―――はー…お前はほんま、毎日毎日一人で栃の実で遊んでばっかり…
―――なに、一人やない?君がいるやと?
―――やかましいわアホ。こんな庭で毎日木の実転がしてどうするねん。
―――じゃあどうすればいいって…そりゃ男に生まれたからには天下の覇権を狙ってみろや。
―――日ノ本?ちゃうちゃう、こんな古ぼけた島国一つで満足するもんちゃうやろ。
―――そうやなぁ、オレが一緒にやったるんやったら………


―――――世界の皇になるっちゅうんは、どうや?


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


東京郊外の一画に打ち捨てられた廃教会。
人気のない路地に居を構え今や朽ちていくだけのその場所は。
一人の女の神殿となっていた。
……美麗な女だった。
アメジスト色の瞳と、腰まで伸びた長髪。
顔を構成するパーツ一つ一つが黄金比で構成されているような整った顔立ち。
同じく芸術的とまで言える豊満で引き締まった肉体を瞳の色と同じ紫のドレスが彩っている。
彼女に見つめられた者は嫌でも想起するだろう、『女神』と言う言葉を。
そして、その想像は正しい。
右手の甲にマスターであることを示す赤い模様―――令呪が刻まれたその女は。
魔力量は人間の魔術師ではありえない。
サーヴァントですら、彼女に匹敵する魔力量のサーヴァントは殆どいないだろう。
何しろ彼女は―――『スカサハ=スカディ』はかつて異文帯を統べた女神だったのだから。


「よう、戻ったで。姫さん」


教会の中央に誂えられた氷の玉座。
その中央に鎮座する彼女に声をかける者がいた。
彼は、奇抜な格好をしていた。
艶やかな黒髪をポニーテールで纏め、白の束帯を纏い、臀部に尻尾を生やし、
目つきの悪さと鋭く尖った八重歯以外はお伽噺の登場人物の様に整った顔立ちをした子供だった。


「うむ、大儀であったバーサーカー。して、戦功のほどは」
「てんで雑魚やったわ。まぁそろそろ旨く食える相手もでてきたけどな」


ブン、とその手の剣を振るい。
こびり付いた血痕を、透き通る刀身から振り払う。
そして、蛇の様に獰猛に笑った。


「いやー、姫さんみたいなマスター引けてオレも運がいいわ。
ちょいと本気を出して戦っても魔力が尽きる様子がないもん。こら美味しいで
ま、姫さんみたいなやんごとなき身分の方には、オレはちっと魔性の類に近すぎるかもしれんがな」
「そんなことはないさ、バーサーカー。私の剣。私が聖杯に至るには…お前の力が必要だ」


ふ、と。
どこか寂し気な笑みを女王は己が従僕に向ける。
そんな主に対して日本神話が誇る大化生は、先ほどとは違い表情から笑みを消して。
真剣な表情で、問いを投げる。


「姫さんの願いは確か…故郷を救いたい、やったか」
「然り」


スカサハ=スカディの治めていた故郷、北欧異聞帯には未来がない。
可能性が無いと人類史に判断され、剪定された枝葉。
そんな土地を、彼女は三千年にも渡って統治してきたのだという。
だが、現実は非情だ。
北欧の朱き太陽たる炎の巨人は容赦なく北欧を蝕み。
その炎熱を抑えるために女王のスカディの魔力は消費され。
可能性の枝葉を広げていくには、何もかものリソースが余りにも足りない。
故に、愛すべき我が子達は老婆や老爺になるまで生かす事は出来ず。
殺し続けた。三千年にわたって口減らしを続けた。
たった一人、誰にも頼る事は出来ず。
孤独の女王は三千年にも渡って穏やかな地獄を運営し続けたのだ。
だが、そんな地獄も、遂に終わりを迎えた。
汎人類の最後の希望であるカルデアの到来と、炎の巨人スルトの討伐によって。


「私は敗れた。民を殺し続けた愚かな女王は異聞帯と共に運命を共にした。
それなのに…私はまた、奇跡を求めることができる立場で此処にいる」


女が朗々と語るその言葉は。
口調こそ穏やかだったが、言葉にしがたい情念が込められていることはバーサーカー
にも分かった
それは愛すべき我が子を殺し続けた母の慟哭だった。
北欧世界を救うチャンスを再び与えてしまった悪辣な運命への憎悪だった。
これから戦いへと赴く戦士の咆哮だった。


