────警視庁本部庁舎。
それは、東京都二十三区内を管轄する警察組織の本部。
不可解犯罪が蔓延る時勢、警視庁は都内でも特に激動を走っていた。


 聖杯戦争参加者の一組が居るのは、警視庁の中。
割り振られたロールの都合上、警視庁本部庁舎に在籍している。
部署は、刑事部捜査一課。階級は、巡査部長と定められていた。


 その一人、刑事で『仮面ライダー』であった。


  ◎   ◎   ◎   ◎


 中心の回転台に停車するスポーツカー、"トライドロン"。
部屋に通じる扉の上には、「R」を図案化したエンブレムクレストの存在。
ここは、庁舎地下。秘密裏に設置されている、トライドロンの整備場「ドライブピット」。


 ホワイトボードに書かれている二十三区のマップ
各地には赤点と時刻が記入され、渋谷区一帯は、赤線で囲まれている。
箇条書きの各発生日時と詳細の要点に、容疑者・被害者の写真が貼られていた。

 ボードの前には顎に手を置く男性と赤を基調としたクレードル。
男性の名は、"泊進ノ介"。二十三区に呼び寄せられた聖杯戦争参加者の一人である。

「……一体、何の目的があって聖杯戦争が行われているんだろうな。」

 進ノ介が疑問に思うのは、聖杯戦争の意味。
無関係の人間を呼び寄せ、この閉じられた二十三区内で戦わせている。
今も見知らぬ何者かの狙い、聖杯戦争を行う理由があまりにも不可解な話だ。

「う~む……。情報に乏しい現時点では、理解できない問題だね……。」
「それもそうだよなぁ……。」

 ベルトから発せられる機械音声。
ディスプレイから発信される表情は、どこか苦々しさを示していた。

 "ドライブドライバー"。通称、「ベルトさん」。
「仮面ライダードライブ」としての進ノ介をサポートする友であった。

「……だが、"記憶を改竄されたまま放置していた"ということに、何らかの意味があるのではないだろうか?」
「意味?」

 ベルトさんに視線を向ける進ノ介。

「シンプルに聖杯戦争の運行のみを目的とするならば、覚醒に至るまで経緯はさほど必要にならなかっただろう。
"改竄された状態から記憶が戻り、サーヴァントを従えて戦っていく状態"そのものに、主催側の意図がある筈だ」
「つまり、俺達の記憶が戻るまで放置していたのも、こっちを"試していた"ということか……。」

 進ノ介とベルトさんの記憶が覚醒したのは、急に起きたことではない。
ドライブドライバーとシフトブレスを装着し、イグニッションキーを回したことがきっかけで記憶が覚醒したものだ。
つまり、改竄の時点は何者かの干渉があったが、一方で覚醒に対する干渉や対策は一切ないということになる。

 不完全な仕組みこそ、何者かの「目的」に繋がるのではないかと考えられる。
単に戦いが目的なら、記憶の改竄など手間でしかない。あるいは、このまま傀儡として利用する手もあった筈。
自らのきっかけで記憶を覚醒させ、自らの意志で二十三区の中で生きていくことに意味がある、と踏んだのだ。

「泊殿?お茶が入ったで────うぉ!?玩具が一人でに動いた!」

 奥の部屋からお盆を持った青年が入ってきた。
だが、一人で動き出したミニカーの存在に反応し、警戒態勢に移る。

「あぁ、それはシフトカーといってね。それぞれが意志を持ったミニカーなんだ。」

 ベルトさんのディスプレイは笑顔にも見える表情に変わる。
シフトカーとは特殊なミニカー。単独で人工知能を有し、人間に奉仕する存在である。

「付喪神か!?」
「い、いや?そんな超常的な存在ではないのだがね?」

 ただ、人工知能のわからない青年には"付喪神"しか思えなかった。
彼は現代の知識が与えられているとはいえ、昔の時代を出身とするサーヴァント。
現代よりも高度な科学技術の産物には着いていけず、新鮮な目で捉えていた。

