身を想像すると、どうも下卑た笑みにしか見えない。 「猛獣調教用…まさか、電撃の流れるベルトですか」 「そうじゃ、これは特注品でのぉ、シエスタに…………」 1・猛獣調教用 2・特注品 3・シエスタに オールド・オスマンの言葉から抽出された三つのキーワ...
  • 仮面のルイズ-38
    アルビオンの首都ロンディニウムにほど近い、工廠の街ロサイス。 数時間前に、神聖アルビオン帝国空軍の旗艦である『レキシントン』の艤装作業が完了し、食料などの搬入作業も終わろうとしている。 町はずれには、作業員達が憩いの場にしている酒場があったが、今は閑古鳥なのか客は誰もいない。 太陽がそろそろ傾き始める頃、店主がため息をついた。 「こりゃあ、困ったなあ…大赤字だ」 木製のカウンターの裏には、大きな酒樽がいくつも並んでいる。 『レキシントン』をはじめとする戦艦の艤装が始まり、街が活気づくと予想した店主が大枚を叩いてかき集めた酒だ。 ところが、ロサイスで働く技師や商人の足がぱったりと途絶えてしまった。 一仕事を終えて、懐の暖まった連中を相手に酒を振る舞おうと思っていたが、夜になっても客足はまばらだった。 なじみの客もな...
  • 仮面のルイズ-31
    子供の頃、ラ・ヴァリエール家の庭で、ルイズは自分だけの秘密の場所を探していた。 綺麗に手入れされた庭園には、まるで壁を作るように植え込みが作られており、ルイズはよくその隙間を走り回り、時には這いずって、服を泥だらけに汚していた。 あれは物心のついた頃だろうか、まだ10歳にも満たない頃、ルイズは家庭教師から逃げ回っていた。 『ロック』も『アンロック』も『レビテーション』も『着火』も、何一つとして魔法が成功しないルイズは、家庭教師からも使用人からも見下されていた。 ある日、植え込みの中を走り回って、家庭教師から逃げ回っていたルイズは、足をもつれさせてしまい庭木に突っ込んでしまった。 そのまま反対側に転げ出てたルイズの顔に、何か堅い物がぶつかり、ルイズは顔をに傷を負ったのだ。 たまたま、庭師が庭木を整えていた時に、ルイズは金属製の如雨露で顔を怪我してしまった。 水のメイジが治癒して...
  • 仮面のルイズ-7
    泥と血だらけのミス・ロングビルが、トリスティン魔法学院に帰還した。 ロングビルは衛兵に「土くれのフーケが…」と告げ、そのまま気絶。 現在は水のメイジ達による治療を受けている。 ロングビルが帰還した翌日には 『ゼロのルイズが命と引き替えに土くれのフーケを倒した』 という噂が学院中に広まっていた。 ロングビルが握りしめていた杖の破片に、ラ・ヴァリエール家の紋章が入っていたと、誰かが話してしまったのだ。 一気に噂は広がり、生徒達の耳にも入ることになった。 教師達は頭を抱えていた、なにしろ、ラ・ヴァリエール家といえばトリスティン屈指の名門だ。 責任問題となれば、魔法学院の教師が皆首を切られてしまうのではないか… そう考えて震え上がる者も少なくはない。 授業はすべてキャンセルされ、学院は生徒達のうわさ話と、教師達の不安による喧噪に包...
  • 仮面のルイズ-73
    ”白炎のメンヌヴィル”達による、トリステイン魔法学院襲撃から数日。 敵陣の中に乗り込み、貴族子女を人質に取る大胆かつ卑劣な行いに、ある者は恐怖しある者は怒りをあらわにした。 魔法学院には、トリステインだけでなく近隣小国の血筋も在籍しており、アルビオン帝国討つべしとの声はますます高まっていった。 「こんな大事なときに、何もできなかったなんて、僕は…」 そんな中、王軍の士官候補生が寝泊まりしている宿舎で、ギーシュ・ド・グラモンは己の不甲斐なさに落ち込み、枕を涙でぬらしていた。 王軍への申し込みを行った生徒たちは、即席の士官教育を受けている真っ最中であり、これが終わり次第各軍に配属される。 ギーシュは、トリステイン貴族としての責務から王軍への参加を決意したが、守るべき子女を守るからこその王軍である、戦うべき男が戦う機会も得られず、魔法学院が襲撃されたと聞...