「ならば、あぁ…この悪辣な奇跡を続けるとも。
私が私として存在する限り───何度でも汎人類史に弓を引こう」


決意は鋼の様に硬く。氷の様に冷たかった。
何度でも。何度でも。何度でも。
女は生ある限り、我が子を救う奇跡を求め続けるのだ。
その事実を裏付ける様に。
不退転の意思を燃やして、女は宣言する。


「我が一万の愛がためならば…
この世界に、汎人類史に生きる幾億、幾千億、那由多の命すらこの手で奪って見せよう
それらは全て、我が悲願を阻む大敵であるがゆえに」


哀しい女だと思った。
たった一人、生き残ってしまって。
仕方がないから王になり。
それからずっと、我が子のために血反吐を吐いている。
だから。


「───まぁ、何や」


せめて自分だけは、誰も味方がいない。
この哀しい女の味方でいてやろうと、そう思ったのだ。
押しも押されもせぬ大化生である自分らしくない事は自覚している。
それでもやっぱり、放っては置けなかった。
彼女がたとえ優秀なマスターでなくとも。
バーサーカーは同じ選択をしただだろう。
ちら、と己が持つ宝剣に視線を移す。
元々は彼の体の一部で。人の手に渡り。
彼が消滅するまでの数年間一緒に過ごした相手。
その人身御供によって完成された刀。
刀にこびり付いた魂を解放し、我がものとする事こそ。
この聖杯戦争で現れたバーサーカーの願いだった。
そして、その願いに込められた感情は。
彼の主が抱く願いとどこか近しい物だったから。


「姫さんはゆるりとオレの後ろをついてきたらいいわ。
聖杯までの障害は根こそぎオレがブチ散らしたる」
「あぁ…頼りにしている。……いや、お前を頼らせてくれ、バーサーカー」


主も、従僕も。
たった一つの、譲れない願いを胸に、戦いに臨む。
今ここに、全ての愛を棄却して。
悲願を阻む大敵全てに死をもたらすべく。
その決意を込め、悲しみを湛えた顔で。
孤独の女王は、己の従僕に再び笑いかけた。
そんな主に対して、バーサーカーは皮肉気に微笑むと。


「………お互い、ガキの面倒ってのは苦労するよな」


そう、返したのだった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




───待て、言仁!!そんな事して…分かっとるんか!?
───その剣に魂を捧げるって事は永遠に転生もできず…剣の中ってことやぞ!?
───クソ、待たんかいこのクソガキ!!
───お前も、言っとったやろうが!俺と一緒にこんな古ぼけた島から出て…っ!
───オレは認めへん、こんな終わり、絶対認めへんぞ…!!



──────すまない。でも、それでも…お別れだ。今までありがとう、オロチ。
──────私の生涯で、たった一人の友よ。



【クラス】バーサーカー
【真名】八岐大蛇
【出典】日本神話
【性別】男性(肉体的性別は不明)
【属性】混沌・中庸→狂(宝具使用時)
【ステータス】筋力:B 耐久:B 敏捷:B 魔力:B 幸運:B 宝具:EX

【クラス別スキル】

狂化:EX(E~A)
バーサーカーは通常の状態では狂化の影響が一切ない。従ってステータスの向上もない。
このスキルが適用されるのは、後述の宝具を使用したとき。日本神話登場する大化生としての姿に近づくごとに狂化のスキルが向上していく。

【固有スキル】

八岐大蛇:EX
本来の姿であれば龍神、水神、蛇神の側面を持ち、紛れもなく神霊クラスであるバーサーカーの権能を表すスキル。
日本本国であればAランク相当の神聖、竜の心臓、怪力、カリスマ、呪毒を含んだ水の形態を持つ魔力放出等の効果を発揮する混合スキル。
非常に強力なスキルだが、それ故に竜殺しの逸話から成るスキルや宝具を持つ英霊を相手にした場合特攻が刺さりまくってヤバい。
「ゲェーッ!砂の超人!!」くらいの勢いでビビる。

