世界有数の発展国の中枢に位置する東京二十三区画にあっても、人の寄り付かぬ土地というものは存在する。
 目覚ましい発展と利権争いの渦と渦の間に生じた死角。
 生き馬の目を抜く競争社会でこそ、零れ落ちた削り屑が堆積する地点というものが出来上がる。
 利権、立地条件、地価と、様々な要因の積み重なりによって見捨てられた伽藍堂。
 その場所も、そうした手続きの面倒さから役所からも後回しにされ、やがて担当者の引き継ぎの過程で目溢しに合い放置された地区のひとつだった。

 そこは教会だ。
 人を救う神の家。心を慰撫する最果ての流刑地。
 礼拝堂に立てかけられた十字架は、そこが世界で最も知れ渡り、信仰を集めてきた一大宗教のひとつなのを示してる。

 しかし、おお、見よ。
 迷える人心を祈りによって匿う最後の砦は、藁の家もさながらに朽ち果てている。
 風と雨ざらしにされ続けた数十年は神聖性を錆び付かせ、厳粛さを剥ぎ取った。
 七色に輝ける陽を送るステンドグラスは砕けるか罅割れて、捻れくねった光を乱射するばかり。
 屋根に聳え立つ筈の十字架は中程から折れ曲がり、野放しの雑草が生い茂る土に突き刺さっている。
 まるで誰にも見届けられず、憐れまれず、被さる砂に埋もれた聖者を弔う、墓標のように。

 人の文明の隆盛は、拓き、広げ、灯す、程に、神の威光を遠ざけさせる。
 豊かさが行き渡れば、求められるのはより確かに手に残る実感だ。
 食べる。眠る。着飾る。稼ぐ。遊ぶ。怠ける。犯す。
 肉の刺激が呼ぶ充足を前にして、祈りの儚さは空を泳ぐ泡の如し。
 一切れのパンを寄越さぬ神よりも、パンを買う為の金貨を奉ずる時代が、現在の社会が傅く信仰だった。


 そんな灰を被った名ばかりの教会、主が不在の無人の土地(ノーマンズランド)に、訪れるはずのない影がある。
 鍛えられた体格に黒の礼服を纏い、顔や袖から除く手首には幾つもの向こう傷が痣となり残っている。

「おお……神よ……何処でオレらを見ているのですか……?」

 泥に塗れた強面の顔に、透明な一筋が線を引く。

 男は極道であった。
 裏の稼業(シノギ)で食い扶持を稼ぐ社会からの逸れ者。堂々と大手を振って往来を歩けぬ、脛に傷持つ身の寄り合いだ。

「脆弱(よわ)く孤独な極道を導く救世主(メシア)を……いつ遣わしてくれるのですか、神よ……ッ!?」

 男は、何も物見遊山や度胸試しで足を踏み入れた不信心者なわけではない。
 来訪者は神への愛を胸に秘め、この末法においてすら信心を忘れず敬虔さを保ち、確かな目的を持って館の門を開いたのだ。
 その証拠に、見よ。椅子に腰掛け、胸襟の前で手を合わせてお辞儀する姿を。
 暴力で食いつなぐ悪鬼が、打って変わって敬虔な信者の面を露とした。



 かような後ろ暗い背景を抱えた者にこそ、この教会は救いだった。
 同業(おなじ)神を信仰しておりながら、堅気の信者からの陰湿な誹謗中傷に肩身が狭い思いをする事もない。
 極道を招き入れるという周囲からの評判を気にする、聖職者にあるまじき信者の選り好みをする司祭から、立ち退きを命じられる事もない。
 認可なく、権威なく、表社会に一切省みられないからこそ、彼等のように居場所のない子羊の最期の社となり得るのだ。

