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例のアレが出来るまで - (2015/04/10 (金) 12:07:02) のソース

*例のアレができるまで

今回は、ファースト記に札幌圏で一躍有名となった
必殺コンボタイプのデッキ[[アドライズハリケーン]]が
どのようにして考案、制作されていったのかをつらつらと書いていきたいと思います。

**序章

[[火単速攻]] [[みちるロック]]
2強と呼ばれた2つのデッキによって、ベーシック環境が動くことはなかった。

そんな中、多少のエラッタ発表を経て発売されたファーストエキスパンション。
カードリストから見えるコンセプトは「地・水・風の強化」「火の停滞」
だれが見ても明らかなこの意思表示により、強化された属性を活用したデッキが作られることとなる。

もちろん筆者もファイリングしたファーストのカードを毎日のように眺め、
何か新しいデッキを作れないかを日々考えていた。

まだカードプールが狭いゲームなことも災いし、なかなかそう良いデッキは思いつかなかった。
というのも
・地や風は以前よりはるかに強くなったが、それでも火単と並べる殴り合い性能を保持していない。
・水は[[大庭 純]]の登場により新たな方向性を見いだせるが、動き出すまでが遅すぎる。
新たな要素の参入した属性は結局火単には苦渋を舐めさせられていたからである。
色々試しては見るが、やはり火単の万能性には先手をとっても厳しい。



その時ふと、ベーシック環境中期で[[バルドールサイクル]]というデッキを作成し使用していた事を思い出した。
このデッキは必要なパーツが場に揃うまでは兎に角遅延し、デッキを掘り進めていくだけに集約し、
最終的には[[ムース]]で復活させたデッキから大量にカードを引いて、[[バルドール]]の能力に当てて
「一撃のもとに勝利する」というコンセプト。
常勝するようなデッキではなかったものの、火単相手でもそれなりの成果を上げていた。

なぜこのデッキが強力なカードが追加された現在のデッキよりも、勝てていたのか。

思えば、
・ほぼノンキャラクターのため、キャラクターへの除去カードを基本的に無駄とさせている。
・同時に自身はキャラクターの展開が必要ないため、防御にすべてのエネルギーを費やせる
・決め手が相手の場や手札にさほど依存しない

キャラクターがタップインしてくる本作において、キャラクターの展開が必要なデッキは
それだけで火単に対して不利を背負っているということなのである。


「ノンキャラクターのデッキを作ろう」
このコンセプトはそれなりに早い段階で決定した。
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**転機

そして初期に作り上げたのが[[ミントブルー]]である

[[みちるロック]]を有していた空だが、[[どっか~ん]]、[[電極2号MK-Ⅱ]]という強力なカードを得ている。
[[天都 みちる]]の抜けた部分は補っていけると判断しての構築である。

兎に角除去やアタックを抑える事に集中する。
勝ちに行くのは相手が息切れしてからで良い。

ファースト発売後最初の大会において、このコンセプトは他の属性にも有効であったことも幸いし、
店舗でのカジュアルな大会ながら上位入賞をすることができ、それなりに満足のいくものとなった
が
日を追うごとに勝率が悪くなっていく。1週間ほど過ぎたあと筆者は気づく

「このデッキには欠陥がある」

火単に対して有利に働いていた主な部分は2ターン目以降には使用できる[[駆逐]]、[[守護]]
これらによるコントロールは全て[[ユーティ]]によるエネルギーブーストにより成立している。
その[[ユーティ]]は所詮ナビゲーター。しかも配置すると自身がダメージを負うリスクを抱える。
加えてノンクリーチャーデッキであるために、相手は手札に除去を抱えていることが多い。
この状態を、火単へナチュラルに搭載されている[[プリシア]]が解決してしまった。

&bold(){勝手に3点食らっていくならキャラクター展開を後回しにし、ナビゲーター除去をメインボードから狙う。}

遅延力のあるデッキにも関わらず、この戦術に対して干渉手段が4枚の[[剣を捨てて・・・]]のみ。
しかもこれは[[失敗]]ほかの対象になる上、サイドボードからは[[守護]]対処も兼ねて対策カードが投入される。
さらに致命的だったのは、なんとか遅延に成功してもその後は[[玉蘭]]による妨害が待っていた。

&bold(){要するに火単の速攻要素こそが倒すべき相手だと考えていたが、最も対処すべきは相手のナビゲーター}
環境の最善を一番理解していたのもまた火単側だった。

筆者は悩んだ。サイドボードでナビゲーター対処を増量してみたものの
そこにエネルギーを浪費させられて本末転倒ななることが多く、解決にはならない。

「ナビゲーターを対処しつつ速攻を止められないものか」
そんなムシのいい話を脳内で考えながらカードを眺めていたとき、1枚のカードが目に止まった

**[[減点ハリケーン]]

筆者に転機が起こった瞬間であった。

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**構築

どの種類のカードであろうと、手札を全て捨て、手札の分だけ自らの手でクラッシュしなければならない。
もし、手札の枚数よりも場の枚数が少なければ相手は丸裸になる。こんな凄まじいカードがあったのかと