直死の魔眼:B
無機・有機を問わず、対象の“死”を読み取る魔眼。魔眼の中でも最上級のものとされる。
物体に内包された“いずれ迎える存在限界”の概念を、“点”や“線”として見抜く魔眼。
それらをなぞることで起こされた死は、決して癒えることはない。
元々上位の魔眼を有していたバーサーカーが、平家滅亡と言う一時代の滅びを見たことによって後天的に獲得したスキル。

仕切り直し:C
戦線離脱、もしくは状況をリセットする。
バッドステータスが付いていればいくつかを強制的に解除する。

【宝具】

『八塩折之酒(やしおりの酒)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1~8人
バーサーカーがスサノオから贈られ、首をブチぎられる発端となった伝説の名酒にして神代の霊薬。
マスターや人属性の英霊が一杯飲めば数時間の間精神干渉を無効化し、状態異常を回復するが、
逆に魔に類する英霊が僅かでものではないかと呑んだ場合、その長さに個人差はあれど確実に昏倒する。
本来の体であればバーサーカーは全く飲めない(呑めば酔いつぶれる)はずなのだが、
尻尾を除けば人としての霊基で現界している今回の聖杯戦争では飲むことが可能。(悪性コレステロールの様なもので体にはよくない)
スサノオはこれをコッソリつまみ飲みする事で八岐大蛇の吐く毒性の吐息やその威容の畏怖に耐え抜いた。

『妖帝変化八岐大蛇』
ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
バーサーカーに内包された八岐大蛇の権能を開放し、一時的に身体の一部を戦闘形態に変化させる、本人曰く変身。
発動中は高い再生能力と狂化スキルが付与され、更に自己進化により全ステータスに+補正がかかる。
狂化のスキルが上昇する毎に魔力消費は大きくなるが、再生能力と+補正値も増えていく。
付与される狂化スキルがBランクを超える変身になれば不死身に近い再生能力に圧倒的な戦闘力を誇るが、魔力の消費が膨大になるので令呪のバックアップが必要。

『天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)』
ランク:EX 種別:対城宝具 レンジ:10~99 最大捕捉:1000人
三種の神器における武の象徴、八岐大蛇の尾より出でし神剣。
バーサーカーの持つこの剣はスサノオやヤマトタケルが振るったものとは違い、
壇ノ浦で安徳皇が平家一門の怨執ごと人身御供し封じる事によって生まれた、真の完成品である。
発動時にはバーサーカーの全ステータスはワンランクアップし、逆に相手には『衰退』の概念が押し付けられ、ステータス、宝具、スキルの効果が毎ターン急激に減退していく。
このバフと永続デバフは同格の神秘を以てしかレジストは不可能。
そして真名開放した際にはこの刀を中心として半円状に拡散する蒼い神魔特攻の剣気(ビーム)を放つ。
直死の魔眼と組み合わせれば概念、結界等の形の無い物すら切り裂くことが可能。


【weapon】
天叢雲剣


【サ―ヴァントとしての願い】
次から言仁(安徳皇)の魂を引き剝がす

【解説】
かつて出雲に君臨していた日本神話最古の大化生。
その最期はスサノオの謀略によって酔いつぶれた所を、八つある頭全てを斬られ退治されたと伝えられているが、
生存説も存在しており、その説の通りバーサーカーは生きて落ち延びていた。
しかしやはり傷は深く、更に剣をスサノオに奪われた事によって力は全盛期の万分の一程に弱体化。
その後傷を癒すと人間の娘と子を設け、酒呑童子と名づけるがその時には人間の武士の手が迫り子を置いて逃走、非常に情けない。
二度の逃走によってやはり剣を取り戻さなければダメだと言う結論に至ったバーサーカーは三種の神器となった剣に最も近い一族に近づく。天皇家である。
まだ母の腹の中にいた安徳皇に目をつけ、赤子の内に憑りつくことで天皇として転生する事を目論むが、力不足で失敗。
安徳皇はその自我を残したまま人として生まれ、八岐大蛇は安徳皇の中で奇妙な同居生活を強いられる。

