七海はしばし仕事の手を休め、昼食を摂ることにした。彼の勤めている企業はテレワーク
を採用しており、必ずしも出社する必要はない。終日在宅勤務も珍しくなかった。仕事を自宅に持ち込むのは気が休まらない、という意見を言う友人もいるが、出勤のストレスを考えれば七海は賛成だ。

(しかし、何か忘れている…)

昼食時、手製のポークチョップを頬張りながら、七海はそんな考えに囚われていた。この日の勤務を終了すると七海は自宅を出て、特に行き先を決めずに愛車を走らせた。何気なく渋谷に入った時、七海の意識の片隅で、何かが起き上がった。

ー!?

今のは一体?いま脳裏によぎった何かを掴むべく、適当な駐車場に車を停めて、渋谷を散策する。無数の雑踏を掻き分けて進む七海の前に、渋谷駅が姿を現す。

ーナナミーン!!

嗚呼、と声が漏れた。全て思い出した、それと同時に流れ込んでくる初めて知る情報。聖杯戦争に関する知識。

「おはよう、マスター」
「…貴方は、貴方が私にあてがわれたサーヴァントですか」
「如何にも」

既視感を覚える光景だ。いつの間にか、七海の死角に外国人の男性が立っており、七海を興味深そうに観察している。クラスはキャスター、一般的には外れとされるクラス。ステータスを透視した七海が場所を変える事を提案すると、キャスターは素直に愛車を停めた駐車場まで着いてきた。

「私は、この催しを打破する為に動きます。貴方がどのような願いを抱えているにせよ、それは私と組む限りは叶わないと思って頂きたい」
「万能の願望機だぞ?反抗して君にどんなメリットがある?」

後部座席に座ったキャスターが呆れた様子で言った。

「…私の現状から考えて、全員が全員、戦いに積極的とは思えない。感謝はされるでしょう。やり甲斐もある」
「命を賭ける理由には弱いな」

同感だ、と七海は内心頷く。一度は逃げ出した癖にこんな曖昧な理由で戻った挙句…自分は一度死んだのだ。聖杯の力も、きっと本物だろう。それでも…これほどの力を持って争いを強いる"仕組み"が気に食わない。

「だが君にとっては違うのだろう。ならば、これ以上は口を挟まないよ。従おう」
「どういうつもりです?」
「君ほどの術師と手を切る理由にはならない、という事さ」
「…聖杯が手に入ったら何を望むつもりですか?」
「うん?…平易な表現だが、超人化だ。秘密の首領、という言葉に聞き覚えはあるかな?」

七海は頷く。近代の西洋魔術において語られる、人類を教え導く高次存在のことだ。ブラヴァツキーの提唱したマハトマもこれと類似したものだ。この問いを発した事から、七海はキャスターの正体を近代の魔術師だろうと見当をつけた。

「聖杯の力によって己の階梯を引き上げるべく今回参じたが、見送るよ。悔いのない戦いをしたまえ、優秀な後輩」
「…どうも」

バックミラーに映るキャスターは自信に満ちた微笑を浮かべている。その顔が、実力は折り紙付きの尊敬できない男とダブって見えた。




【サーヴァント】
【CLASS】
キャスター

【真名】
マグレガー・メイザース(サミュエル・リドル・マザーズ)

【出典】
イギリス

【性別】

【ステータス】
筋力D 耐久D 敏捷C 魔力C 幸運D 宝具EX

【属性】
混沌・善

【クラス別能力】
道具作成:D
魔術的な道具を作成する技能。
アストラル投射に用いるシンボルを作成できる。

陣地作成:EX
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。“固有結界”の形成が可能。

【保有スキル】
オカルト:B
多言語に通じ、ロンドンやパリで多くの魔術書を渉猟、それらを翻訳したメイザースは秘密の知識に精通している。魔術の痕跡から使われている魔術体系を把握できるほか、判定に成功すれば英霊や宝具の真名を看破できる。

アストラル投射:A
特定のシンボルを凝視しながら意識を集中する事で意図的な体外離脱を行う。霊体化とは異なる、遠隔視に似たスキル。

対魔力:-(C)
通常時は機能しておらず、『魔術が描く戦争芸術』装備時のみ第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