  • 仮面のルイズ-22
    不思議な光景だった。 首都を覆い尽くす五万の兵が、二つに割れる。 この世界に石版を携えた予言者が居たとしたら、その再来だと思われただろう。 「KUAAAAAAAAAAAA!!!」 「BUAAAAAAAAAAAA!!!」 吸血鬼と吸血馬の雄叫びが戦場に響く。 反乱軍五万の先端は、真っ先に手柄を立てようとする傭兵達で構成されていた。 彼らはは眼前に迫る馬を見て、喜んでいた。 しかしその喜びは、馬の接近と共に打ち砕かれる。 ニューカッスルの城壁を飛び越えて反乱軍の眼前に降り立った巨馬は、ハルケギニアで軍馬として使われる馬より、一回り大きい程度の馬。 巨馬と呼ぶにははるかに小さいが、この戦いを生き残った傭兵達は口々に『あれは見たこともない巨大な馬だった』と伝えている。 それは、吸血馬の圧倒的なパワーが印象づ...
  • 仮面のルイズ-28
    「ふむ、つまり何者かの妨害にあったと?」 「はい……」  学院長室では、オールド・オスマンがシエスタの報告に頭を悩ませていた。  昨晩、シエスタはマントに波紋を通し、ハングライダーのように空を飛んでいた。  だが滑空中に『エア・ハンマー』らしき魔法を受け、墜落死の危機に陥ったのだ。 「悪質じゃのう、こうなると生徒同士の問題は生徒同士で…という訳にもいかんし」  シエスタは元平民であり、波紋という得意な魔法を使うのを理由として、魔法学院では生徒と同じ扱いを受けている。  つまりは、貴族扱い。  しかし貴族至上主義者が少なくないトリステイン魔法学院の貴族子弟達にとって、元平民のシエスタが簡単に受け入れられるはずはなかった。  オールド・オスマンには一つの誤算があった。  シエスタが吸血鬼を退治したのを理由に、『シュヴァリエ』の称号を得られるよう便宜を図ろうとして...
  • 仮面のルイズ-18
    虚無の曜日。 休日であるこの日、シエスタは朝早く自分の服を掃除し、洗濯する。 一通り部屋の掃除を終わらせた後、マジックアイテムの入ったポーチを腰に付け、マントは畳んで小さなバッグにしまい込む。 一般的なメイジ達よりも小さく作られた杖は、腰ではなく脇の下に下げて、外出の準備を終えた。 魔法学院の裏門で、貴族用に作られた靴よりも丈夫に作られた靴の紐を確認する。 シエスタの曾祖母が伝えたという”ブーツ”という靴らしい。 忘れ物がないか再度確認すると、シエスタは駆けだした。 走りながら考える。 貴族の生徒達と一緒に授業を受け、最初に感じたのは恐怖だった。 何せ貴族の使う魔法は、この世界で無くてはならないものであり、同時に平民を蹂躙する力でもある。 貴族の生徒の中に放り込まれ、シエスタは泣きそうになった。 だが、シエスタという異質な存在を受け入...
