1637年 江戸は大火に包まれた!!
使者十万人超 日本史上最大の大火災の真相は
日本裏社会に棲まうふたつの闇の眷属共 その300年以上にわたる殺し合いの火蓋
決めようか 忍者と極道
何方(どちら)が生存(いき)るか死滅(くたば)るか!!
その影で一つの悲話が存在した───。
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「襲撃(カチコミ)だぁ!!」
東京都は世田谷区に有る極道組織はたった二人の女により壊滅しようとしていた。
この組はこの一ヶ月で敵対する君を三つ潰し、数多の半グレを配下に取り込んで勢力を急激に拡大した組織である。
今のご時世、只の極道組織にそんな事など出来はしない。組長や幹部が変わって組織が刷新されたわけでも無い。つまりは急激に勢力を伸ばせる理由は何処にも無い。にも関わらず此処までの勢力拡大を可能としたのには、しっかりとタネがある。
地獄への回数券(ヘルズ・クーポン)。使用者の身体能力を人外の域にまで引き上げ、拳銃(ハジキ)や短刀(ドス)程度では怯みもせず、傷も短期間でに塞がる耐久性(タフネス)と、素手の一撃で人体を破壊する腕力(パワー)を齎す怪物(バケモノ)製造役だ。
このクスリを決めた鉄砲玉を3人送りこむだけで、百以上の構成員の組が30分で皆殺しとなった。その威力に組長や幹部達が揃って全国制覇を夢見てしまう程の、激烈な効果の魔薬だ。
クスリの効果に舞い上がった組長と幹部達は、大枚叩いてクスリの大量購入に踏み切り、今や組員全員に行き渡る量を仕入れ、東京の極道全てを制圧しようとした矢先に襲撃(カチコミ)に遭ったのだ。
応戦した組員達が一蹴され、襲撃者達が只者にあらずと地獄への回数券(ヘルズ・クーポン)を決めた組員達が、只二人の女に片端から殺されていく様は喜劇的でさえ有ったが、女達が極道達を屠り去る様は、最早現実の線(ライン)を遥かに超えていた。
和服姿の少女に対して振るった拳も日本刀(ポントウ)も素通りし、逆に少女の平手で屈強な男が宙を舞う。
イヴニングドレスの上から振袖を羽織った女が腕を振るたびに、組員達が倒れ伏し、安らかな顔で眠りだす。
傍目には冗談の様な、極道達からは悪夢の様な女達は淡々と歩みを進め、組長のいる部屋へとやってきた。
「この組長(オイラ)が、女二人に追い詰められるたぁなぁ……だが、タダでは死なねぇ。昔は名の知れた喧嘩師だった───」
グダグダと続く口上を、少女の放った貫手が終わらせた。
誰が信じられようか、たおやかな繊手が、屈強な極道の腹を貫くとは。しかも地獄への回数券(ヘルズ・クーポン)をキメて、人外の耐久力(タフネス)を持つにも関わらず。まるで薄紙の様に貫いてしまったのだ。
驚愕と苦痛に絶叫する組長に無機質な声でイヴニングドレスの女が問う。
「この麻薬(クスリ)は、何処で、どのような方から仕入れられました?」
「がッッ……し、しら」
しらばっくれようとした組長の声が唐突に途切れた。腹を貫く腕が急激に灼熱したのだ。
口から吐いた血ですらが煮えたぎっているほどの高熱で臓腑を焼かれ、凡そ人間のものとは思えない絶叫をあげてのたうつ組長に、再度掛けられる問い。
「か…歌舞伎町だ!!歌舞伎町の売人からだ!!」
嘘を吐くという選択すら浮かぶ事なく口を割る。無理もない、地獄への回数券(ヘルズ・クーポン)を決めているから死なずに済んでいる。それ程の傷と苦痛なのだ。
尤も無駄に苦痛が長引いているだけかも知れないが。
「………
輝村極道という名の極道をご存知でしょうか」
何処と無く苛立ちの籠った問い。この問いにも組長は誤魔化す事などできず、正直にかつ速やかに口を動かし、その時、自分の腹を貫く少女の腕からどこかで嗅いだ匂いがした。
「し、知らねえ」