「オレらは神への祈りを忘れた事は一日だって無えッ! 変態神父(カトリック)だ犯罪牧師(プロテスタント)だなんだとくだらねー派閥争いなんか考えねえッ! 只一途にアンタに祈り続けたッ!
 そうだッ! なのに……ッ なのにオレらは殺されるッ! 社会はいつだってオレらを悪者扱いだッ!
 堅気恐喝(ガジ)って、政治家沈殺(シズ)めて、児童臓物(ガキモツ)売捌(トバ)した、ただそれだけで除け者にしやがるッ!」

 日々受けてきた受難を吐露する極道は、惜しみなく涙を流して慟哭する。
 見るに忍びないほど哀れを誘う悲嘆ぶりには、誰であれ同情したくなる事だろう。
 無論、事情を知らなければの話だが。


「救いは……極道に救いはねえのか!? オレらこのまま……死……死んで……ッ」
「いや、あるわけないでしょ、それ」


 慈悲なく容赦なく満遍なく抉る一言が、祈りの言葉を木っ端微塵にブチ砕いた。


 一目見ただけで恋に落ちそうな、愛らしさに満ちた姿だった。
 それでいて衣服は青い外套に青い法衣、肩口の長さの亜麻色の髪は王冠。
 廃教会には似つかわしくない、大聖堂の祭壇に立っていたとしても違和感を感じさせない、聖画さながらの光輝さを放っている。
 一般の信者でありながら目を潰しかねない眩さ。けれど同時に市井にまぎれても違和感のないような、少女期のあどけなさが親しみを与えている。
 相反する要素を反発なく兼ね備えた、人々が理想とする聖女のかたちをしていた。

 そう、彼女は理想の具現だ。
 人の幻想を束ねられて形を得た存在だ。
 英霊と呼ばれる、人の臨界のカテゴリーに昇華された影法師。

 名をマルガリタ。
 信仰に篤い者ほど、その意味に心胆を感動で震わせる。
 殉教者の魂。祈りで竜を祓った、アンティオキアの守護聖人である。




「そ……そりゃねえぜ……御無体(アンマリ)だッ!」
「どう贔屓目に見ても十割方あなたの側に非があるのに、開き直るですらなく、自分が被害者ですって疑いなく信じているような人が言ってもねー……」
「そんなこと言わんでくれ修道女(シスター)ッ! ここが最期の頼みの綱だってのにッ!
 アンタだけなんだろ!? あのテロ牧師と繋がりがあるのは!」

 信者の告解を聞くマルガリタは、取り付く島もなく男の嘆願を説破する。
 それ自体は当然にしても、目を引くは少女の立ち居振る舞い。
 15を超えないまま天に召した年頃だが、大の男にひとつの物怖じも見せていない。
 親しげに、しかして断固として譲らぬ姿勢に、まるで悪いのは自分ではないかと、見に覚えのない罪悪感を覚えてしまう。

 しかし極道もここまで来て引き下がれない。
 最近の街の異常現象は、末端の立場にあっても肌で良からぬものだと感じていた。
 日陰に追いやられた、孤独に生きる外れ者ならではの鋭敏な生存本能が、これより先に起こる大惨事を予感させた。
 生存の道へ進む為に、何としても後ろ盾が必要だった。まだ何処のツバもついてない、根無し草の用心棒などは絶好の人材だ。
 みっともなく、何でもする、足にしがみついてでも彼女とその連れを説得し、抗争に決着をつけなければならない。

「事務所(ウチ)にあの方さえ来てくれりゃあ百人力、いやさ一騎当千なんだッ!」
 極道(きわみ)の野郎にイカれた怪物(バケモン)、あの力が必要(い)る場所はごまんとあるッ! 幾らでも旨い汁吸わせちゃる!
 なあいいだろ~~~~? 一緒に麻薬(ヤク)吸おうぜ~~~? 薬漬けした食べ頃の女もいるしさあ~~~~~?」