  • 仮面のルイズ-43
    少し時間はさかのぼり、タルブ戦が開戦する前日。 ロングビルは、学院を飛び出してタルブ村へと向かったシエスタを追いかけていた。 シエスタが馬に乗って魔法学院を出てすぐ、具体的には10分ほど遅れてロングビルは魔法学院を発った。 ロングビルは自身の体に『レビテーション』をかけて馬の負担を減らし、少しでも早く追いつこうしていたのだが、おかしなことにシエスタの姿が見あたらない。 もしかして、私の知らない裏道でもあるのだろうか?と考えはじめたところで、ロングビルは空を飛ぶ竜騎兵に気がついた。 トリスタニアの方角から、ラ・ロシェールに向かってトリステインの軍隊が移動しているのだ。 「道をあけろーっ!」 ロングビルの背後から声が聞こえてきたので、馬を街道の脇に寄せて軍隊の邪魔をしないように努めた。 彼女の騎乗した馬には魔法学院の紋章のついた鞍と鐙(あぶみ)がつけられて...
  • 仮面のルイズ-21
    「ブゴオオオオオオオオオオオオ!」 馬と人間には、圧倒的な差がある。 吸血鬼となったルイズの腕力は、馬よりも遙かに強い。 しかし、ゲートを潜って現れた馬は、吸血馬だった。 ルイズは油断していた。 あくまでも普通の『馬』を基準にして考えていたのだ。 吸血馬は、ルイズが化け物のような腕力を手に入れたのと同じように、途方もない脚力を持っていた。 馬と呼ぶには巨大な、吸血馬が、ルイズへと突撃した。 「ひっ」 ルイズは”怖い”という感情を思い出す。 吸血鬼になってから久しく感じていない恐ろしさが、ルイズの身体を硬直させた。 がぼっ、という音と共に、ルイズの脇腹がえぐり取られた。 凄まじい勢いで脇腹を踏みつけられたのだ。 「!?」 そのまま首に噛みつかれ、ごきごきと音を立ててルイズの首が砕かれていく。 ...
  • 仮面のルイズ-44
    トリステインの城下町、ブルドンネ街では、タルブ戦の戦勝記念パレードが行われていた。 聖獣ユニコーンが先頭をゆく馬車を引いており、その馬車にはアンリエッタが乗っていた。 王女の馬車に続き、戦争に参加した高名な貴族達の馬車がゆっくりと後を追う、その周囲には魔法衛士隊が警護を務めており、華やかさと凛々しさを備えた見事なパレードとなっていた。 「アンリエッタ王女万歳!」「トリステイン万歳!」「ウェールズ王子万歳!」 観衆の熱狂もすさまじく、通りに面した建物の中から外から、パレードに向けて歓声が投げかけられていた。 この戦いでアルビオンの巨艦『レキシントン』を打ち破ったのが、アンリエッタとウェールズの魔法であることは既に知られている。 優れたるトリステインのメイジ達は、数で勝るアルビオンの軍を押しのけ、その上戦艦を落とすほどの魔法を放ったと噂が流れていた。 そ...
  • 仮面のルイズ-68
    夕焼けに空が染まる頃、ウエストウッド村の台所から小さな鼻歌が聞こえてきた。 「~♪」 声の主はティファニア、彼女は久しぶりにマチルダが帰ってきてるので、とても機嫌が良かった。 家族の命を奪われてから、ずっと面倒を見てくれていたマチルダは、年に何度も仕送りを送ってくれていた。 自分の家族は皆失ってしまったけど、サウスゴータの太守だったマチルダの一族が、家族代わりになって自分を助けてくれている。 それは返しきれないほどの恩だった。 以前に一度、自分と母親のせいでマチルダの一族にまで迷惑がかかってしまった……と謝ったことがある、しかし、マチルダはそれを怒った。 間違っているのは王の方だ、と言って、決して自分を蔑んではいけないと、何度もティファニアに言い聞かせた。 小さい頃から姉のように慕っていたマチルダが、そのとき本当の姉になった気がしたのは、けっして気のせいで...