イヴニングドレスの女の目つきが少し険しくなると、組長の意識は急激に遠ざかり、組長は安らかに眠りについた───その直前。意識を失う寸前に、匂いの正体を思い出していた。
2年前に、組の金を盗んで、組長の愛人と一緒に逃げた若衆がいた。直ちに2人とも捕らえて、山中で深さ5m程の穴を掘らせ、その中に2人を蹴り落として上からガソリン撒いて焼き殺してやった時。その時に嗅いだ匂いだった。人の肌が肉が骨が燃える匂いだった。
人の焼ける匂いのづる少女に恐怖や疑念を抱くこともできず、組長は腹を貫かれたまま安らかに熟睡し、同時に音も無くその全身が燃え上がった。
頭部七穴から赤い水蒸気を噴き出しながら燃え崩れていく組長に目も呉れず、二人の女は踵を返した。
───────────────
「ここも、ハズレでしたわ」
一つの焼死体と、二日は目覚めぬ組員達が残る組事務所を背後に、はぁ、と、ため息を吐く女の顔を、先程まで女が羽織っていた振袖を纏った少女が覗き込む。
腰まで伸びた黒髪に、日に当たったことなどないかのような白皙の肌、幼気な顔と大きな黒い瞳が、女─────病田色の顔を覗き込む。
「落ち込まないで姐さん。まだまだ極道は沢山居るし、わたしも梅乃ちゃんも、マスターに協力するから」
「有難う御座います。アーチャー」
色は僅かに微笑んだ。が、依然として表情は暗い。地獄への回数券(ヘルズ・クーポン)の存在を知り、この麻薬を創り出せる輝村極道の存在を確信してから、色は只々輝村極道を殺す為に動いていた。
輝村極道が何を聖杯に願うかは判らない。だが、輝村極道の配下達は、帝都八忍すら斃してのける者達であり、彼らが行った壮絶な破壊活動も併せて考えれば、凡そロクなものではあるまい。
聖杯を渡しては決してならないのが、輝村極道という極道(ごくどう)であり、病田色にとっては、その事を抜きにしても生かしてはおけない相手である。
輝村極道の居場所を求めて、地獄への回数券(ヘルズ・クーポン)を使用(つか)った極道を片端から当たっているが、結果は梨の礫だ。
この様なハズレを引き続ければ、極道(きわみ)が警戒するかも知れない。早く当たりを引いて、輝村極道に死を与えたかった。
「お気遣いは嬉しいのですが、あまり真名を口になさらないで下さい。何処で誰が聞いているか判りませんもの」
にこにこと笑顔を向けて、アーチャーは頷く。
「分かったよ。姐さん」
アーチャーの声と眼差しには、無限の親愛が込められていて、色は思わず頬を綻ばせた。
「あのね姐さん」
「何でしょうか?アーチャー」
「マスターは梅乃と違って、極道(ごくどう)を消し去りたい訳じゃないんだよね」
「ええ、悪事(わるさ)かませば別ですが」
色を含む帝都八忍は、極道(ごくどう)と対立しているが、彼等を片端から殺し回ったりはしない。悪事(わるさ)かましたと時に誅殺する程度だ。
だから色も、極道(ごくどう)は基本放置である。
尤も、生存活動として悪事(わるさ)かますのが極道(ごくどう)という生物なのだが。
「じゃあ極道(きわみ)は悪い奴」
「………」
輝村極道は
多仲忍者の親友だ。それ故に生かしてはおけぬ極道(ごくどう) だ。
極道(きわみ)が極道(ごくどう)と知れば、多仲忍者はもはや決して笑えなくなるだろう。
病田色にとって、輝村極道という極道(ごくどう)は忍者としてだけではなく、忍者(しのは)の為にも殺しさなければならない男だ。
「─────」
色が口を開くより早く。
「そうよ、お七。極道(きわみ)はとても悪い奴よ。『色の大切な人の笑顔を永久(とこしえ)に奪い去るかも知れない』殺すには充分な理由よ」
アーチャーと色の会話に割って入る第三の声。歳の程は色とアーチャーの間程か。声からは抑えきれない激情を感じ取れる。
声の主は輝村極道に対して、相当な怒りを抱いている様だった。
「それに極道(ごくどう)だしね」
朗らかに続けるアーチャーの声に。
「極道(ごくどう)だもの」
激情を滲ませて声が応える。
