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白いものに乗ってて、手にはうつものを持ってて、頭には何かかぶってるもの、なーんだ?







少年の前に美しい白、白、白白白白白白……真っ白なサーヴァントが召喚された。


サーヴァント……アーチャーは、真っ白に塗装された『警察官』の制服を纏っていた。
帽子から靴先まで、本来なら黒や青などで彩られている部分が全て漂白剤で落とされたかのような白さ。

手には白銀の拳銃があった。
普通、黒く染められている筈の鉄の塊が白いと軽やかで美しく、宝石のように輝いていた。

白の帽子はよく見ると冠に似た形状に変化している。
警察官の帽子よりも、王冠に似通っている。煌びやかで高価な装飾品に印象づける。

アーチャーが跨っているのは白のバイクだった。
鉄で構成されてる部分も白い為、まるで作り物に感じる。
最早、乗り物ではなく芸術品である。

全てが白のアーチャーは髪も白く染められている。冠の帽子に収まりきらない長い白髪を靡かせた。


ただ、アーチャーの顔には仮面がある。
恐ろしいものに蓋するかのように、カッチリと顔が隠されるような仮面にも銀の装飾があり、美しい。
仮面の裏側から、声が聞こえる。


「問おう。貴方が私のマスターか」


男の声だった。
体格からしても、声色からも、アーチャーが男性であるのは間違いないようだった。
そして……マスターである少年は――……


その声に聞き覚えがあるような、気がした。






少年・竈門炭治郎は、未だふわふわと夢心地にいた。

東京二十三区。
ここは彼が生きた時代より未来の日本が舞台であったのもそうだが、他にも、ここには家族がいたからだ。
死んだ筈の母も、兄弟も、皆が当たり前のように暮らしている。
記憶を取り戻す前も、取り戻してからも、炭治郎は家族の為に家事の手伝いや、幼い兄弟の世話をしている。

未来の世界では慣れない事が多過ぎた。
幸い、記憶を取り戻す前の知識が残っていて、生活には困らなかったが。
分かっていても、札(カード)で現金が支払えたりするのが不思議で、目まぐるしい交通網に圧倒され。
自然が減り、人工的で淡白な景色に慣れなかった。

それでも、人々の生活は変わらなかった。
仲睦まじい家族、近所の交流、学校という学び舎での友情、そして社会の裏で悪さをする悪人、苦しむ人々……
過去も未来も、そうした世界に変化はないのは、何故だか不思議に思う。

鬼の幻術とは違い、ここには生きた人々がいる。

そんな中で、聖杯戦争が始まろうとしている。

未だ、聖杯戦争が何たるか分からない。
本当に奇跡の願望機なのか、それでたとえば……妹は人間に戻るのか。
果たして、ここにいる家族は本当なのか。偽物で、別人でも、確かに生きた人達なのか。

あの時とは違う。
鬼の存在を知らずに生きていた頃とは違い、炭治郎には力がある。
呼吸とマスターとしてサーヴァントを行使する力が。


人がいない場所で、改めて炭治郎はアーチャーと対話する。
相変わらずアーチャーは仮面をかぶって、表情は見えなかったが、それでも炭治郎は本心を明かす。


「アーチャーさん。俺は誰も死なせたくありません。一人でも多くの人を助けたい。
 聖杯も……叶えたい願いは沢山あります。でも、聖杯の為に人を巻き込んでしまうなら、俺は聖杯を求めません。
 俺はこの戦争を起こした存在を許してはならないと思っています。戦争を――止めたいんです」


最悪、聖杯を求めない。
そういう意味でもあるのだが、サーヴァントによっては飲めない意思だ。
アーチャーは静かに「そうか」と言う。


「分かっていた。貴方がそういう方であると。
 貴方がそうであるから、私も同じ願いを抱いている。私も……一人でも多くのものを救いたい」


表情は分からないが、穏やかな声色をしており、炭治郎も彼から嘘の匂いをしなかった。
本心なのだろう。
しかし、しかし何故だろうか、引っ掛かる部分がある。
炭治郎からの不信感を感じたのだろう。アーチャーはそのまま言葉を続ける。


