夕刻。マンションの一室に帰宅した女性は、なにか違和感を覚えた。
どこかいつもと違う……空気を。
「……?」
人の気配がある。彼女はシングルマザーで、小学生の娘がいる。彼女だろうか?
……いや、娘の靴はない。まだ帰っていない。気のせいだ。
彼女は部屋の窓を開けて空気を入れ替え、鼻歌とともにキッチンへ向かった。
「あ」
冷蔵庫を開けると、彼女は顔をしかめた。
楽しみに取っておいた、自分の好物の洋菓子が、袋の封が開けられ、一口だけかじって置いてある。
しかも記憶によれば二つは残しておいたはずなのに、冷蔵庫にはこのかじりかけの一個しかない。
テーブルの上には、いつの間にか、湯気を立てているコーヒーまである。と、いうことは。
「……行儀の悪いやつ!」
ムカついた。躾をしてやらねばならない。
叱ってやり、教育的なビンタのひとつもしてやらねば。社会に出てもろくな大人になれはしない。
洋菓子を一口かじり、コーヒーをすする。……カップの隣になにか、布がある。
「え?」
見覚えが……ある。この色と質感、手触りは。まさか。ハンカチやナプキンなどでは……ないッ!
『おまえのパンティーだ』
広げた布には、筆ペンでそう書いてあった。娘がこんなことをするはずはない。じゃあ、これは。
……変質者が、ここに。
「『恐怖』を感じない人間は、いない……」
「ひッ!?」
背後から男の声がした。さっきまで誰もいなかった椅子に、褐色の肌をした高校生ぐらいの少年が座っている。まさか、彼が!
「だ、誰ッ!? 変質者! 警察呼ぶわよッ!」
女性は素早く包丁を構え、誰何した。娘の知り合い、のはずがない。
彼は無言で肩を揺らして笑うと、折りたたまれたメモ用紙を懐から取り出した。
それをテーブルの上で広げると……手品のように、冷蔵庫に入れておいた洋菓子と、温かいコーヒーが出現した。
女性は恐怖し、唾液を飲み込んだ。
次の瞬間、女性は消滅した。
彼女がいた場所には、一枚の折りたたまれた紙切れが落ちていた。
少年はそれを拾い上げると懐にしまい、何事もなかったように洋菓子を食べ、コーヒーをすすった。
「『人間観察』が趣味、と。いいご趣味でいらっしゃいますなァァ」
せせら笑う声が響き、物陰から男が現れた。
全身真っ黒で、顔もぼやけて曖昧だが、皮肉そうな笑いだけがはっきりとしている。
「かくいう私は、そう褒められた趣味じゃあない。いたいけな子供を騙し、脅し、誘拐する。
それから先は、さあ、食べちゃったりとかしますかねェ。ステーキにしたりなんかして……ヒヒヒ」
「ふぅーん。いいご趣味だね」
褐色の肌の少年は、興味なさげにコーヒーを飲む。彼は考える。
自分の『能力』は、普通の人間には無敵と言える。
真正面からの戦いには向いていないが、ハマれば絶対に勝てる。いろいろ便利でもある。
そしてこのサーヴァントは、実際自分の『能力』と良く似ている。能力を発動する条件もない。
うまく組み合わせればいいのではないか。
「ええ。私は少年少女を餌食にしたいんでして。大人の方はお任せします」
「勝手にするがいい。……彼女は解放しろ」
黒い男はヘラヘラと笑い、背中の麻袋を床に置いた。
ばらりと袋は解け、よく眠っている少女が現れる。少年は眉をひそめる。
「ここで起こすな。靴を脱がし、彼女のベッドへ連れて行け」
「喜んで!」
【クラス】
アサシン
【真名】
ブギーマン@世界各地の民間伝承
【パラメーター】
筋力E 耐久E 敏捷C 魔力C 幸運C 宝具C
【属性】
混沌・悪
【クラス別スキル】
気配遮断:A++
サーヴァントとしての気配を絶つ。完全に気配を絶てば発見することは不可能に近い。
対象に直接干渉しない限り、決して気づかれる事はない。
【保有スキル】
影灯籠:A
影そのものと同化するスキル。