「『アーチャー』。真名を口にするのは」
おかしな事を、色は口にした。
通常サーヴァントが一人、真名も一つの筈。このサーヴァントは複数の存在から成るのか、複数の名を持つのか。
「そうね。マスター。私は兎も角、お七は知られた名前だものね」
ふわり、と、お七の纏う振袖が宙に浮いた。
宙で人の立ち姿の如き姿となった振袖は、虚空に姿を現した少女に纏われていた。
お七、と呼ばれた少女に良く似た容貌の、険の有る眼差しの、お七より僅かに歳上の少女。
激情を抑えていると、一目でわかる眼差しで、振袖姿の少女は色と向かい合った。
「輝村極道が生きていれば。マスターの大切な人は心に生涯残る傷を負う『かも知れない』。だったら殺すしかない。そんな害悪、ましてや極道(ごくどう)。生かす価値なんて無いわ。そうでしょう、アーチャー」
「そうだよ、生かしておく理由なんてないよ」
「だから殺しましょよう。そして聖杯を手に入れましょう」
「私達の願いは同じ。誰か一人でも聖杯に辿り着けば、私達の願いは叶う。届かなかった私達の想いも、諦めていた貴女の想いも」
「わたしも、梅乃ちゃんも、マスターも、皆で願いを叶えましょう」
「私は、私と同じ境遇の人を出したく無い。極道(ごくどう)への怒り以上にそう思っているわ」
「わたしもマスターの恋は応援しているよ」
「「だから、私達の想いの為に、その為に三人で、輝村極道を殺しましょう」」
病田色はこの二人と会話をする度に思う、やはりこの二人は何処かおかしいと。
それも仕方の無い事だ。叶わぬ想いに胸を焦がし、一人は悪霊と化し、一人は罪を犯して、悲恋に散った少女達なれば、世の常の者とは異なるのは仕方が無い。
けれども、忍者となった時に恋を捨てた筈の自分ですら想いを断ち切れなかったのだ。市井の少女達でしか無い彼女達には尚更想いを諦めるのは無理だろう。
死んだ後でも想い続け、精神に変容をきたすほどに思い続け、聖杯などに頼ってしまうのも仕方の無い事だと色は思う。
ならば、ここは─────
応える言葉は一つだろう。病田色は、二人に初めて逢った時、マスターとして、忍者として、2人の想いを叶えたいと、1人の女として聖杯が欲しいと、そう願ってしまったのだから。
「そう、ですね。輝村極道に絶命(しぬ)まで続く眠りを与え、聖杯を獲得して─────」
三人の声が重なった。
「「「皆の想いを叶えましょう」」」
───────────────
嗚呼…そんな…!!
諦め続けた人生の最後になんて…なんて…
なんて 幸せ…!!!
まあ…綺麗な景色…!!! 死ぬことがこんなに幸せなら私─────)
何回だって死ねますわ……
確かにあの時、病田色は死んだ。
炎の中で、極道に殺された。
恋慕った多仲忍者に看取られて死んだのだ。
そして、この閉ざされた二十三区に流れ着き、2人に出逢ったのだ。
「私達は同じ者同士よ。マスター」
「同じだよね」
「共に極道(ごくどう)により捻じ曲げられた在り方の身」
色の脳裏を過ぎる光景。
一人の極道の凶行により、死後に極大の呪いを帯び、その在り方を曲げられた少女。
それは極道により家族を失い、忍者として生きる事になった色の身にも似て。
「愛しい方と結ばれることができずに死んだ身」
色の脳裏を過ぎる光景。
愛しい男と共にある為に、凶行に走り、死んだ少女。
それは忍者となった時に恋を捨て、遂に多仲忍者に想いを告げずに死んだ己の身と重なって。
「「私達は理解(わかり)あえるわ」」
三人の周囲の大気が熱を帯びる。
「「私達の想いは同じよね」」
二人の少女は唱和する。それは呪詛の響きにも似て。
その呪詛(こえ)は、確かに病田色の心に罅を入れていく。
「私は極道(ごくどう)が許せない」
幡随院長兵衛により捻じ曲げられた在り方。
「私はあの人と結ばれたい」
愛しい男と共に在りたい、只それだけの想い。
2人の呪詛(こえ)が、病田色の心を侵食する。
