『────続いてのニュースです。』

 女性のキャスターが用紙を一瞥すると、カメラ正面に顔を向けた

『昨夜未明。東京拘置所より、受刑者一名の脱獄が確認されました。』

 横のスクリーンに、東京拘置所の俯瞰映像が表示される。

『受刑者の名前は、"浅倉威"。25歳男性で、身長は182cm。
暴行罪、殺人罪を含む二十二の罪により、無期懲役の刑に処されております。』

 写真には蛇皮ジャケットを着用した金髪の男性。
見定めるような眼差しを浮かべ、笑みは不気味に歪んでいた。
どこか常人とはかけ離れた、殺伐な気配が写真から伝わっている。

『警察は行方を捜査すると共に、全国に指名手配しており────』

 テレビの映像は砂嵐となった。


   ◆    ◆    ◆


「あァ~……。」

 螺旋状の突撃剣から、血が零れ落ちた。

 一人の女性が床に倒れている。
顔面が見えぬほど頭部は半壊し、夥しいまでの血が部屋中に散乱していた。
女性の手の甲には、令呪の証。生命の終わりを暗示するかのように消失した。


 立っているのは、紫の兜に西洋騎士を思わせる仮面を被った戦士。
下地には黒色のスーツ。胸部には、象徴色とする紫を主体としたアーマーを纏っている。
そして、蛇の紋章が描かれたデッキが挿入されたベルト状の装具が腰回りに巻かれていた。


 戦士はデッキを外すと、装備が解かれた。


 蛇柄のジャケットを着用した男性、"浅倉威"。
右手の甲には、令呪の証。浅倉もまた、聖杯戦争に集められた参加者の一人。
自身の記憶が覚醒するや否や、獲物を求める獣が如く、戦争の舞台に参戦した。

「こんなものかァ……。」

 "物足りない"、という風に鼻で笑う。 

 彼が左手に持っている、蛇の紋章が描かれたデッキ。
それは、強化装備である「仮面ライダー王蛇」に変身するためのアイテムであった。
いつの間にかも知らず、ポケットの中に入っていたそれが、彼の記憶を呼び覚ました。


 怒りと苛立ちが頂点に達し、射殺された記憶。
北岡は結局、工場跡には現れず、殺害する事は叶わなかった。
不完全燃焼。怒りと虚しさが心を焼き付くしては、未だに遺り続けている。

「俺をもっと、楽しませろォ……!」

 乱暴にリビングテーブルを蹴り倒す浅倉。

 彼が祭り(聖杯戦争)に参戦するのは、必然であった。
元より、"死ぬ"か"生きるか"の命の奪い合いしか、生きている心地を感じることはできない。
例え、邪神に記憶や理性が奪われようとも、彼は本能的に戦を求めることを止められない獣だ。

 今度は、あのような中途半端な形で、戦いを終わらせはしない。
戦いの中で決着を付けること。やはり、それこそが満足の行く結果なわけだ。
ライダーバトルが聖杯戦争になろうが構わない。戦争であれば、形など何でもよい。

 故に、この祭りにも必然的に参戦する。
願望を叶える聖杯など知ったことではない、今戦えればそれでいいのだ。


 聖杯戦争。激情を呑んで、尚も楽しむ。


   ◆    ◆    ◆


「■■■■■■■■■■■■────────!!」

 獣が発する咆哮が響き渡る。
窓ガラスに映る"鏡の中"には、"六メートル強もある巨大な紫蛇"が佇んでいる。
そう。紫蛇の怪物こそ、浅倉が召喚したバーサーカーのサーヴァントであった。

 その名は、"バジリスク"。
中東から北アフリカにかけて生息していたと伝わる、"全ての蛇の上に君臨する蛇の王"。
猛毒と魔眼を持つ、古代より存在する幻獣がサーヴァントとなった。


 ただ、バジリスク自身には鏡の中に居られる能力はない。
サーヴァントとは異存在の力によって、鏡の中の世界と自在に行き来することを可能としている。
それは、鏡の中の世界「ミラーワールド」に生息するミラーモンスター。王蛇に伴い、召喚されていた。

 "ユナイトベント"。
契約モンスター同士を融合させる、王蛇のアドベントカード。
今のバジリスクは、王蛇の契約モンスター「ベノスネーカー」と融合されている。


「■■■■■■■■…………!!」

 狂化を有するバジリスクに、理性という理性はない。
だが、戦いを渇望していることは、自らを契約した主人と同じなのだ。
それはバジリスク自身の性格が同じ、それは融合したベノスネーカーも同じ。

 彼らは、戦いの蛇獣。
自らの理性を戦争に奪われても、戦闘本能は揺らぐことはない。


 聖杯戦争。狂気を呑んで、尚も楽しむ。


   ◆    ◆    ◆


 二種の蛇、交わる。
それは、戦いを揺るがす"毒"を齎す怪魔となるか。




【クラス】
バーサーカー

【真名】
バジリスク@民間伝承(中東・北アフリカ)