暗闇から周囲の魔力を得る為、実体化さえしなければマスターからの魔力供給はほぼ不要。
令呪を使われない限りマスターに対してもステータス隠避が可能になる。
ベッドの下や冷蔵庫、クローゼットの中などの暗がりに潜み、突然現れる。
【宝具】
『丑三つ時の麻袋(ブギーマンズ・バッグ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:不明
丈夫で大きな麻袋。背後に忍び寄って頭からかぶせ、たちまち全身を包んでしまう。
包まれた者は無力化され、連れ去られる。時間が夜、周囲が闇、標的が子供であるほど成功率が高い。
【Weapon】
麻袋。直接相手を殺傷することはないが、脅すことはする。
【怪物背景】
bogey-man。世界各地の民間伝承に登場する、子供を誘拐するお化けの総称。
bog,bugとはゲルマン諸語で「恐ろしい霊」を意味し、ボーグル、ボガート、ブッカブー、バグベア、
プーカ、パック、スプーキーなどと同じ語源である。泥炭地を意味するbogとも結び付けられる。
ブギーマンに類する存在は日本を含め世界中に見られ、多くは麻袋を背負っており、
夜道や家の暗がりに潜んでいて、親の言うことを聞かない悪い子供を攫っていくとされる。
大人たちが子供の躾のために作り出した存在であるが、知名度が高いために概念として英霊化した。
【サーヴァントとしての願い】
なし。子供を脅して攫いたい。
【方針】
子供を優先して攫う。次にか弱い女性。成人男性に用はない。
【マスター】
宮本 輝之輔(みやもと・てるのすけ)@ジョジョの奇妙な冒険第四部
【Weapon・能力・技能】
『エニグマ』
破壊力:E スピード:E 射程距離:C 持続力:A 精密動作性:C 成長性:C
物体を紙に変換して閉じ込め、保存することができるスタンド。
何かを閉じ込めた紙は小さく折りたたまれており、開くことで中身を取り出せる。
紙の中では時間が経過せず、ラーメンも温かいままで麺がのびない。
タクシーを運転手ごと保存したり、炎を閉じ込めたりも可能。
スタンド自体に攻撃力はないが、紙を破損させると中身の物体もダメージを受ける。
本体も自分を瞬時に紙化して姿を消したり現したり、風に乗って移動したりできる。
生きた人間に対しては発動条件があり、個人が持つ特有の「恐怖のサイン」を本体が看破した後、
相手がそれを示せば紙に閉じ込めることができる。そのパワーは抗い難く、どんなに強いスタンドでも逆らえない。
閉じ込められた人間は気絶しているが生きている。
【人物背景】
漫画『ジョジョの奇妙な冒険』第四部に登場するスタンド使い。アニメでのCVは河西健吾、ASBでは成瀬誠。
褐色の肌と真ん中分けに編まれた色の薄い髪をした少年。本名は本編では不明のままで、後年に設定された。
吉良吉影の父・吉良吉廣の持つ「矢」によってスタンド使いとなる。
他人が恐怖する姿を観察するのが好きで、その欲求を満たすために能力を悪用している。
東方仗助を始末すべく、その母親や友人を次々と紙に変え、人質にとって追い詰め、敗北させた。
だが噴上裕也の機転により仗助らを救出されて敗北し、卑劣で陰湿な手段に激怒した仗助によって、
シュレッダーの紙屑と融合させられ「本」に変えられてしまった。
アンジェロ岩と同じく生きたまま身動きが取れなくなり、杜王町の図書館に寄贈されて、永遠に「観察」だけをする羽目になる。
【ロール】
特になし。神出鬼没の少年。
【マスターとしての願い】
特になし。人間を観察し、恐怖させて楽しみたい。
【方針】
聖杯狙い。邪魔する者は殺す。
相手が強ければ人質をとって脅し、恐怖させて始末する。最後まで生き残れば勝ち。
【把握手段】
原作。
【参戦時期】
リタイア後。
最終更新:2022年04月03日 16:28