 強い覚悟は、この次の瞬間に砕け散った。
 戯画的な揉み手で、分かりやすい媚を売ってすり寄ってくる首元に、天からの鉄槌が突き刺さったのだ。

 為す術なく強面に叩き込められる強面。
 頭には固い靴底の踵の感触。痛みより先に、今己がされている事実の衝撃が頭蓋を打ちのめした。

「女の足に踏みつけにされた気分はどう?
 というか───聖職者にどういうものの誘い方なの!」

 脳天に見事にクリーンヒットさせた踵落とし。
 男からは見えないが、マルガリタの爪先から膝下までの部位には具足が武装されている。
 厳つい兵士が身につけるべき装備にすら神聖さを発揮しているのは、装着者の徳が流れ出た故なのか。
 うら若き女の身としては、あり得ない姿勢と練度の賜物が見て取れる。
 街に潜む極道如きが、逃れられる道理はない。
 竜さえ慄く聖なる御足。まさしく、

「デ、悪魔(デモンズ)……!」

 含むもののない、あるがままの笑顔。
 それが何よりも男を恐怖させた。

「言うに事欠いて悪魔はないでしょ悪魔は。むしろ憑かれてるのはあなたじゃない?
 でも大丈夫。時間をかけて話しましょ? 悩みも悪魔も、ここですっきり吐き出させてあげるから」
「ヒ、ヒィィィィィィ……!」

 この日、ひとりの極道が業界から足を洗った。
 聖女の説法で心を改めたか、物理的に体で改めさせられたのか、解釈はいつの日も分かれるものである。




 ■



 静かになった廃教会で長椅子にどかっと腰掛けて、ニコラス・D・ウルフウッドは天を仰いだ。
 煙草でも吸わなければやっていけなかったが、生憎と手持ちを切らしていた。

「ったく……毎日毎日アホみたいに吹っかけおって……」

 彼は牧師であったが、くたびれた黒いスーツにサングラスという風体は、およそ神に仕える任を負う者には見えない。
 雰囲気でいうならば、極道の男と大差なく無頼のそれだ。暴力の匂いを漂わせている。
 違う点は、ただひとつ。その濃度の桁。
 指先から頭の天辺まで染み付いた血の匂い。身体から離れない戦場の空気を引き連れている。
 街の民間人をカモにするのが関の山のチンピラでは、比較にすらならないほど隔絶していた。

 そもそもの因縁は、街での極道同士の抗争にウルフウッドが巻き込まれたのに端を発する。
 降りかかる火の粉を祓うだけの、ほんの露払いのはずであったそれは、むしろ新たな火種を撒く前準備に変わってしまった。
 並み居る百戦錬磨の極道を圧倒し、場を収めてみせた結果は、逆に極道界隈の注目を浴び、以来、抹消ないし取り込みの相手としてマークされる羽目となり、その度撃退しては評価を加算される悪循環に陥って、今に至る。

「死んだ後になってもこの始末かい。 なァにが蒼き清浄の星や、あっちの星と大差ないやないか、このバカ騒ぎ…………」

 来る日も来る日も迫ってくる悪タレ共。
 雨後の筍、芋洗いとはこのことだ。芋も筍ももそんだけの数、見たのはこの街が初めてだが。
 ……本当に、そうなのだ。
 こんな手合いが潰しても潰しても尽きず湧いてくるのが、彼の生きた世界であり、星だった。
 懐かしい、と郷愁を覚えるには苦労が多過ぎるが、それ以外の生活は有り得ないので、口腔を占めるのはやはり馴染みの味だ。

「……人殺しには似合いの場末ってわけか。地獄に落としてくれた方がまだ慈悲深いで、神様よ」

 身の不幸を嘆く事こそあれど、理不尽と叫ぶのを、ウルフウッドはよしとしない。
 これは多分、当然の罰なのだ。受けなくてはならない裁きなのだ。
 そうだろうと思ってるし、そう思わなければやっていけなかった。

