まほろばと旧き魔術【霊力/継承/世界】


まほろば旧き魔術【霊力/継承/世界】

まほろばは捕らえた小人に持ちかけられた交渉を議論の末、受ける事に決めた。
時崎が条件を受け入れる旨を伝えると、小人も霊力継承の為の準備に入る。
誰が最初に継承の儀を受けるかは、小人との取引に肯定的だった星野が立候補した。
親友である境井と、サークル顧問で唯一の大人である時崎はその身を案じたが、本人の意思を尊重する事となった。

いよいよ魔術の伝授である。
小人は意識を己の内に向ける――第一段階、

小人は脳器官から魂へ続く回路を生命力で拡張する。

拡張された回路を通り、生命力を魂へと転送。

転送先の魂にて、生命力は霊力へと変換される。

魂より還された霊力は小人の居る三次元世界へ降りる。

降りてきた霊力は、より様々な作用を起こせる下準備として、再び小人の生命力を用いて『加工』を施す。
この直後、加工によって術式が施された霊力は、その情報を『世界』、またの名を『世界精神』へと伝達。

しばし待ち、霊力は世界から伝達された術式を認識した。
術式の構築が成功した証だ。

加工済みの霊力は受け取った術式に従って動き出す。

ここからが星野の頑張り所である。
小人の下を離れ、加工済み霊力は境井の頭から脳、そして、その先の境井の魂を目指す。
それまで閉じられていた境井の回路を抉じ開けるべく、霊力は一心不乱だ。
それまでぴたりと閉じて、一片の穢れも知らない純潔の秘所のようであったのに、それを少しずつ、少しずつ……
這うように歩くように駆けるように、削るように掘るように抉るように、回路は解され、霊力を更に奥へと誘う。

苦痛とも快楽とも付かぬ感覚に見悶える事数分、星野の意識は、やがて内側へと落ちていく――


――そうしてどれだけ経ったか。星野は、小人の呼び掛けで意識を取り戻した。
床に倒れ伏す自分の、文字通り眼前に立つ小人をぼんやりと見つめる星野は、まだ自分の状況に理解が追いついていない。
脳が目覚め、思考が少しずつ冴えてくると、自身と同じように倒れている親友と恩師に驚くも、
「お前と同様、しばらくすれば目を覚ます」と言う小人の言葉に胸を撫で下ろす。

小人は契約を遵守し、まほろばに魔術を与えると何処かへと姿を眩ませた。
三人は人知れず魔術を操る者となり、後にこの技術を応用した新技術の発明をも果たす。
この一連の出来事が、数年後に訪れる文明崩壊の予兆を彼女らに報せ、それらに対抗する力となった。
少女達の時空を越えた人類存亡の戦いと復讐劇の幕が静かに切って落とされようとしていた。


『「あっ見て!火が出たよ!」
 「コツさえ掴めば結構簡単だね、これ」
 「まったく…若い子は向こう水ね。それアンタらの寿命よ?」』

             大学構内まほろば部室内での会話より

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最終更新:2025年01月01日 13:10