袋小路からの脱出
「あの閉じた世界に『いなかった』筈のお前が、なぜ俺の目の前に姿を現わせた?」
彼は過去、『
まほろば』メンバーを救おうと世界線を飛び、抜け出す事の叶わない『
最期の世界線』に囚われてしまっていた。
石神は、それまでと異なる『
無線レンジ(仮)が存在しない』世界に途方に暮れ、数日をラボで塞ぎ込むように過ごす。
だが、この世界線でも仲間の言葉に励まされた石神は
無線レンジ(仮)を完成させるべく、行動を開始した。
そんな矢先。ある日、世界が移動した。
石神の持つ能力【真理解明の魔眼/Reading Wahrheiter-
リーディング・ヴァーハイター‐】だけがその事を認識出来た。
何を原因に
世界線が変動したのか。その答えは、すぐに石神の前に現れた。
「久しぶりね、石神くん。何年振りくらいかしらね?」
その声には聞き覚えがあった。しかし、彼の名を呼ぶ彼女がここに居る筈がない。いや、ここではなく、変動前の
世界線には、か。
彼の名を呼ぶ少女の声、それは紛れもなく
境井夢子の――石神が
時崎からの忠告を破ってまで
世界線を超えた理由の内の一人のものであった。
彼は喜びよりも驚愕や疑問が先に立ってしまい、冒頭の言葉を投げ掛けた。
「俺の囚われていた
世界線では、移動の術であった電話レンジが存在せず、従って
世界線が移動する要因なんて、あの世界にはなかった。
にも拘らず、お前がこうして俺の目の前に現れる理由は一つだ。
境井よ……お前が
世界線を越えたのだな?」
「概ね正解。でも満点ではないわ。私はそれだけでなく、時間も越えて此処にいるの」
「時間も、だと……?」
「石神くん、まずは単刀直入に言うけれど、私は今から500年後の世界からやって来たの。この身体に
未来の私の精神を乗り映してね」
最終更新:2025年01月01日 13:40