 自分は死んだ。戦いの末に命を使い切った。
 体を酷使し、文字通りの意味で擦り減らし、幾度となく鉄と灼熱に打ち貫かれても。
 孤児院の仲間に寮母。弟分でありながら、自分と同じ修羅道に落ちてしまった暗殺者。
 守りたかった家族を、守り通せたのだ。



 懸念は、残っている。
 あの星はこれから未曾有の大災害に見舞われる。いや、原因を引き起こしたのは人の側だから人災と言っていいか。
 人の住めない星に墜ちた移民船の末裔。生きる為に搾取するしかなかった人造の天使。
 腐敗した輪廻を断つべく同胞を背負って立ち上がった超越者の手で、人類の生存権は干上がる。
 そうなれば全ては元の木阿弥だ。彼の守ったものも大乾で朽ち果てる。
 手を貸してやれないのは歯痒いが、不安ではなかった。
 頼れる奴がいるから。背中を預けられる相手がいるから。
 誰かに……友達に後を託すという選択を、最後の最後で取る事が出来たのだから。

 あれは、悪くない最期だった。
 むしろ最上の末路だったと思っていい。
 友と盃を交わし、家族に迎えられた。自他の血を浴びすぎた殺人鬼では、もう戻れない場所だと諦めていたのに。
 本当に、満足の行く結末だったのだ。人生の幕引きに納得を得られた。これ以上の何を求めるという。
 なのに自分はこうして生きて、何処とも知れぬ星の一角に連れ込まれ、求められるのは『戦争』の一言。


 本音を言えば、勘弁してほしい。   こっちは全部出し切った。出涸らしだ。崩壊してた肉体は戦いの直前にまで復元されてるが、気力は空っぽだ。
聖杯。奇跡の願望器。
 痩せても枯れてもウルフウッドは聖職者だ。その言葉の意味合いの重さは理解している。
 聖なる御子の血を受けた遺物が、ただ一人になるまで殺し合うサバイバルの景品になっている。胡散臭さを感じない方がどうかしてるだろう。
 愛用のパニッシャーも、拳銃も、携行の代謝促進薬も置いてかれた。ついでに言えば金もない。
 今更何をモチベにして戦えというのか。

 けれど、同時に仕方ないとも受け入れてるのだ。
 なにせ、無罪放免を言い渡されるには、自分は些か殺し過ぎてる。
 宗教組織の過激派に拉致され、戦闘訓練と人体改造を施されたと、被害者面の言い訳を並べはしない。
 ウルフウッドは選んだ。自分の死よりも誰かの死を。それは紛れもなく自分の意志だ。
 大事なもの、より大きな理由の為だとしても、許される道理になならない。
 死後も闘争に身を費やす事が刑罰と科されれば、なるほどそうかと納得もするのだ。

 甘んじて罰に身を委ねるべきか、まだ何かを譲れないと吠え上げるべきか。
 そうこう悩む間にも儀式は続くのだろう。続く限り、いつかは自身も矢面に立たされ、戦いを強いられる。
 デッドオアドライブ。張り紙をばら撒かれた賞金首のように。


(トンガリ…………おんどれなら……この状況でどうする?)

 浮かべるのは、看取ってくれた一人の男の顔。-
 ヘラヘラと、にやけ面で、人間台風と字名される全天候巻き込み人型災厄の、底抜けの平和主義者。
 こんな地獄に置かれても、相変わらず、二本の指を立てて、愛と平和は語ってみせるのか。

(いや……愚問やな)

 答えの見えた疑問を早々に投げ飛ばす。
 幾ら死んだ後でも、よりにもよって助けを乞う先があの男とは、我ながら弱々しくも女々しいことだ。
 知られたら、きっと間違いなく調子づいてからかわれるだろう。よし殴る。