【属性】
混沌・悪

【パラメータ】
筋力A+ 耐久A 敏捷B 魔力B 幸運C 宝具B

【クラス別スキル】
狂化:B
全パラメーターを1ランクアップさせるが、理性の大半を奪われる。

【保有スキル】
魔眼:A
魔眼を有していることを示すもの。
バジリスクは高ランクの石化の魔眼を持つ。
対魔力がC以下の者は無条件で石化。Bの者でもセーブ判定次第で石化を受ける。
Aの者には石化判定はないが、全能力をワンランク下げる“重圧”をかけられる。

怪力:A
一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。
使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。

恐慌の音:A
聞く者の精神を弱らせる音を響かせ、対象に精神攻撃を行う。
バジリスクの移動する音は、聞いただけで周囲のヘビも逃げるほどであったという。

自己改造:A
自身の肉体に、まったく別の肉体を付属・融合させる適性。
このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。
現在、ミラーモンスターの性質が融合している。

【宝具】
『地が畏怖する王蛇の毒(バジリスク=イオス)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1~20 最大捕捉:-
バジリスクを象徴とする毒が宝具となったもの。
全身のあらゆる箇所より、毒性学上には存在しない毒素を放出し、生物や水、植物などに感染および腐食する。
人間相手や耐久Eなら即死、耐久Dでも四時間で消滅、耐久Aでさえも無処置であれば二日間で消滅させるほどの致死量を持つ。

毒の持続性は呪いの域にも等しく、一度感染してしまうものであれば、バジリスクが消滅しても、なお消えることはない。
それにより、毒素残留による二次感染や環境汚染といった災害も懸念され、最大捕捉も未知数という点もある。

Cランク以上の「耐毒」(他スキルからの取得や頑健などの複合スキルでも可)や毒に耐性を持つ宝具があれば、毒を受けても問題なく活動可能。
(令呪などでも毒耐性の確保・解毒できるが、一角程度ならば辛うじて致命傷を避けられるレベルに終わる。)
また「"ヘンルーダ"といった毒の効果を打ち消す道具」、「解毒効果のある魔術類」、「対抗概念となる"イタチ"」など無効化にできる例も存在する。

他にも、毒素を大量に含みブレスとして攻撃する手段もあり、岩をも砕くほど高い威力を持つ。

『砂主の棲処(バラド・サハラ)』
ランク:B 種別:結界宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:-
周囲の空間が広大な砂漠に変化する結界。
かつてリビアや中東にある砂漠地帯は、バジリスクの力によった砂漠となったとされる言い伝えが宝具として昇華したもの。
空間内の神秘のない無機物は砂に変わり、結界内の空間は砂漠と化していく。
砂はバジリスクが意のままに操ることができ、砂嵐の発生や砂による拘束なども可能。
ただし、Bランク以上の「陣地作成」や結界宝具が発動している空間では効果は発揮しない。

なお、『地が畏怖する王蛇の毒』と違い、こちらは解除されれば元の空間に戻る。


『戦祭終技・毒蛇猛脚(ベノクラッシュ)』
ランク:-(C+相当) 種別:対人絶技 レンジ:1~7 最大捕捉:1人
ベノスネーカーとの融合によって後天的に発生した異なるファイナルベント。
王蛇が宙返りの跳躍し、後方に立つバジリスクが放射する毒液を推進力として敵へ猛突進し、
左右の足を交互に振り上げながらの連続キックを叩き込む必殺技。
王蛇が浴びる毒はバジリスクのものであるため、間接的にサーヴァント相手にも通用する。

【weapon】
「ベノスネーカー」
ユナイトベントでバジリスクと融合したミラーモンスター。
今のバジリスクの状態はミラーモンスターと同じであり、人やサーヴァントの生命エネルギーを主食源とする。
ミラーワールドと通常世界の両方で自在に活動でき、「アドベント」の発動によって王蛇の下に呼び寄せることもできる。
一方、魔力状で構成したサーヴァントの身体でなくなっているため、霊体化はできない。

地面を時速500kmの移動速度で這い、地中を移動することも可能。
ボディ各部には刃で備えられ、蛇ならではの締めつけ・咬みつき・尻尾の叩きつけを主戦法とする。

【人物背景】
古代ローマの著「博物誌」にも記述されている幻想種。
中東から北アフリカの地域にかけて生息していると語られてきた、全ての蛇の上に君臨する蛇の王。
『エレミヤ書』や『詩篇』などでは、救世主によって倒される悪魔の象徴として描かれることもあった。
中世期でコカトリスと混合されたため、トカゲと雄鶏を融合をした姿が有名だが、この霊基では古代期に語られた蛇種。
上述の悪魔がベースに「当時のヨーロッパ人が抱く"砂漠の脅威と不安"が集合した反英雄像」として現界している。