「マスター。貴方には私が如何なる存在がお伝えした。私は『支配』そのものであると」

「は、はい。俺も調べました」


神の怒りの代行者。

四人の死の天使。

支配。

戦争。

飢饉。

疫病。

地上を分割統治し、地上の人間を殺す権利を神より与えられし『黙示録の四騎士(フォー・ホースメン・オブ・アポカリプス)』

その先方者――『支配』を冠する騎士『ホワイトライダー』
アーチャーの真名である。


「……だが、それは概念なのだ。
 我らは英霊ではない
 神霊でも
 幻霊でもなければ
 悪霊でもなく
 ヒトですらない。
 我らに人格は与えられず。人格を得る事もままならなかった……ただ、奇跡的に。ここが閉鎖された空間故か。
 そして……マスター。貴方のお陰で形を得て、人格も得た」

「俺の……」

「本当に……有難う。マスター。貴方の優しき心がなければ、私は神の機構として地上を蹂躙するだけだった。
 私は私の力を以てすれば多くの人を殺さず、支配し、救える。……その選択を得たのだ」


四騎士の中で『支配』のホワイトライダーは、人を殺さないとも云われる。
支配をすれば殺す必要がない為だ。
果たして、支配の先に救いはあるのか怪しいが、少なくとも支配で救済を齎すとホワイトライダーは語る。
彼からは本当の意味で感謝の意が漂っている。
故にホワイトライダーは告げる。


「私にとってはマスターが産みの親のようなものだ。信頼以上の敬意がある。

 だからこそ……

 マスター。私の仮面の下は――見なくていい」

「……………」

「見ない方がいい」

「いえ」


最初から予感はしていた。
分かっていないフリをしていたかもしれない。確信がなかっただけかもしれない。
だが、炭治郎は覚悟を決した表情で向き合った。


「…………見せて貰えませんか」


竈門炭治郎にとって、恐怖に値する『支配』の象徴とは何か。
何故、形を持たない筈のホワイトライダーが形となったのか。
それほどの、それほどの『支配』たる存在など――ひとつしかない。



仮面の下から――忌まわしい鬼の始祖の顔が覗いた。






「酷い顔だ……やはり見るべきではなかったのだ。マスター」


優しく話しかける声も、あの、『鬼舞辻無惨』の声だと理解してしまうと炭治郎の感情は酷く逆流した。
だけど、炭治郎は必死に立ち上がった。


「大丈夫、です……お陰で、俺は俺の決心を取り戻しました」


鬼になった妹を救う為。
家族の仇である鬼の始祖を倒す為。



夢から醒めたのだ。










【真名】
支配(ホワイトライダー)@ヨハネの黙示録

【クラス】
アーチャー

【属性】
中立・善

【パラメーター】
筋力:B 耐久:A 敏捷:A 魔力:D 幸運:C 宝具:EX


【クラススキル】
対魔力:C
 魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。
 大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

単独行動:A
 マスターとの繋がりを解除しても長時間現界していられる能力。

騎乗:D
 本来ならEXあるが、近代的な舞台に影響されて現界した為、ランクが低下している。



【保有スキル】
支配:A
 ホワイトライダーが射貫いた生物を支配するスキル。
 精神と肉体が支配される。これにより生死の権利すらホワイトライダーが握る為
 支配されたものは、如何なる攻撃を受けても無傷でいられる。
 ホワイトライダーは人を救う為に、これを使う。

無辜の世界:EX
 『支配』『征服』に対する人々の恐れがメージが色濃く反映されたイメージが
 あまりにも雑多な為に召喚時はプレーンな存在になる……のだが
 マスターと舞台の影響により、ある姿で現界している。

青き彼岸花:EX
 誰かが追い求めていた幻影。誰かが知っていた幻影。
 支配したものに様々な加護を与えるスキル。
 疑似サーヴァントにし戦闘させる事も可能だが、ホワイトライダーはそれを嫌う。



【宝具】
『来たれ、勝利よ、来たれ(ドゥームズデイ・カム)』
ランク:EX 種別:対支配宝具 レンジ:- 最大補足:-
 支配したもの、支配されたものに対する限定宝具。
 精神または肉体に支配的な行使をされた対象に強制的な心象風景を見せ、解放する宝具。
 マスターのイメージで心象風景は変化する。
 今回の場合は一面に広がる青空を鏡のように映す大平原となる。