数年後、壇ノ浦で滅び行く平家一門の怨執を天叢雲剣に集め、バーサーカーは正しく魔剣となった天叢雲剣、
そして目覚めた直死の魔眼を持ってして平家と源氏の両家を滅ぼそうと安徳皇に提案するが、
安徳皇はそれを拒絶、己の魂を犠牲にした人身御供によって剣を浄化、封印し、壇ノ浦で崩御した。
そして安徳皇を失ったバーサーカーもまた、後を追うように消滅し、その永い生涯に終止符を打ったのである。

何故八岐大蛇が安徳天皇にその様な提案をしたのかは不明、その真意は本人のみぞ知る。
ちなみに某良妻賢狐の如く八つの首ごとでそれぞれ口調、性別、性格に差異があるらしい。


【特徴】
艶やかな黒髪をポニーテールで纏め、白い束帯に身を包んだ中性的な子供。
目つきの悪さと八重歯、蛇の様な尻尾が目を引く。
バーサーカーの霊基の元となっている安徳天皇は女性説もあったが結局どちらなのかは不明。



【マスター】
スカサハ=スカディ@Fate/Grand Order

【マスターとしての願い】
北欧異文帯を存続させる。

【能力・技能】
筋力:B 耐久:D 敏捷:C 魔力:EX 幸運:D 宝具:A

陣地作成:EX
女王として、何処であろうと己が城を作り上げる。現代の魔術で言うことの神殿クラスに相当する規格外の能力。

道具作成:A
王として、多くのモノを魔力から編み上げる。装備にせよ霊薬にせよ、樹木の類にせよ、大半は低温になるようだ。触れると冷たい。

女神の神核:A
女神であることを現すスキル。神性スキルを含む複合スキルでもある。神でありながら巨人としての性質も同時に併せ持つスカサハ=スカディは、EXランクではなくAランクに分類されている。

凍える吹雪:B
雪山の女神、北欧の神スカディの性質をあらわすスキル。万物を凍えさせる、極北の風の具現。本来は権能であるため、Aランク以上の威力を発揮すれば、
女王スカサハは霊核ごと完全に消滅してしまう。そのため、本スキルの使用はBランクまでに限られる。

原初のルーン:B
北欧の魔術刻印・ルーンを自在に操る。現在の魔術師たちが使用するものと異なり、大神オーディンの編み出した原初のルーンである。その威力は人知を超える。
本来ならば扱える即死や拘束のルーンは界聖杯による霊基の修復が不完全だったため大幅に劣化。ないし使用不可能となっている。

大神の叡智:B+
「神々の麗しい花嫁」と称されるスカディは北欧の神々の加護を身に有す。
かつて大神オーディンが片目を捧げて得たという大いなる叡智をベースとした、ランサー・スカサハの魔境の智慧スキルに似て非なるもの。

『死溢るる魔境への門(ゲートオブスカイ)』
ランク:A+ 種別:開戦宝具 レンジ:2~50 最大補足:200人
世界とは断絶された魔境にして異境、世界の外側に在る「影の国」へと通じる巨大な「門」を一時的に召喚。
女神スカディではなく、ケルトのスカサハとしての自己が本来支配するはずの領域である「影の国の」の一部たる「影の城」が姿を見せる。
効果範囲の中の存在のうち、彼女が認めた者にのみ、「影の城」は多大なる幸運と祝福を与える。
発動中は自軍サーヴァントの全ステータスへのボーナス補正、直接攻撃の透過、即死をもたらす効果を持つ宝具への耐性が付与される。

【人物背景】
スカサハ=スカディ。北欧の女神スカディとケルトのスカサハが習合した存在。
21世紀の北欧異聞帯に於いて、実体を失い自然へと溶けた神霊ではなく、神代から連綿と続く時間を生きて来た実在の神として、異聞帯の王として君臨した神の女王。
カルデアに敗北後、北欧世界と運命を共にしたが、何の因果か界聖杯によってこの東京に招かれた。
消滅しかかった霊基を界聖杯によって強引に修復されたため女神としての権能は数段劣化しているが、莫大な魔力量は健在である。
恐らく汎人類史において最も招かれざる客の一人。

【方針】
勝ち残り聖杯を手にする。

【備考】
NPCとしてのロールは設定されていません。
郊外に位置する廃協会を神殿として根城にしています。
最終更新:2022年05月16日 21:36