とはいえ、このカードはリミッタースペルである。HPが10以下でないとプレイを宣言できない。
その仕様もあり、他のプレイヤーも目を背けていたことがわかった。

だが筆者はもう心が決まっていた
「このカードを最速でプレイしよう」

即座にそう考えられたのにはきちんとした根拠があった。[[ミントブルー]]の経験である。
このデッキは2ターン目に[[駆逐]]や[[守護]]をプレイするための3エネルギーを必要とするため、
ナビゲーターサーチカードを多めに積み、[[ユーティ]]からのエネルギーブーストを行っている。

この際、1ターン目に自分で3点のダメージを負い、次のターンにはHPが半分になっていることも多かった。

ならば
「ライフの損失を自ら早めて10点以下してしまえば良い」
おあつらえ向きに[[バトンタッチ!]]という理想にピタリとハマるカードもある。
空のナビゲーターには自分も対象にできる[[ミント]]もある。
[[ミントブルー]]に[[バトンタッチ!]]をフル投入し、ダメージを負うように対戦してみると
たった3ターンでHPが10を割ってしまうことが多発。コンセプトが確信に変わり、構築が開始された。

[[ミント]] [[ユーティ]] [[バトンタッチ]] [[減点ハリケーン]]この16枚はコンボパーツのため固定枠、
残りは34枚、そのうちナビゲーターは最低でも8枚投入し、計16枚は必要とする。
そして本作の必須枠[[失敗]]は4枚。まずはナビゲーターの選出に取り掛かる。
減点ハリケーンがきれいに決まれば相手は何もできないので、特別キャラクターは必要としない。
そもそも除去を大量に積んでいる火単にキャラクターでのシステムは愚の骨頂。
ならば必要なのはエネルギー量。そしてナビゲーター自体のサーチ。
[[ウィンディ]] [[シャロン・エステル]] [[長内エミリ]] [[女神さま降臨!!]]この16枚は直ぐに決まった。
[[ネクロ・セラ]] [[みちるロック]]でも自ら使用したエンジンなので、信頼度が高かったのである。

残りは14枚。ナビゲーターは足りている想定なのでキャラクター以外を選ぶことになる。
&bold(){減点ハリケーンは相手の手札>場でなければ効果が薄い。}
火単は性質上手札をどんどん使うため、その状況になりにくいことは既に判明している。
ならば、&bold(){相手にドローさせるカードを使用することで状況を作れるのでは}

ここから「相手もドロー」するカードの選出に入った。
意外にも種類は豊富で[[ホーリーライト]]など、時間を稼げる相性の良さそうなカードもあったが
序盤で崩壊させるコンボデッキが悠長に時間を稼ごうなど虫のいい話、という考えに至り
自身のパーツ集めにも繋がる[[知恵のサークレット]]が候補に挙がった。

これだけでは相手に7枚以上展開されると壊滅させられない。
そう思ってカードを探していると画期的、かつ最高のカードを見つけた

[[混乱]]

たった1エネルギーで相手の手札を2枚も増やし、ナビゲーターも破壊する。
場のナビゲーターが1枚減るということは相手の展開も多少抑えられ、手札>場を作りやすい。
さらに手札が2枚増えているので結果的に3枚分の価値になる。
ミントブルーの際に障害となったプリシアや玉蘭へのナチュラルな対策カードにもなる。
減点ハリケーンデッキにおいてこれ以上ない性能であった。

このカードを発見したことから方向性が定まり、残り6枚となる構築の速度も上昇。
[[チャムナファイアー]]は少し重い混乱として使え、万能性があるものとして搭載、
残りの2枚はコンボパーツを集める際にも便利で、減点ハリケーンを使用したあとに
結果的なロックを行える[[占い]]を発見したため投入することにした。
また、単に必須枠として搭載されていた[[失敗]]がピッチ打ちによりコンボパーツも兼ねることも判明。

フィニッシュ手段が欠けていたが、相手はほぼロック状態なので[[ミント]]で良いだろうと判断した。

初期型・減点ハリケーンデッキ  秋ノ紅葉
|>|&bold(){&italic(){ナビゲーター}}|>|&bold(){&italic(){イベント}}|>|&bold(){&italic(){サイドボード}}|
|[[シャロン・エステル]]|4|[[失敗]]|4|
|[[ウィンディ]]|4|[[混乱]]|4|
|[[ユーティ]]|4|[[女神さま降臨!]]|4|
|[[モナコ]]|4|[[占い]]|2|
|>|&bold(){&italic(){キャラクター}}|[[バトンタッチ!]]|4|
|[[長内 エミリ]]|4|>|&bold(){&italic(){スペル}}|
|>| |[[チャムナファイアー]]|4|
|~|~|[[減点ハリケーン]]|4|
|~|~|>|&bold(){&italic(){アイテム}}|
|~|~|[[知恵のサークレット]]|4|