ただし、現在は浅倉がユナイトベントを使用し、バジリスクとベノスネーカーを融合させたことにより、霊基も変質している。
ミラーモンスターを依り代としているため、独立して存在しており、在り方はサーヴァントよりかは疑似サーヴァントに近い。

ベノスネーカーの性格との相乗効果もあり、より獰猛かつ凶暴で好戦的な面が反映されている。
ただ、餌が無ければマスターさえも捕食するなど、理性に乏しさから、刹那的な在り方を取っている。

【外見】
大樹の幹ほどの太さに、全長六メートル強ほどの長さを持つ大柄のキングコブラ。
頭に王冠の形をした斑点を持ち、目は黄色の蛇眼に目付きは鋭い。
ベノスネーカーの頸部と外皮が装甲の様に纏い、尻尾はベノサーベルに変化している。
細身のベノスネーカーよりかは太い。

【サーヴァントとしての願い】
戦いを求め、人やサーヴァントの生命を食らう。

【方針】
契約者の浅倉に付き従っていく。
ただし、サーヴァントや人間のエネルギーを貰えない期間が長く続いた場合は補食する。
普段はミラーワールドに潜伏しておき、鏡面から奇襲する体勢を取る。



【マスター】
浅倉威@仮面ライダー龍騎

【能力・技能】
「戦闘能力」
徹底的に相手を痛めつけるような、横暴な戦闘スタイルを取る。
また、即座に敵を盾に取るなど、臨機応変な対応力を持っている。
当人の格闘能力やセンスは高く、実力はミラーライダーの中でも最多のライダー撃破数を誇るほど。


【weapon】
「王蛇のデッキ」
カードデッキを水やガラスなどの鏡面に翳し、出現したVバックルにデッキを挿入することで「仮面ライダー王蛇」に変身する。
鏡の中の世界「ミラーワールド」を自在に行き来する機能を持ち、応用として脱出や撹乱戦法に使うことも可能。
デッキケースの中には下記のアドベントカードが収納され、戦闘に応じて取り出して使用する。

□スペック
パンチ力:250AP (12.5t)
キック力:400AP (20t)
ジャンプ力:ひと飛び40m
走力:100mを5秒

1AP=0.05tに相当

■ソードベント
ベノスネーカーの尻尾を模した突撃剣「ベノサーベル」を召喚。3000AP。

■スチールベント
相手の装備を自分の手元にテレポートさせる。

■ユナイトベント
契約モンスターを合体させる。

■アドベント
ベノスネーカーを召喚。5000AP。

■ファイナルベント
必殺技「ベノクラッシュ」を発動。6000AP。

「牙召杖ベノバイザー」
変身と共に出現する王蛇の召喚機。先端にコブラの頭部を模した装飾の付いた杖。
杖頭のカードスロットにアドベントカードを読み込ませることで能力を発動する。
その他、頭部の咬みつきによる毒注入や鋭い柄尻による刺突攻撃など武器としても使用できる。

【人物背景】
関東拘置所に収容されていた凶悪殺人犯。
ライダーバトルの主催者である神崎士郎からデッキを渡されてから、ライダーの力を用いて脱獄。
以後はライダーバトルに参戦。多くのライダーを殺害し、終盤に渡るまで戦いを続けていった。

「イライラしたから」という理由で、自分勝手な凶行に及ぶ外道。
他人の感情を自分のために平気で利用し、その思いも踏みにじって殺すほど冷血な人物。
殴るか殴られるかしていないと気が済まず、死ぬか生きるかの命の奪い合いでなければ生きた心地を感じることができないサイコパスである。
激情に駆られやすい狂人な一方で、考えなしに暴れているわけではなく、感情が湧かない状態ではクールでさっぱりした一面もある。
また、「人間は自分を正当化し、安心するためにもっともらしい理由をつける」と揶揄するなど、達観した一面もあり、
決して、過去や倫理道徳に捕らわれることなく、純粋な感情で犯罪を及ぶなど、悪人としては清々しい面も持つ。

終盤。ゾルダとの戦いを制するが、正体が(既に息絶えていた)北岡秀一の代わりに挑んだ由良吾郎と知って逆上。
最後は射殺も已む無しと判断した警官隊の包囲網に突撃、何発もの銃弾を浴び、射殺される形で幕を閉じた。

【マスターとしての願い】
戦争で苛立ちを解消し、快楽を満たす。自分が勝ってしまうのであれば、それでも戦争を続けさせる。

【方針】
手当たり次第に他陣営を襲撃していく。
苛立ちを解消させることができれば相手は誰でもいいのだが、自分が"苛付く"と感じた相手には執拗に狙う。
サーヴァントからエネルギーが獲られない、または魔力切れとなった場合は、NPCを餌にすることも考える。

【ロール】
東京拘置所からの脱獄囚。
脱獄したことはニュースで報道され、指名手配にも挙げられている。

【把握媒体】
特撮ドラマ『仮面ライダー龍騎』をご参照ください。
最終更新:2022年04月17日 23:15