「それで……改めて聴くが、アンタがあの"永倉新八"でいいんだな?」
「うん?ああ、如何にも。拙者は永倉新八。セイバーで召喚されたサーヴァントだ。」

 彼は進ノ介が召喚したサーヴァント、"永倉新八"。
江戸時代、幕府の治安維持部隊「新選組」の二番隊隊長として名を残す剣士。
「池田屋事件」や「戊辰戦争」といった事件を生き延び、新選組を後世まで語り継がせた男である。

「サーヴァントシステム、英雄を現世に召喚するシステムか。……う~む、科学では説明の付かない技術のようだ。」
「ああ、拙者とて、生前はこのようなことになるとは思わなんだよ。」

 永倉はお盆の上に乗ったお茶をデスクに置く。

「それはそうとして、泊殿はこれからどうするつもりかな?」
「ん?」

 永倉に視線を向ける進ノ介。

「拙者には小難しいことはわからん!聖杯戦争など、なんせ未知の存在でしたからな!」

 自信満々な顔で、意思を示す永倉。
しかし、段々と真剣な顔付きに変わっていく。

「……だが、わからぬものにいつまでも気を取られていても仕方なかろう。
目を向けるべきは、これから何をどうするか、ではないか?」

 進ノ介の目を見る永倉。それは、"度量を計る"という意思表示であった。

「ああ、その通りだ。もう考えるのはやめた。今、重要なのは市民や聖杯戦争の犠牲者を救うことだ」

 進ノ介はそう言って、ネクタイを締める。
その答えを聴き、永倉も"ハッハッハ!"と高らかに笑う。

 泊進ノ介は警察であり、市民を守るために戦う仮面ライダー。
皆を見捨てるつもりはない。二十三区の都民や聖杯戦争の被害者は守る。
何者かによって創り出されたであろう偽りの物であったとしても、その意志は変わらない。

「市井の者を守ることついては、同感だ!
時代は変わり、偽りであれど、我が故郷の江戸。
かつてのこの地の者と交わした義理は、破られることはないからな!」

 笑顔を浮かべる永倉。軽く微笑みを返す進ノ介。

 永倉にとっても、意志は変わらない。
彼が武士として辿り着き、新選組に就くまでに育った場所は、江戸。
時代は変わり、特異点になろうとも、義理が破られることは決してない。

「セイバー……いや永倉新八。」

 手を差し出す、進ノ介。

「────ひとっ走り、付き合えよ!」

 言葉を聴いて、ニカっと笑みを返す、永倉。

「我武者羅に走るのが、拙者の取り柄だ!」

 差し出した手を握り、握手を交わす主従。
心のエンジンに火が点いた。ここからは"ドライブ"の始まりだ。


  ◎   ◎   ◎   ◎


二人の男と、一台の車はその運命を変えられるのか。


 ────Start Your Engines────



【クラス】
セイバー

【真名】
永倉新八@史実(江戸時代末期)

【属性】
秩序・中庸

【パラメータ】
筋力B 耐久A 敏捷C+ 魔力E 幸運B 宝具C

【クラス別スキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

騎乗:E
騎乗の才能。大抵の乗り物なら何とか乗りこなせる。

【保有スキル】
戦闘続行:A
往生際が悪い。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、
その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。

勇猛:A
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。

龍飛剣 :-
種別:対人魔剣
最大補足:1人
絶的な技巧と速さが生み出した、破壊の『魔剣』。
次元屈折現象を引き起こし、下段からの斬り上げと全く同時に、上段への斬り下ろしが行われる。
ただし「同じ物体が同じ軸に存在する」という時間的修正力(タイムパラドックス)により、物体崩壊現象が引き起こされる。
現象の余波から衝撃波が発生し、通常の挟撃では起こり得ない破壊力を生む。
使用者であるセイバーへの反動もあり、ダメージを伴う
なお、刀も一時的に崩壊してしまうが、魔力によって再構成が可能なものなため、支障は来さない。