満たされた筈の心が、再び乾き、罅割れていく。
まるで火に炙られたかの様に、心が乾き、満たされた筈の慕情が燃え上がる。
もっと、もっと。あの幸福に浸り続けたい。あの景色の続きを見たい。
燃え出した炎は鎮まる事なく、病田色の精神を炙り続ける。
「だから─────」
「だから─────」
「「共に聖杯を取りましょう」」
2人が差し出した手を。
「ええ、三人で願いを叶えましょう」
熱に浮かされた様に、病田色は取ったのだった。
全部極道(ごくどう)が悪いのよ。
全部極道(きわみ)が悪いのよ。
さあ─────…共に極道(ごくどう)をブッ殺しましょう。
さあ─────…共に極道(きわみ)をブッ殺しましょう。
【CLASS】
アーチャー
【真名】
梅乃&八百屋お七@振袖伝説&お七伝説
【性別】
女
【身長・体重】
梅乃;155cm・42kg(人間態)
お七;148cm・40kg
【属性】
混沌・中庸
【ステータス】
お七
筋力: E 耐久:E 敏捷:D 魔力;B 幸運: D 宝具;C+
梅乃
筋力: D 耐久:D 敏捷:D 魔力;B 幸運;D 宝具;C+
お七&梅乃
筋力: C 耐久:C 敏捷:C 魔力;A 幸運: D 宝具;C+
【クラス別スキル】
対魔力:C++
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
なお火炎や熱はどれ程の魔術であっても完全に無効化する。
単独行動:B
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。
【固有スキル】
無辜の怪物:EX
生前の行いからのイメージによって、後に過去や在り方を捻じ曲げられ能力・姿が変貌してしまった怪物。本人の意思に関係なく、風評によって真相を捻じ曲げられたものの深度を指す。このスキルを外すことは出来ない。
アーチャー達は、共に生前の行いによって火事の呪いを帯びている…のだが、梅乃の呪いは濡れ衣である。
恋の熾火:EX
梅乃のみが持つスキル。
精神汚染スキルに無辜の怪物スキルの効果が併さったスキル。
C+ランク相当の精神汚染の効果と、Aランク相当の魔力放出(炎)スキルを得る。
魔力を炎に変換して放出する。ジェット噴射の様に炎を噴かせての飛翔や、肉体や手にした器物に炎を纏わせることが可能。情念が深まる程に火勢は強まる
都市特攻効果を持ち、都市を焼く際には火勢が激しくなる。
意識して見つめたものが燃え上がる程に強力な能力だが、対象の霊格、加護、対魔力によって威力は減少する。
梅乃以外は知り得ぬ効果として呪詛の効果を持ち、梅乃の纏う振袖を纏った者が、梅乃と想いを同じくしない─────誰かに対する恋心を持たぬ場合、生命力を吸い尽くされて殺される。
梅乃と想いを同じくする場合は、魔力放出(炎)のスキルと、精神汚染スキルを付与し、程度の差こそあれ、思考を梅乃のものと同調させる。
魔力放出(炎):A
お七の持つスキル。
魔力を炎に変換して放出する。情念が深まる程に火勢は強まる。ジェット噴射の様に炎を噴かせての飛翔や、肉体や手にした器物に炎を纏わせることが可能。
都市特攻効果を持ち、都市を焼く際には火勢が激しくなる。
意識して見つめたものが燃え上がる程に強力な能力だが、対象の霊格、加護、対魔力によって威力は減少する。
精神汚染:C+
お七が持つスキル。
精神が錯乱しているため、他の精神干渉系魔術をシャットアウトできる。ただし、同ランクの精神汚染がされていない人物とは意思疎通ができない。
【宝具】
大火の振袖
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:ー 最大捕捉:1人
梅乃の持つ宝具である振袖……では無く、梅乃という英霊の本来の姿。
