2008.05.21 00:59
ミカヅキX
『虹の神と蝸牛の神』
パンドラは、とても美しい少女でした。
美貌だけではなく、素晴らしい智恵と天使のような歌声も持っていました。
「全てを与えられた」という名前のとおり、それらの才能は神々から与えられたものでした。
でも彼女は、それ以上に、とても大事なものを一つ持っていました。
パンドラに恋をしたのは、虹の神、アイリスでした。
アイリスは、神々の策略を知り、パンドラを助けたいと思いました。
しかし、人間はアイリスの美しい姿を見ることができても、決して近づく事ができません。
アイリスの言葉は、決してパンドラには届かないのです。
アイリスは、友人の神々に相談しましたが、誰も大神ゼウスに逆らうような行為を助けてくれませんでした。
そこでしかたなく、かたつむりの神をよび、これこれこういうわけだから、なんとかパンドラを助けてほしいと頼みました。
かたつむりの神は男でも女でもなく、虫でも貝でもない、とても変わった神でした。
そして、自分だけの世界をいつも背中に背負い、何かあるとその中に入ってしまいます。
そんなかたつむりの神ならば、ゼウスを恐れずに、自分の頼みを聞いてくれるのではないか、アイリスはそう考えました。
しかしかたつむりの神は、自分の世界以外に関心が無く、アイリスの頼みを断ろうとしました。
そこでアイリスは、一つの交換条件を出しました。
雨が降るたびに、あなたとあなたの眷属のために、私は美しい虹を架けましょう、と。
かたつむりの神は、悩んだ挙句、取引に応じました。
かたつむりの神の世界には、虹ほどきれいなものは無かったからです。
かたつむりの神は、アイリスに約束したとおり、パンドラに神々の策略を話しました。
「というわけなので、あなたは騙されないようにしないといけない」
かたつむりの言葉に、パンドラはこう答えました。
「凄いわ。神様がよってたかって、私に罠をしかけるのね!」
うれしそうなパンドラの表情に、かたつむりはあきれました。
なにしろ、「神々からすべてを与えられた」少女です。
神の策略も、彼女の楽しみの一つにしか過ぎません。
かたつむりの神は、彼女はあえて神々の罠に落ちるかもしれないと思いました。
単に、スリルを求めて。
自分の世界にしか興味が無いかたつむりの神ですが、パンドラには驚かされました。
しばらく考えて、かたつむりの神は、彼女にこう尋ねました。
「君が、神々から授かったもので、一番大事なものは何かね?」
すると彼女は、にっこり笑って、即座に答えました。
「で、彼女は何て答えたんだい?」
「どんなに激しい雨でも、虹を呼んでくれると考えると楽しく思えるっていう考え方だそうだ」
アイリスは、喜びました。
「それは、僕が彼女に与えた快楽主義だよ!全てを幸福的な快楽と捉えて、何でも楽しんで生きてゆくという考え方だ」
「それはどうでもいいが、彼女は何があっても、それを楽しんで生きていくだろうよ」
かたつむりの神は、つまらなそうにそういうと、帰って行きました。
かたつむりの神の言ったとおり、パンドラは、罠の箱や大洪水等の様々な困難に見舞われましたが、それらを乗り越え、楽しく逞しく人生を送りました。
やがて、彼女の子孫はギリシア人の祖となったということです。
かたつむりの神の言葉に祝福を得たアイリスは、決して約束を破る事は無く、今でも雨が降ったあとには、必ず、かたつむりだけには見えるように
虹の橋を架け続けているのです。
もし、雨の後に虹が掛からなかったときは、かたつむりを探してみてください。彼らの視線の先に、きっと虹が掛かっているはずです。
ミカヅキX
ちょっと快楽主義のあたりに無理があるか・・・05/21 01:10
野良(--)
かたつむりの神が面白そうなんだけどなぁ。自分の世界を背負っている、なんてのはいいネタだ。05/21 22:15
水上 える
おお。まとまっている。
神話系のものが好きなんですか??
かたつむりの神は人間型なんでしょうか。かわいいかも…05/22 01:58
最終更新:2009年10月19日 00:44