「なんだか難しい顔してるね、ニコ兄。おなか空いた?」

 物思いに耽ってる間に、いつの間にか隣に座っていたのか。 
 マルガリタはしげしげとこちらを観察するように見つめている。
 先程と違い、牧歌的な匂いのする簡素な服に着替えてる。曰くあちらはサーヴァントとしての正装みたいなものとのことだ。

「あー、腹は減っとらんが、煙草吸いたいねんけど」
「ダメ。今日はもう吸ったでしょ。あれ体悪くするやつじゃない」
「どうせ死人や、健康なんざ考えたってどうなるんや。サーヴァントいうんなら主人の意向ぐらい聞いてみせい」
「こういう時だけマスター顔すんの、よくないと思うよ。ニコ兄、そういうの向いてないでしょ」

 ぎゃいぎゃいと、お互いに噛みつき合う戯れ合い。
 サーヴァントとマスターというより、年の離れた兄妹に近い距離感。
 初めの頃に、不覚にもそう受け取ってしまったのを覚えてる。
 耐えきれずに突き放そうとしたりもしたが、向こうからぐいぐいと詰めてきて、こちらも意地になって全力で逃げたら、少し時間を置いて必ず追ってきてと、延々とイタチごっこを続けてウンザリしたのが、ここ数日前。

 なし崩しにも共同生活を営めば、付き合い方、人となりも分かってくる。
 思った以上にこの聖女は頑固で、あけすけで、信じたものを一生掴んで離さない。
 そういう生き方をしてきた。拷問で肉を削がれようが、悪魔に丸呑みにされようが、己を偽らず貫き通した。
 この類の手合いは止まらない。変えられない。死んだところで曲げられる宗旨ではない。それを恐れとはしないのだから。
 そういうのは身にしみている。英霊と呼ばれるのもむべなるかな、だ。
 決して死ねないと足掻き続けていた身分には、何とも皮肉な話ではないか。


「それに、マスターなら戦いは私に任せればいいじゃない。なんでいつもニコ兄が私の宝具持ってどっか行っちゃうの?」
「しゃーないやろ、ワイのパニッシャー置いてきてもうたんやし。むしろなんで手に馴染むぐらいそっくりなのかこっちが聞きたいわ」
「それこそ私が聞きたいよ。あんなバキュンバキュン撃つのじゃなかったのに。ねー、なんか知らないのー?」

 立てかけられた巨大な十字架を揺さぶる。英霊の誇りの象徴にしてはぞんざいな扱いだが、彼女なりの親愛の態度でもある。
 勢い以上にガタガタと自分から震えてるのは、果たして気のせいなのか。
 中にいるらしい、さんざ叩きのめされた竜とやらには同情しつつ、静かに手を合わせた。

「ちゃんと、私に守らせてよ、もう」

 顔を僅かに膨らませて、マルガリタは訴えた。
 可愛らしい、他愛もない不満を零すだけに見えて、彼女の中では真剣そのものの言葉なのは、流石にウルフウッドも理解してきた。

「あなたを守って、ちゃんと行けるところに送ってあげる。それが私の役目だと思ってるのに」
「ガキに御守りさせられるほど墜ちとらん。あの武器やら、怪我の治りの良くなる加護やらで十分や」
「それじゃニコ兄が傷つくじゃない。なんでもかんでも背負ったりすることないのに」
「自分のケツは自分で拭くってだけの話しなだけや。だいいち傷とか背負うとか、お前が言えたクチか」
「信じたかったものを信じて、捨てたくなかったものを捨てず、言うべきことを言った。それだけの人生だよ」
「あのなぁ、そーいうのを…………はぁ、もうええわ」

 反論しようとして、これ以上はいつもの堂々巡りになるオチになると勘付いてやめる。
 立ち上がって外に向かう。ここで話し込んでも落とし所は見えまい。

「出かけるの? ごはんまでには帰ってきてね」
「おばちゃんみたいな口振りやな。帰らなくても一人で食っとれ」
「同じ神を誓う身でしょ? 祈りぐらいは一緒にしよーよー」
「ワイら、宗派違いとちゃうんか」
「気にしない、気にしない! わたしの頃はそういうのなかったし!」