その身に纏う振袖こそが、梅乃という英霊であり、少女の姿は仮初のものである。この為、梅乃を斃すには振袖を破壊する必要がある。
この宝具を身に纏った者は、梅乃と想いを同じくしない─────恋心を持たぬ場合、生命力を吸われ尽くして殺害される。
梅乃と想いを同じくする場合は、魔力放出(炎)のスキルと、精神汚染スキルを付与し、程度の差こそあれ、思考を梅乃のものと同調させる。
思考が梅乃と同調した場合、サーヴァントであればステータスに梅乃のステータスが加算される事になり、ステータスが強力になるが、完全に思考が梅乃のものと同調する。
つまりは、極道(ごくどう)の殲滅と、恋の成就に全霊を傾ける様に成る。
マスターが纏ったのであればデミ・サーヴァント化させる、纏ったものがマスターの場合は、それ程同調するわけでは無い。精々が、梅乃に積極的に協力しようとし、裏切る事は無い。というだけである。
恋緋桜
ランク:C 種別:対都市宝具 レンジ: 最大捕捉:1000人
お七の持つ宝具。形状は鐘楼に吊り下げてある半鐘。
この半鐘を打ち鳴らすことで、聞いた者の精神を恐慌状態にする他、音が響いた範囲内の建造物を、材質を一切問わずに炎上させる。
半鐘の音はお七の意図により、指向性を持たせる事や、音の届く範囲を制限する事が可能。
紅蓮転生
ランク:C+ 種別:対都市宝具. レンジ:1~99 最大捕捉:1000人
梅乃とお七が二人で発動する宝具。発動の為には振袖の状態の梅乃をお七が纏う必要が有る。
発動すると、半鐘の音が響く中、梅乃とお七が炎に包まれ、激しく燃え盛った後に爆散し、周囲に炎を撒き散らし、当たり一帯を炎の海へと変える。
更に鳴り響く半鐘の音が、周囲の生物を恐慌状態に陥れ、音の響いたエリアに存在するものを生物・非生物を問わず焼き尽くし、一気に延焼範囲を拡げてしまう。
この炎は都市特攻効果を持ち,生物・非生物を問わず,焼き尽くしたものを魔力へと変えながら何処までも燃え広がり際限無く火勢を強めていく。
この炎はそれ自体が梅乃とお七であり、物理的な手段では消火不能。初期に大火力や水を用いる神秘で消すしか無いが、一度燃え広がってしまえば消火するということは、桁外れの巨体を有し、かつ物理無効のサーヴァントを撃破するということであり対処は困難を極める。
これだけの強力な効果を持つ宝具でありながら、真の脅威は、この宝具を発動した時、三度までなら鎮火されても再度燃え上がり、更に火勢を強める事。梅乃の持つ『振袖火事』の伝説、その再演である。
この宝具は霊基を燃やし尽くして発動させる『壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム』である為に、使用した場合、梅乃とお七は消滅する。
【Weapon】
無い
【聖杯への願い】
梅乃…幡随院長兵衛に始まる全ての極道の人理からの抹消
お七…3人の恋が実る事
【解説】
世界三大大火の一つにも数えられる明暦の大火。梅乃はその原因とされた少女である。
名も身元も知れぬ男への恋患いにより、病に臥した梅乃は、恋い慕う男の着ていた服と同じ荒磯と菊柄の振袖を作って貰い、かき抱いて想いを紛らわせる。やがて梅乃は病が悪化して死亡する。
当時、棺にかけられた遺品などは寺男たちがもらっていいことになっていた。この振袖は本妙寺の寺男によって転売され、上野の町娘・きの(16歳)のものとなる。ところがこの娘もしばらくして病で亡くなり、振袖は彼女の棺にかけられて、奇しくも梅乃の命日にまた本妙寺に持ち込まれた。寺男たちは再度それを売り、振袖は別の町娘・いく(16歳)の手に渡る。ところがこの娘もほどなく病気になって死去、振袖はまたも棺にかけられ、本妙寺に運び込まれてきた。