【宝具】
『誓いの羽織』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
幕末に京を震撼させた人斬り集団「新選組」の隊服として有名な、袖口にダンダラ模様を白く染め抜いた浅葱色の羽織。
サーヴァントとして行動する際の戦闘服と呼べるもので、装備する事によりパラメータを向上させる。

『誠の旗』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:1~200
新選組隊士の生きた証であり、彼らが心に刻み込んだ「誠」の字を表す一振りの旗。
一度発動すると、かつてこの旗の元に集い共に時代を駆け抜けた近藤勇を始めとする新選組隊士達が一定範囲内の空間に召喚される。
各隊士は全員が独立したサーヴァントで、宝具は持たないが全員がE-相当の「単独行動」スキルを有しており、
短時間であればマスター不在でも活動が可能。また、魔剣の域に達した剣術を使える隊士も居り、総合的な攻撃力は高い。
ちなみにこの宝具は新選組の隊長格は全員保有しており、効果は変わらないが発動者の心象によって
召喚される隊士の面子や性格が多少変化するという非常に特殊な性質を持つ。

【weapon】
「播州住手柄山氏繁」
永倉新八の愛刀。
地鉄は板目肌、刃文は打ち寄せる波の形をした濤瀾刃風。

【人物背景】
新選組二番隊隊長として有名な幕末の武士。
近藤勇の道場・天然理心流「試衛館」の食客となって、新選組の前身「浪士組」に参加。
近藤勇や土方歳三からの信頼もあり、新選組後は副長助勤(補佐)に抜擢される。
「池田屋事件」や「戊辰戦争」といった新選組の前線を奮闘するなど活躍を見せたが、
鳥羽・伏見の戦いの後に、当時不仲にあった近藤勇と袂を分かつこととなり、新選組から離脱。
明治後は家督相続により「杉村治備」と改名、北海道樺戸集治監(刑務所)の剣術師範に赴任していたとされる。
新選組の数少ない生き残りとなった永倉は、後に取材を受け、新選組の顛末は語り継かせていったという。

性格は、真面目で我武者羅な熱血漢。
道端で絡んできたヤクザ者を鋭い眼力と一喝で追い払うほどの豪胆さの持ち主。
また、局長の近藤勇にさえも恐れずに対立し、脱退(切腹)覚悟で上に訴え出るほど信念を曲げない人物であったという。

【外見】
オールバックの短髪に、糸目のように細い目つき。
刑事という職種に順応するため、ライトグレースーツに赤ネクタイという正装を着用している。
『誓いの羽織』使用時は、白の着物に黒色の袴となった衣装。

【サーヴァントとしての願い】
東京の平和を守るためにも聖杯戦争を終わらす。

【方針】
基本的に作戦や事件解明は泊殿に任せるとして、自分は戦闘を務めることにする。



【マスター】
泊進ノ介@仮面ライダードライブ

【能力・技能】
「戦闘スタイル」
警察が行う逮捕術に近い格闘技を主体とした戦闘スタイルが特徴。
また、下記のシフトカーやフォームを自在に駆使し、戦闘を優位に運んでいく。

「推理力」
人物の言動や事件の行動から相手の真意を読み取り、事件を解決させるほどの推理力や洞察力を持つ。
事件の真相が解明できた際、「繋がった。」と「脳細胞がトップギアだぜ!」が口癖。

【weapon】
「ドライブドライバー&シフトブレス」
「仮面ライダードライブ」に変身する変身ベルトとアイテム。
開発者であるクリム・スタインベルトの自身の意思、記憶、知識、性格を人格プログラム化して移植され、ベルトさんとしてサポートしている。
装着者の健康状態を記録・管理する機能が搭載され、また生命維持装置としての役割を担うことも可能としている。
イグナイターを押すことでフルスロットル状態にさせシフトカーを操作、必殺技を発動する。