 扉を閉めるまで、何事かを呼ぶ声は聞こえた。
 向こうの音が完全に遮断されたところで飽き飽きするほど味わった出来事を思い出すように、わざとらしいため息をついた。
 とりあえず、こっそりと溜め込んでいた硬貨で煙草を買う。
 一箱分まで使い潰し切るまで吸って、それからは……なるようにしかなるまい。
 何が起ころうと、何が待ち受けていようと、あのタフで騒がしい日々になるのは間違いないようだから。


「しかし巡り巡って、死んだ後になってまでガキの世話かい。
 まったく……こっちが最悪の罰やないか」




【クラス】
アーチャー

【真名】
マルガリタ@史実?、黄金伝説

【ステータス】
筋力C+ 耐久A 敏捷D 魔力A 幸運A 宝具B

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
対魔力:A
 Aランク以下の魔術を無効化する。
 現代の魔術師では、魔術で彼女に傷をつけることはできない。

単独行動:A-
 マスター不在でも行動できる。
 ただし単独で遠くに動くのは苦手。マスターからの魔力供給をカットして長時間耐え忍ぶのに特化した感じ。

【保有スキル】
殉教者の魂:B
 精神面への干渉を無効化する精神防御。 
 凄惨な拷問、悪魔の誘惑を受けても、マルガリタの信仰は揺るがなかった。

ヤコブの手足:C+
 ヤコブ、モーセ、マルタ、そしてマルガリタと脈々と受け継がれてきた古き格闘法。極まれば大天使にさえ勝利する。
 伝説によれば、これを修めたであろう聖者が、一万二千の天使を率いる『破壊の天使』を撲殺している。
 マルガリタは足技を主体にしたスタイル。フィニッシュブローは踵落としからのストンピング。
 「PS2版仮面ライダーダークカブトのライダーキック」を想像して下さい。
 ちなみに、マルガリタはこの闘法を獄中の信託で習ったという。
 神性・悪魔・死霊・竜種特効。

免償の聖人:A
 マルガリタの名は危難を祓う効果があると伝わり、妊婦・出産の守護聖人である。十四救難聖人の一人にも数えられている。
 契約したマスターや加護を与えた相手に、スキルに内包されている「聖人」スキルの効果「HP自動回復」効果を付与する。
 ダメージカット・鎮痛効果も兼ねる。

【宝具】
『撃ち裂き給え、竜の罰(アウキシリウム・ドラコ・パニッシャー)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~13 最大捕捉:20人
 投獄されたマルガリタの前に現れ、彼女を一呑みにした恐るべき竜と、それを内側から切り裂いた十字架が合わさった宝具。
 巨大な赤黒い、竜を思わせる形状の十字架。
 先端部分からはマシンガン……の如き法弾を乱射し、逆方向からはロケットランチャー……の如き聖なる光を撃ち放つ。
 重量と硬度も相当なもので、盾・鈍器としても使用可能。メインの使用法はむしろそっちらしい。
 真名解放する事で、地面に突き立ち、天上に昇る十字架を出現させる。
 これは囚えるものを内から裂くという概念、即ち結界内部から切り裂く事で最大の効力を発揮する。
 それでも足りない場合は、マルガリタが直接足で打ち込み力を吐き出させる。
 アーチャーのクラスという関係と、マスターの影響でこんな性能になったが、本来はもっと霊験あらたかな光で魔を抹消する固定砲台なんだよ。とは本人の弁。
 「結局砲台なんやないか」とは、マスターの弁。
 現在はマルガリタより、もっぱらウルフウッドがパニッシャーの代わりに使っている。