事此処に於いて因縁を感じ、住職は振袖を寺で焼いて供養することにした。住職が読経しながら護摩の火の中に振袖を投げこむと、にわかに北方から一陣の狂風が吹きおこり、裾に火のついた振袖は人が立ち上がったような姿で空に舞い上がり、寺の軒先に舞い落ちて火を移した。たちまち大屋根を覆った紅蓮の炎は突風に煽られ、一陣は湯島六丁目方面、一団は駿河台へと燃えひろがり、ついには江戸の町を焼き尽くす大火となった。
というのが後世の伝説ではあるが、実際のところ、振袖は火中に投じられる事無く本妙寺は炎上。実際に江戸を焼き尽くしたのは極道の始祖幡随院長兵衛による放火である。
この幡随院長兵衛の凶行により、本来は着たものの生気を奪って衰弱死させるのが精々で、歴史の隅にささやかな恐怖談として残る程度でしかなかった梅乃は、歴史に残る大火と因縁づけられ、炎の呪いを帯びてしまった。
更にこの一件により、振袖の方が有名になってしまった為に、梅乃は人の姿では無く、梅乃の慕情が籠った荒磯と菊柄の振袖として現界し、本来の肉体は仮初のものとなってしまった。
全部極道が悪い。
黒髪黒瞳の白皙の肌の美少女。外見はお七よりも少し歳上。
幡随院長兵衛の所為で碌でも無い呪いを帯びた事を深く恨んでおり、その所為で目つきがかなり険しい。
極道の事は大嫌いで、見掛けると我々がゴキブリに殺虫スプレー吹き付けるのと同じ感覚で焼き殺しにかかる。
怜悧で落ち着いた風情だが、その実かなりの激情家。聖杯にかける願いが人理から極道を抹消となっているのは、極道に対して因縁を持たぬお七に自らの慕情を託し、自分は極道への恨みを晴らす事にした為。
色の事はマスター。お七の事はお七と呼ぶ。
八百屋お七は、呪いか奇跡かはともかく、明暦の大火の中でも焼けなかった梅乃の振袖を、偶然買った少女であり、火事で寺に避難した時、寺男と恋仲になり、避難生活が終わった後に、また家が焼ければ愛しい男と共に暮らせると考えて放火をし、火刑に処された少女である。
鐘楼に登り、半鐘を打ち鳴らす姿は、多くの劇作家や絵師が題材にした。
実際には梅乃の残した振袖により、元より抱いていた慕情が抑えきれなくなっての凶行ではあるが、当人には悔いは無い様子。
なお梅乃の振袖を着て、放火からの半鐘鳴らしを行った為に、梅乃の振袖がお七の宝具として座に登録されてしまい、お七が現界すると、宝具として漏れなく梅乃がついて来ることとなった。
お七的には、友達と一緒に現界できて嬉しいらしい。
見た目15歳くらいの黒髪黒瞳の白皙の肌の美少女。いつも朗らかで笑顔を絶やさない。あまり物事を深く考えないし、思い人と相方の梅乃及びマスターの病田色以外の事はあまり気にしない。
マスターの事は姐さん。梅乃の事は梅乃ちゃんと呼ぶ。
【マスター】
病田色@忍者と極道
【人物紹介】
幼い頃に両親を極道のために失い、凄惨激烈な修行を経て忍者とまった女性。
多仲忍者への想いを遂に告げることなく、しかし確かに報われて死んだ女性。
【能力】
睡掌髑路
忍者になる過程の地獄の荒行で会得した、掌の汗腺から出る特殊な香を吸った相手を一瞬で眠らせる異能。
呼吸器系だけでなく目などの粘膜からも効果を及ぼし、軽く放った香を吸えば眠りながらも精神や思考が幼児退行を引き起こして赤ん坊同然と化すほど強力。
そして本気で放った香りを直で嗅いだ相手は「最も幸せな夢」に呑まれ昏倒。2晩経つまでは死んでも目が覚めることはない。
命と引き換えに最大濃度で放てば、吸った者は即死する。
暗刃
音速を超えた速度と貫通力を併せ持つ『弾丸の象形拳』
暗刃の超高速の打撃を利用して睡掌髑路の香に指向性を与えることが可能。
IT技術に長けた優れた事務処理能力を持ち、帝都八忍の事務仕事を一手に引き受る。忙しい連呼する程度には忙しい。
【武器】
無し
【ロール】
現在失業中の元プログラマー。
数百万の貯金と失業保険がある為に、生活に困る事はない。
【聖杯への願い】
輝村極道を人理から抹消する。
【参戦時期】
死亡後
最終更新:2022年05月15日 22:41