『剣、饑饉、死、獣(ヒノカミカグラ)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:99 最大補足:999
 他者に『支配』を与える数多の物を具現化させ、その力を行使するスキル。
 環境が完全に整えば、神話における『終末』を魔力が許す範囲でのみ再現することも可能。
 銃火器とバイクを使いマスターの神楽の舞いを再現し、攻撃する。


【weapon】
銃火器
 宝具で出現させられるのは小型の拳銃から砲台まで、中には近未来的なレーザービームを放つものもある。

バイク
 白の馬が近現代的に解釈され、変化したもの。
 戦闘時には、巨大な砲台に変形し攻撃を放てたりする。


【人物背景】
『ヨハネの黙示録』に記述されている終末の四騎士の一人。
神から地上を分割統治する権利と地上の人間を殺す権利を与えられし死の天使。
小羊が解く七つの封印の内、トップバッターに登場するのがホワイトライダーである。

これは本来なら英霊でもヒトでも悪霊でも幻影ですらない。
生命体ではなく『支配』という概念そのもの。
人類の『支配への恐れ』を象徴するもの。この世から『支配』が絶えない限り滅びはしない。

故に本来なら、召喚されることも、人格も、姿形すらない、
知識の塊・聖杯戦争に忠実なロボットのようなものとして活動する運命……だった。


東京二十三区という限定された空間が舞台となった事で、
この舞台において『支配』の定義に相応しい概念・象徴として『警察』が当て嵌まり。
マスター・竈門炭治郎の持つ因果が忌まわしき『支配』の象徴を引き寄せた。

マスターの『人は決して殺さない』意思が反映された人格となり、
聖杯への願いもそれに準えたものとなった。

聖杯に願うは、四騎士に分けられた分割統治と
地上の人間を殺す権利を全てホワイトライダーに一任させる事。
これにより多くの人々を殺さず、救えるとホワイトライダーは云う。

確かに多くの人々は救われる。


ただし、そこに自由は無い。


【外見】
真っ白な警察官の恰好。バイクも全部白の白バイ。普段は仮面をかぶっている。
体格・顔立ちから声色まで全て『鬼舞辻無惨』そっくり。
ただし髪は白髪。最終決戦で老化したような状態。


【サーヴァントとしての願い】
四騎士に分けられた分割統治と地上の人間を殺す権利を全てホワイトライダーに一任する



【マスター】
竈門炭治郎@鬼滅の刃


【聖杯にかける願い】
聖杯戦争で人を死なせない、一人でも多く助ける


【能力・技能】
『嗅覚』
 人並みはずれ鋭く、生物や植物の判別、鬼などの存在を察知できる。
 また相手の人柄など心理的な判断も可能。

『石頭』
 母親譲りの石頭で、母親はこれで野生の猪を撃退したとか……
 作中でも鬼や元柱を倒すぐらい強い。

『水の呼吸』
 鬼殺隊士達が必須技能として習得する特殊な呼吸法の一つ。
 瞬発的に身体能力を大幅に上昇させる。
 水の呼吸は水のように変幻自在でいかなる場合にも対応する柔軟な型。

『ヒノカミ神楽』
 竈門家に代々伝わる厄払いの神楽。
 舞いを日輪刀と組み合わせる事で強力な技を発動。
 ただし、炭治郎には大きな負担がかかってしまう。

『日輪刀』
 人食いの鬼を狩る為の武器。
 所有者によって刃の色が変化する。炭治郎の刃の色は漆黒。

『痣』
全集中の呼吸を極めたうえで、一定の条件を満たすと発現する模様。
発現したものは、更に身体能力が上昇する。
ただし、これは寿命の前借りで、痣を発現したものは若くして死ぬ。


【人物背景】
妹を鬼にされた兄。
家族や多くの人々を苦しめる鬼の始祖を倒すべく戦場をかける。


【捕捉】
ロールは学生。
家には母親と兄弟が揃って暮らしている。
最終更新:2022年04月20日 21:01