袋小路からの脱出


袋小路からの脱出


境井夢子……なぜお前が此処にいる!?」

次元世紀0014年 8月 21日。
場所は《次元デバイス研究所》通称ラボのある店舗の店先。石神学は、目の前の人物――境井夢子に対峙し、尋ねる。

「あの閉じた世界に『いなかった』筈のお前が、なぜ俺の目の前に姿を現わせた?」

彼は過去、『まほろば』メンバーを救おうと世界線を飛び、抜け出す事の叶わない『最期の世界線』に囚われてしまっていた。
石神は、それまでと異なる『無線レンジ(仮)が存在しない』世界に途方に暮れ、数日をラボで塞ぎ込むように過ごす。
だが、この世界線でも仲間の言葉に励まされた石神は無線レンジ(仮)を完成させるべく、行動を開始した。

そんな矢先。ある日、世界が移動した。
石神の持つ能力【真理解明の魔眼/Reading Wahrheiter-リーディング・ヴァーハイター‐】だけがその事を認識出来た。
何を原因に世界線が変動したのか。その答えは、すぐに石神の前に現れた。

「久しぶりね、石神くん。何年振りくらいかしらね?」

その声には聞き覚えがあった。しかし、彼の名を呼ぶ彼女がここに居る筈がない。いや、ここではなく、変動前の世界線には、か。
彼の名を呼ぶ少女の声、それは紛れもなく境井夢子の――石神が時崎からの忠告を破ってまで世界線を超えた理由の内の一人のものであった。
彼は喜びよりも驚愕や疑問が先に立ってしまい、冒頭の言葉を投げ掛けた。

「俺の囚われていた世界線では、移動の術であった電話レンジが存在せず、従って世界線が移動する要因なんて、あの世界にはなかった。
にも拘らず、お前がこうして俺の目の前に現れる理由は一つだ。
境井よ……お前が世界線を越えたのだな?」
「概ね正解。でも満点ではないわ。私はそれだけでなく、時間も越えて此処にいるの」
「時間も、だと……?」
「石神くん、まずは単刀直入に言うけれど、私は今から500年後の世界からやって来たの。この身体に未来の私の精神を乗り映してね」

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era1 事件
最終更新:2025年01月01日 13:40