【宝具】
『魔術が描く戦争芸術(アブラメリン・ウォークラフト)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1  最大捕捉:2人
多くの魔術書を翻訳し、戦争理論に通じたメイザースの人生の具現。自らの魂の最も神聖な部分、聖守護天使の加護をもたらすアルファベットが刻まれた金属の帯で形作られたグローブ。
装備した時点で幸運を除くステータスがワンランクアップ、対魔力スキルが括弧内のランクに修正される。
さらに真名解放時には4体の悪魔、ルキフェル、レビヤタン、サタン、ベリアルの魔力が宿り、噛み砕くような追加攻撃と治癒阻害の呪詛を打撃と共に打ち込む。これは魔術抵抗で威力を減衰できない。悪魔の属性を持っている相手に対しては効果が落ち、格闘ダメージに魔力値が加算されるのみにとどまる。

『暁の黄金神殿(テンプル・オブ・ゴールデンドーン)』
ランク:EX 種別:対軍宝具 レンジ:1~99  最大捕捉:200人
夜明け団が運営するイシス・ウラニア神殿、オシリス神殿、など複数の施設が重ねられた複合固有結界。神殿内はカバラを含む知識の宝庫であり、結界内においては敵対者の魔術系スキルがEランクまで劣化。メイザース自身は四大元素を自在に扱い、ゴーレムを即座に作成して己の軍団として使役可能。彼らとの波状攻撃によって引き摺り込んだ相手を蹂躙する。


【weapon】
宝具『魔術が描く戦争芸術』。

【人物背景】
イギリスのロンドン北部で生まれたオカルティスト。フリーメーソン、英国薔薇十字協会、八人協会などの団体に名を連ねてオカルトの研究に励む。薔薇十字協会会員ウィリアム・ウェストコットが手に入れた60枚の暗号文書の全文を彼が復号化すると、そこにはアンナ・シュプレンゲルなる女性の住所が記されており、彼女を通じて魔術結社「黄金の夜明け」から支部設立の認可を受けとり、ウィリアム、ウッドマンと共に神殿と称される施設を立ち上げる。

年長のウッドマンが死去、ウィリアムが首領を辞すと「黄金の夜明け団」唯一の指導者となる。その後、団内で不評を買っていたアレイスター・クロウリーの昇格拒否の一件で当時パリに住んでいた彼はイギリスの団員たちと対立。ウェストコットが背後にいると考えたメイザースはシュプレンゲルの書簡が捏造であったと唐突に暴露すると団内全体を揺るがした。

外見は口髭を蓄えた英国紳士。
スコットランドの北部のハイランダーの末裔を自称しており、男女平等主義者で絶対菜食主義者、非喫煙者とされる。好戦的で自らの信仰に忠実、それゆえに人望に乏しい。


【サーヴァントとしての願い】
超人化。物質界より高次元の星幽界に住まう存在を目指す事を目標としており、術師は高次の存在へと進化する途中であると考えている。

【方針】
マスターの方針を尊重する。


【マスター】
七海健人

【出典】
呪術廻戦

【性別】

【能力・技能】
十劃呪法:

生物無生物問わず、対象の長さを線分した時、
7:3の比率の点に強制的に弱点を作り出す。的確に攻撃できれば、高い威力を発揮できる。

瓦落瓦落:
破壊した対象に呪力を籠める拡張術式。
呪力を込めた拳で壁を破壊、生み出した大量の瓦礫で広範囲を攻撃する。


【weapon】
なし。

【人物背景】
呪術高専東京校所属の一級呪術師。
学生時代、級友の灰原を喪い、先輩の夏油が呪詛師に身を堕とすなどの経験から高専卒業後は呪術師はクソと判断して一般企業に就職。会社勤めで疲弊していたある日、パン屋の女性に取り憑いていた低級呪霊を祓った際に深く感謝された事で、やり甲斐と感謝を求めている自分を自覚。呪術師に復帰した。
後に発生した渋谷事変にて立て続けに特級呪霊との戦闘に陥り、致命傷を負った彼は新人の虎杖悠仁に後を託して絶命した。死亡後から参戦。


【マスターとしての願い】
巻き込まれた人々を救う。

【方針】
聖杯戦争の打破。
最終更新:2022年04月03日 16:31