ひとまずのレシピが完成し、後日の小規模大会に向けスパーリングすることに。

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**実践

しかし急遽大会があるという情報が入り、サイドボードもロクに考慮せず制作したその日に出場することになった。
結果から言えば小規模とはいえ優勝した。
平均4ターンで相手の手札、場が空になるので対処のしようがなくなり、勝利する想定は間違いではなかった。

しかし改善点は多数見受けられ、このデッキを見て興味を持った知人にもアドバイスをもらえた。
&bold(){1.占いは減点ハリケーン前にも後にも非常に強力}
&bold(){2.ノーガードで攻撃を受けるのは良いが、知られると調整される}
&bold(){3.長内エミリの存在意義が曖昧}
&bold(){4.フィニッシュまでが遅いので復帰の恐れがある。}
&bold(){  せっかくナビゲーターブーストしつつのHP10以下なので[[氷川流十徳封神剣]]の採用はどうか}

占いは単純に4枚へ増量した。2ターン目には6エネルギー出せることが多いので楽に打てる。
2については多少なりとも相手の計算を狂わせる手段が必要ということで、多少の除去は必要なのでは
という意見をもらって考えたところ、[[泥酔]]というコンセプトにも完全合致したパーツを発見したため、
サイドボードにこれを4枚積むことにした。この過程で風属性の必要性が上がったため、
ウィンディによる属性変換があるとはいえ不安なので、万能な[[モナコ]]をシャロンの代わりに投入した。
いざとなればバトンタッチでの属性変更も可能であることも理由の一つ。
4については目からウロコであり、即座に採用することにした。むしろなぜ気付かなかったのかと。

そしてサイドボードも含めた70枚が完成した

&bold(){アドライズハリケーン}  秋ノ紅葉
|>|&bold(){&italic(){ナビゲーター}}|>|&bold(){&italic(){イベント}}|>|&bold(){&italic(){サイドボード}}|
|[[ウィンディ]]|4|[[失敗]]|4|[[逃がさないわよ!]]|4|
|[[ユーティ]]|4|[[混乱]]|4|[[はた迷惑な降臨]]|4|
|[[ミント]]|4|[[女神さま降臨!]]|4|[[泥酔]]|4|
|[[モナコ]]|4|[[占い]]|4|[[マジックシールド]]|4|
|>| |[[バトンタッチ!]]|4|[[龍の巫女の力]]|4|
|~|~|>|&bold(){&italic(){スペル}}|>| |
|~|~|[[チャムナファイアー]]|4|~|~|
|~|~|[[氷川流十徳封神剣]]|2|~|~|
|~|~|[[減点ハリケーン]]|4|~|~|
|~|~|>|&bold(){&italic(){アイテム}}|~|~|
|~|~|[[知恵のサークレット]]|4|~|~|

このレシピ完成後は地域の大会で勝利を重ね続け、個人的にメタられてしまうほどの功績を挙げることができた。
サイドボードは不十分ながら抜くパーツがあまりないため、存在を見せる程度でしかなかったりはしたが、
本州のとある人物にもコンタクトがあり評価を得ていただいたりもした。
しかし、扱いは自分では気づかないが難しいようで、他に使用したというプレイヤーは聞かない。

当時はまだネット環境が現在ほど普及していなかったとはいえ、
様々な情報が流れている中、このレシピを拝見することはなく、唯一無二の存在に思えて満足感があり、
間違いなく自分のF&CTCG人生において輝いていた時期だった。

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**その後
ファーストエキスパンションからセカンドエキスパンション発売までの間が短く、
実のところ「アドライズハリケーン」は短い生涯で終わっている。

原因は[[槇村 智子]]登場による水デッキの繁栄。
天敵となる[[小早川 瑞穂]]が場に登場しやすくなってしまい、[[大失敗]]もサイドから飛んでくる。
それだけならまだしも、[[大庭 純]]がいることで計算しづらいフィニッシュ力も高い。

それは、デッキ自体[[三好 育]][[桜井 若葉]]というナビゲーターを獲得し、若干の強化を図れたものの
50枚全体で一つの目的へ向かっているという、コンボデッキならではの弊害であった。

大会出場8回 32戦28勝という成績を残し、
アドライズハリケーンはその幕を下ろした。



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あとがき

自分は札幌圏でしか活動していないため、本当にこのレシピが唯一無二であったかは知り得てません。

100%同様のレシピではなくとも、同コンセプトのデッキは他の誰かが思いついていてもおかしくないものなので、
文中に「唯一無二」とは書いたが、実際に日本全国でそうだったかはわかりません。
(当時は若かったためそう思った・思いたかったのは事実だけども)
その部分はご了承頂きたいと思います。

筆者は文章力がないので読みにくいとは思いますが、なんとなく書きたくなったので残しておこうと思います。
色々と曰く、どころかひどいTCGでしたが、当時は本当に楽しかったのも事実ですから。