□タイプスピード
「シフトスピード」で変身するドライブの基本形態。
優れたスピードを持つ形態。

□タイプワイルド
「シフトワイルド」で変身するパワーとタフネスに優れた形態。
パワーの大きいタイヤを軽々と扱える。

□タイプテクニック
「シフトテクニック」で変身する技術力に優れた形態。
機械構造を瞬時に分析して使いこなす他、精密射撃などを得意とする。

□タイプデッドヒート
「シフトデッドヒート」で変身する強化形態。
稼働エネルギーと熱を利用し、爆風を伴う超高熱の攻撃を繰り出していく。
一方で、バーストして進ノ介の意志を無視した暴走状態に入るという欠点がある。
リスクを加味してか、ベルトさんも使用は認めていない。

「シフトカー」
それぞれが意思を持ったミニカー。小型の道路を作り出し、独自に移動する。
ドライブを状況に先述したタイプへの変身や、タイヤを装着させドライブに応じた能力を与える効果を持つ。

◎マックスフレア:炎を身に纏う
◎ファンキースパイク:トゲで攻撃
◎ミッドナイトシャドー:分身/手裏剣型エネルギー弾
◎ジャスティスハンター:鉄柵生成
◎スピンミキサー:コンクリート弾
◎ドリームベガス:コイン攻撃
◎マッシブモンスター:カミツキ攻撃
◎ディメンションキャブ:ポータル生成
◎ランブルダンプ:ドリルを装備
◎マッドドクター:治療効果
◎フッキングレッカー:フックによる牽引
◎バーニングソーラー:発光による目潰し
◎ファイヤーブレイバー:アームを伸ばせる。
◎ローリングラビティ:シフトカーの進路生成
◎ロードウィンター:冷気を操る
◎カラフルコマーシャル:立体映像を映す
◎デコトラベラー:突進攻撃、演歌調の演出
◎アメイジングサーカス:パフォーマンス演出

なお、能力はシフトカー単体でも使用可能。

「ハンドル剣&ドア銃」
主にドライブ時で使用する武器。
ハンドル剣はハンドル操作により急激にターンしながら斬撃が可能。
ドア銃はドアを開閉することでリロードを行うが、半ドア状態だと撃てない。

「トライドロン」
進ノ介が主に乗用する車両。
基本のスポーツカー形態、オフロードカー形態、特殊車両形態の3つに変形機構を持つ。
操作系統がベルトさんと共有しており、遠隔操縦することも可能。


【人物背景】
この男、刑事で仮面ライダー!!

機械生命体ロイミュードによって引き起こされる怪奇事件専門の部署「特状課」に就く警視庁の刑事。
「ドライブドライバー(ベルトさん)」達の後押しを受け、錆びたエンジンに火が点き、以後「仮面ライダードライブ」として戦うことになる。

人をからかったり、茶目っ気のあるジョークを交えるなどもコミカルな面もあるが、素直で熱血漢な性格。
燃え尽きる覚悟で挑む相手の思いに応え、自らも相討ち覚悟で付き合おうとする場面や
「人間として生きていたい」と願うロイミュードに歩み寄って受け入れる場面など
立場や境遇に捉われず、相手と真摯に向き合う高潔な面も持ち合わせている。
その一方で、感情任せの行動を取ってしまうこともあり、当人もその点を反省することも多い。
ベルトさんの評では、「頭は回るが根は素直でお人好し、そして何度止まっても諦めず心のエンジンを動かす男」とのこと。

殉職した父"泊英介"の影響もあってか、警察として市民を守ることに誇りを抱いており、
ドライブとなってからは真面目に事件や被害者達とも向き合い、警察官として職務を全うしている。
しかし、隠された過去の真相については、この時系列ではまだ知らない。

【マスターとしての願い】
警察として市民の平和を守り、聖杯戦争を終わらせる。

【方針】
二十三区内各地に起こる事件を洗っていき、各マスターや聖杯戦争の真相を突き止めていく。
同じく戦争を望んでいないマスターの場合、警察での保護も検討する。

【ロール】
警視庁刑事部捜査一課に属する巡査部長。
なお、この世界では「仮面ライダードライブ」に関する記録はない。

【把握媒体】
特撮ドラマ『仮面ライダードライブ』をご参照ください。
時系列上はシフトデッドヒートが登場した17話後の想定です。
最終更新:2022年05月08日 08:27