【weapon】
『無名竜』
 正体は改宗を拒むマルガリタを堕落(改心)せんとす父アエデシウスと母、彼女に婚約を迫る長官オリブリウスが共謀して送り込んだ悪魔(精神寄生体)。
  取り憑いた相手の恐怖するイメージを象り精神を貪り、最後には悪竜現象化させる凶悪な使い魔であったが、マルガリタの眠れる信仰心と主から伝わりし技によりあえなく敗北。
 退散しようとしたところを踏んづけられ、屈服させられ、滾々と説法を受け逆に改心、マルガリタの処刑を見届けると同時に自身も浄化した。
 現在はマルガリタの信念と暴力に心底ビビっておりもう逆らえない。それでも口の悪さは減らないので何度も折檻を受け、何度も泣き言を吐いている。
 生前の時点で自由の身だったが、サーヴァント化するにあたっていかなる心境か、マルガリタの霊基に潜り込み、十字架に中から裂かれた逸話とは逆に、十字架に取り込まれた形で共に召喚される事となった。

【人物背景】
 聖マルガリタ、アンティオキアのマルガリタとも呼ばれる。
 敬虔なキリスト教信者である彼女は、異教の司祭である父と、棄教を条件に結婚を迫る地方高官の間に挟まれながらも信仰を捨てる事はなかった。
 牢に繋がれ、身を削られる拷問を受け、竜の悪魔をけしかけられても、主の奇蹟が彼女を救った。
 処刑が決定した後も気丈に振る舞い、観衆の大半が処刑に反対する中で祈りと許しの言葉を唱えた。
 フランスの聖処女ジャンヌ・ダルクが救国の意志に目覚めた信託にも、大天使ミカエルとマルガリタの声を聞いたという。

 裏表なく、飾るところがなく、嘘偽りなくあけすけに物事を言う。攻め気質。隠れS。
 どこにでもいる村娘のように振る舞いながら殉教する凄まじい信仰心を宿した、あるがままの聖女。聖女フィルターのないマルタのようなもの。すごく頑固。
 異なる教えに目くじらを立てはしないが、父は折り合いが悪く婚約者がアレだったので実はちょっとだけ嫌い。
 信仰の強さは時に苛烈さに表れ、口調はそのまま正論をブッ刺して徹底的に打ちのめす。
 名も無き竜を調伏した際はそれはもう恐ろしい光景だったそうな。

【外見】
 赤い外套に青い法衣、王冠を被った濃い亜麻色の髪をショートボブにしている。
 全盛期にして死亡した15歳の姿だが同じ年代よりも背が高くやや大人びてる。
 普段は隠れてるが、足には聖なる具足が装着されてる。足技を使うため、スリットは深い。
 素肌には拷問の痕が痛々しく残ってるため、姿全体を覆うデザインをしている。
 上記のものは聖女といイメージから生まれたサーヴァントとしての正装。オフの時は古い羊飼いみたいな服にしている。

【サーヴァントとしての願い】
 ニコ兄の魂をあるべき場所へ。



【マスター】
ニコラス・D・ウルフウッド@トライガン

【マスターとしての願い】
未定。正直どうしろっちゅーねんといった次第。

【weapon】
象徴のパニッシャーは十字架に置いてきた。拳銃と促進薬は弟分に託された。今の彼は手ぶらの牧師、一文無し、スカンピン。

【能力・技能】
生まれながらの天性の戦闘センス、膨大な戦闘経験、染み付いた殺しの技術、改造手術による身体能力、代謝促進手術による再生能力。

【人物背景】
ニコラス・ザ・パニッシャー。ニコラス・ドコノクミノモンジャワレスマキニシテシズメタロカコラ・ウルフウッド。「ミカエルの眼」元執行者。テロ牧師。みんなのニコ兄。

死亡後からの参戦。

【方針】
こっちも未定。いざ戦いになったら容赦はしない。
マルガリタにはあまり戦わせたくないので、パニッシャーをパクって自分が戦う。
最終更新:2022年05月16日 21:40