東京都内の、とある高校。
時間帯はすでに放課後を迎え、生徒たちは部活動に励んでいる。
そんな中、一人の生徒が突然倒れた。
「お、おい! 大丈夫か、那須!」
「誰でもいい! 早く保健室まで運んでやれ!」
◆ ◆ ◆
(わけがわからない……)
保健室のベッドの中で、長髪の美青年……那須与一はため息を漏らす。
ここは日本(ひのもと)ではあるが、自分の知る日本とはまったく別の場所であるらしい。
ふとした瞬間に蘇った本来の記憶と、この地で暮らすために与えられた偽りの記憶。
その食い違いの大きさに脳が耐えられず、彼は倒れてしまったのである。
(ついこの前、別の世界に流れ着いたと思ったらまた別の世界……?
いいかげんにしてほしいよ。
しかも、聖杯戦争ってなんだよ。
急に言われたって、願いなんて思いつかないよ。
ちゃんと事前に告知して、願いを考える猶予を……というか、まず参加を拒否する権利を与えろよ!)
考えがまとまらず、再びため息を漏らす与一。
そこに、新たな声が響く。
「ずいぶんと考え込んでおるなあ、与一」
その言葉を耳にした瞬間、与一の顔色が変わった。
声に、聞き覚えがあったからだ。
忘れるはずもない。その声は、複雑な感情を抱く主君のもの。
「義経様!」
ベッドから体を起こす与一。
その目に映ったのは、簡素な鎧を纏った壮年の男だった。
「……え? 誰?」
予想だにしない展開に、与一の口から気の抜けた声が漏れる。
「誰って、義経だけど」
「いや、絶対違うでしょ!」
◆ ◆ ◆
「なるほど……」
数分後。自らのサーヴァントから説明を受けた与一は、何度目かわからぬため息を漏らす。
後世において、義経は密かに大陸に逃れ、騎馬民族の王になったという説が生まれた。
それ自体は信憑性に欠ける説であったが、多くの人々の心に残った。
そしてサーヴァントは、人々の信仰に影響を受ける。
その結果、ここにいる義経は騎馬民族の王の要素が混じった状態で召喚されてしまったらしい。
「めんどくさいっすねえ」
「いや、そうだけどさ。主君に対してその口の利き方はどうなの?」
「今は僕が主君で、あなたが従者でしょ?
ゴタゴタ言うと、令呪で裸踊りさせますよ?」
「いや、いいの? そんなことに令呪使っちゃって、本当にいいの?」
「それに……厳密に言えば、あなたは僕が仕えた義経様ではないんでしょう?」
唐突に真剣な面持ちになる与一につられ、義経も顔を引き締まる。
「おそらくは、な。
俺とおまえは極めて近いが、別の歴史をたどった存在だ」
「そうですか……。ますますめんどくさい話ですねえ」
与一は、ばつの悪そうな表情で頭を掻く。
「ところで、話は変わりますけど……。
あなた、聖杯で叶えたい願いはあるんですか?」
「まあ、な。混じり物があれど、この魂が源義経であることに変わりはない。
なればこそ……俺は、俺の人生をやり直したい。
兄上と対立して滅ぼされるのではなく、共に歩み続ける道を探したいのだ」
「あるんですかね、そんな道……。
まあ、いいでしょう。微妙に異なる存在とはいえ、かつての主君です。
協力してあげようじゃないですか」
「おお、そう言ってくれるか!
頼りにさせてもらうぞ、与一!」
朗らかに笑いながら、義経は与一に手を差し出す。
わずかな逡巡の後、与一はその手を取った。
(最悪、この地で命を落とすことになるかもしれないけど……。
あの二人と比べれば、僕が抜けるのが一番問題が少ないはずだ。
もちろん、戻るために最大限の努力はするけど……。
ダメだった時は、二人でがんばってくださいね)
与一の頭によぎるのは、漂流した先で出会った仲間たちのことだった。
【クラス】ライダー
【真名】源義経
【出典】史実+民間伝承
【性別】男
【属性】混沌・中庸
【パラメーター】筋力:C 耐久:D 敏捷:A 魔力:D 幸運:B 宝具:C
【クラススキル】
対魔力:B
魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。
Bランクでは、魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。
騎乗:A+
乗り物を乗りこなす能力。騎乗の才能。「乗り物」という概念に対して発揮されるスキルであるため、生物・非生物を問わない。
A+ランクでは竜種を除くすべての獣、乗り物を乗りこなすことができる。
【保有スキル】
カリスマ:A
軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる。
世界史においても有数の大帝国の礎を築いたチンギスの要素を取り込んでいるため、本来より大幅に上昇している。
天狗の兵法:C
人外の存在である天狗から兵法を習ったという逸話から。
剣術、弓術、槍術などの近接戦闘力及び軍略や対魔力などにボーナス。
カリスマとは逆に、純粋な義経でなくなったことでランクダウンしてしまっている。
【宝具】
『判官贔屓』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:0-5 最大捕捉:不明
「多少の粗には目をつぶって、弱者に味方したくなる感情」を意味する言葉。
義経に対する、人々の同情から生まれた言葉である。
「義経=チンギス・カン説」も、「義経に死んでいてほしくない」という人々の思いによって広まったもの。
よって、彼の宝具となった。
発動すると、幸運が一時的にEXに変化。
さらに義経に対して敵意を抱いていない周囲の人間全てに、「彼を助けたい」という思いを抱かせる。
天と人が、義経の味方となるのだ。
とはいえ人々の同情心から生まれたという格好のつかない代物であるこの宝具を、本人はあまり使いたがらない。
【weapon】
「薄緑」
源氏に伝わる名刀。
「太夫黒」
生前の愛馬。たぶんどっかにいる。
【人物背景】
鎌倉幕府の創設者・源頼朝の弟。
源平合戦において獅子奮迅の活躍を見せるが、その後兄と対立。
最後は逃げ延びた奥州の地で命を落とす。
兄に裏切られ殺されるという悲劇性、また回収された首の腐敗がひどく本人かどうか不明瞭だったという逸話から、
「実は逃げ切り、命をつないでいた」という生存説が囁かれるようになる。
その一つが「義経は大陸に渡り、チンギス・カンになった」というもの。
現在はチンギスのルーツに関する研究が進み、この説はあり得ないものとして否定されている。
だがその大胆な内容は、多くの人々の心に刻まれた。
ゆえにこの度の彼は、チンギス・カンの霊基を一部取り込んだ状態で現界することとなった。
【サーヴァントとしての願い】
人生をやり直す
【外見】
壮年の菅田将暉
【マスター】那須与一
【出典】ドリフターズ
【性別】男
【マスターとしての願い】
まだ考えてない
【weapon】
弓矢
【能力・技能】
寸分違わず同じ場所に何度でも矢を当てられてる、驚異的な射撃能力
【人物背景】
かつて義経の部下であった、妖艶な美少年。
異世界に飛ばされ、そこで出会った織田信長、島津豊久と共に「漂流者」として世界の危機に立ち向かうことになる。
すでに信長、豊久とは出会っているようだが、具体的な参戦時期は不明。
【ロール】
弓道部に所属する高校生
【方針】
いちおう聖杯狙いだが、あまり積極的ではない
最終更新:2022年05月15日 16:44