  • 仮面のルイズ-30
    ルイズは、トリステインの宮殿にある馬舎で、吸血馬の世話をしていた。 胴体に結びつけていた皮の袋を取り外し、ニューカッスル城から持ち帰った宝物類を確認する。 吸血馬とはいえ、馬には違いない、ブラッシングをして毛並みを整えると嬉しそうに鳴いた。 「ブルルルル…」 「よしよし、綺麗になったわよ。綺麗な栗毛かと思ったけど、光の加減で漆黒に輝くのね」 一通り手入れを終えると、ルイズは傍らに置かれていた木製のバケツを持ち上げた。 人間の胴が二つ三つは入るであろうそのバケツは、ルイズと吸血馬共通の食事でもあった。 「今日は豚の血ね、美味しかった?」 「グルルル…」 「そう、満足したの?ふふ…そうね、牛よりもしつこい味じゃないものね」 『血に味なんてあるのかね』 「あら、デルフは何人も斬ってるじゃない、味の違いぐらいわかるでしょう?」 『おいおい、いくら俺様だって、味まではわからね...
  • 仮面のルイズ-36
    サウスゴータ地方、ウエストウッド村付近の森の中。 ルイズの乗る吸血馬を、商人風の男が先導していた。 「昼頃には、たどり着きます」 男が後ろを振り向きつつ告げる 「意外と近いのね」 ルイズはここまでの道のりを思い出しながら呟いた。 朝日が昇る前に、シティオブサウスゴータを出発したルイズ達は、一路ウエストウッド村を目指していた。 途中、町はずれの牧場で牛、馬、豚でも盗もうと考えたが、結局なにも食べずに来てしまった。 洗脳された住民が正気に戻ったとき、困るだろうと思ったのだ。 ルイズは途中で吸血馬に自分の血を与え、少しでも疲労を和らげられるように気遣っている。 吸血馬はとても従順で、腹を空かせても人を襲わず我慢していられる。 だが、ラ・ロシェールからアルビオンまでの飛行で、かなり体力を消耗しているのはルイズの眼には明らかだった。 そんな吸血馬...
  • 仮面のルイズ-8
    トリスティン魔法学院とその関係者達は、いつもと変わらぬ平穏を享受していた。 ルイズが土くれのフーケを倒したという噂も、いつの間にか語られなくなり、一部を除いてルイズの存在は忘れ去られてしまった。 そんな中、ロングビルは思いがけない客の来訪に驚いていた。 オールド・オスマンから、書庫の資料を持ってきてくれと頼まれたロングビル。 彼女は、よりによってルイズを一番馬鹿にしていたと言われている『微熱のキュルケ』からルイズに関する話を聞きたいと言われたのだ。 「ミス・ツェルプストー、今は仕事中ですので、後ほどにして頂けませんか?」 「手間は取らせないわ、『土くれのフーケ』の隠れ家があった場所を教えて欲しいの」 ロングビルは思いがけない質問に、二度目の驚きを隠せなかった。 「ふ、フーケの隠れ家ですか? なぜ貴方がそんな事を…」 「教えてくれるの?くれないの?ど...
  • 仮面のルイズ-4
    トリスティン魔法学園で働く使用人シエスタは、長い間右足が不自由だった。 しかし、その足がある日突然治り、てきぱきと働けるようになると、厨房の仲間達はそれを訝しんだ。 厨房の仲間はどうやって治したのかと質問して来たが、シエスタは約束通り誰にも本当のことを話さなかった。 足の治ったシエスタは配膳も任されることになり、毎日毎日元気に働いている。 ただし、マルトーだけは、シエスタが食堂でデザートを配り負えてからため息をついているのに気づいていた。 「今日も居なかったかあ…」 シエスタは、まるで恋する乙女が思い人を待ちわびるかのように、ため息を漏らしていた。 マルトーはそれを知り、シエスタはメイジに治して貰ったのかと気づいたが、自分が口出しする事でもないので黙っていた。 ある日。 配膳を終えたシエスタが、暗い表情で厨房に戻ってきた。 シエスタは心こ...
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