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全てが止まり消え去る前に


全てが止まり消え去る前に

ちく、たく、ちく、たく。
それを示し続けた針は、まだ動いていた。
ちく、たく、ちく、たく。
何もかもが亡び去ろうとする、まさに、この瞬間にも。
ちく、たく、ちく、たく。
きっと、最期まで、2本の針はその役目を果たそうとするだろう。
ちく、たく、ちく、たく。
そして、それだけが、私達の希望だった。
ちく、たく、ちく、たく。
何もかもが歪み果てた、この世界に。
ちく、たく、ちく、たく。
この、途切れない音だけが、変わらずにあった。
ちく、たく、ちく、たく。
……きっと、これが最後になる。
ちく、たく、ちく、たく。
私が、あの崩れ行くものに到達したのならば。
ちく、たく、ちく、たく。
全ては、元に戻っていくのだろう。
ちく、たく、ちく、たく。
そして、そこに私はいない。
ちく、たく、ちく、たく。
私の中に流れていたそれを、世界のものとするのだから。
ちく、たく、ちく、たく。
だから、これを見たものよ。
ちく、たく、ちく、たく。
私の最期の願いを、どうか聞き届けて欲しい。
ちく、たく、ちく、たく。
世界が、再び動き出したのならば。
ちく、たく、ちく、たく。
私を、どうか忘れないで欲しい。
ちく、たく、ちく、たく。
何もかもを残酷に奪い去る、何よりも慈悲深きものに。
ちく、たく……
私の存在を、覆い隠されぬ様に。



かちり。

タグ:

異世界
最終更新:2016年09月15日 11:28
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